俺とゆうかとゆかりんと ぼりゅーむさん

●俺設定がフタエノキワミ
●虐待成分「そろそろ俺の存在も思い出してやってください…」
●ゆゆこの食欲で人間がヤバイ
●前作「俺と(ryぼりゅーむに」は読んどいた方がいいかもってけーねが言ってた
●以上のことを踏まえた上で読んでくれるうほっいい漢はゆっくり読んでいってね!




今更な
〜登場人物紹介〜

○虐緒(ぎゃくお) 26歳

加工所の裏組織、「ゆイーパー」の職員。
ゆかりんとゆうかを相棒にして日夜ゆっくりを駆除している。ゆっくりは特に害をなさなければ殺さないが、害を成すゆっくりは徹底的に駆除するのが信条。
因みに、害を成さないゆっくりでも殺しはしないが虐めはする。仕事の相棒であるゆかりんとゆうかは別。
本人はどうでも良いと思っているが、一応「新虐待派」に所属していることになっているため、上層部からの嫌がらせを受けている。
なんだかんだで命がけの任務から無事に帰ってきたり、実績はあるので上層部もクビには出来ない凄い人。主人公補正?ナンノコトカナ。

○ゆうか(ゆっくりゆうか)

本作の主人公の相棒その1。虐緒と出会う以前は空き地で花畑の世話をしていた。
であった当初は虐緒を敵視していたが、ある事件をきっかけに和解。以降虐緒の家でサボテンと鈴蘭の世話をしている。
普段は喧嘩ばかりだがなんだかんだでゆかりんとは仲良し。実は本作で一番の常識あるキャラかもしれない。
特に特殊能力などは持っていないが、身体能力が異常に高く、周囲の気配を探るのが得意。

○ゆかりん(ゆっくりゆかりん)

ある日虐緒の元に落ちてきた(自称)落下型ヒロイン。主人公の相棒その2
何故虐緒に纏わり付くのかは謎。ゆかりん曰く「デスティニーよっ!」とのこと。イミフ。
虐緒の行く先々に現れるので、いい加減うざったくなった虐緒に家に住めと言われた。
元になったババ…美少女のようにスキマを操る。ただし自分より大きな物はスキマには入れられない。
多少無理すればPS3と箱○くらいなら入るとか。

○鬼意さん(おにいさん) 28歳

虐緒と同じ「ゆイーパー」の職員。ただし鬼意さんはマスコミなどに対する情報規制等が主な仕事。
実は結構な地位のある人で、「新虐待派」で唯一の幹部職だったりする。その為外部にも内部にも敵が非常に多い。ぶっちゃけ虐緒よりよっぽど苦労人。
日頃のストレスのせいか、もともとゆかりん種は好きだったようだがその感情が暴走して今ではHENTAI一歩手前。
毎朝ゆかりんに求愛して振られている。一歩踏み出すその日は近い。
実は妻子持ち。

○尾根江(おねえ) 22歳

「ゆイーパー」職員。鬼意の頼みで、今回の任務に同行することになった。
きめぇ丸を相棒として連れている「新虐待派」。しかし彼女の仕事はデスクワーク以外はほとんどきめぇ丸頼り。
今回はきめぇ丸を偵察機として周囲の状況を伝えるのが仕事だが、ぶっちゃけそれってきめぇ丸が居れば事足りるんじゃね?とは自分でも多少は思っている。
あとやけに間延びした喋り方をするが、あせると普通に話すあたりキャラ作りなのかもしれない。真相はスキマの中。
そして絶望的なまでに貧乳。慎みとかそんなフォローすら出来ないほど貧乳。
虐緒と恋愛フラグを立てたくても虐緒は巨乳派。頑張れナイチチ。


〜登場人物紹介 完〜


「「「どぼじでわだぢ(おれ)はごんなあづがいなのぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」」」











『ゆゆこがそちらに向かっているのに加えて、ゆっくりんピースの部隊がゆゆこが向かってるのとは逆方向から接近中です!!このままじゃ挟み撃ちですよ!!』
尾根江が言い終わるより早く、俺は駆け出していた。どこへ?決まっている。ゆうかとゆかりんの場所へだ。
「おいおいおいおいおい冗談じゃねえぞ!!ゆっくりんピースだと!?規模は!」
『きめぇ丸!ゆっくりんピースの規模は!?……っ!?嘘…でしょ!?』
尾根江が息を呑む気配がした。これは確実に良い報せではなさそうだ。
『敵勢力…完全武装が三十人!?冗談じゃないわよ!!こっちはほとんど丸腰の二人と三匹なのよ!?』
「おちつけ尾根江!!まずはきめぇ丸に敵の目的を探らせろ!!近くにはゆゆこも居るんだ。そっちが目的って可能性もありうる!!」
尾根江を落ち着かせるためにそう叫んだが、俺の脳内ではすでに結論は出ていた。      
おそらく、ゆっくりんピースはゆゆこが狙いではない。ゆゆこを相手にするつもりなら三十人は少なすぎるからだ。
「くそっ…冗談じゃねぇ!!まともな装備もなしで三十人を相手にしろってのかよ…!!」
尾根江には聞こえないように呟く。つまりは、そういうことだった。




『きめぇ丸!!ゆっくりんピースに接触して向こうの目的を探って!』
「おお、了解了解」
相棒である女性の声で、きめぇ丸はゆっくりんピースの大部隊に近付いていく。
「凄い大人数ですね。この先で何かあるのですか?」
そして、一台に数十人単位で乗せたトラックの最後尾、アサルトライフルを抱えた青年に声を掛ける。
「ん?あぁきめぇ丸か。すまないが任務内容は機密扱いなのでね。答えることは出来ない」
事務的な受け答え。これはいよいよ我々を狙ってきたのか。そうきめぇ丸が考えていると、
「…おい、貴様ゆイーパーのきめぇ丸だな?」
先ほどの男が、殺意を剥き出しにしてこちらを睨んでいた。
「おお、誤解誤解。私はゆイーパーなどでは…」
「嘘を付け!!ならばその通信機は何だ!!どうせ奴らと連絡を取るための物だろう!!!」
「ぐっ……」
高速で首を振って誤魔化そうとするも、首に下げた通信機を指摘され、言葉に詰まるきめぇ丸。詰まってから、しまったと思った。
(こういう時ほど、自分がゆっくりであることを呪うことはありませんね…おお、無様無様)
自分のゆっくり故の迂闊さを嘆きながら、きめぇ丸はトラックから全速力で離れる。
しかし、
「我々の情報をゆイーパー達へ漏らすつもりだな!?そうはさせん!!」
という声が聞こえたかと思うと、
「おお、危険きけ…!!」
乾いた銃声が、緑に覆われた森の中で響いた。


「銃声…?」
ゆうかとゆかりんを探している途中、そう遠くない距離から銃声のようなものが聞こえた。
どうやら、ゆっくりんピースの連中はもうすぐそこまで来ているらしい。
『きめぇ丸?応答して!きめぇ丸っ!!』
銃声からしばらくして、通信機から悲痛な叫び声が聞こえてきた。
「どうした!?きめぇ丸に何かあったのか!!」
『わかりません!銃声が聞こえてからきめぇ丸と連絡が取れないんです…!!』
最悪な日には最悪な事が重なるらしい。これでゆゆことゆっくりんピース、両方の動きが分からなくなってしまった。
「ああ、畜生!!どうすりゃ良いんだ!!」
頭をかきむしりながら地面を見て、俺は微かな違和感に気付いた。
「揺れて…る…?」
そう、集中しないと感じ取れない程度にだが、地面が振動していたのだ。
そして、聞こえてしまった。
今日一番の。
絶望の、声が。

「こぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぼねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

その大音量に、思わず耳を押さえて蹲る。
「畜生!!もうそんな近くまで来てやがったのか!?」
あたりを見回す。が、ゆゆこの姿は見えない。
「どこだ!?どこに居やがる!!」
半狂乱になりながら逃げ惑う俺に、何か二つの物体がぶつかってきた。
「う、うああああああああああ!!何だ!!ゆゆこか!?」
慌てて身体にくっついた二つの何かを引っぺがすと、そこにいたのは見慣れた二匹だった。
「お、お兄さん!!無事!?怪我とかしてない!?」
「ゆぅ…落ち着いてねお兄さん。ゆゆこじゃなくてゆうか達だからね」
心配そうに俺を見るゆうかとゆかりん。そんな二匹を見ていると、さっきまでパニックに陥っていた俺の頭が、急速に冷えていくのを感じた。
「お、俺は大丈夫だ…お前達は?」
「ゆうかもゆかりんも大丈夫だよ」
「それよりお兄さん、落ち着いてゆっかり聞きなさい!今こっちに、ゆゆこと…」

「こぉぉぉぉぉぉぼぉぉぉぉぉぉぉねぇぇぇぇぇぇ?」

「っ!?」
ズドン、と地面が揺れ、奴の声が間近に聞こえる。
恐る恐る背後を振り返ると、そこには成人男性と同じくらいの大きさはあろうかというゆっくりが居た。
ドスまりさではない。あれは人間より少しばかり大きい。
胴付きゆっくりではない。あれは人間で言えば小児くらいの大きさだ。
丸い身体にまるでおまけのように引っ付いた短い手足。ピンクの髪に渦巻き模様が描かれた三角巾の付いた帽子。
ゆっくりゆゆこが、そこに居た。
「最悪だ…ゆっくりんピースの連中もすぐそこだってのに…!!」
幸いにもゆゆこは何かに気を取られていて、こちらに気付いている様子はない。
俺は思考が停止しているゆうかとゆかりんを抱えると、即座に駆け出した。
走りながら、ゆゆこの様子を伺う。
「こぉ〜〜ぼぉ〜〜ねぇ〜〜?」
どうやらゆゆこは何かに話しかけているようだ。一体何に話しかけているのかと、ゆゆこの視線を追ってみる。
「なっ…」
言葉が出なかった。ゆゆこが話しかけていたのは、ぼろぼろになったきめぇ丸だったからだ。
それが尾根江の相棒のきめぇ丸だとすぐに気が付いたのは、きめぇ丸の身体に弾痕と思しき傷があったからだ。
おそらくさっきの銃声の後、負傷しながらもなんとか逃げてきたのだろう。
一瞬の躊躇い。きめぇ丸を助けるべきか否か、その迷いはきめぇ丸によって断ち切られた。
俺が見ていることに気が付いたきめぇ丸の口が、僅かだが動いたのだ。
(に  げ  て)
声は出していなかったが、きめぇ丸の口は確かにそう動いた。
「くっ…!!すまん、きめぇ丸……!!」
俺は再び走り出すと、後ろの様子が見えないようにしっかりとゆうかとゆかりんを抱きかかえた。



「やれやれ、ゆっくりんピースの連中には撃たれ、なんとか逃げ延びてみたら今度はゆゆこですか…。今日はとことんついてませんね。おお、不幸不幸」
走り去る虐緒達の背中を見ながら、きめぇ丸はゆっくりと立ち上がる。
「さて、私だけで貴方を倒せるとは思いませんが…時間稼ぎくらいには、なれるでしょう。銃を相手にするよりは幾分か楽ですしね」
「こ〜ぼぉぉぉぉぉね?」
近くの木に手をつき荒い息を整えると、頭の両脇に垂れている髪飾りを掴み、一気に引き抜く。
「う、うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「こ、こぼね〜〜!?」
突然叫びだしたきめぇ丸に驚くゆゆこ。そんなゆゆこの目の前できめぇ丸の姿がみるみるうちに変わっていく。
「「「あまりこの姿にはなりたくないのですが…非常時ですから、仕方ありませんね」」」
そう言うきめぇ丸の姿は、もう何処にも無く。そこに居たのは犬とも、猫とも、他のどんな動物とも、ましてゆっくりとも言い難い、謎の生命体だった。
体長は大型犬に近く、四肢も犬のように四本の脚で身体を支えている。
しかし頭はなんと三つあり、そのすべてがきめぇ丸に似通ったものであるから、おそらくはきめぇ丸が変体したものなのだろうと推測できる。
「ご、ごぼねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
そのあまりの不気味さに、流石のゆゆこも全力で警戒している。
この謎の生命体は、けるべろ丸と呼ばれているきめぇ丸の一種だ。きめぇ丸の中には稀にこの姿になることの出来る個体がいる。
「「「さて、いきますよ!!」」」
きめぇ丸改めけるべろ丸が駆け出すのと、ゆゆこがその巨大な口を開くのは、同時だった。
そして、



「ごぼねっ!?ご、ごぼ、ごぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ!?」
けるべろ丸が仕掛ける直前に、突然ゆゆこが苦しみだした。何事かとけるべろ丸が周りを見回すと、先ほど逃げたはずの虐緒達がけるべろ丸の後方に立っていた。
「「「何故、戻ってきたのですか!!私が足止めをしますから、早く逃げて!」」」
「だが、断る!!」
二の腕を組んできっぱりと言い放つ虐緒。
「「「危険です!貴方達が私と組んだところで生きている時間がほんの僅か延びるだけです!それとも、倒せるというのですか!?ゆゆこを!!」」」
けるべろ丸のその言葉には返事をせず、虐緒は右手を天高く伸ばし、叫んだ。
「俺の親父は言っていたァ!!男たるもの!!決して仲間を見捨てる無かれ!!!仲間が絶体絶命なら、己が命を掛けてでもその友を救えと!!!」
「「「さっき思いっきり逃げてたじゃないですか!」」」
あまりの無茶苦茶な言葉に思わず突っ込んでしまうけるべろ丸。しかし虐緒は不敵に笑うと、
「あれは逃げたのではない!!戦略的撤退という!!そして、こいつを持ってきたのだァァァァ!!」
ズビッ!とけるべろ丸に何かを突き付ける虐緒。
「「「そ、それは……?…なんですか?」」」
当然といえば当然の問いに、虐緒は思いっきりずっこけた。

遡る事数十分前…
「くっ…!!すまん、きめぇ丸……!!」
ゆうかとゆかりんを抱きかかえて走り出した俺は、前をよく見ていなかったせいで足元に根っこが飛び出していたことに気が付かず、走り出した勢いのままずっこけてしまった。
「ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
「ゆぅぅぅぅぅぅぅ・・・」
「ゆぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
更に運の悪いことに、どうやらその根っこの近くは斜面になっていたらしく、俺とゆうかとゆかりんは仲良く転げ落ちていってしまった。
ズドゴッ!!とかいうすごい音と共に地面に叩きつけられる俺達。とっさにゆうかとゆかりんを庇うような体勢にしたので、なんとか二匹が潰れるようなことにはならなかった。
「ふぅ…やっと止まった」
「ゆ〜…気持ち悪いよ…」
「ゆゆゆゆゆゆゆ、目が回ってるわぁ〜」
ふらふらと立ち上がる俺の後頭部に、ゴリッという音と共に何かが突き付けられた。
「貴様、ゆイーパーの人間だな…?たかだか一人と二匹で我々の目の前に出てくるとは良い度胸だ…今回は貴様らは任務の対象ではないが、構うまい。この場で制裁してくれる!」
「長々とうるせえな!隙だらけだぞこの馬鹿!」
「ゆっかり気絶していきなさいな!!」
なんか知らんが長ったらしいことを言っている男の頭上にスキマが開いたかと思うと、男の頭に最早石というより岩と言ったほうが近いようなサイズの石が落ちてきた。
「ごっ…!?」
白目を剥いて倒れる男の銃を奪うと、急いで周囲の状況を確認する。
「ゆうか!近くに誰かいるか!?」
「すぐ近くにはいない…けど、もう少し行ったとこに沢山の人の気配がする…。あと、何かを組み立ててる気配もする」
「組み立て…?」
そういえば、今足元でなんか青紫色な顔色になって泡を吹きながら痙攣しているこの男、さっき今回の任務はは俺達が対象ではないとか言ってた気がする…。
「…ふむ」
しばらく顎に手をやって考え込んでいた俺は、やがて痙攣が激しくなってきた男の近くに屈み込んだ。




「お、やっと帰ってきたか。遅いぞ!」
数台のトラックが停まっている場所までやってきた俺は、見張りであろう男に声を掛けられた。
「あ、あぁ悪い。ちょっと途中でずっこけちまったんだ」
適当なことを言いながらその男の前を通り抜ける。
俺は今、ゆっくりんピース達が拠点としている場所に潜入していた。
さっきゆかりんの落とした岩で気絶した男の装備を奪って着ているので、パッと見、見た目でばれる心配は無いだろう。
あの男が俺と似たような体格をしていてくれて助かった。因みに元の装備はゆうか達に預けて、二匹には隠れてもらっている。
「さて、一体何を持ち込んでいやがるのかね…」
俺は作業音がする方へと慎重に進んでいく。いくら連中の装備を着込んでいるとはいえ、流石に顔まで変えられるわけではない。万が一顔をハッキリ見られたりしたら厄介だからだ。
「と、ここか…」
トラックの陰に隠れながら、周囲の様子を伺う。
「目標発見…って、なんだあれ?」
そこにあったのは奇妙な形をしたものだった。ぱっと見た感じは、ミサイルとその発射台。
しかし普通のミサイルとは決定的に違うものがあった。
「なんだあれ…?」
「興味が沸いたかしら?」
「ッ!?」
背後から、若い女の声がした。
「そうか…お前がこの部隊の指揮官か……」
苦々しい声で呟く。俺の背後に佇むのは、昔付き合っていた女だった。
「久しぶりね。相変わらずゆっくり虐待なんてくだらないことをしてるの?」
「…お前こそ、とうとう指揮官にまで上り詰めやがって。そんなに饅頭ごときが大事か?」
俺達は昔から、この部分だけは意見が合わなかった。
大学に在籍していた間はずっと彼女の目の届かない場所で俺はゆっくりを狩り続け、彼女は俺の目の届かない場所でゆっくりを守り続けた。
そして、大学の卒業が近付いてきた日。俺達は互いの進路について話し合った。
俺は、ゆイーパーとして加工所へ。
彼女は、ゆっくりんピースとして政府へ。
その日、俺達は互いの元を去る決意をした。最後まで、俺達二人はゆっくりについてだけは意見が合うことは無かった。
「今日はね、別に貴方達を止めに来たわけじゃないわ。あのゆゆこ、この辺の生態系を壊しかねないほど森に住む生き物たちを食い荒らしてしまった…。
だから、可哀想だけどここで永遠にゆっくりしてもらうことになったのよ」
哀しげに顔を歪める女の、しかしその瞳はまったく哀しげな色を映してはいなかった。むしろ、凶悪なまでの悦びに打ち震えているように、俺は感じた。
「ゆゆこを…?だが、たかだか三十人で止められると思ってるのか?」
「その為の「新兵器」よ…。長かった。これを完成させるまで…とても」
「「新兵器」…?あのミサイルがか?」
俺が問うと、女は首を振り、
「あれは牽制用の唐辛子粉末入りミサイル…。「新兵器」は、これよ」
そう言って腰に下げたホルスターから一丁のデカイ拳銃を取り出す。デザートイーグルと呼ばれるデカイ見た目に見合った破壊力が売りの銃だった。
「それが…?ただの拳銃にしか見えないが」
「外見は問題じゃないわ…大事なのは弾。これが何か分かるかしら?」
そう言って取り出した弾の弾頭は、一体何を詰めればああなるのか、というほどの赤さだった。
「なんだ、それ?」
「ハバネロの粉末を特殊な技術で超圧縮して詰め込んだ唐辛子弾よ。これ一発で、あのミサイル三発分ほどの粉末が詰め込まれているわ」
どうやら、俺達の使う手榴弾のように広範囲で撒き散らすものではなく、ドスまりさやゆゆこ、その他の大型の個体にも対抗できるようにと開発された、一点突破型の装備らしい。
「ゆっくりんピースがゆっくりを殺す道具を開発するとはな…ご自慢のゆっくり保護の誓いはどこいった?」
俺が皮肉を言うと、女はクスクスと笑い、
「私達は愛で派じゃないもの。私達が守るゆっくりは、金や銀のバッヂ持ちか、「人類に害を成さない」ゆっくりの保護よ?人類に害を成すゆっくりがどうなろうと、知ったことじゃないわ」
「そうか。…それにしても、そんなこと俺に教えて良いのかよ?」
俺は、女を睨みつける。一体どういうつもりなのかと。
新兵器の情報なんて、機密中の機密なはずだ。部外者の、まして敵対組織の俺にそんな簡単に教える理由は無い。
「それは、こういうことよ」
女はそう言うとデザートイーグルと予備のマガジンをこちらに向かって放り投げると、突然大声で叫びだした。
「「新兵器」が盗まれたぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!何が何でも犯人を捕まえろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「ハァ!?いきなり何してやがんだよてめぇ!!」
「ボーっとしてて良いのかしら?このままだと貴方は「新兵器」を盗んだ悪人よ?」
それを聞いて、手元のデザートイーグルを見る。
そうだ。たとえ今これを捨てて逃げたとして、この女は俺が逃げた方向を部下に教え、追わせることだろう。それならこのままこれを持ち逃げしてしまった方が得だ。
思えば昔からあの女は、俺が苦しむことにばかりやたら喜んでやっていた。俺が課題が終わってないから手伝ってくれと言えば、待ち合わせ当日にドタキャンしたり。
俺がゆっくり虐待が趣味だと知れば、自分も虐待派の癖に突然ゆっくりを保護し始めたり…という風に。

「ちくしょぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!覚えてろよあのクソアマァァァァァァァァァァァァァァ!!」






「と、いうわけだ!!」
「「「いや、まったく分かりませんが?」」」
俺のパーフェクトな説明を「おお、不明不明」と受け流すきめぇ丸改めけるべろ丸。
「まぁとりあえず、この拳銃は対ゆゆこに有効な装備な訳だよ」
「「「おお、理解理解」」」
とりあえず、詳しい説明は帰ってからにすることにする。もうなんか今日は走り回ってばかりでとにかく疲れていた。
「とりあえず、せっかくの有効兵器も吸い込まれちまったら意味がない。援護頼むぞ、ゆうか!ゆかりん!けるべろ丸!」
「…わかったよ」
「ゆっかり任せなさい」
「「「おお、了解了解」」」
「それじゃ、任務開始!!」
俺の声を合図に、三匹がそれぞれ別々の方向に駆け出す。

「こぉぉぉぉぉぉぉぉぉぼぉぉぉぉぉぉねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?」

ぐるぐると自分の周りを回る三匹の動きについていけていないゆゆこ。その巨体故に俊敏な動きは苦手なのだ。
三匹がゆゆこの気を引き付けてくれている間に、俺は拳銃を構え、しっかりと狙いをつける。
大型種の厚い皮を貫きその中身に傷を与えられる程の高威力を誇るデザートイーグルだが、その分反動も非常に大きく、中枢餡を狙ったつもりでも反動で弾道が逸れてしまうことが多々あるのだ。
「動くなよ動くなよ動くなよ…っしゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
デザートイーグルの凄まじい反動と共に、銃口から唐辛子の粉末が圧縮され詰め込まれた弾丸が飛び出す。
それはまっすぐにゆゆこに吸い込まれて…

「ごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぼぉぉぉぉぉぉぉぉぉね゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

行かなかった。弾が当たる本当に一瞬、ゆゆこの身体が僅かにずれてしまったのだ。
あの苦しみようを見ているとどうやら中枢餡に掠りはしたようだが、致命的といえるダメージではない。

「ごごごごご…ぼぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

ゆゆこの口が大きく開く。
「まずい…全員、何かにしがみ付け!!」
言って。俺も近くの木にしっかりとしがみつく。

「こぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

ゆゆこの声が聞こえた直後に起こる強烈な突風。
いや、正確には突風じゃない。ゆゆこが周りの空気を吸い込んでいるのだ。

「ぼぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

突風が更に強くなる。ゆゆこの吸い込みが第二段階に入った証だ。
そして、突風が止む。
「お前ら、無事かっ!?」
「…大丈夫」
「ゆっかり平気よ!!」
「「「皆さん無事なようですね。おお、幸運幸運」」」
三匹の声を聞いて安心している暇は無い。ゆゆこが吸い込みを行ったゆゆこが、吸い込んだものを口に含んだままこちらを向いて、何か狙いを定めるような動きをしているからだ。
「まずい…まずいまずい、まずいまずいまずいまずいまずいまずい全員全力で退避ィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!」
俺がゆうかを抱え、けるべろ丸がゆかりんを抱えてすぐにその場を飛び退く。

「ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

直後、凄まじい轟音と共にさっきまで俺達が居た場所に巨大な穴が開いた。
穴の中心には、何かの塊が埋まっていた。…これが、ゆゆこ最大の必殺技、吸い込み&吐き出しだ。
名前だけ聞けば間抜けに聞こえるかもしれないが、これがなかなか油断ならん攻撃だ。
「おいおいおいおいおいィ?なんか勝てる気がしないんだがァ?」
「「「だから言ったではないですか!おお、愚か愚か」」」
けるべろ丸とそんなやり取りをしつつ、俺達は再びゆゆこに向かって駆け出す。

「ごぼねっ!!ごぼねぇぇっ!!」

怒り心頭、といったところか。ゆゆこは顔を真っ赤にしながらゆうか達を捕らえようと必死になっている。
「隙だらけだぜ!!喰らえぇ!!」
再び鳴り響く銃声。そして…

「ごっ!ごぼねぇぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇ!?」

再び、弾は中枢餡を掠めるだけに終わった。ゆうか達の冷たい視線が突き刺さるのを感じる。
「お兄さん…」
「もしかしなくても、貴方…」
「「「ノーコン、ですか。おお、哀れ哀れ」」」
「じがだないでじょぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?げんじゅうなんでうっだごどないんだぼんんんんんんんん!!」
三匹の氷点下を超える冷たい言葉に涙しながら、俺はゆゆこに狙いを定める。
「うあああああああああああああ!!お前もとっとと逝けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
最早狙いもへったくれも無くただひたすらに乱射を繰り返す。

「ごっ!ごぼっ!!ごぼねっ!!ごぉぉぉぉぉぉぼぉぉぉぉぉぉぉぉね゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

弾が当たる度に皮と餡子が弾け飛び、みるみるうちに穴だらけになっていくゆゆこ。しかし、それでも俺に向かって迫ってくる姿に、俺は言いようの無い嫌悪感を感じた。ゾンビっぽくてキモい。

「ごぼ…ねぇ…………」

身体の半分が抉られ、ようやく中枢餡が露出した所で、弾切れになってしまった。
「予備のマガジンの分まで撃ち尽くしちゃったな…」
「…どうするの?」
問いかけるゆうかの言葉に考え込む。このまま放置しておいても、すぐにゆっくりんピースの連中がやってきてトドメを刺すだろう。
しかし、あの女に手柄をくれてやることは不愉快極まりない。
「お兄さん、お兄さん」
俺がどうするか悩んでいると、ゆかりんが俺のズボンの裾を引っ張ってきた。
「ん、どうした?」
「これ、使わない?」
ゆかりんがスキマで俺の手の中にいつもの唐辛子手榴弾を落とす。
「なるほど。初心に帰れということですな?」
「なんか違う気がするわね…」
俺がゆかりんの頭を撫でてやっていると、それまでしゃがんで休んでいたけるべろ丸が突然立ち上がった。
「けるべろ丸?どうした?」
俺が聞いてもけるべろ丸は答えず、代わりに俺の肩に飛び乗ったゆうかが俺の問いに答えた。
「ミサイルがこっちに向かってきてる。急いで逃げないと、ヤバイよお兄さん」
「おいィ?あまりの急展開に俺のストレスがマッハなんだが?あのクソアマはこれが狙いだったのか?汚いなさすがクソアマ汚い」
俺は手榴弾のピンを抜くと涙目で命乞いをするゆゆこの中枢餡にそれを捻じ込み、ゆかりんも肩に乗せて本日最後の全速力で俺は駆け出した。
「おい!乗せてくれよけるべろ丸!」
「「「おお、断固拒否断固拒否」」」
「どぼじでぞんなごどいうのぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
「「「この姿、もうすぐ解けちゃうからですよ」」」
「それなら仕方ないな」
とかなんとか言ってる間に俺達の頭上をミサイルが飛び去る。直後、
「ごぼぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
ゆゆこの断末魔が聞こえてきた。どうやらギリギリで俺の手榴弾の方が奴らのミサイルが着弾するより早く爆発したらしい。
「へっ、ざまーみろあのクソアマ!!」
俺は奴らがいるであろう方向へ向かって歓喜の叫び声を上げると、尾根江が待っている車に向かってラストスパートをかけた。

















おまけ

「ん?なんですか〜あの車〜?」
尾根江がのんびりとした声で言う。後ろを見てみると見覚えのあるトラックが俺達の後ろを走っていた。
「ってあれゆっくりんピースの連中じゃねぇか!!尾根江、全速力!!アクセルべた踏みしろ!!」
「え!?え!?」
「早く!!うわぁなんかライフルこっち向けてやがる!もっと速度だせよ尾根江ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」



その日、鬼意さんの車(二代目)はその車を見た鬼意さんがあまりのショックに全裸で加工所内を駆け回ってしまうほど見るも無残な姿となって持ち主の下へ返された。
















あとがく

俺とゆうかとゆかりんとシリーズ第三弾。
もはや虐待と銘打って良いのかも悩ましい作品になりつつある。
いや、次回はちょっと虐待の方を前に持ってきたいと思ってるような…ゆうかの過去話をしたいような…。













これまで書いたもの



●〜プロローグ〜
●ゆっくりハッキング
●俺のちぇんに手を出すとは良い度胸だ改
●耳が聞こえない僕とゆっくり
●俺の家にはこんなれいむが居やがりました
●俺とゆうかとゆかりんと
●俺とゆうかとゆかりんと ぼりゅーむに

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最終更新:2022年05月22日 10:45