まむまむとかでてくる
出てくる人間の頭が悪い、キモイ
つまり作者の頭が悪い、キモイ
無駄に小ネタ
ゲスいゆっくりなんか居ないよ






「おっはー、糞饅頭!今日も楽しい虐待の始まりだよーッ!」
ばんッと音を立てて勢い良く扉が開かれる。
小窓から差し込む光だけが頼りだった部屋は、二方向から照らされることで、室内の様子がはっきりとする。
広さは三畳ほど。生活の空間としては少々狭く感じる。
その為か、部屋は物置として使用しているらしく、いくつかの箱が積んであり、
それぞれにラベルが張ってあって一目で目的のものが捜せるように工夫がしてある。
そんな中、整理され積まれている箱とは異質の箱が二つ、床の上にぽつんと転がっていた。
「ゆうぅ…」
「またきちゃったね…」
箱の中身は成体サイズのゆっくりれいむとゆっくりまりさ。
この部屋の管理者である男が篭絡しているゆっくりである。
目的は言うまでもないだろう。
「元気がねーなーっ!?湿気たツラしてんじゃねえよっ!」
れいむが閉じ込められている入れ物を、男は爪先で軽く小突く。
「ゆぎゅう!?」
突然の衝撃に、悲鳴を上げるゆっくりれいむ。
怪我は無くても相当肝を冷やしただろう。

「きょーは、いじけているれいむちゃんに、カンフル剤を投入しちゃいまショーっ!」
男は先ほど箱を蹴り飛ばした時の様な険しさとは打って変わって、嬉々とした表情をしながられいむの入った箱を持ち上げる。
「ゆびゃああ!やめでぇええ!!」
れいむは箱の中で必死に身をよじって、何とか逃れようとするが無駄である。
箱の側壁はアクリル製で、底面とはしっかりと癒着しているので人間でも壊すのは容易ではない。
「やめてあげてよね!れいむはもう、げんかいなんだよ!?」
箱の側面に体を押し付け、少しでも男に訴えが聞こえるように大声を出すまりさ。
「げんかい~ッ!?だから俺が元気にしてあげるって言ってるんですよ~ッ!?」
振り返った男は、じとっとした目つきでまりさをにらみつける。
その目は虐待の最中に、男の期待通りのリアクションが取れなかった時、不興を買ったときに見られる目だった。
その目を見せた後の虐待は決まってハードになっていった。
餡子脳にはその事がしっかりと刻み込まれている。
まりさは続く言葉が出せず、黙って部屋から出て行くのを見送るしかなかった。

まりさが黙りこくるのを確認すると、男の目は爛々とした目に戻っていた。
そしてれいむは箱に詰められたまま人間に抱えられ部屋から出て行く。
男が部屋から出ると、部屋は明るさを失い、まりさを孤独にする。
会話も、運動も出来なければゆっくりする事もできない。
まりさはただただパートナーの安全を祈ることしか出来なかった。

「ゆぎいいいいっ!いやぢゃあ!おうちかえるうぅうう!!ここからだちてよぉ!」
箱に閉じ込められたままのれいむは、虐待部屋へと続く廊下で右に左にとよじっていた体を上下に激しく動かす。
箱の深さとれいむの身長に、あまり差が無いので上下運動にしか見えないが、実際には渾身の力をこめて跳躍している。
れいむが蓋に頭をぶつける度に、「でぃん、でぃん」と鈍い音がしている。
その音は、透明な箱に掛けてある南京錠が揺れる際に発されていたものだった。
それはれいむの必死さをあざ笑うかのような、間の抜けた響きであった。

れいむの無駄なあがきは、虐待部屋に運ばれ、男が錠を外すまで続けられる。
それはれいむが虐待の対象に選ばれると毎度毎度行われる恒例行事のようなものになっていた。
同じことを繰り返しているのに、何時になっても変わらない。
絶対に逃げることのできない拘束であると、いい加減餡子脳でもそれくらい分かってもいいものだが、れいむは泣き叫び暴れる事を止められない。
体内の餡子が一粒残らず絶望に染まるまで、れいむは虐待から逃れようとし、やめてもらおうと懇願するだろう。


男は部屋の引き戸を箱を抱えたままの手で引き、室内に入ると同じように戸を閉めた。


この虐待部屋は六畳ほどの部屋に白いテーブルが一つ、麻雀卓を二つ並べたほどの大きさだ。
テーブルの下には膝丈までの深さがある箱があり、その中にありとあらゆる道具が詰められている。
そして部屋の隅にはシンクが備わっており、ガステーブルも設置してある。
人が見ればこの部屋は台所だろうと分かるのだが、ゆっくりにそんな事は分からない。
餡を散らし、皮を裂かれ、その身を強かに打ち付けられる拷問部屋なのである。


男は箱をテーブルの上に置き、暴れる饅頭が封印された箱の錠前を解く。
錠が外された事で箱は拘束力を失い、跳躍を続けていたれいむの体は蓋を押しのけ高く舞う。
勢いそのままに、箱から飛び出したれいむはテーブルに降り立ち、出口を求めてそこから飛び降りようとする。
「ゆっくりしないでにげるよ!」
逃げる事しか頭に無いれいむは男の所作にまで気が回らなかった。
その隙を見計らったかのように、男の右手がゆらりと動く。
飛び降りたれいむは、徐々に迫ってくる床と自身との距離を目測で測って、着地の体勢を調整する。
その宙に浮いた状態のれいむに向かって、男の右手がれいむの後頭部に触れると、ぐいっと押し込み落下の勢いを増加させる。
突然の加速で目測を誤り、顔面から勢い良く打ち付けられる。
「ゆびゅぶっ!」
衝撃でれいむの口から漏れた悲鳴は、ゴム風船の口から勢い良く空気が漏れるのに似た音がした。
「ざんね~ん、今日も映画「大脱走」はクランクアップならずでした!」
男はおどけた調子で喋りながら腰をかがめ、れいむの頭頂部をわしづかみにして顔の近くまで持ち上げる。
フローリングとの熱い口付けを交わし、れいむは失神していた。
男は少し眉間に皺を寄せ、開いた左手でれいむの両頬を平手で交互に打ちつけた。
「グッモーニン、ハリウッドスター。撮影の時間が迫ってますわよ?」
男の折檻で、れいむは束の間の安息から引きずり出される。
「ゆ…ゆがぁ…」
不意を突かれた強烈な一撃は、餡子の回転を鈍らせていた。
「今日は撮影のスケジュールが一杯詰まってるんですよ。最初のスタントは二メートルからのフリーフォールッ!」
わしづかみにしていた右手を頭の上まで掲げ、ぱっと手を離す。
支えを失ったれいむの体は床へ向かって毎秒9.8m/secで加速していく。
「ゆっくびぃっ!?」
覚醒したばかりのれいむは、我を取り戻す前に再び眠る。
「死体役者は余ってんの!アクションスターが寝そべってたら駄目でしょが!」
気絶したままのれいむの体に足をもぐりこませ、足の甲に乗せて軽く持ち上げる。
心地よい浮遊感は夢の中に居ても感じ取る事が出来たらしく、
「ゆゆぅ~、おそらおとんでるみたい~」
と、間抜けた寝言を口にしていた。
直後、男はサッカーボールをリフティングする要領で頭の高さまで蹴り上げる。
れいむを蹴り上げた後、腰を軽く落とし、左肩を前にして半身になる。
拳は強く握らず、グーの形の一歩手前のような状態で腰の高さで固定する。
じっと口を閉じ細く開いた目で獲物を捕らえると、腹の底から声を吐いた。
「ちぇすとおおおおっ!」
掛声と共に一段と腰を落とし、左肩を後ろにねじると共に握り締めた右手が突き出される。
「でゅっが!?」
れいむの体は落下をやめ、一瞬宙で固定される。
その刹那、水平方向に推進力を得た体は部屋の壁まで一直線に飛んでいき、びたんと音を立て、れいむの体を半球状にした。
れいむの体は理想的なおっぱいの形のまま、ずるずると壁を伝い床まで降りてきた。
男は冷蔵庫の中から紙パックを手に取り、飲みかけのそれをれいむに向かってどぼどぼと垂らした。
液体を浴びるとれいむはぶるぶると震えだし、半球状だった体は下膨れの饅頭に戻っていった。
「ゆわああぁぁあああ…ゆっぐりできないよぉ…いたいよぉ…やめてよね…」
元に戻ると、今までの暴行の記憶と痛みが一気にぶり返し、れいむの双眸から止め処ない涙を溢れさせていた。
「やっぱ不思議饅頭の二つ名は伊達じゃないねぇ」
男は紙パックの中身に口を付けながられいむを見下ろしていた。

野生に生きる生命としては致命的な身体能力の低さを誇るゆっくりだが、そんなゆっくりにも誇れる能力が一つある。
―再生能力―
どんなに痛めつけられても死の一線さえ越えなければその体は徐々に回復していく。
それがある事で自然の中でも生きていくことができたのだが、こと人間の悪意の前ではそれがゆっくりを不幸へと導く。



今はまりさだけが閉じ込められている薄暗い小部屋。
明かりが差し込む窓もあるにはあるが、荷物が一部を隔てているので差し込む光が削がれている。
それでも昼夜の判別をすることは十分に出来る。
虐待のある日は光が一番強く輝く頃に、男はどちらかを連れ出す。
差し込む光が薄くなり、闇に覆われる前に返されるのが通例だった。
すでに部屋の中は暗くなっていて、入り口の戸の隙間から漏れた一条の光だけが目に映る。
今日はいつもより帰りが遅い。
まりさが箱の中でそわそわしだしたちょうどそのとき、人間がやってきた。
やっとれいむへの虐待が終わったのだ。
まりさは、れいむの無事を早く確認したくて、何て言おうか頭を廻らしている。
毎回虐待が終わるたびに、まりさとれいむは互いに声を掛けていた。
けがはなかった?いたかった?
他愛の無い言葉だが、言葉のやり取りはこのゆっくりにとっては大事なコミュニケーションだ。
箱に閉じ込められ、ぺろぺろすりすりが出来ない状態では、言葉のやり取りだけが相手の存在を感じられる手段だからだろう。
お互いにそれに飢えているから、部屋に入ると同時に言葉のやり取りが始まるのだ。
虐待前の事も有って色々考えていたのだろうが、まりさがまごまごしている内に逆に声をかけられた。
「ゆ゛!?まりちゃ!ゆっくりじていた!?」
これは人間の声。れいむの声色を真似している。
一方れいむは箱の中でぐったりしていて、声が出せないでいた。
男は虐待が終わった後のゆっくり達のやり取りを知っているから、このような行動に出たのだろう。
「ゆぎゅう!」
男の行為はまりさにとっては挑発そのものとして捉えらえられた。
まりさはかなり苛立ったが、その苛立ちが何の意味も成さないのも分かっている。
大事なのはれいむの無事を確認することだけ。
頭を振って男の挑発を頭の中から追い出し、すぐに冷静さを取り戻すまりさ。
「おかえり…」
必死になって冷静さを取り戻したまりさの口から出た言葉は、淡白なものだった。
まりさが望んでいるのはれいむとのお喋り、男とは出来るなら口を利きたくないのも当然だ
「…つまんねーなー」
まりさが挑発に乗るのを楽しみにしていた人間は、興が削がれたことで逆に苛立つ。
「喋れねー黒団子に代わって俺が喋ってやったのに、なんだその態度はよっ!?」
両掌で挟むように抱えられた箱を、高く持ち上げてから床へ叩き付ける。
「ぶっ!」
硬いアクリルの壁面は衝撃を緩和することなく、れいむの顔面に重い一撃を伝えた。
「ゆわあぁぁあ!れいぶぅうう!?」
れいむとまりさは今まで散々酷い目に遭わされてきたが、この箱がある部屋では、脅かされる事はあっても直接痛めつけられたことは無かった。
その為に、突然男が今までに無いような乱雑さで、れいむを部屋に放り込んだ事でまりさは動揺している。
「…余計な事されたくなかったらよ、もーっちょっと気ぃつかって生きろよ餡子玉!な!」
去り際に箱を蹴り、二つの箱の側面が合わさるようにしてから男は出て行った。
「ごべんねぇ…ばりさのぜいでぇ…」
「…」
先ほどの一撃で気を失っていたれいむだが、まりさはそれに気づかずただただ自分の非を詫びた。


暫くすると、れいむは意識を取り戻し、うつ伏せだった状態から姿勢を直し、乱れたリボンをもそもそと整えていた。
「ねえれいむ・・・ちょっとしゃべれる?」
れいむが動けるようになった事に気づいたまりさは、れいむに向かって喋りだした。
れいむが部屋に帰るなり気絶させられたので、お喋りがしたくて仕方が無いのだろう。

れいむとまりさが閉じ込められている透明な箱。
この箱の側面には人間の小指ほどの穴がいくつか開いている。
ゆっくり同士で会話が出来るようにと空けられたものだ。
箱は穴同士を合わせるようにぴたりと付けられて並べている。
パートナーの姿は見える、声も聞こえる。
しかしぬくもりが感じられない。
これも男の仕組んだ虐待の一部なのだろう。

「う…うん…しゃべれるよ」
「ありがとう…きょうはね、はるになったときのことをおもいだしたんだ」
「そう…」
「いっぱいおはなさんがはえてて、とってもきれいなかわのそばのおかで…みんなといっしょにゆっくりしたときのことおぼえてる?」
「わからないよ…」
「…ぱちゅりーやありすといっしょに、おかのうえでひなたぼっこしたことあったよね」
「…うん」
「ありすがねがえりうって、どこかいっちゃったときはみんなであわててさがしたんだよね」
「そんなこともあったね…」
「ぱちゅりーとありす…ちぇんもみょんもゆっくりしているかな…」
「うん、きっとゆ…ゆっくりじて…して、いる…ゆうう…」
「またいっしょにゆっくりしたいね…」
「ゆぅん…うっ…うわぁあぁぁ…」
突如発された、れいむのあまりにも弱弱しい泣き声。
虐待された時に発される布を切り裂くような叫びではない、土くれが崩れていくかのような声だった。

一人ぼっちで待っていたまりさに出来ることは、楽しかった昔の出来事思い出すことだった。
ただの現実逃避なのだが、つらい現実から目を背けることもここでは必要なことだった。
まりさとれいむの記憶を合わせる事で、より鮮明に楽しかった思い出を頭の中に再現しようとしたのだが…
先ほどまで意識を失うほどの虐待を受けていたれいむには、過去の楽しかった思い出に浸る余裕は無く、苦痛にしかならなかった。

「ごめんね…れいむ…」
「…ううっ…ぐっ……ううん…まりさがわるいんじゃないよ…」
「…もうねようか」
「うん…」
「じゃあね、おやすみ…」
こうして二匹のゆっくりの一日が終わった。
何時から続いたか分からない、何時まで続くか分からない一日が。



「きょ・おっ・も~・たのっ・しっ・い~・ぎゃ~くた~い~だぁ~~っ・・・よっ!」
蟹股気味に少し開いた足で小躍りするようなステップを取り、
自作の歌を歌いながられいむとまりさが監禁されている部屋に入ってきた。
「今日は二人にサプライズがあります!」
「ゆ…?」
「?…」
ゆっくりの餡子脳内にサプライズという語彙はインストールされていなかったので、
男の言葉の意味を解せ無かった二匹は、どうリアクションをとっていいのか分からないでいた。
お互いに目配せをしながら、男の言葉の意味をどうにかして理解しようとしている。
男の言った事を理解して行動をしないと、その後の虐待の激しさに影響するからだ。
「…これだから小豆ペーストは…んっとなぁ…今日はきみたちをゆっくりさせてあげちゃうよ!」
男は反応のないゆっくりに痺れを切らし、頭をかきながら言葉を訂正する。
「ゆ!?おうちにかえしてくれるの!?」
れいむはゆっくりさせてもらえると聞いて、真っ先に思いついたのはおうちに帰ることだった。
期待の余り、れいむは透明な箱に全身を押し付け爛々とした目で男を見つめていた。
一方、人間不信に陥っていたまりさは素直に受け入れられず、何もいえなかった。

期待に目を輝かせるれいむに向けて、男は人差し指を立てた手を左右に振り口をちっちっちっ、と鳴らす。
「残念はづれ~っ♪おうちになんか帰せません!」
おうちには帰れない。
そう聞いてれいむは気落ちしたが、続く言葉でれいむの双眸は輝きを取り戻す。
「正解は~…君達にお母さんになってもらいマース!」
母性の強いれいむ種には、母になるという事にゆっくり一倍強い執着のようなものがある。
お母さんになると聞いてはその喜びを隠せない。
「!?れいむ、おかーさんになれるの?」
「そうだよ~♪赤ちゃんを作って、たっぷりゆっくりしていってね!」
この男に連れ去られてから忘れてはいたが、まりさの子を作るのがこのれいむの夢だった。
降って沸いた夢の実現を、何の疑いも無く信じている。
今までされたことを省みれば、ただでは済まされない事ぐらい分かりそうなものなのだが。
これがゆっくりの性なのか、目の前に提示されたしあわせーの前では、過去の不幸など餡子の隅に追いやられてしまうのだろう。
幸せの沼に嵌っているれいむと違って、まりさは男の言葉の「君達」の部分が引っかかり、言い知れぬ不安を感じていた。


箱に入れられたまま、二匹は虐待部屋へつれられていった。
れいむは母になる喜びで顔を綻ばせていたが、まりさはじっと目を伏せこれから待ち受ける地獄を想像し、時折体を震わせていた。
苦楽を共にして来た筈なのに、気持ちに温度差が生じている二匹のゆっくり。

虐待部屋はいつもと変わらずこざっぱりとしている。
ただ、テーブルの上にはその半分ほどの底面積を持つ透明な箱があり、
さらにその中には紫色の布が被せられた箱が鎮座していた。
それ以外はいつもの虐待部屋と変わらない。

子供を作る喜びに満ちていたれいむだが、虐待部屋に入るとその顔から喜色が消える。
「おにーさん!ここはゆっくりできないところだよ!?」
騙されたとでも思ったのだろう、涙目になるれいむは震える声で男に訴える。
「おいおい、今日からここは「ゆっくりぷれいす」になるんだぞ?
男の口から「ゆっくり」という単語を聞いて、少しほっとした表情になるれいむ。
箱をテーブルの上に置くと、錠前をはずして二匹を箱から出す。
れいむは昨日までの醜態が嘘の様に、男に触られても大人しくしていたが、まりさは触られたときに一瞬体を強張らせる。
二匹は改めてテーブルの上の大きな箱に入れられた。
この箱は以前の箱とは違い、開放感があるのでそれほど嫌がる様子は無い。

男は二匹を移し終わると、部屋にある戸棚から二つ缶詰を取り出す。
「子作りするには体力が必要だろ?さあさあこれでも食べておくんなまし!」
男は調子のいい口調で缶を開け、その中身を箱の中に入れた。
それはゆっくり用にに作られた餌であった。
普段は低価格のゆっくりフード(乾燥タイプ)だったが、今回は缶詰のゆっくりフード(生タイプ)。
見るからにおいしそうな匂いを発しているが、まりさはそれに口をつける事が出来なかった。
躊躇するまりさはれいむのほうへ目線をやったが…
「むーちゃむーちゃしあわせー♪ごちそーさまー♪」
あっというまに完食していた。
「おいおい、せっかくのごはんを食べないなんて…食欲ないのか?」
眉間に少し皺を寄せた男が、まりさを見つめる。
まりさは男を一瞬見上げると、いただきますといってから、餌にかぶりついた。

れいむは興奮していた。
一刻も早く、母になるお勤めを果たしたかったからだ。
目の前のごはんも飢えていたからではなく、早く片付けて次のステップへ行きたかったからである。
「おかーさんはれいむがなるよ!だから…まりさ…」
顔を赤らめ、まりさに流し目を送るれいむ。
それを受け止めたまりさは、あまりの気の毒さに目を合わすことも出来なかった。
きゃっきゃきゃっきゃとはしゃぐれいむに、男は透明な箱の側面を、裏拳でコンと小突く。
「おいおい、ちゃんと人の話し聞けよコラ、お母さんになるのは『君達』って言ったろ」
(やっぱりね)
まりさは心の中で小さくつぶやいた。
もやもやとした男への不信がここに来てはっきりと形になったのだ。
「まりさはおとーさんになるんだよ?おかーさんになるのはれいむだよ?」
一方、ここまできても楽天思考の軌道修正が出来ないれいむ。
喜びの絶頂から絶望のふちへ叩き落す、虐待のセオリーに見事に嵌っているのだ。

幸せ回路が全開のれいむを見て、にやりとした男は、部屋においてあった布の被せられた箱に手をかける。
「おとーさんはこいつだっ!醜悪ドブ臭強姦饅頭の都会派ありすちゃんDEATH!!」
言うと同時に布を剥いで、発情状態になっているアリスを披露した。
「れいむううううう!まりさああああ!すっきりしましょおおおおお!」
目の前に現れたありすはお世辞にも綺麗とは言えない、男の言った醜悪そのものであった。
カチューシャはかすれ、髪の毛は茶色にくすみ、キューティクルを失っている。
皮膚はがさがさで所々黄ばんでいて、目はらんらんと開かれ血走っている。
大きく開いた口から覗く歯も、抜け落ちていたり砕けていたりと見るも無残な有り様だ。

突如現れた化け物との婚約発表で、れいむの思考が一瞬停止する。
いとしのまりさではないという事だけでも御免被るというのに、目の前に現れた化け物は一体なんだ?
現状に疑問をぶつけるしか出来ない哀れなれいむは、ありすの叫びで現実に引き戻される
「はやぐぅ!もうがまんできないわあああああ!」
「いやああああああ!れいむはばけものとすっきりしたくないいい!」
れいむは恐怖のあまり、箱の中に居る事も忘れて右に左に跳ね回って逃げようとするのだが、
どうしてもアリスから目を離すことが出来ずに動き回るので、箱の壁面に何度も体を打ちつけ、びたんびたんと音を立てる。
レイパーありすを見て、恐慌を来して右往左往するゆっくり。
れいむは男の期待通りのリアクションをしてくれた。
「よぉ~し決めた!一発目の極濃ヘドロ汁はれいむちゃんにプレゼントだ!」
それに気を良くしたかどうか分からないが、人間はれいむにありすをけしかける為、テーブルの上の箱を蹴り飛ばす。
三匹はひっくり返った箱から転げ落ち、ありすとまりさはうまく転げたが、れいむは地面とキッスする。
れいむが衝撃でふらふらしている内にありすは体勢を立て直し、獲物の元へ駆け寄る。
「れっれっれっれいむううう!あいしてるわあああ!」
「ゆわああああああ!?」
レイパーありすの剣幕に身が竦んでしまい、動くことが出来ないれいむ。
何の抵抗の出来ぬまま、れいむはありすの餌食となった。
一方、助けようにも積極的に動くことの出来ないまりさ。
ただレイパーが怖いからではない。
男がターゲットをれいむと定めた以上、それを邪魔するのは男の不興を買い、より酷い目に合わされるという恐れがあったから。
そして矛先が自身に向けられるから、という恐れは既に無い。
順番が違うだけで、自分も犯されると分かっているのだ。

ぬっちゃぬっちゃぬっちゃ
ありすはれいむに圧し掛かると、激しく体を擦り付け、ありすの体から分泌された粘液をれいむの体中に塗りたくっていった。
「はあはあはあ…おはだのつやはいまいち、いまにってところだけど、がまんしてあげるわあ!」
「いやだあああ!!!」
はじめはがさがさの肌を擦り付けられて、れいむの肌は擦り切れそうになっていた。
すっきりされる不快感より、鑢でこすられるような痛みが勝っていた。
しかし徐々にぬらぬらとした分泌液が、潤滑液としての効果を発揮しだす。
それでも不快感が収まることは無い、むしろ痛みが減少した分、いやらしく絡みつくありすの攻撃を緩和することなく受止める破目になってしまった。

ゆっくりのレイプをかぶりつきで見ている男はれいむに対して容赦ない口撃を加える。
「あーあー、汚饅頭同士で汚く絡みあっちゃってぇ…そんなにこのドブ饅頭がお気に入りかい?」
「やあああ!ありすいやあああ!」
「れいむぅ!つんでれなんてにあわないからすなおになってぇ!」
ぬっぷっちゃ、ぬっぷっちゃ
「子作りしながら泣くなんて、恋しちゃってるの?レイプから始る恋なんて漫画の中だけかと思っていたよ!」
悔しさと悲しさで人間の言葉はれいむの耳には入ってこない。
聞こえるのはありすの『愛のささやき』だけだった。
「んっほおおおおお!ありすのあかちゃんだいじにしてねぇぇぇ!」
そうこうしている内に、ありすは絶頂を迎える寸前である。
「いやだぁあ!やめちぇえ!まりさのじゃなきゃいやだああ!」
いくら泣き喚こうが、ありすもすっきりーを止めるつもりは無く、人間も止めさせる訳がない。
「まっ、まっ、までぃざあああああああああ!うびっ!」
「すっきりーするときにほかのゆっくりをよぶなんて、なってないわあ!」
パートナーに助けを求める叫びも、レイパーありすに圧し掛かられた事で寸断される。
まりさもその叫びは聞き届けてはいたが、助けたいと言う気持ちを必死で抑えている。
男はれいむの叫びを聞いてもぴくりともしないまりさに一瞥をくれると、軽く舌打ちをする。
ありすの激しいグラインドが一段と深く突いた所で停止し、小刻みに震えだした。
射餡の合図である。
「すっ、すぅっ、すっきりいぃーっ!!」
「ずっぎぃりぃ…」
精子餡はれいむに注がれた。
これで妊娠するのは確実だ。
一方傍観者のまりさは泣いていた。
部屋に連れられた時点で虐待される事は覚悟していた。
しかしパートナーがレイプされる様を見せ付けられる衝撃は想像以上だった。
今までとは違った苦痛が胸の中を去来する。
じわじわと餡子を絞られるような痛みが体の内側を襲い、それに耐えられなくなって涙を流していた。
「ヒャッハー!ドブ汁注がれて逝っちゃいましたよこの饅頭!ねえねえどんなきもち?どんなきもてぃ?」
一方レイプシーンを鑑賞した男のボルテージも最高潮に達していた。
両手をパンパンと叩き、囃し立てるようにれいむを侮辱する。
レイパーありすに無残にも犯されたれいむは失意のどん底に落ち、動く気力さえなかった。
両の目玉からは止め処なく砂糖水が漏れ出し、焦点の定まらない目は床をぼんやりと見つめていた。
もうこのまま消えてしまいたい。
虐待生活の中でもかすかに希望を繋いでいたれいむだったが、ついに絶望に染まってしまうかと思われたそのとき。

「ごめんね…」
という呟きがれいむに聞こえた。
朦朧としてはいたが、ありすの声だというのがはっきりと分かる。
「わたしもこんなことしたくないの…わかってちょうだい…」
男には聞こえないように、余韻に浸っていると思われるようにじっと身を寄せてありすはささやいた。

このありすも男に虐待をされるためにこの部屋に連れ込まれた被害者であった。
ありすは虐待されると同時にあることを仕込まれる。
「お前は貞淑な都会派ありすじゃねえ、強姦一筋の豚面饅頭だ!すっきりーのことしか考えられないレイパーありすになれ!」
「そんなのとかいはのすることじゃないわ!ありすはいなかものじゃないの!」
いくら口で出来ないといっても、出来ますというまで男はありすに暴行を加える。
男の暴行を受けるうちにありすの心は折れ、その振る舞いをレイパーそのものへと変貌せざるを得なかった。

「わたしは…もうすっきりーしないわ…あんしんしてちょうだい…」
そう呟いてから、すっとその身を起こす。
「んっはあぁ…いっぱいでたわぁ…まりさのぶんまでだしちゃったぁ…」
ありすは男にも聞こえるようにはっきりと声に出した。
もうレイプは出来ませんという意思表明。
せめてあのまりさだけでもレイプの被害者にはしたくないという、
ありすのささやかな抵抗であり、れいむへの僅かばかりの心遣いだった。

ありすの中にしてやったりという気持ちも少し出てきたところ、椅子に座って傍観して居た男がすっと立ち上がるとアリスの方へ大きく踏み込みつつ叫んだ。
「出涸らし饅頭をゴミ箱にシュウゥゥゥゥゥゥッ!超!!エキサイティン!」
男の蹴りはありすを彗星の如き速度で飛翔せしめ、
「でゅ!」
部屋の隅のゴミ箱の側面にぶち当たり、ありすは物言わぬ饅頭になった。
「…ったく、これだから強姦饅頭は扱いに困る。一発で全部出すなっての」
ありすの暴走で計画が狂ってしまったのだろう、男は修正を図るためにしばし黙りこくっていた。

れいむには何が起きたか理解できなかった。
レイプされた身体的疲弊は意識を朦朧とさせていたからだ。
体にのしかかっていた重さがなくなったことしか分からなかった。
少しして、やっとその重さの正体がありすだった事を思い出し、それと同時にありすの言葉を思い出す。
「ごめんね…」
その時れいむはありすに謝らなくてはいけないと思った。
化け物と言った自分の言葉を取り消さなければ、と。
ふと視線がゴミ箱に行くと、アリスの汚れたカチューシャが目に入る。
ありすがこの世に居ない事をれいむが理解するのに時間はかからなかった。

れいむが後悔の念に囚われている時、れいむの頭部からは緑色の茎がにょきにょきと伸びていき、
ぽつぽつと赤ゆっくりになる実を付けていった。
「ゆゆっ!?あかちゃん?」
れいむも自身の体の変化にいち早く気づく。
「…れいむのあかちゃん…」
たとえ望まぬ相手との間に出来た子とはいえ、自身の分身には愛着が沸くようである。
「おっ、さすが特製極濃精子餡だな。あっというまに生ったな」
ちょうど考えがまとまったらしく、男はれいむの元へ行き、茎の状態をチェックする。
「しっかし、きたねえがきんちょだな。このまま育っても1ペンスの価値もねえな」
はき捨てるようにれいむに生った子ゆっくりをこき下ろす。
「そんなことないよ!あかちゃんはかわいいよ!」
我が身を痛めて生んだ子を馬鹿にされて、怒らない母親は居ない。
それにこの子供は憎きレイパーの子供ではない。
れいむやまりさと同じく、邪悪な人間に運命を翻弄された悲劇のゆっくりである。
同じ苦境に立たされたゆっくりの子であるならば、忌み嫌う事など出来なかった。
「俺が可愛くねえって言ってんだろうが!…えらいね~俺に意見出来るようになったなんて、とぉ~っても、えらいね~」
ニコニコ笑顔を作る人間。目は笑っていない。
「そんな偉いれいむちゃんには鉄拳をプレゼントだ!」
男は右拳をぎゅっと握り、気絶しない程度の加減をして打ちつける。
「やっべて!あがっ!?ちゃんがゆっぐり゛ぃ!?…できなぐっ!なっぢゃう゛!」
「おっと、手が滑った」
聞こえるように言ってから、わざと実ゆっくりに拳をかすらせる。
「やべでぐださい!あがちゃんはゆっぐりっせでぐだざい!」
鉄拳制裁で口の中がズタズタになった所為が、うまく発音できていない。
「うっせ☆」
軽い口調だが眉間の皺は深く刻まれている。

こうしてれいむをぼこぼこにしているが、特に意味のある行為ではない。
赤ゆっくりが生れ落ちるまでの暇つぶしである。
「おお見ろよれいむ!赤ちゃんが生まれるぞ!」
普段の食事にも混ぜてあった成長促進剤の助けもあって、一時間と経たずに赤ゆっくりは意識を持ち始めた。

れいむの茎からぽとぽと落ちる赤ゆっくり達。
玉の様な目をキラキラ輝かせ、れいむをじっと見つめてから一斉にお決まりの挨拶をした。
「ゆっくちしていっちぇね!」
これからのゆっくりライフに希望を抱いた、小さくも力強い「ゆっくりしていってね!」だった。
一方れいむは直前まで男に暴行され、半ば意識が飛んではいたがその「ゆっくりしていってね!」だけははっきりと聞こえている。
体はずきずきと痛むが、子供達の「ゆっくりしていってね!」に答えないわけにはいかない。
「ゆ゛…ゆ゛…!ゆっぐ
「おっほっほ、大漁大漁♪」
男はれいむの「ゆっくりしていってね!」を言わせぬうちに、ひょいひょいと赤ゆっくりを収穫していった。
「ゆゃあん!いちゃいよ!うぎょけにゃいよ!」
赤ゆっくりは強めに摘まれた所為で、「おそらおとんでるみたいー」といえずに小箱に収納されていった。
「やべてよね!れいぶのあかぢゃんかえじてね!」
久しぶりにゆっくり出来そうな赤ゆっくりという存在。
それを奪われては黙っていられないのが母性の強いれいむ種の性と言うものだろうか。

男は箱の中に隔離された赤ゆっくり中から一匹だけ別の箱に移し、れいむに命令を下す。
「ありすが一匹だけあれば十分だな。おい、黒饅頭。こいつら全部食え」
わが子を殺せ。
新米母れいむに下した男の命令は非情なものだった。
「れいむのあかちゃんだよ!?あかちゃんたべるなんてできないよ!」
男に逆らうことの意味は重々承知の上だが、従えるわけが無い。
今までのように自分が痛めつけられるのと、我が子が痛めつけられるのとでは訳が違う。
痛みの本質が違えば、今までの虐待の恐怖はれいむを萎縮させるには至らないのだ。

逆らえば即暴力で返すような男だが、今回は少し違っていた。
「んー、どうしてれいむちゃんはおにいさんのいっていることがわからないのかなー?」
男はまるで、幼児をあやす様な言い方をしだした。
「あかちゃんたべるゆっくりは、ゆっくりできていないよ!」
れいむは俄然拒否する。
「ぼくはなんていったかなー?れいむちゃんはおぼえているかな?」
男はニカッと歯を出して満面の笑みを作る。
しかしそれは笑うというより、牙を剥き出しにして威嚇する肉食獣のような笑顔だった。
「ゆっ…そんなことしたらゆっくりじゃなくなっちゃうよ!」
子殺しは自身がゆっくりであることの否定になると主張する。
それでなくてもゆっくり殺しというのは、ゆっくりの間では問答無用で死罪なのだ。
「んっん~。別にれいむちゅわんが食わなくても、良いって言えば、良いんだけどね~…」
れいむの主張を肯定するとも取れる発言。
こんな言葉が男の口から出た事は、一度たりとて無かったのだ。
れいむの餡子脳は『ゆっくり出来る赤ちゃんを見てゆっくりした結果、れいむをゆくりさせてくれたんだ』と結論付けた。
今まで曇らせていた表情が、ぱあっと明るくなって「じゃあ」と言葉が出たところで、それに被せるように男が
「れいむちゃんは、僕ちゃんの命令を聞かないで無事に済むと思うの?」
餡子脳がはじき出した結果は、一秒と持たずに否定された。
「ゆ…ゆゆ…」
男は言葉を詰まらすれいむに、逆らったらどうなるかを教える
「お前が死ねよっ☆」
それはあっけらかんとした死の宣告だった。
れいむの表情は今まで見せたことの無い形で固まる。
それはまるで「話が違う」とでも言っているかのような表情だ。

今までの虐待は酸鼻を極めるものだったが、決して殺意のこもったものでは無かった。
それに男の口から出た「死ね」という言葉。
今まで男が一度も口にした事の無い言葉だった。
突如として叩きつけられた死の恐怖。
あまりにも恐ろしい局面に遭遇したとき、感情を失うのはゆっくりも同じようだ。

感情の無い人形はいたぶっても面白くもなんともない。
男は軽く引っ叩いてれいむの感情を再起させる。
「あっ…あいぁ……いやぁ…しぬのはいやぁ…」
意識を取り戻したれいむ。
逆らうことの出来ない死への恐怖で、全身を激しく震わせている。
「お前が命令を聞かなかったらまりさはどうなると思う?殺すね。ただ殺すだけじゃない。
 お前の生んだちび饅頭がまりさを殺す。あいつらならちょっとつつけば狂ったように殺し始めるな。
 体当たりじゃ死ねないから食い殺させる。
 まりさの体を水でふやかせば、動けなくなるわ食べやすくなるわで丁度良い。
 想像してみろよ。止めて止めてと泣きながら、動く事も出来ない愛しのまりさが、お前の子供の初めての食事になるんだぜ?
 お前には特別に只で殺し合いの観戦をさせてやるよ」
拒否しても、従っても、ゆっくり出来ない二者択一。
「みゃみゃ?ゆっくちちてないの?」
「みゃみゃがゆっくちちないとありちゅもゆっくちできないよ?」
不安を顔に浮かべ、母の元へ擦寄る赤ゆっくり達。
母からの「ゆっくりしていってね!」を聞いていないので、母に何かあったのではと思い、心配しているのだ。
れいむは足元に居る一匹の赤れいむを、にごった目で見つめていた。
「みゃみゃ?」
尚も問いかける赤れいむに対する答えは言葉ではなかった。
「ぴゃあ!?」
一噛みで中枢餡を破壊するかぶりつきだった。

れいむはわが子とまりさを秤に掛け、まりさの方を選んだのだ。
レイプされて出来た子だからという訳でもない。
望まぬすっきりーとはいえ、あのありすの内面は確かに都会派そのものであった。
ゆっくりが添い遂げる相手としては、申し分の無い程の都会派ありす。
しかしそんな都会派との間に生まれた我が子と言えど、望まれて生まれた訳ではない。
一生添い遂げると誓ったまりさとでは、れいむの中での比重が違っているのは仕方の無いこと。

「ゆわぁぁぁぁあ!」
「なにちゅるのお!?」
「やめちぇねぇ!」
れいむは泣き叫び逃げ惑うわが子を無言で食べていった。
かける言葉が見つからないからかだろうか。
双眸から止め処なく涙を流しながら、わが子を屠らんと黙々と。

「ぴゅっ!?」
「いやああああ!ありちゅううううぅ!」
赤ありすが奥歯ですりつぶされると、残るは赤れいむ一匹。
親れいむの視線が注がれるのが分かると、思い出したかのように逃げ惑う赤れいむ。
「ごめんなしゃい!ゆるちてくだしゃい!」
母の暴行を止めて貰いたくて、逃げながら謝罪の言葉を口にする赤れいむ。
謝ってはいるが、何が親の怒りに触れたのかは分かっていない。
そもそも怒りからの行動ではないのだから、分かりようも無いのだが。
ただ生きていたい、ゆっくりしたいという本能が赤れいむを動かしていた。
親れいむもわが子の叫びを聞いてはいるが、いまさら止める訳にもいかないのだ。
止めたところで結局は殺されるゆっくりの数が増えるだけだとわかっていたから。

赤れいむの頭部に歯が食い込んだところで租借の力が弱まる。
この赤れいむは最後の一匹だからか、どうしても戸惑ってしまう。
息も絶え絶えになりながら逃げ回っていた最後の赤れいむは、残る力を振り絞って身をよじり、ギロチンの歯から逃れようと必死になっている。

「全部って言葉の意味、分かっているよな?」
別れを惜しむ間も与えずに、男の忠告が響く。
「いやああああ!いちゃいよ!やめちぇえ!」
それが赤れいむの最後の言葉となった。
ぶちゅりという音がして、餡子がれいむの口内に広がり、餡子の甘みを舌の上に感じさせる。
はずだったが、れいむは我が子の甘みを感じることが出来なかった。
生まれたてでありながら、有り得ないほどの恐怖を味わって、甘みを増大させた赤ゆっくりの餡子。
それよりも猛烈な苦しみと恐怖を、赤ゆっくりのゆん生の何倍もの時間で味わい続けた、ゆっくり由来の甘みを口にしていたからだ。
それはれいむ自身の涙。
あふれ出る極濃砂糖水の涙がれいむの口内に流れ込んでいた為に、味覚は甘みに麻痺してしまった。



後編

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最終更新:2022年04月16日 00:21