「ゆひぃっ!!ゆひっ!!ゆびゅびゅぅぅ!!!」

1匹のゆっくり霊夢が、お盆に入った液体を狂ったように飲んでいる。
あまりにも勢いよく飲んでいるので、俺はつい声をかけてしまった。

「おう、れいむ。そのジュースは美味いだろ?」

ギロリ、とれいむの眼が俺に向く。
その瞳は血走り、今にも噛みついてきそうなオーラを出している。

「ゆっぐりいぃいっ!?!?どぼびべっ!?!?あま゙あ゙まな゙のにッ!!あ゙まあま゙なのに、ゆっぐりでぎないぃいっ!!?」
「そうか」

俺に返事をすると、またれいむはお盆に顔を突っ込んだ。
オレンジジュースで顔がふやけ始めているが、そんなことは気にならないようだ。

俺はオレンジジュースのペットボトルを取り出し、お盆に注ぐことにした。
これで12本目。
いくらお腹が減っているとはいえ、よくもこれだけ飲むものだ。




二ヶ月後。

「ゆ゙・・・ッ!ゆ゙・・・・・・・・・ゆ゙・・・・」

れいむはピクピクしていた。

「も゙っ・・・・ど・・・ゆっぐり・・・・じだが・・・だ・・・」

パンパンに膨れ上がったれいむは、そのまま永遠に動かなくなった。

外傷はなく、餡子も漏れている様子もない。
体はパンパンに膨れ上がり、パッと見ただけでは死んでいるとは思えなかった。

「どーれどれ」

取り出した包丁で、れいむの頭に切れ込みを入れた瞬間。
「ブチュッ」という音とともに、れいむの中身が飛び出した。
そのほとんどは水。
うっすらと茶色に染まっているのは、餡子の色だろうか。

「わあ汚い」

破裂したれいむの中に、固形の餡子はなかった。
俺が拉致してからオレンジジュースしか飲んでいなかったからだ。
その水分だけが残っていたのだろう。

「いい飢餓っぷりだったよ。れいむ」

最近流行りのカロリーゼロ飲料に、オレンジジュースが加わった。

『山で遭難したとき、カロリーゼロ飲料しか持ってなかったら泣くよな』

という話を以前、友達としていたのを思い出し、俺は気がついたときにはれいむを拉致していた。
カロリーゼロのオレンジジュースだけ飲ませたらどうなるのか、そう思ったら、いてもたってもいられなかったのだ。

そしてれいむはカロリーゼロのオレンジジュースを飲み続け、2か月生きた。
あまあまなのに腹が膨れない。
そんな矛盾と葛藤しながら、れいむは延々とオレンジジュースを飲み続けた。
時に吐きもどし、顔をふやけさせながら。

そしてついに今日、れいむは餓死した。
世にも奇妙なデブ餓死だ。
相変わらず変な生き物である。




おわり。


作:ユユー

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最終更新:2022年04月17日 00:12