ゆっくりに野菜は勝手に生えてくるものではないと教える方法──というわけでもないのだが
表題の通りである。
俺はゆっくりに野菜は勝手に生えてくるものではないと教えようとした。
ゆっくりがお百姓さんを舐め腐り、懲りずに畑荒らしを続けるのは、
野菜とは人間が手間隙かけて育てるものということがわかってないからだ。
ある程度まともなゆっくりなら、このことを理解すれば畑荒らしをやめるのではないかと思っている。
面倒なゆっくり用の罠を設置する手間が省けるし、定期的に間引きに出向く必要もなくなる。
それでもやめないゲスがいるなら死んでもらうしかないが。
ゆっくりへの慈悲からというわけではない。面倒をなくすためだ。利害とは無関係に殺したいと思うやつは勝手に殺せばいい。
「だからな……あーしてこーして」
ゆっくりれいむに向かって農業のプロセスをできる限りわかりやすく説明してやるが、農業というのはゆっくりにとってまったく異質なものだ。
「やさいはかってにはえてくるものだよ! くささんとおなじだよ! それをにんげんさんがひとりじめしてるだけだよ!」
いきなり物理学の講義をされても俺のような田舎者には理解できないように、ゆっくりには農業が理解できないのだろう。
そこで作戦を変えることにした。発想を逆転させるのだ。野菜が勝手に生えてこないということを理解させられないのなら……。
「それじゃあ、おまえのちびちゃんを勝手に食っちゃっていいのか?」
「だめだよ!」
「どうして? おまえらゆっくりは勝手に生えてくるんだろ?」
「ちがうよ! ぜんぜんちがうよ! ちびちゃんはなかのいいゆっくりどうしがあいしあうとうまれるんだよ!
あたまにくきがはえるんだよ! そこからちびちゃんがうまれるんだよ!
れいむしってるよ! れいむもそうしてうまれたんだよ!」
「ふーん、頭に茎がねぇ。おじさんはそんなの初耳だなー」
「おじさんばかなの? しぬの? にんっしんするとあたまからはえてくるんだよ!」
「じゃあ、あれはなんだろうな」
といって俺は畑の方を指差す。
「ゆゆ? ゆーーー!!」
れいむは例のものを見てびっくらこいたようだ。
それは茎だった。赤ゆっくりが生まれてくる茎だった。
それが地面から生えていた。
「ほら見ろ。お野菜と同じだ。おまえらもああやって勝手に生えてくるんだ」
「そんな……そんな……でもおかーさんはれいむはおかーさんからうまれてきたっていってたよ!」
「実際に生まれたときのことを覚えているのか?」
「ゆぐっ!」
ゆっくりはかなりの知識を親から受け継げるという性質を持っている。
“初期値”だけ見ればかなりの知能といえる。発展を阻害する要因にもなっているのだが。
とはいえ、幼少の頃の記憶をはっきり持っていないのは人間などと同様のようだった。
「自分が産んだとか言っておいて、そこらへんから引っこ抜いてきたんじゃないのかー」
「でいぶのおがーざんはでいぶのおがーざんだよ! じめんざんじゃないよ!
ぞれに、おむがいのじんごんざんのばりざがあだまからぐぎをばやしでいだよ!」
れいむは涙目で必死に抗弁する。
「そこら辺から抜いてきた茎を自分の頭に挿して、にんっしんなんて言ってるんじゃないのか?
まあ、たとえ本当に生えてきたのだとしても、元は地面から生えてきた茎にすぎない」
俺は茎の方を指差す。動かぬ証拠だ。
茎になっている赤ゆっくりの実はときおり揺れ動いた。本物であることは明白だ。
「もし野菜から野菜が生えてきたとして、おまえたちはそれは食べないのか?」
「たべるよ! おやさいはかってにはえてきたんだもん! さきにみつけたひとのものだよ!」
れいむはゆふふんと勝ち誇ったように言い切る。
「それじゃあ、ゆっくりから生えたゆっくりも、勝手に生えてきたものには変わりないな。
元はあれ、地面から勝手に生えた茎だもんな」
「ゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
「それじゃあ、今日のおやつにれいむを食べちゃおうかなぁ?」
「やめでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! でいぶもうおうぢがえるぅぅぅぅぅぅ!!!」
れいむは逃げ出してしまった。
地面から生えている茎は本物の茎だ。
とはいえ、そこら辺のにんっしん中のゆっくりから拝借してきたものだが。
ゆっくりはいい加減な生物なので、充分な栄養を与えてやれば、あれでもちゃんと生まれてくる。
さて、なんだがただの嫌がらせで終わってしまったような気がする。
今度はこの生まれてくる赤ゆっくりで試してみようか。
大きくなったら他のゆっくりを教化してくれるかもしれないしな。
最終更新:2009年01月19日 20:16