ゆっくりいじめ小ネタ329 しあわせー!なれいむ

「もう、またエサやりを忘れてるじゃない。飼いたいって言い出したのはあなたなんだからきちんとやりなさい」
「あんなにちゃんと面倒を見ます、って必死だったくせに。本当に三日坊主なんだから」

朝から母親に小言を食らった少年は面白くない。
うるさい、僕は三日坊主なんかじゃない、と言い返してやりたかったがそれを口にすることは出来なかった。
下手に言い返せば余計にひどい小言を食らうに決まっているし、自分がれいむの世話に飽きているのは事実だからだ。

「……分かってる。今やろうとしてたんだ」

少年はぶっきらぼうに返事をしてから台所へ行き、大量の野菜クズをまとめた大きな袋を持ち出してきた。
それから、れいむが入れられているカゴに向かうと野菜クズをちぎり、いかにも面倒くさそうにれいむの頭上からそれを全てばらまく。
頭上から落ちてきた野菜クズに気付いたれいむは、ゆっ、と小さく一声だけ鳴くと、そのまま無言で野菜をかじり始める。

「何てエサのやり方をしてるの。一度にそんなにやったらダメじゃない」
「いいじゃんか。どうせみんな食べちゃうんだし」
「一度にたくさんエサをやると食べ過ぎてしまうって店員さんも言ってたでしょ。それにほら、水も替えてやらないと」
「ああもう早く行かないと遅刻するから。あとはお母さんお願い。行ってきます」

いよいよ本格的に小言が始まりそうな気配を感じた少年はそう言うとさっさとカバンを握って家を出た。

「まったく、可愛がってたのは最初だけね」

母親は呆れてそう呟くと、水を替えてやるためにれいむのカゴの中から手早く水入れを取りだして台所に向かう。
一連のやり取りを見ていたれいむはその間にも一言も喋らずに、ひたすら無言で野菜をかじっていた。


れいむは知っていた。
じゅーすが飲みたい、あまあまが食べたい、とねだれば
まったくれいむの餌代も馬鹿にならない、と母親が父親に愚痴をこぼすことを。

れいむは知っていた。
おそとにあそびに行きたい、とねだれば父親も少年も面倒そうな顔をすることを。

れいむは知っていた。
自分がとうに家族の歓心を買う存在ではなくなったことを。

れいむは知っていた。
あんなにも家族から愛されていた時間は、もう二度と帰ってこないことを。


それでも自分は幸せなのだ、自分は野良のゆっくりとは違う。
食事の心配もなく、外敵に怯えながら寒いねぐらで夜を明かすこともないのだから。
必死でそう自分に言い聞かせながら、れいむはひたすら無言で野菜をかじり続けた。

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最終更新:2009年02月13日 01:25
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