まりさのはっぴーばーすでー
れいむはぷっくー!とふくれていた。
「ぷんぷん!れいむはこんなえすえすさんに”しゅつえん”したくないよ!」
れいむの前にあるのは壁。壁に張り出されているのは、求人広告ならぬ求ゆ広告。
- 人間さんと触れ合う、赤ゆにでもできる簡単なお仕事です。
- おいしいおやさい支給。
- ゆっくりぷれいす応相談。
- ゆっくりしていってね!
- SSタイトル『ゲス相応の末路』
こんなえすえす、ゆっくりできっこない。
「どうせおやさいさんをたべにいかされて、にんげんさんにいじめられるんだよ!
れいむにはよくわからないりゆうで”げす”だってきめつけられて”せいさい”されるんだよ!
れいむはこんなおしごとまっぴらだよ!」
次の広告。
<7月生まれのあなたにゆっくりと教える特別求ゆ>
- 7月生まれで、誕生日のまだ来ていないゆっくり限定!
- なんとけーきさんがむーしゃむーしゃできます!
- じゅーすさんもごーくごーくできます
- ゆっくりしていってね!
- SSタイトル『〇〇(あなたの名前)のはっぴーばーすでー』
「ゆゆっ!」
れいむは偶然にも7月生まれだった。
「しかも……れいむのはっぴーばーすでーさんは……まだきてないよ!」
なんということだろう。
「はっぴーばーすでーさんゆっくりしてくれてありがとう!
れいむけーきさんたべたいよ!
……とでもいうとおもったの?ばかなの?しぬの?
こういうのがいちばんあぶないんだよ!きっとれいむがばーすでーけーきさんにされて、
きゃんどるさんをつきたてられるんだよ!あつくていたくてゆっくりできないよ……」
と、後ろからやってきたまりさがれいむをおしのけて壁に向かってジャンプ。
一枚の広告をもぎ取って着地する。
「ゆっゆっゆ!ばーすでーけーきさんはまりさのものだよ!れいむはここでゆっくりしていってね!」
「……」
れいむは冷めた眼で、一目散に跳ねてゆくまりさを見送ったのだった。
次の広告。
<ぬるいぢめ ゆっくりの種類問わず20~30体まで急募>
- どんなゆっくりでも大丈夫です。
- それなりーのくささんと、それなりーのおみずさん完備
- ゆっくりしていってね!
- SSタイトル『夏だ!海だ!ゆっくりだ!』
一見堅実、かつ平易なSSのようであるがこれも怪しい。
おにーさんやおねーさんに構われたり可愛がってもらったりできるタイプのぬるいぢめならば、
通常こんなに沢山のゆっくりを一度に募集することはない。巧妙にカモフラージュしてはいるが、
環境系の苦しいいじめに違いなかった。
「それにうみさんはげんそうきょうにはないよ……げんだいせっていはゆっくりできないよ!」
れいむは幻想郷設定のほうが好みだった。
「……だけど……」
ここらで妥協しておくのも悪くない、とれいむは思った。
他にもこのSSに参加する沢山の仲間がいることだし、仲間が多いことはゆっくりできることだ。
それに頭数が多ければ、それだけ一匹に集中した執念深いいじめを受けずに済むというもの。
「ゆー……」
れいむは世にもふしあわせーな表情で、力なくその広告を口ではがし取った。
* * * *
「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っ…」
「ゆううううう!ゆううううう!」
「ゆーんゆーん!」
たくさんの泣き声がこだまするゆっくり用通路を、れいむは他のゆっくりと共に這いずるように跳ねていた。
「どぼじでれいむがこんなめにあうのぉぉぉぉ!!??」
「きょうもゆっくりできなかったよ……」
「もうやだ!!おうちかえる!!」
れいむの想像に反して、このSSの虐待お兄さんはとんでもない傑物だった。
砂浜に足を取られることもなくれいむたちを追い回し、海からは超ハイテンションにバタフライ泳法で追撃してきた。
予想を遙かに上回る執念深さで狩り立てられ、一匹一匹、心に深い傷を負わされた。
れいむのだいじなあんよも砂に傷付けられ、海水にふやけた。
「ゆぐうううううううううう!!!!!」
悲しみの声渦巻く通路に、一匹のゆっくりが通りかかった。
「ゆっくりしていってね!」
「ゆぅぅ……ゆっくりしていってね……っ!?」
傷だらけで這いずるゆっくりの群れとは違い、つややかな体のまりさ。
前に見たときより心なしか膨らんだお腹を重そうに揺らす――
それは、あの”はっぴーばーすでー”まりさだった。
「ゆふぅ……もうぽんぽんいっぱいだよ!けーきさんまりさのぽんぽんでゆっくりしていってね!」
「ゆ……?ゆ……?ゆ……?」
「じゅーすさんもとってもゆっくりできたよ!さすがはかわいいまりさだね!
それから、じゅわじゅわのふらいどちきんさんも……」
「どぼじでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!????」
「れいむもおいわいしてね!きょうはまりさのばーすでーなんだよ!ゆっぷ」
「でいぶもけーきさんたべだがっだよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」
END
最終更新:2011年07月29日 18:20