ばたばた、と鳴るのは風の音。
神楽の風にはためくものは、漆黒に映える青き長髪。
宵に煌めく残月のごとく。
麗しき千花が咲くがごとく。
絶刀の防人・風鳴翼は、高層ホテルの屋上に、静かに佇んでいた。
「………」
星を見上げ、想う。
あの西洋人と中国人が、つい先ほど語った言葉を追想する。
失われた命さえも、報酬とする。
あの男らが語った言葉は、果たして本当なのだろうか。
甘言に耳を貸してはいけないというのは、理解してはいるのだが、それでも考えさせられてしまう。
(奏……)
脳裏に浮かぶ横顔は、太陽のように眩しい笑顔だ。
今は亡き相棒、天羽奏。
度重なるノイズとの戦いの中で、命を落としたガングニールの装者。
堅物で泣き虫の翼にとっては、そんな背中を支えてくれる、かけがえのない存在だった。
もしも、奴らの言うことが本当なら。
このバトルロワイアルを勝ち抜いた末に、死者の復活を願えるのなら。
そう考えると、心が痛む。
ちくちくと針が刺さるように、心臓が締め付けられていく。
(片翼だけでも飛んでみせる……そう、心に決めたつもりだった)
独りで戦い続けることが、奏への弔いだと思っていた。
散ってしまった彼女の分まで、多くのノイズを倒すことこそが、自分の責務だと思っていた。
奏を守りきれずに、死なせてしまった自分への。
力及ばず見殺しにした、自分への咎だと思っていた。
(だけど)
それでも、もう分かっていたのかもしれない。
叔父・弦十郎にたしなめられた時、気付かされていたのかもしれない。
きっと既に、限界だ。
これ以上孤独に戦うことには、心も身体も耐えられない。
あのまがい物のガングニール装者――立花響の存在を、受け入れなければならないのかもしれない。
「……それでも」
だとしても、やるんだ。
これは心でも身体でもなく、魂に誓った意地の問題だ。
あのような者と共に戦うことを、風鳴翼の魂は、未だ許容したくはない。
手にした大太刀の柄を、ぎゅっと握った。
今はもう少しだけ、この片翼で羽ばたいていこう。
どれほどの苦痛と寂寥が、この心身を苛んだとしても。
奏の遺志を背負った防人は、まだまだ戦っていけるのだと、この手で証明してみせよう。
戦う理由や覚悟すらも、定かではない未熟者には、弱味を晒すつもりはない。
人々を守るためにだけある剣には、慰めも同情も必要ない。
私が、やらねばならないのだ。
奏がそうしていたように、戦わなければならないのだ。
(ごめん、奏……)
今はまだ、奏を解き放つことはできない。
死の運命から解放するのは、もう少しだけ待ってほしい。
その道を選ぶということは、他者を殺すということだ。
脅威より人命を守る防人としては、おいそれと取るべき道ではない。
もし仮に、どうしても孤独に耐えきれず、魔道に堕ちてしまうとしても。
それはきっと、今よりも、もっと後になるはずだから。
「私はまだ、防人でなければならないのだから」
今はまだ、耐えてみせる。
奏がそうしていたように、剣となって戦ってみる。
覚悟を牙へと変えるしか、迷いを断ち切る術はないから。
この意地を突き通す手段など、他に私は知らないのだから。
髪を揺らして、踵を返すと、翼は下り階段へと向かっていった。
【一日目・深夜】
【D-6/ホテル屋上】
【風鳴翼@戦姫絶唱シンフォギア】
【状態】健康、精神疲労(中)
【装備】夕凪@魔法先生ネギま!
【所持品】基本支給品、ランダム支給品0~1
【思考・状況】
1.奏のように人々を守る。この殺し合いを止めるために戦う
2.響はあまり頼りたくない
3.本当に死者を蘇らせることができるなら……
4.主催者が保管しているであろう、天羽々斬を取り戻したい
【備考】
※3話にて、響との私闘終了後から、ノイズ発生までの間からの参戦です
※立花響@戦姫絶唱シンフォギアが参加していることには気付いていますが、
天羽奏@戦姫絶唱シンフォギアが参加していることには気付いていません
【夕凪@魔法先生ネギま!】
桜咲刹那が愛用する、長大な野太刀。
最終更新:2012年05月24日 04:32