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「なるほど、確かに一切の贔屓なくランダムスタートなようだな……」

右手に力を込めてみる。動かない。
左手にもやってみる。案の定動かない。

「それにしてもこれは酷いだろう……」

頭を少し下げてみる。
首から下がスッポリ土管にはまっていた。
両腕まで土管に入り込んでいるため、抜け出す手段が分からない。

「ふんぎぎぎぎぎ……」

体をよじる。
もう全くこれっぽっちも動かない。ファック。
しかも動くと超痛い。

「どうしろというんだ……」

ぜぇぜぇと肩で息をしながら(まあ、肩も動かないんだけども)呆然とする。
そして、内心で依頼主に呪詛を吐いた。

(全く、ふざけているな)

殺し合いに放り込んだということがまずひとつ。
そして、土管の中なんていうふざけた場所で開始させられたことがひとつ。
以上二点が、特に気にいらない要素である。

(殺して回れと依頼したのは、お前じゃないか――――)


思い返す、あの憎たらしい依頼主の顔。
そして吐き気を催すような依頼内容。

本来、依頼内容に首を突っ込むなど許されない。
これでも一応プロフェッショナルだ。
例え相手が10にも満たない幼女であっても、必要とあらば心を殺して抹殺できる。
殺害理由を、無理に問いただす必要なんてどこにもない。
ターゲットには、『大金を支払ってでも殺す、と思われるような理由』があるはずなのだ。
別にそれが何なのかなんて知らなくても、それだけ分かれば迷いなど消せる。

だが。

(クソ……なんでこんな……)

今回は、特殊だった。
どこがか、と言われれば、ほぼ全てがとしか言えないほど、特殊なことに満ち溢れていた。

例えば、依頼方法。
組織を一切介さず、呼び出して直に依頼してきた。
――それもこちらが気付かぬ内に拉致を行い、真っ暗な部屋の中で、だ。

それほどまでの実力者を抱え込んでいながらも、依頼主は殺しの依頼をしてきた。
そしてそのターゲットも、また特殊だ。

『この名簿に名前を載せている人物――それを殺し尽くして欲しいネ』
『……は?』

今までにも、大きな括りで殺せと言われたことはある。
虐殺は暗殺とは別物だが、そういうのを得意とする組織の者もいるだろう。
大量に殺させることで、真の狙いをぼかすなど、意義がないわけではない(あまり気にいらない考えだが)

だがしかし、それでもやはり違和感はある。
誰か特定の人物だけは絶対殺せと言われたわけではないのだ。

――別に、違和感があるからといって、普段なら詮索はしない。
詮索が許されることではないし、詮索しても何も変わりないからだ。
だが今回はあまりに事情が違いすぎる。
何せ、普段の『他人ごとに首を突っ込まされる』形の暗殺と違い、今回は『完全に自分のこと』になるのだ。

『言い方が悪かたネ? 言い換えるヨ。
 ――この名簿に載った人物と、殺し合いを、してもらいたいネ』

殺し合い、という表現。
相手もこちらを殺してくる可能性があるということを差し引いても、依頼には不適切だ。
しかも拒否権などなく、拒否し次第抹殺するというじゃないか。

(……私は……)

こんな目に遭う理由に、全く心当たりがないというわけではない。
そもそも日常的に命の奪い合いをしているし、残虐に屠られる理由は枚挙に暇がないほどだ。
だがしかし、生き残るチャンスを与えられる理由となるとそう多くはない。
最後の一人になれば生き残らせてくれるというルールは、敵対組織の仕業ではないという印象を与えてくれた。

(……組織を、裏切ったわけじゃ……)

だとすると、答えはひとつ。
これは、粛清なのだ。
属する組織から下される、何らかしらの鉄槌。

任務を無事に遂行し、名簿の者を暗殺し尽くし、最後の一人にまでなれば、晴れて無罪放免となる。
そうでなければ、処分される。
生還という温情を与え、処分の対象になった者達を始末していくつもりなのだろう。

『いくらプロといえど、油断をすると命を落とすかもしれないヨ?』

不敵な笑みでそう言われた。
組織が危険視するような者が――下手をすれば、プロの類の人間が、居るということだろう。
そしてあの口ぶりからすると、そうじゃない者もいるらしい。
おそらく、運悪く目撃してしまっただけの一般人なんかも混ざっているのではないだろうか。
そういう者を手に掛けるのは、あまり気が進まない。

(私は……)

何故、そこまでのことをさせられるのか。
特に反抗することもなく、淡々と任務はこなしてきたのに。
命を握られ、殺し合いなどという野蛮なゲームに、何故放り込まれねばならないのか。


「うわっ!?」

依頼人についてのあれこれ考える行為は、突如聞こえた一言により中断された。
油断していたわけではないし、誰かが近づいているだろうことはわかっていた。
もっとも、分かったところで動けないし、下手に動くくらいなら気配を消した方がいいと判断し、黙って考え事をすることにしたのだけど。

その結果、至近距離まで接近された。
近付いたのは、豊満な胸の少女と、それ以上に豊満な胸の女性である。

「ちょ、え? な、どうなってんのそれ。マジで? 土管?」

半笑いになりながら、髪の毛を横で結んだ少女が歩み寄る。
あまりにも予想外な格好に、毒気を抜かれたのだろうか。
それとも元々緊張感のないタイプなのであろうか。
殺し合いの場だというのに、小馬鹿にするようなニュアンスが込められている。
それこそ、まるで日常生活の中、友人を茶化してイジる時のような。

「あらあら、まあまあ」

女性の方も、顔に笑みを貼り付けて、心配しているんだか楽しげに茶化してるんだか分からないような声をあげる。
それから、その女性が、言った。

「やっぱり、クラスの人以外も居たわね」

クラスの人以外が居た。
その言葉が意味しているのは、二人が同じクラスに属しているということ。
だからこそ、クラス内での催し物かと僅かでも思い、こうしてクラス外の人物に会ったことで、それが誤りだったことを確認したといったところか。

――そうなると、一つ疑問が出てくる。

「……あら、私の顔に何かついているかしら?」
「胸になら、すごいのが付いてるけど……那波さんの知り合い?」
「いいえ……預かったことのある児童でもないわ」

児童、という扱いを受けたのは甚だ遺憾ではあるが、これで疑問は氷解した。

那波さんという呼ばれ方。
そしてこの児童呼ばわり。

見た目からして、おかしいとは思っていた。
二人がクラスメートなどということは、不自然極まりない。

「そうか、担任教師と生徒か」

これならば、年齢差のある人物が同じクラスに属していることに説明がつく。

「ブフーーーーッ」
「なんですって……?」

派手に吹き出す生徒と、笑顔を顔に貼り付けたまま威圧感を出す担任教師。
何故だか全身の毛穴から汗が溢れ出るような感覚に襲われた。
こいつ――――出来る!!


「いやいや、ブフォッ……こ、この人は私とタメで……ぷくくっ」
「もう……私は那波千鶴。麻帆良学園 中・等・部 の3年生です」
「えっ」

つまりあれか。
目の前のボーリング玉乳女は、妙齢の担任教師でなく、14か15そこらの女子中学生――

「と、歳下ァ!?」
「何か文句でも?」
「いえなんでもありません」

歴戦の殺し屋が思わず声を張り上げ驚くその容姿。
アンド、思わず敬語で黙るくらいの謎の威圧感。
こいつ絶対中学生じゃないって。

「もう、制服を着ているんだから、わかってほしかったのだけど」

ふう、とため息をつく熟女――もとい、那波千鶴。
思わず出掛けた言葉を飲み込む。

「いやー、イメクラにしか見えな――」

折角飲み込んだのに、馬鹿が代わりに口にした。
コイツ、アホなのか。
それが地雷を踏み抜くであろうことくらい、付き合いが長いのなら分かりそうなものだが。

「何か言ったかしら……?」
「あ、え、えと! そだ! 君、なんて名前なの!?」

ゴゴゴゴゴという効果音が似合いそうなほど威圧感を放つ千鶴から顔をそむけ、話題を無理やり切り替える少女。
……こいつもこいつで、中3とは思えない体をしている。

「……名乗るつもりは……」
「そんなこと言わずにー。あ、私は明石裕奈、那波さんと同じ中学3年生!」
「……ソーニャ。ほぼ高校生」
「ほぼ?」

名乗るなど、暗殺任務で普通はしない。
だがこれは、暗殺任務とは違う。
一種のショーに無理矢理立たされている状況なのだ。
逃げられることもないし、また、情報を握られていないからと逃がしてやることも出来ない。
ならば別に、意固地になって名前を隠すことはないだろう。

それに――

「何か面白いねーソーニャちゃんって」
「もしかして、その格好も趣味なのかしら……」
「そんなわけあるか!」

それに、きっと裕奈は、名乗るまでしつこく食い下がっただろう。
別に聞き出さなくとも大きな影響はないだろうが、それでもきっと食い下がってきた。
何となく、そう思う。

――そんなバカみたいな行動を取る人間を、知っているから。

だからこそ、他にそういう馬鹿がいても、おかしくないと思ってしまう。
現に――現に裕奈は、アイツによく似ているように思えた。


「ここから開始させられて抜け出せなくなっていたんだ」
「あらあら……どうにか助けてあげないと……」

助けを求めておいてなんだが、どうしたら助かるのか皆目検討もつかない。
何か二人がいいものを持っていればいいのだが……
そもそもこの状況を打破できる“良い物”がさっぱり浮かばないというのが現状だ。

「あ、そうだ! アレあったじゃん!」
「あれ?」
「そう、カバンの中に入っててさー」

何やら背を向けゴソゴソとやっている。
どうやら、意外にも役に立つものを支給されていたらしい。

「じゃーん!」

振り返った満面の笑みの裕奈の腕には、ドリルがくっついていた。
そう、ドリル。
なんというか、こう、ギャグみたいな、三角錐の、ドリルである。

「ドリルアームぅ~~~!」
「あらあら、まあまあ」
「あ、那波さんは世代的に大山のぶ代さんの方じゃ分からないっけ?」
「……そういうこというのはこの口かしら」

二人の漫談を眺めながら、裕奈の腕のドリルアームとやらを見る。
どう見ても、ドリルである。
ジョークグッズの類のようには見えない。
実際に、ドリルとして使えるのだろう。
……そうでないと、殺し合いの場で支給する意味がないし。

「と、とりあえずこれで土管を壊してみようよ」
「ばっ……そこに穴開けたら腹にも穴が空く奴じゃないか!」

ドリルを土管のど真ん中に向ける裕奈。
高確率で勢い余ってドリルは腹を穿つだろう。
やめてくださいしんでしまいます。

「え、大丈夫だって」
「お前土管だけ開けるなんて器用な真似できるのか?」
「まーそりゃ無理だけどさ」

言いながら、高速回転するドリルを土管にあてがってくる。
らめえ、そんなに押し付けられたら壊れちゃうよお!!

「おま……!」
「ダイジョブダイジョブ、そんな勢いよくやらなきゃ、お腹までは当たらないって」
「……は?」
「そうよ、怯えなくても大丈夫」

心配させぬまいと笑顔を浮かべる千鶴。
これは心から大丈夫だと思い込んでいる眼である。
コイツら頭おかしいわどうにかしないとと思い、何か無いかと視線を動かし気がついた。

「んにゃ?」

ドリルの振動に合わせて、バインバイン揺れるモノがあることに。

「……」

バインバイーン。
すごいサイズだ。
天然物のクッションである。

きっと裕奈も、そしてそれ以上のモノをお持ちの千鶴も、その胸のせいで不便してきたことだろう。
例えば満員電車でも、胸の分だけ、きつい思いをしていたかもしれない。
扉に押し付けられ、大変な思いをしてきたのだろう。

「わかった、誤解があるようだ」

そんな彼女達が、自分を基準に物事を考えてしまうのは、仕方のないことなのだろう。
何せ、『周囲を圧迫されるときは胸から』というのが彼女達の常識であり、
また『胸というクッションがあるために、平らなものでプレスされると、胸が潰れて重傷でも負わない限り、
胸の分腹と圧迫物との間に空間ができる』ということも、考慮出来ないことなのだ。

「私は、その、お前達ほど女性的なわけではない」
「へ?」

だから、そう。
わかってないのだ。
胸がないと、あそこまで乳のない者が土管につめこまれると、胸だけでなく全身が引っかかることを。
当然のように腹も胸も足も全てが密着する形になるということを。

「……胸がないから、腹も密着してるんだよ……」
「え、あ……」

気まずい沈黙が訪れる。
押される力を失ったドリルが、土管の端を微量に削りとりながら空回りする音だけが虚しく響いた。


「……そういえば、千鶴の方は何を支給されていたんだ?」

しばしの気まずい空気を経て、その空気を打ち消すためと言わんばかりに無理矢理な話題を振る。
もっともそれは、情報を引き出したいというのが本音の発言なのだが。

「私のは、これよ」

お人好しなのか何なのか、千鶴はあっさり支給品を開示した。
取り出したのは、一本のネギ。
ネギである。
スーパーに売っている、あの、緑で長い、何か歌うロボット的なやつが振り回しているっていう、アレ。

「……ネギだな」
「ネギよ」
「ちなみにさっき軽く齧ったらネギの味がしたよ」
「食べたのかよ……」

武器として配られたモノをよく食べられるな。
そんなことを思っていると、何やら不安な話の流れになってきた。

「でもネギじゃどうにもできないんだよにゃー」
「あら、やってみないとわからないわよ?」

一体何を言っているのだ。
ネギをどう使おうというのか。

「やってみるって……何を……?」
「ネギはね、お尻に挿すと健康体になるのよ」
「……は?」
「もしかしたら、この事態も打破出来るかもしれないわ」
「そんなわけ……ってパンツを脱がすなああああああ!!」

タチの悪い冗談だろう?
そんな想いも、同情しているような裕奈の顔で本気と分からされる。
それこそギャグ漫画のように一気に脂汗をかくのを感じた。

「さあ、試すわよ」
「ま、待て、落ち着け、そんなもの入らな――」

せめて見るのはやめてあげよう。
そう言わんばかりに、裕奈が顔を背けてデイパックの中身の確認作業に移る。
このやろう、何ヒトの荷物のチェックを口実に助けるのを諦めてるんだ。

「ば、そっちは違――」
「大丈夫よ、力を抜いて。リラックス、リラックス」

嫌な汗が衣服を濡らす。
必死で逃れようと身を捩るも、土管は体をがっちり掴んで離さない。

「や、やめ……!」

悲鳴を背に受けながら荷物を漁り続ける裕奈。
その裕奈に電撃走る!
中に入っていたものは――――


「こ、これはぬるぬる君X!!!」

裕奈はコレを知っている。
何故ならかつて麻帆良学園の寮の浴場に持ち込んでヌルヌルパニックを起こしたのは他ならぬ裕奈なのだから!
お肌がつやつやになるこれは、まさにローションが如く感触!
スライム娘達によるイタズラを抜きにしても、その効果は絶大であるッ!

「か……はっ……」
「ほら、力を抜いて」

裕奈は振り返る。
必死に這い出ようと身を捩らせるソーニャが、先程よりも、わずかに土管を抜け出していた。
それほど必死なのだろう。
脂汗にまみれた肌が、ぬらぬらとソーニャの身体を濡らしている。

「そうだ、これを使えば――!」

ソーニャの体は、土管と密着している。
摩擦により、無理に動くと肌が傷つくだろう。
だがしかし!
そこに潤滑油さえあれば……!

「ソーニャちゃん、私の最後の波紋よ! 受け取ってーー!」

キャップを捻り、開封する。
そして発射口をソーニャへと向け、握力を全開にし、勢い良く本体を押した。

びゅるるるるっ! びゅるぅっ!

勢い良く、ヌルヌルとした液体が噴射される。
ゆーな★キッドと自称していた少女の狙いは性格であり、ぬらぬら輝くその液体はソーニャの体へ降り注がれた。

「何だよ波紋って――わっぷ!?」

どぴゅっ……どぷっ……

最初は勢いの強かったぬるぬる君Xだが、中身の減少とともにその威力を弱めていく。
下品な音を立てながら、搾りカスが顔を中心に振りかかる。

「ほら、力を抜いて!」

潤滑油として、ぬるぬる君Xが土管とソーニャの間に割り込む。
衣服がぐちゅりと不快な音を立てるものの、摩擦による痛みが軽減された。

「ひぎぃっ!?」

ずぷっ。

何やら細長いものがソーニャの未熟な肉を押しのけ侵入してくる。
そのあまりの痛みと不快感に、ソーニャは思わず背中を反った。
とはいえ狭い土管の中では思うようにそれすら出来ず、前方へと逃げようとする力で、わずかに前進するだけだった。

「やめ……ろってェ!」

もはや涙すら出てきている。
暗殺者の威厳という大切なプライドと引き換えに、ありったけの恐怖からの逃走という屈辱と引き換えに、
スポンという感じでソーニャが土管から抜けだした。
土管が横に倒れていたことと、着衣が緩んでいたことが功を奏した。
ルール説明を事前に受けていたからと暗器が没収されてるのかと衣服を乱して確認している時にここに転送されてなければ、
こうして衣服を土管に残し抜け出すことはかなわなかっただろう。

「うわ、えろい」

ぜぇぜぇと肩で息をし、粘液と汗にまみれた下着姿のソーニャに、裕奈がそんな言葉を漏らす。

「あらあら、やっぱりネギって万能なのね」

そして背後から、千鶴が近づいてきた。
思わず逃げようとしたところで、肩を掴まれる。

「もう大丈夫よ」

そう言うと、千鶴はそのままソーニャの上半身を起こすと、ソーニャの腕を自身の首へと回す。
千鶴が自身の肩の上にソーニャの頭を固定しているのを見て、裕奈もまた、ソーニャの脇へと自分の頭を通した。
そうして、三人で肩を組む形となる。


「何か、こうして肩組んでると青春って感じじゃない!?」
「下着姿のぐったりした姿を見ると、強姦被害者と発見者って感じだけど……」
「ええ!? ていうかそれならむしろ、今から捨てに行く犯人みたいじゃん私ら!」

いや、実際こんな目にあわせた犯人お前らだからな。
呆れたように、心の中で呟いた。

「もっとこう、爽やかに、無事に雪山サバイバルを抜けだしたシーンとかさ!」
「いや、半裸のまま雪山下山させるのは逆に酷いだろ……」

思わず、口に出して突っ込んでしまう。
やや不安そうにしていた裕奈の顔が、パァと明るくなった。

「よかったー、本気で嫌だったか不安だったんだよー」
「そうねえ。でも他に手段もなかったし、結果オーライってことじゃ、ダメかしら」

胸が、痛い。
尻にネギを挿されたからとか、陵辱されたからだとか、プライドを砕かれたからだとか、
そういう理由ではない。
……そういうのが全くないとは言わないけども。

「……ダメじゃ、ないさ」
「よかったあ、これから一緒に行動するんだし、嫌われてなくてよかったよ」
「そうね、仲良くやるのが一番だわ」

楽しそうに笑う二人。
胸が痛むのは、この二人が原因だ。

――いや、正確には、この二人から連想してしまう、馬鹿野郎二人のせいだ。

「……悪いな」

だから、誰にともなく呟いて。
はてなマークを浮かべ小首を傾げる裕奈の首を、可動範囲を超えるくらい傾げさせてやった。
コキャッという小気味のよい音を立て、裕奈の頭がガクンと落ちる。
逆側にいた千鶴の首も、動揺にへし折られていた。

「謝って許してもらおうなんて、思わないけど」

わざわざこちらの腕を首なんて急所に、巻きつけてくれていたから。
サブミッションも身につけた暗殺技術で、何が起きたのか理解させぬよう殺すことは造作もなかった。

「でも――ごめんな」

きっと、裕奈は、ホントに優しい奴だったのだろう。
明るくアッパッパーだったのも、少しだけ、気を使った結果なのかもしれない。

千鶴も、不敵だけど、悪い奴ではなかった。
きっと、からかうのが好きだったりしたのだろう。

唯一友達と呼べた、二人の少女のように。


(……もう、これで引き返せない)

友人を思い起こさせる少女達でも、殺せてしまった。
理由なんて、わかっている。
こんな胸糞悪い仕事を出来てしまう理由。

『何……で……こいつらが……』

事前に見せられた名簿に載っていた、2つの名前。

一つはこんな事態と無縁であるはずの、普通の少女の名前。
一つはこんな無様な目に合わずに上手く生きていそうな、それを感じさせないながらも闇に生きる少女の名前。

どちらも、載っていていい名前ではなかった。
自分のような、消耗品のクズとは違うのだから。

『特別に、君にだけの特別ルールをあげるネ』

それは、悪魔の囁きだった。

『君を入れて最後のニ人になった時点で――生還者は、二人ってことにしてあげるヨ』

つまり、優勝しろということだ。
そうすれば、殺戮をしていけば、自分と、そして大切な人を一人生きて帰らせることができる。
たった、一人だけを。

『……馬鹿げている』
『そうとは思わないけどネ。ま、そういうことにしておくヨ』

本当に、馬鹿げている。
例え誰が人質になろうとも、誰を救える可能性を餌にされようと、冷酷なアサシンとして、やることに変わりはないはずなのに。
どうしてこうも胸が痛み、引き返したい衝動が湧き、それでもなお前に行かねばならないと思うのだろう。

『……命令なんだろ。やってやるさ』

いつもなら、胸すら痛まなかったのに。
あの馬鹿にあってから、仕事の度に馬鹿の顔が頭をちらつくようになって。
次第に、仕事が苦痛になってきていた。
――そんなだから、こうして道具として役立たずと認定されてしまったのだろう。
まったくもって、情けない話である。

「……ああ、そうか」

そして、今はとうとう涙が出そうになっている。
それはきっと、今しがた殺めた二人が、あの二人に少し似ていたからだ。
あの、鬱陶しくて憎たらしいのに、どこか愛おしい二人に。

「やすな。あぎり。私は、お前達のことが――――」

天を、仰ぐ。
涙も言葉も零れないよう、空の向こうをひたすら見上げた。

光り輝く星が、暗い夜空に寄り添っている。
不気味がられる暗闇が、星のおかげで慕われるものになっていた。

『それとボーナスもあるヨ。6人殺すことができたら、最後に1人蘇生してあげるネ』

あの妄言を信じているわけではない。
蘇生などということを信じるほど馬鹿ではない。
けど。

(……やってやる。別にやすなやあぎりが、がどうなろうとしったこっちゃないけど)

決めたのだ、殺し合いに優勝すると。
決めたのだ。あの馬鹿を、生きて帰すと。

(巻き込んだのは私のミス。それの謝罪くらいは、な)

ソーニャが歩き始める。
暗く陰惨な道を。

星と引き離された夜空に、もう、人の心を救う力なんてない。
あるのはただ、全てを飲み込む暴力じみた無限の闇だけである。







【明石裕奈@魔法先生ネギま! 死亡】
【那波千鶴@魔法先生ネギま! 死亡】






【一日目・深夜】
【D-06/土管のあるリサイタル会場にも出来そうな感じの空き地】

【ソーニャ@キルミーベイベー】
【状態】おしりがいたい……
【装備】ドリルアーム@アイドルマスター、ドリルで砕いた土管の欠片
【所持品】基本支給品
【思考・状況】
1.たくさん殺して優勝する
2.私は、やすなを――――
【備考】
※ネギ@魔法先生ネギま!とぬるぬる君X@魔法先生ネギま!の空容器が明石裕奈と那波千鶴の死体の傍に放置されています



【ネギ@魔法先生ネギま!】
那波千鶴の支給品。
別に担任教師ネギ・スプリングフィールドではない。
何の変哲もないネギ。
お尻に挿すと色々と効果があるかもしれない。


【ドリルアーム@アイドルマスター】
明石裕奈の支給品。
アイドルが腕につけるアクセサリー。
芸能人の衣装にも関わらず、殺し合い用にチューニングされているのか、普通に壁に穴くらい空けられる。


【ぬるぬる君X@魔法先生ネギま!】
ソーニャの支給品。
お昼のモンタさんもオススメしてる一品。
すっごいすべるよ!!!ぬめるよ!!!!
なお、使いきった模様。


017:ミラーワールド 投下順 019:捨てて拾って
017:ミラーワールド 時系列順 019:捨てて拾って
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最終更新:2012年11月08日 09:18