『アナハイム・エレクトロニクス』


アナハイム・エレクトロニクスは、一年戦争時、その政財界における発言力の大きさ故に、
ジオン公国軍も接収を控えたといわれているほどの大企業であり、
家電製品から宇宙艦艇をも生産する一大コングロマリットであった。
そして戦後は、ジオニック社を始めとする公国系の軍需企業などを多数吸収合併することにより、
地球圏最大のMS開発メーカーとなった。

一年戦争時に開発されたガンダムなどは、連邦軍が自前の設備や工廠で独自に開発したものだったが、
その部品供給などは、もともと民間企業が行っていたのである。
戦後、連邦軍がMSの生産規模を縮小していくに従って、MSの量産自体は民間企業に委託されていくようになった。
そしてMSの生産は、産業として確立されたものとなっていったのである。

アナハイムは、まず企業として連邦軍の生産調達先となり、いわゆる量産機の生産などを行っていたが、
戦後まもなく、MS生産の優良企業として連邦軍の兵器調達の大きな部分を占めるようになり、
U.C.0083年の時点で「ガンダム開発計画」などのような新兵器開発そのものを請け負うまでになっていた。
これは、開発に携わる人員も守秘義務を負う秘密兵器開発そのものであり、
その各分野ごとに互いの技術流出が極端に制限される体制が確立されていった。

この事は後に事業部間の円滑な情報伝達を阻害する要因ともなるのだが、
この時点で連邦軍から求められた情報のクリアランスは、非情に厳しいものだったのである。
逆に言えば、連邦軍の提示する諸条件を飲むことで、連邦軍とのコネクションを強固なものにすること
そのものがアナハイムの目的だったのである。

その意味でいえば、アナハイムの構想「ガンダム開発計画」に参与できた段階でほぼ達成されていたのだが、
ティターンズの台頭による軍組織の改革が進むにつれて、連邦軍独自の新兵器開発という方針が見直される様になっていった。
実際、ガンダムMk-Ⅱの開発などは、GPシリーズに投資したアナハイムにとって、承服できない契約不履行でもあったのである。

アナハイム・エレクトロニクスのジョン・カバナン社長は、表だって連邦の方針に意義を唱えることはなかったが、
事実上アナハイムを掌握する会長のメラニー・ヒュー・カーバインは、エゥーゴの支援を決定した。
企業としてはティターンズサイドを向きながら、実質的には対抗勢力のエゥーゴの後援者となったのである。

このダブルスタンダードは、アナハイムの企業としての強かさであり、メラニーの狡猾さでもあっただろうが、
彼が心情的にもエゥーゴに肩入れしていたのは確実だと言われている。
単に経済的な可能性の選択肢を確保しているだけであるならば、彼自身が交渉の為にアクシズに直接赴くような事は
しなかっただろうし、ここまでエゥーゴとティターンズの対立に深く立ち入ることはしなくなっただろう。
後援者とは、実際にその組織や人物のありように賛同できていなければ出来ないものといえる。

アナハイム・エレクトロニクスは、エゥーゴに向けた新型MSを開発しつつ、
ティターンズにも量産MSを供給するという選択を行ったのである。
最終更新:2015年02月01日 18:22