わかってるよ、一人ぼっちは寂しいもんな。
あたしが一緒に居てやるよ―――――さやか。
◆ ◆ ◆
「……はぁ……はぁ……。」
レイン・ミカムラは操縦室――モビルトレースシステムの中で息を切らす。
目を覚ました後、目の前に放棄されていたモビルファイター、ライジングガンダムが
どうやら自分の
支給品らしいことを確認した時は流石に目を疑った。
いくら尋常ならざる猛者が集うとはいえ、生身の人間相手にこれに乗って戦えとでもいうのだろうか?
しかしドモンの師匠、東宝腐敗のような例外も確かに現存している以上、卑怯などと言っている余裕はない。
そう考えガンダムに乗り込んだ彼女であったが、早速「例外」に遭遇することになる。
「グオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!」
「くっ!一体なんなの!?このガンダムは!?」
声ならぬ叫びを上げ続けるのは、巨大な剣を持つモビルスーツと変わらないサイズの甲冑を着た怪物である。
鋼鉄を纏った屈強な上半身に比べて下半身は魚のような形をして宙に浮いた台座に座っており、
その姿はまるで人魚。一瞬ネオデンマーク代表MFマーメイドガンダムの亜流かとも思ったが、
そもそもこいつの中に人が入っているかも怪しい。
二体の鋼鉄の巨人は一定の距離を保って膠着している。
「うかつに動かない方がいいかしら……何!?」
そうしていると突然、人魚が腕を振り上げたと同時に何もない空間から大量の車輪が人魚の周りに出現し、
振り下ろした瞬間、それらが一斉にライジングガンダムに襲いかかった。
「飛び道具なんて!!はぁ!!」
その巨体から想像もつかない速度でバック転しながらビームナギナタを取り出し、
それを高速回転させ次々と車輪を斬り裂いていく。
なおも休まず車輪を召喚してくる人魚の攻撃をものともせず、ついに射程距離まで近づくことに成功した。
「悪いけど、もう容赦はしないわ。ライジングフィン―――!!」
「――――ナ―イスアシストッ!!」
ライジングガンダムの右手が赤く光り輝いたその瞬間。
背後から何者かの声が聞こえ、思わず振り向いたその視界に巨大な槍の先端のような物体が写り込み、
驚く暇もなく頭部のメインカメラに槍が直撃する。
「そんな!?」
思いもよらない出来事。そう、この人魚の怪物には仲間がいたのだ。
槍で首を撥ねられたライジングガンダムはそのまま膝を崩して倒れ込み、
モビルトレースシステムの全方位モニターがノイズで埋め尽くされる。
「……負けた?」
何が起きたかまだ整理がつかないレインはようやくそのことに思い当たる。
従来のモビルスーツと異なりMFの管制システムは頭部に集中しており、
そのため頭部を破壊されると行動不能に陥るのだ。
「ははっ、悪いな。後ろからいきなり襲っちまって。」
背後から気さくな雰囲気の少女の声が聞こえる。
さっきの攻撃はこの娘がやったのだろうか?
「なぁ、その中から降りてくれねーか?ちょっと聞きたいことが――――え?」
突然、少女の声が凍りつく。
レインは恐る恐る、ノイズだらけのモニターの向こうに居たはずの人魚の怪物の方に向き直し、
「な!?やめろ!!さやかぁぁぁ!!!!」
モニターを突き破って人魚が持っていた大剣が、レインの体を貫いた。
「…………がっ…………!!」
「グオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!」
背後のモニターに張り付けにされたレインは、ライジングガンダムごと体を持ち上げられ、
そのまま地面に放り投げられた。
(……ドモ……ン……。)
何が起こったのか分からぬまま、地面に衝突したと同時にレインは息を引き取った。
◆ ◆ ◆
「馬鹿……なんで殺したんだよ……。」
佐倉杏子は俯いたままかつて美樹さやかだったモノ、
恋慕の魔女「オクタヴィア・フォン・ゼッケンドルフ」に喋りかける。
魔女は台座に座ったままふわふわと漂いその問いに応えない。
あの時、炎の中で魔女と化した共に心中した後、死んだと思ったらこの会場にいた。
自分を襲う気が全くない魔女の様子を見て、何かの奇跡で自分の想いがさやかに届いたのだと思い
一緒に行動することにしたのだが、結局自分以外の参加者にはこの様だ。
そもそも自分を襲わないのもただの勝手な思い込みに過ぎないんじゃないのか?
やはり意思の疎通なんて根本的にできないのではないか?
悲しみに胸を包まれ、絶望に打ちひしがれようとしていたその時、
そっと頬に甲冑で出来た魔女の指先が触れた。
「……あ……。」
まるで空洞のような魔女の大きな三つの瞳が自分を見つめている。
ぽたりと一筋の涙滴が杏子の瞳から流れ、地面に落ちた。
「……ごめんなさやか。疑って悪かったよ。」
杏子はそのまま、甲冑で出来た冷たい手を抱きしめた。
「大丈夫だよ。さやかがどんな姿になっても。あたしがずっと一緒にいてやるから。」
◆ ◆ ◆
音楽が聞こえる。
結界で使い魔達が奏でていたオーケストラには程遠いがバイオリンの音色だ。
目の前の赤い少女からそれは聞こえる。
これは幻聴。魔法少女の魔法による幻惑。
通常より制限が薄くなっているこの会場で、
杏子も気づかない内に無意識で使っていた幻覚の魔法が魔女を惑わし続ける。
「じゃ、行こうぜさやか!魔法少女コンビ結成だなっ!あははっ!」
嬉しそうに自分に喋りかけるこの娘が何を言ってるのか理解出来ない。
でもこの音楽は好きだった。
嬉しそうに体を揺らしながら、人魚の魔女は少女の後を追う。
【レイン・ミカムラ@機動武闘伝Gガンダム 死亡】
【B-3 森林】
【佐倉杏子@魔法少女まどかマギカ】
【状態】 健康
【装備】 マジカル多節棍、魔法少女服
【持ち物】ランダム支給品1~6、基本支給品一式
【思考】
基本: さやかを人間に戻す方法を探す
1:その為には優勝も視野に入れる
2:マミとほむらを捜す
【美樹さやか@魔法少女まどかマギカ】
【状態】 魔女化(オクタヴィア・フォン・ゼッケンドルフ)、幻惑
【装備】
【持ち物】
【思考】
基本: バイオリンの演奏が聞きたい
1:邪魔するものは許さない
【備考】
※9話で無理心中した直後から参戦です。
※さやかの支給品は杏子が持っています。
※B-3にレインの死体とライジングガンダムの残骸があります
最終更新:2012年02月24日 21:26