コルセア(FINAL FANTASY XI)

登録日:2017/12/27 Wed 01:03:15
更新日:2022/12/17 Sat 02:42:33
所要時間:約 20 分で読めます







「どんな嵐にも臆さず遥か高みを目指し……いかなる時も決して仲間を裏切らない永遠の友情と忠誠を誓うか?」





MMORPG『ファイナルファンタジー11』に登場するジョブの一つ。
3枚目の追加ディスク『アトルガンの秘宝』で追加された所謂アトルガンジョブで、同期は青魔道士からくり士

コルセアとはあまり聞かない名前だろうが(え?艦これ知ってる?、これは英語で書くとCorsair、つまり海賊の事である。
FFシリーズではIのピッケ、IIのレイラ、Vのファリスなど「職業」が海賊なキャラは何度も登場してきたが、「ジョブ」としての海賊はシリーズ唯一である。
バイキング?あ、あれはバイキングであって海賊じゃないからノーカンだし!


ジョブ専用装備の海賊らしい三角帽(トリコルヌ)細剣短銃を武器にするというスタイルは正しく海賊のそれだが、
カードやダイスといったギャンブル要素が重要な役割を果たしている点はVIセッツァーX-IIのドレスフィアのような「ギャンブラー」の特徴も反映している。


◆「どんなジョブなの?」


コルセア、すなわち海賊という言葉のイメージからはなかなか想像しづらいが、MMORPGで言うところの「バッファー」にあたるジョブ。
バッファー、つまりbufferとは元々洋ゲーから輸入された概念で、「パーティメンバーを強化(buff)する支援系職」のことを指す。

……と書くとなんだか「え?そんだけ?」と思われるかもしれないが、MMORPGにおいては非常に強力なロール(役割)である。
って言われてもイマイチイメージがわかない……と言う人は、モンハンのハメ狩りにおける狩猟笛の親和性を思い出していただきたい。
そしてコルセアを含めた11におけるバッファーの強化性能は、到底その比ではないほどに高いのだ。

コルセアの強化機能は、様々な呪いが込められた「運命を司るダイス」を転がすことで味方の運勢を操作する「ファントムロール」に依存している。
これはサイコロの出目によって強化値が上下するというギャンブル要素を含んだ強化アビリティで、その基本はカードゲームの「ブラックジャック」に近い。
つまりサイコロを1個づつ振ってその数値を積み重ねていき(ダブルアップ)、それが最終的に11に近いほど強化の度合いが高くなるというシステムである。

12を超えると「バスト」、つまりご破算となって強化効果は消滅、逆に本人には強化効果の正反対のペナルティが課せられてしまうので、11になるべく近づけつつ、しかし12は超えないようにしなければならない。
各ファントムロールにはそれぞれ効果が高くなる「ラッキーナンバー」、逆に低くなる「アンラッキーナンバー」という数値が1つづつ設定されているので、サイコロを振っていく際にはこれも考慮する必要がある。
また11は全ファントムロール共通のボーナス数値であり、「効果量が最高」「ファントムロールの再使用時間が0に」「次のファントムロールはバストしてもペナルティなし」などの素敵な効果がもたらされる。

ファントムロールには「攻撃力アップ」や「魔法命中率アップ」「防御力アップ」といった単純な強化も無論含まれているが、
「ストアTPアップ」や「リゲイン」「モクシャアップ」といった、経験者以外には効果すらわからないようなニッチな強化項目も持っていて独自色が強い。

ちなみにファントムロールは「○○のダイス」という魔法スクロールに相当するアイテムを入手、使用することで覚える。

また片手剣や短剣、銃といった武器は伊達に装備できるわけではなく、パーティの中では敵へのダメージソースとなる「アタッカー」としても充分に機能する。
特に飛び道具によって遠隔物理攻撃が可能なジョブは極めて稀少であり、実質的には専門職である狩人に次ぐ遠隔アタッカーでもあったりする。



◆「どんなところが優れてるの?」


もっともわかりやすい長所は、まずそのバッファーの中で抜きんでた攻撃力

低~中レベル帯では射撃ウェポンスキル(普通はWSと呼ぶ。武器を使ったゲージ技のこと)の貧弱さもあってイマイチ微妙だが、
レベル50代あたりから徐々に成長が始まり、装備が充実する99以上では狩人にも肉薄する(瞬間火力に限定すれば越える)程の性能となる。

そして11のバッファー系ジョブとしては、コルセアの他にも吟遊詩人と風水士もいるのだが、これら3つのジョブは「得意分野」が微妙に異なっている。
この中でコルセアが最も得意とするのは「獣使いや召喚士のようなペットジョブの強化」、次いで「黒魔道士学者といった魔法アタッカーの強化」だが、特に前者はとても重要。

詩人や風水士はペットの能力を直接強化できる手段を全く持たないため、ペットジョブを主体に構成されたパーティにおいては適正が圧倒的に高い

また風水士には及ばないが、黒魔道士による「マジックバースト」を主体とした魔法パーティへの適性も悪くない。
「ウィザーズロール」で魔法攻撃力を、「ワーロックスロール」で魔法命中率を上げたりといった強化は勿論、黒魔道士の火力を発揮するために必要な「技連携」というWSコンボを作る要員になれるのも大きい。

ちなみにこれら3ジョブの強化は、同じ強化項目であっても同じ「枠」を使っているわけではなく、同時に使えばそれぞれの効果は重複して相乗効果を発生させる。
例えばMPを徐々に回復させる「エボカーロール」が5MP/3秒、詩人のMP回復歌「バラード」が8MP/3秒、風水士の「インデリフレシュ」が9MP/3秒だとすると、これらを同時にかければ回復量は22MP/3秒となる。
このため誰か一人がいれば他は必要なくなるというわけではなく、むしろ数が増えるほどに相乗効果で強化の程度が上がっていく。

そしてある意味で最も重要なのは、「他ジョブに比べて敷居が低い」という点。
無論アタッカー性能を求めれば他ジョブ同様敷居はもりもりと上がっていくのだが、パーティにおいてコルセアに最も求められる機能である「ファントムロール」をかけるだけでいいとするなら、ハードルは極めて低い。
これは詩人や風水士と違って、「バフ性能を強力に高める廃人装備」のようなものがほぼ無いためである。

このため「今から始めたいor復帰したいんだけど、とりあえず一番早く最前線まで行けるのって何?」などと言われたときに、「コルセアなんかどう?」と推す人も多い。



◆「んじゃ欠点は?」


まず根本的な弱点として、肝心の強化効果がダイス運に左右されるという不安定さがバッファーとして非常に痛い。
高レベルになると「イカサマ」できる手段も色々と出てくるが、それでも常にラッキーナンバーや11を引き続ける、というのは絶対に不可能である。

そして強力なアタッカー性能の代償か、ファントムロールの強化性能自体も詩人の呪歌・風水士の風水魔法に比べ若干劣る傾向がある。

特に近接アタッカーにとっての最重要強化である「ヘイスト(攻撃速度アップ)」の強化がない*1という致命的な弱点があり、詩人に比べ近接戦闘を主体としたパーティでは優先度が大きく劣らざるを得ない

また魔法パーティにおいても、魔法命中率アップ・魔法攻撃力アップのいずれもコルセアを上回る風水士と比較すると、どうしても優先度が低くなりがち。

総じて言えば自身の火力に傾注している分、バッファーとしてはやや物足りない感があることは否めない。

「でも本人の火力があるんなら、その分で強化性能が足りない分を補えるんじゃないの?」と思われた方もいるだろう。
もちろん鍛えられたコルセアの火力自体はアタッカーに劣らないと言うのは全くの事実だが、
  • ダメージ/与TP効率が悪く、敵の痛い大技を誘いやすい
  • 専門の遠隔アタッカー達と異なり、ヘイト(敵対心。敵からの狙われやすさ)を低減する手段がなく、ダメージ/ヘイト効率が悪い
  • ヘイトの高さ+猛烈な瞬間火力の高さも相まって、敵のターゲット(攻撃目標)になって陣形を崩してしまいやすい
  • 「半端な攻撃なら、そもそもしない方がマシ」という11の基本構造上、バッファーにまで火力を要求する状況はそれほど多くない
などといった様々な問題点があり、補えているのかと言われると微妙。補えるシチュエーションもあるのは事実だが。



◆「世界観的には?」

船から下りたい者は下りてくれ。

この戦いには、名誉も栄光もなく、この航海は、すべてを得るか、すべてを失うまで続くだろう……

だが、私は信じている。

たとえ、今は授ける王はなくとも、君の名誉は友から贈られるだろう。

たとえ、海の藻屑と消えようとも、君の栄光は友が語り継ぐだろう。

約200年の昔、近東のエラジア大陸最大の国家である「アトルガン皇国」が、1つの国を攻め滅ぼした。
その国の名は「イフラマド王国」。エラジア大陸北東の島嶼部や近海を領有する小国だったが、海運と交易によって莫大な富を得ていた一大通商国家であった。

遥か昔より皇国との対立を続けてきたイフラマドではあったが、200年前のこの時ばかりは完全に虚を突かれた。
皇国は獣人マムージャ族による共和国「マムージャ蕃国」と手を結んで、膨大な戦力によってイフラマドを急襲。わずか8日間の戦いで首都アルザビを陥落させてしまったのである。

鮮やかなまでの完勝を遂げた皇国だったが、一つの要素、あるいは一人の男だけはその思慮の外にいた。当時バストゥーク共和国に留学中だったイフラマド王国皇太子、ルザフ王子である。
彼はバストゥークからの帰国の途上に敗戦並びに国王崩御の報を受け取ると、即座に方針を変更してイフラマド領の北端「アラパゴ諸島」に向かい、そこでイフラマド王国臨時政府を設立した。
そして自身の乗っていた客船「エボニークィーン号」を戦闘用に改装、「ブラックコフィン号」と名付けて艦隊旗艦とし、王国艦隊の残党や船乗りなどを糾合して皇国に対する熾烈なゲリラ戦を開始したのだった。

練達の船乗りが集った臨時政府軍は、その神出鬼没の戦いぶりで皇国軍を大いに悩ませ、一時は皇国から制海権をほぼ奪ってしまうほどの勢いを示した。
皇国はこれを「無辜の商船を襲う海の犯罪者集団」、即ち私掠海賊(コルセア)と蔑称したが、彼ら海の荒くれ男たちはむしろ平然とその名を受け入れ、自らコルセアの名を誇示し始めたのだった。

これがアトルガン近海を根城にする海賊集団、コルセアの起こりである。

皇国は散々彼らコルセアに手を焼かされたが、後にアラパゴ暗礁域に存在するその秘密母港が判明すると、皇国の錬金術が生んだ禁断の生物兵器「L.A.M.I.A」を大量投入。
無慈悲な無差別攻撃によって港にいた人々を殺戮し、アラパゴ暗礁域を「船の墓場」へと変えてしまった。
港外に出ていて助かった旗艦ブラックコフィン号も程なくして皇国の大艦隊に囲まれてしまい、「アラパゴの海戦」と呼ばれた最後の戦いが始まった。
ルザフ王子は巨艦をも一撃で沈めると言う愛銃「死の応報(デスペナルティ)」と共に勇戦して皇国艦隊に大損害を与えたが、圧倒的な物量の前についに力尽き、ブラックコフィン号と共に海中に没した。

これによってルザフ王子とイフラマドの王統、そして彼が率いた臨時政府艦隊は滅び去り、皇国も胸をなでおろした。

……しかし、コルセアは滅びてはいなかった。
イフラマド王国の復興と言う大義こそ失ってしまったものの、皇国の支配に決して屈しないことを誓った船乗り達は多く生き延びており、各地で根城を作って個々にゲリラ戦を展開したのである。

それから200年が経過した現代でも、そうした誇り高きコルセアの末裔達は皇国の支配に抗い続けている。
長き時の経過で既に大義は失われて久しく、最早単なる犯罪者集団と呼ばれても仕方ないような者たちもいるが、自由と不羈を何より重んじるその矜持、苦難と苦境を笑い飛ばす不屈の意思だけは、今に至るも受け継がれ続けている。

彼らは皇国にとっては弾圧すべき不穏分子に他ならないが、皇国の強権的な支配体制、相次ぐ戦役とその負担には深刻な不満を抱いている民衆も多く、彼らの間では義賊として拍手喝采され、あるいは密かな支援を送られてもいる。



◆「コルセア48の必殺技」


カオスロール(アビリティ)
範囲内のパーティメンバーの攻撃力・飛攻(遠隔攻撃力)を上げるファントムロール。LV14以降に「暗黒騎士のダイス」を使用することで習得。
攻撃力強化の代名詞である詩人の「メヌエット」が固定値上昇であるのに対し、こちらは割合上昇。
このため全体的な数値が低かった昔はそれほど目立たなかったが、パラメータのインフレに従って効果が強烈になっていったという歴史を持っている。


タクティクロール(アビリティ)
範囲内のパーティメンバーを「リゲイン」状態にするファントムロール。LV86以降に「戦術家のダイス」を使用することで習得。
リゲインとは、オールド・スネークを24時間戦わせることのできる栄養ドリンク……ではなくて「TP(WS用の技ゲージ)が徐々に増加していく強化状態」のこと。
詩人も風水士も持っていない独自の強化であり、汎用的とはいいがたいが特定状況下ではガッチリとハマるファントムロール。


クイックドロー(アビリティ)
直訳すれば「早撃ち」。その名の通り、目にもとまらぬ早撃ちで敵との間に投げたの8属性のカードを撃ち抜き、敵1体に対して特殊な効果を与える攻撃用アビリティ。LV40で習得。
火・氷・風・土・雷・水の6属性のショットは敵にその属性のダメージを与えるものだが、光属性の「ライトショット」は敵を寝かせ、闇属性の「ダークショット」は敵にかかっている強化を1つ打ち消す。
またその属性に対応する状態異常がかかっている場合、その効果を増幅させるという効果もついている。
例えば氷属性の「アイスショット」を撃ち込まれた敵に氷属性の状態異常「麻痺」がかかっていると、その効果深度(麻痺の発動率)が上がるのである。
削りやトドメに6属性ショットを打ち込んだり、ディア(防御ダウン効果の弱体魔法)+ライトショットで防御ダウンの効果を上げたりと様々な使い方がある便利アビリティで、これをどう使うかがコルセアの腕の見せ所。


トリプルショット(アビリティ)
使用中、一定確率で射撃が3段ヒットになるアビリティ。Lv87で習得し、基本効果時間は90秒。
使用間隔が5分もあるので常にこれを使っておくというわけにはいかないが、ここぞという時に使うと爆発的な火力向上を見せる。
狩人が持つ「ダブルショット」の実質上位互換であり、コルセアの高い瞬間火力の根源となる極めて強力な攻撃用アビリティ。


ワイルドカード(アビリティ)
範囲内のパーティメンバーの使用済みアビリティを全て回復するスペシャルアビリティ。LV1から習得済み。
また使用時にサイコロを振って、その出目によっては特殊なボーナスがつく。
  • 1or2……ボーナスなし。
  • 3or4……一定量のTPがプラスされる。3ならば+1000、4だと+3000(TP上限)。悪くはないが、5と6には到底及ばない。
  • 5or6……ランダムディールの対象にならない「スペシャルアビリティ」も回復する。5だとスペシャルアビリティ1だけが、6だとスペシャルアビリティ1と2の両方が回復する。
スペシャルアビリティとは、メインジョブの時にだけ使える(サポートジョブでは使えない)そのジョブの「切り札」で、非常に強力な効果を持っているが、再使用時間が1時間もあるため同じ戦闘で何度も使うことはできない。
これはその前提を覆せる数少ない手段であり、これのためだけにコルセアを編成に組み込むこともあるほどの超重要アビリティだが、結局運任せなところがいかにもコルセアらしい。


ラストスタンド(WS)
敵一体に遠隔属性の2段物理ダメージを与える射撃ウェポンスキル(WS)。
メリットポイントという特殊な育成ポイントを投じて覚える「武神流秘奥義」の一つで、狩人に比べ高威力の物理WSに欠けていたコルセアの救世主となった強力な射撃WS。
武神流秘奥義全てに言えるが、モーションがド派手で中二病めいたケレンに溢れているのも特徴。特にエルヴァーン♀のモーションは優雅さと中二イズムを両立していると評価が高い。


デスペナルティ(武器)
FF11の最強武器の一つ「ミシックウェポン」に属するコルセア専用の銃。名前の元ネタは多分VIIヴィンセントの最強銃。
前述したコルセアの始祖ルザフの愛銃で、何代か前の武器フェチ聖皇によって蒐集され、今は皇国の宝物庫にある。設定通りの大口径短銃で、口径は目測だが70mmは余裕で越えてそう。これは銃じゃなくてもはや大砲なのでは……
しかしコルセア専用武器だからか、そのいかにも威力特化っぽい外見に反し、その性能は思いっきり短銃型(威力が低く、発射間隔が短い)で若干拍子抜けする。
まあ短銃としては抜群の性能を持ち、「クイックドローの性能アップ」という独自プロパティに加え、全武器中でも最強を争う属性WS*2「レデンサリュート」をボーナス付きで使用できる極めて攻撃的な武器である。
さらに最終強化状態でアイテムとして使用することで、1時間に1回だけ特殊な弾丸「ライヴブレット」が取り出せる。魔法ダメージに特化した弾丸で、レデンサリュートやクイックドローの性能をより高めてくれる。


ルザフリング(防具)
ファントムロールの効果範囲を広げる指輪。Lv40以上で装備可能。
コルセアにとっての必須装備の一つであり、末永く、というかカンストして以降もずっとお世話になる。
ただしファントムロールは「狭い範囲だけにかけたい」という場合もあるため、常時指輪をつけたりはずしたりできるようにマクロを設計する必要がある。浮気妻かなにか?


ナバーチアタイア(防具)
アビセアエリアで手に入るジョブ専用防具「エンピリアン装束」のコルセア版。LV90で装備可能。
瀟洒でクールなアーティファクト(LV60で装備できる専用防具)やレリック装束(LV75で装備できる専用防具)とは方向性が大きく異なり、金縁が施された真紅のフロックコートや、眼帯と羽飾りつきの三角帽など、
どちらかと言うと「おとぎ話の海賊船長」風のストレートなかっこよさを押し出してきた感じになっている。
コルセアの専用防具はどれも非常に優秀だが、この装備も文句なしで高性能。高い射撃性能を持ちつつ特定のファントムロールを強化するプロパティを持ち、使い勝手は抜群。
99以上では強化版である「シャスーアタイア」に打ち直しが可能。


◆「プレイヤー的な意味でのコルセアの歴史」

※ここからはややディープな用語が登場します。


1 『大いなる力

FF11におけるルーキーは、概ね悲惨な状態で環境という大海原に蹴り出されるものだが、コルセアの場合は珍しく順調な船出を迎えている。
とはいっても、それは当時のコルセアの性能が優れていたからというわけではない。
射撃能力は到底実戦では使えないレベルで低く、強化能力にしてもバッファーの雄である吟遊詩人には及ぶべくもない性能しかなかった。

そんなコルセアがレベル上げパーティ内でいきなり席を確保できたのは、大きく分けて2つの理由がある。

1.「バッファー不足」
当時存在した18ジョブ中、専職のバッファーは詩人ただ1人。それに次ぐ強化性能を持っていた赤魔道士を加えたとしても、バッファー不足状況は明らかだった。
このため詩人に比べれば大きく強化性能に劣るコルセアでも、充分に需要があったのである。

2.「コルセアズロール」
そして最大の原因となったのが、コルセアがジョブ所得時に無条件でもらえるファントムロール「コルセアズロール」の存在。
これが「所得経験値をアップさせる」という効果をもつファントムロールであり、強化性能の弱さを補うに足る効果を持っていたのである。

この2種の複合的理由によってコルセアはデビュー早々に中々の人気ジョブとなり、レベル上げに不自由することはあまりなかった。


2 『さいころ士と呼ばれた男』

そしてレベルを上げ切ったコルセアに待っていたのは、次なる海域「メリポパーティ」だった。

これを詳しく説明すると、まずFF11には「メリットポイント」、通称メリポという特殊な育成ポイントが存在する。
これはLv75(当時の上限)以上で経験値を稼ぐことで蓄積され、たまったポイントを好きなジョブ(経験値を稼いだジョブでなくてもよい)に割り振って性能を上げることができるというもの。
このメリットポイントを稼ぐことを目的としたパーティが、すなわちメリポパーティである。

レベル上げパーティに比べると「経験値を稼ぐ」という基本は変わらないものの、「ジョブが何でもいい(=最適化できる)」「レベル上げよりも遥かに膨大な経験値が必要」などといった点から、
必然的にモンハンのハメ部屋を思わせるような超効率優先プレイとなることが多かった。

そして所得経験値を増大させる能力を持つコルセアはこのメリポパーティにはうってつけの存在であり、戦士・忍者・赤魔道士・吟遊詩人と並んで鉄板のポジションを確保することに成功していた。

……割には、コルセアたちの顔は晴れなかった。
本来彼らが憧れた海賊(コルセア)は、
「伊達な三角帽子をかぶり、瀟洒なフロックコートをはためかせ、サーベルとピストルを操って、賽の目とカードに友と自身の運命を託す、大海原の無法者」
であったはずなのに、メリポパーティにおけるコルセアの姿は
「MPが上がるターバンを被り、MPが上がるシャツを着て、ケアル用の杖を背負い、ファントムロールを回しながらサポ白でケアルをする、ヒーラー(回復役)」
という最早なんのジョブだかわからない謎生物(通称「くいだおれ人形」)だったのである。

というのもメリポパーティの構成とコルセアの性能を鑑みると、
・コルセアの射撃能力が低すぎて、ダメージ源としてみなしがたい
・吟遊詩人は歌とpull(釣りとも言う。敵を選別してパーティがいる戦闘場所まで引っ張ってくること)に忙しく、また赤魔道士も強化魔法などで手一杯で、回復ができなかった
・ファントムロールは効果時間が長く、射撃をしないのならコルセアだけ必然的に時間が空いてしまう
などといった理由で、コルセアがサポートジョブ(メインジョブのレベルの半分だけ別ジョブの力を得ることができるシステム)を白にしてヒーラーをやるのが一番効率がいい、ということになってしまったのである。

その清々しいまでの「ファントムロールだけのジョブ」っぷりは、コルセア自身が「これもうコルセアじゃなくてさいころ士って名乗るべきじゃね?」と自嘲する程であった。


3 『パイレーツ・オブ・アビセアン

そんなイメージと乖離したさいころ士っぷりを発揮しつつも、しかし出番には不足していなかったコルセアだが、ついに彼らも大波に襲われる時がやってきた。『アビセア三部作』の実装である。

アビセア三部作の舞台となったアビセアエリアでは、一定の条件を満たすことで「ジェイド」「アートマ」といった超強化効果を得ることができたのだが、コルセアにとってはこれが思いっきりマイナスに作用した。
端的に言い表すと、つまり「こちらが強くなりすぎて、バッファーがいらなくなった」のである。

元々吟遊詩人やコルセアのようなバッファージョブは、攻撃があたらないor攻防比(こちらの攻撃力と敵の防御力の比率)が低すぎてダメージが通りにくい格上相手にこそ役に立つもの。
しかしこちらの性能が圧倒的なまでに向上したことで、ボス級のHNM(超強い敵)ですら実質的な格下状態となってしまい、バッファーを入れる必要性がなくなってしまったのだった。

とどめとばかりにアビセアエリアでは神器コルセアズロールも一切無効という向かい風で、コルセアはいよいよもって立つ瀬がなくなってしまった。


4 『コノシュンカンヲマッテイタンダー!

しかしアドゥリン三部作の終了後、最後の拡張ディスクとなった『アドゥリンの魔境』の実装に前後して、再び風向きが変わった。
アドゥリン初期のメインコンテンツとなった「メナスインスペクター」は、アビセアとは対照的に超格上と戦うコンテンツであり、必然的にバッファーの価値が再興したのである。

また当時の主流戦術は
モンク暗黒騎士を多数集め、吟遊詩人・コルセア・新参の風水士による多重強化を受け、白魔道士の範囲回復を当てにしながら、危険な技は学者がスタンで封じつつ、全力で殴り殺す」
という超絶脳筋リンチスタイルであり、コルセアを含めたバッファー3ジョブはこの先述の要として必須の存在とされていた。
おまけに時価数億ギルの装備を多数要求される詩人、新参故に魔法スクロールが高騰していた風水士と異なり、コルセアは始めるための「元手」が極めて安く済んだため、こうした点からも人気が急騰した。

その後こうした脳筋リンチ戦術は環境の変化によって地位を落としたが、コルセアの位置がそれに伴って下がるということは無かった。
なぜなら、この時期に主役であった特化近接アタッカー達に代わってその戦術ニッチを占めたのが、獣使いや召喚士といったペットジョブだったからである。
先にも触れた通り、こうしたペット編成に最も適性が高いバッファーはコルセアであり、ペット戦術に必須なジョブとしてむしろ地位を高めることになったのだった。

だがその後黒魔道士による魔法編成が復権したことによって、より魔法攻撃への適性が高い風水士がバッファー枠として躍進。
それに伴ってコルセア需要もやや後退することになったが、主流を譲ったとはいえペット編成も充分に現役であり、ペット編成用のバッファーとして鉄板の地位を保っていた。


5 『海賊王に、おれはなる!

そしてアドゥリンも後半期、新たなる育成ポイント「ジョブポイント」、通称ジョブポの実装により、かつてのコルセアの神器であったコルセアズロールが再浮上を遂げる。
ジョブポはレベル100以上の敵を倒すことで手に入る特殊な経験値であり、当然ながらコルセアズロールが有効であったため、これを稼ぐジョブポパーティにおいてコルセアは再び人気の存在となった。

またアビセア期を境に着実に強化が積み重ねられてきたコルセアの射撃能力は、この時期になると非常に強力なレベルに達していた。

ジョブポパーティは強化したいそのジョブ自身で参加する必要があったため、かつてのメリポパーティのような超効率特化編成というのが不可能に近い。
このため踊り子やからくり士がタンクをしたり、赤魔道士や召喚士が魔法アタッカーをしたりといった特殊なパーティがしばしば生まれることになり、必然的にコルセアもアタッカーを務める機会が増えた。
これによりコルセアの強力な射撃性能が多くの人の目に触れることになり、もはや立派なアタッカーの一人に数えられるレベルであることが知れ渡ったのである。

そしてつい最近、それまで最強の2文字をほしいままにしていた黒魔道士・学者・風水士の魔法攻撃トリオがついにその玉座を降りた。
このトリオの根幹部分を支えていた風水魔法の「魔法命中率アップ」「魔法回避率ダウン」の性能が一気に半分近くにまで弱体化され、格上への有効性が大きく低下したためである。
しかしこれは逆に言えば「魔法命中率さえ補えばいい」ということでもあり、魔法編成においても魔法命中率を上乗せできるコルセアの需要が増大することになった。

総じて言えば、現在のコルセアは物理(特に遠隔)編成・魔法編成・ペット編成のいずれにも有効なバッファーであり、かつアタッカーとしても十分な力を持っているという順風満帆な状態にある。
ただしやれることが増えた分、装備・各種育成ポイント・プレイヤースキルなどで顕著な差がつく状態になったため、昔に比べやや敷居が高くなってしまっている。



◆「有名人」


「微笑むのは幸運の女神か、悪運の死神か……。さあ、祈りな」

「クルタダ」Qultada (NPC)

エルヴァーン♂。アラパゴ暗礁域を根城とするコルセア「海猫党」の首領で、「疾風のクルタダ」の異名を持つ。乗艦はブラッククレイドル号。
アトルガン金貨40枚という高額賞金がかかっていながら、皇都アルザビ近辺にも平然と出没する大胆不敵な男で、いまだ若いが圧倒的なカリスマで一味をまとめている。
性格や外見は「お話の中の海賊」を形にしたような伊達男で、不羈かつ不遜、果敢で無謀、奔放でいて厳格な生粋のアウトロー。
彼を含めた海猫党をはじめ、現代のコルセアは「海賊」であることを重視する者が多いが、彼のみは重要な場面で始祖ルザフの言葉を引用するなど、イフラマド王国の残り香を感じさせる微妙な挙措が見られる。
コルセア関連のクエストの中心人物となる男で、そのあまりにも振り切ったカッコよさからプレイヤー人気も上々。
フェイス(疑似PTを組めるお助けNPC)としても実装されており、実質的な唯一のコルセア型バッファーフェイスとして活躍の機会も多い。


「……目的……か……。いずれ、わかる。アトルガン……いや、この世界すべての人間が知ることになる……。いずれな……。」

「ルザフ」Luzaf (NPC)

エルヴァーン♂。近年アルザビ近海~アラパゴ諸島で目撃されるようになった幽霊船、「アシュタリフ号」に乗り込んでいる謎の青年。
幽鬼のような人々で占められたアシュタリフ号クルーの中で唯一人間の形をとどめた「提督」であり、200年前に死んだコルセアの祖、ルザフ王子の名を名乗っている。
さらにその乗艦アシュタリフ号は、かつてルザフの乗艦だったブラックコフィン号にそっくりだという噂もあり、皇国の圧政に不満を募らせている旧イフラマド系住民を刺激しかねないとして、皇国首脳部も神経をとがらせている。
オリジナルのフェイスタイプを持つエルヴァーン男性で、アトルガンストーリーの中心人物としてミッション中盤~後半にかけて活躍する。
クルタダ同様フェイスとしても実装されているが、二刀流とクイックドローで攻撃しまくるアタッカー特化コルセアであり、火力はあるもののファントムロールを一切使ってくれない。


「いいザマだったね。」

「色男は怨みを買いやすいんだ」

「ふん、バカじゃないの?」

「ジーハ」Zweeha (NPC)

エルヴァーン♀。「海猫党」の副長。
露出度の高いファッションを身にまとった妙齢の女性で、しょっちゅう本拠地を開けるクルタダの代わりとして実質的なアジトのボスを務めている。
いかにもコルセアらしくきっぷの良い姉御肌の女性だが、クルタダにくらべると若干ヒネた感もある。
色々と奔放なクルタダのしりぬぐいで苦労させられているらしく、彼に対する口調も若干とげとげしいが、船長として彼に寄せている信頼は紛れもなく本物である。ようするにツンデレ







「……碧海の女神よ。今、ここにひとりの剛胆なる大海賊が誕生した。アニヲタ、共に追記:修正しよう……。その誓いを胸に、水平線の遥か彼方まで……。」






(他ジョブの項目へ)

【スタンドードジョブ】
戦士モンク白魔道士黒魔道士赤魔道士シーフ
【エキストラジョブ】
ナイト暗黒騎士獣使い吟遊詩人・狩人
【ジラートジョブ】
忍者竜騎士召喚士
【アトルガンジョブ】
青魔道士コルセアからくり士
【アルタナジョブ】
踊り子・学者
【アドゥリンジョブ】
風水士魔導剣士


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最終更新:2022年12月17日 02:42

*1 「ブリッツァロール」という近い効果を持つものがあるが、これは「ゲージ蓄積量を犠牲にして攻撃間隔を短くする」という似て非なるもの

*2 物理ダメージではなく、属性魔法ダメージを与えるWS