タイレーツ

登録日:2019/12/14 Fri 00:22:09
更新日:2024/04/15 Mon 17:54:54
所要時間:約 10 分で読めます





ヘイチョーと呼ばれる1匹とヘイと呼ばれる5匹で一つ。ヘイチョーの命令は絶対。



出典:ポケットモンスター、73話『ピカチュウ隊長!進めタイレーツ!!』、
19年11月17日~2022年12月16日まで放送。
OLM、テレビ東京、MEDIANET、ShoPro、
©Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku ©Pokémon


タイレーツとは、『ポケットモンスター』シリーズのポケモンの一種である。



■データ


ガラル図鑑No.345
全国図鑑No.870
分類:じんけいポケモン
英語名:Falinks
高さ:3.0m
重さ:62.0kg
タマゴグループ:妖精/鉱物
性別:不明

タイプ:かくとう

特性:カブトアーマー(攻撃が急所に当たらなくなる)
隠れ特性:まけんき(相手によって能力が下げられると、攻撃が二段階上昇する)

種族値
HP:65
攻撃:100
防御:100
特攻:70
特防:60
素早さ:75
合計:470

努力値:攻撃+2、特防+1


■概要


ソード・シールド』で登場した種。
その名の通り、隊列を組んでいるポケモン。
一見するとスーパーマリオシリーズに登場するハナチャンよろしく 巨大な芋虫 のような姿をしているが、
実際は先頭にヘイチョーと呼ばれる一回り大きい個体が立ち、その後ろにヘイと呼ばれる小さな個体が5匹並んでいる、6匹で1匹のポケモン。
性質上タマタマツンデツンデと同じく複数の個体が集まって一つの個体の「郡体型ポケモン」として登録されている。
本来の見た目は赤い角飾り付きの金色の兜と脇に二つの丸い盾のような物を身に付けた、
頭と短い足だけの黒い一頭身のポケモン。顔は水色の目のみで、丸っこくて可愛らしい姿である。

ヘイチョーはヘイより一回り大きい他、さらに下半身に兜と同じ色の部品を装着しており、リーダーらしく重厚な雰囲気となっている。
縦一列の状態だとヘイチョーは盾で目を隠し、ヘイも真後ろに整列していて顔は見えなかったが、実際はとても表情豊か
戦闘ではダメージを受けると(><)みたいな顔になるし、戦闘不能になると目をぐるぐるさせてダウンする。
キャンプだとこちらから呼び掛けたり、美味しいカレーを食べさせたりすると跳ねて大喜びするなど、表情豊かで実に愛くるしい。

ヘイチョーの命令には絶対服従で、戦闘の際には隊列を組みかえながら抜群のチームワークを発揮する、まさに軍隊のようなポケモンである。
元ネタはを用いた陣形「 ファランクス 」。見た目の由来はその戦法を取った「 スパルタ兵 」とその王「 レオニダス一世 」だろうか(詳細は後述)。
英語名もそれを意識してか「 Falinks (ファリンクス)」となっている。持っている丸い盾も実際に彼らの用いた盾がモデルだろう。
戦闘でも技を繰り出す際には隊列を変えることがあり、鶴翼の陣など元ネタも存在する。

初見のインパクトとは裏腹の仕草によるギャップにやられ、則旅パにした人も存在するほどで、人気は高め。
カービィに出てきそう」「レオニダスに似ている」という声もちらほら。

色違いは金色の兜赤い角から茶色の兜黄色の角になっている。(体色や目はそのまま)

なお、性別不明扱いだが、これは一匹一匹の性別がバラバラかもしれないという事情ゆえのことと思われる。


■ゲームでのタイレーツ


野生として生息する彼らの姿を目の当たりにするのは8番道路。
遺跡のような道を進んでいくと巣穴から巣穴に掛けてドタドタと走り抜ける群体や、ゆっくりと行進する群体を見ることができる。
その音と移動する姿にインパクトを受けたトレーナーも多く、一見すると芋虫然とした姿から避けたくなるプレイヤーもちらほらいたとか。
実際にエンカウントしてみてもその見た目や、かつてグソクムシャの専用わざとして有名だった「であいがしら」を放ってくることから、
むしタイプと勘違いしていたトレーナーも少なくないだろう。
だが実際は前述の通り、六匹一組のポケモン。寧ろ一匹一匹のビジュアルとしては可愛らしい姿をしている。
戦闘開始時に陣形を変えた時に見せる本当の姿を見て衝撃を受けた人も多いだろう。

ストーリーではチャンピオンカップのトーナメントにおいてサイトウが使用する。
可愛い見た目をしているからと言って甘く見ていると、その隠されたスペックに痛手を受けてしまうことになる。

『スカーレット・バイオレット』では戦闘不能演出が目を閉じる演出に変更された。トレーナーではオレンジ/グレープアカデミーのバトル学教師であるキハダがクリア後に行われる「学校最強大会」にて先発で使用する。

■対戦でのタイレーツ


種族値としては攻撃と防御がそこそこ高いくらいで、可もなく不可もないと言わざるを得ない平々凡々なステータス。
覚える技も手が存在しないことから「ドレインパンチ」や三色パンチなどのパンチ技は覚えない。でも「かわらわり」や「インファイト」は使用できる。
足こそ存在するが、とても短いので「とびひざけり」のような足技も覚えないなど、ラインナップも微妙。
ただし、兜を装備していることから頭に関連した技は多く覚え、「アイアンヘッド」や「しねんのずつき」、兜の先端には角もあることから「メガホーン」や「じごくづき」も使用可能。
かくとうタイプ御用達のいわ技こと「ストーンエッジ」は覚えることが出来ず、代わりに「いわなだれ」は習得可能と範囲自体はそこそこあるものの、
威力も微妙でかくとう単タイプとしては突出した点が見当たらない。

だが侮ることなかれ、このタイレーツにはタイレーツたらしめる恐ろしい技が存在する。
それが「はいすいのじん」という専用技である。
この技は発動すると自分が交代、逃走が出来なくする代わりに全能力を一段階上昇させるというとんでもない積み技なのだ。
自分の退路を断つことで自らを追い込み、能力を高めるその姿はまさに「背水の陣」。

前述した通りタイレーツの種族値は特別高くはないが、低くもない。
それが全能力一段階上昇するともなれば、凄まじい攻撃力と早々に倒れない耐久力、更にはかくとうタイプでもトップクラスの素早さを手に入れることになるのだ。
(ようきAS252で1回積むとA156、S138相当。ガラル地方のポケモンではなんとドラパルトに次ぐ速さとなる)
そんな状態で上から叩き込まれる「インファイト」は凄まじい火力を発揮し、「アイアンヘッド」や「いわなだれ」などによるひるみ戦法などでもされた日にはあっさりと三タテされることも。
物理防御も高いため、並の物理技では早々に落ちない。

更には剣盾にはダイマックスという目玉システムが存在する。
これによって体力が最大2倍になり、耐久力に磨きがかかる他、かくとうタイプの技は「ダイナックル」として攻撃力一段階上昇、
はがねタイプの技は「ダイスチル」として防御一段階上昇など更にステータスが高まることになってしまう。
こうなった時には最早隊列などではない、大軍の如き戦闘力を手にする恐ろしいポケモンとなってしまうのだ。

特性も優秀で、「カブトアーマー」であれば積みエースの悩みの種でもある急所に困ることもなくなる。
だが現在メジャーなのは隠れ特性は「まけんき」。「いかく」や「がんせきふうじ」などでステータスを下げられれば、攻撃が二段階上昇することとなる。
こうなったタイレーツの攻撃を一体誰が受け止められるのか。
前述の「いかく」や「がんせきふうじ」などは採用率も高い他、ダイマックス中の技には一部、相手のステータスを下げるものが存在するので発動機会も多い。
タイレーツを止める手段がなければ、あっという間にパーティーは壊滅状態に追いやられることになるだろう。

弱点は、「はいすいのじん」そのもの。
タイレーツの強さはまさにこの「はいすいのじん」ありきと言っても過言ではなく、これが「ちょうはつ」などで封じられれば特別強くもないポケモンに成り下がってしまう。
「アンコール」されてしまえば、延々と交代できず「はいすいのじん」を使うだけの敗残兵に。

また発動できたとしても「はいすいのじん」を使ってしまえば交代が出来なくなってしまう上、
この技を発動して自身が逃げられない状態になると「はいすいのじん」をもう一度発動しても能力が上昇しなくなる。
このためドヒドイデなどの攻撃がまともに通らない耐久型のポケモンが来てしまえば突破することも交代することも出来ず、じわじわと嬲られる羽目になる。
当然交代できないことを利用して逆に相手の積みの起点にされてしまうことも。特にアーマーガアには要注意。

また物理アタッカーの宿命として「おにび」を初めとした状態異常に弱い。
物理耐久は高いが、特殊耐久は低いので特殊技で攻め続けられると陥落してしまう。
「はいすいのじん」は特攻も上昇するが、タイレーツ自身の特攻は高くもなく、特殊技も殆ど覚えないため恩恵は少ない。
せいぜい「きあいだま」を撃つときに特攻上昇が役立つ程度と言ったところである。
このため持ち物は行動回数を増やす「きあいのタスキ」、または「おにび」対策の「ラムのみ」、
最速で「はいすいのじん」を発動させるための「こだわりスカーフ」などが主流となっている。
「こだわりスカーフ」は一見積み技とは相性最悪のようにも見えるが、ダイマックスすれば拘り系アイテムの制限が解除されるので一気に大暴れ出来る。
ただし、ダイマックス中に倒し切れなかった場合は……お察しください。
また「きれいなぬけがら」を持たせると、背水の陣の使用後でも交代できる仕様が存在する。パッと見地味だが、リスクを恐れずに積んでいけるので精神面でのプラスは大きいだろう。

第九世代のパルデア地方では、くさタイプ版「ニトロチャージ」とも言える「くさわけ」を習得しており、技範囲拡大及び素早さの底上げが可能に。
相性の良かったダイマックスは廃止されたものの、新たな新システムことテラスタルとの相性は悪くなく、耐性や火力の補強に一役買ってくれる。
特にゴーストタイプにテラスタルすることで「はいすいのじん」最大の問題点だった交代不可のデメリットを踏み倒すことが可能になっている。
テラバーストで太刀打ちしにくかったゴーストタイプにも一矢報いれる。
かくとうテラスタルならインファイトを倍の威力で打てるので、剣盾とはまた違った使用感になるだろう。

よってタイレーツをパーティーに組み込む際には如何にして「はいすいのじん」を使う機会を作り出せるか否かで命運が決まると言っても過言ではない。
相手ポケモンを「アンコール」などで縛る、「ステルスロック」などを撒いてタスキを潰す、
「ひかりのかべ」や「リフレクター」を張って耐久力を高めてあげるなどのサポートもあると心強い。
万全の準備を整えた上で出陣したタイレーツは、まさに一騎当千の如き活躍を見せてくれるだろう。
え? 6匹いるから一騎じゃないって? 考えるな、感じろ。

■アニメでのタイレーツ


新無印』の73話に登場。
CV:光部樹(ヘイチョー)、坂田将吾(ヘイ)
チームを組んだばかりのタイレーツであり、未熟なためチームワークがバラバラ。
アクシデントでヘイチョーとヘイがバラバラになってしまった際、ヘイチョーはゴウのポケモンと一緒に上手く指示を出す練習をする。

その練習のかいもありコオリッポとのバトルで勝つほどチームワークを磨いた。
その後、ヘイ達と相談の末に自分達の練習に付き合ってくれたゴウにゲットされる道を選ぶ

因みにバトルでは使用されなかったが、サイトウも持っていることが明かされている。


■余談



前述通り見た目の元ネタは紀元前5世紀のスパルタ王「レオニダス一世」だと思われる。
ペルシア戦争でギリシャ連合軍に参加、テルモピュライの戦いでペルシアの数万もの大軍*1相手にわずかスパルタの少数精鋭300人で三日間に渡って食い止めた。
自身も含めて軍は壊滅するも彼らが時間を稼いだおかげで連合軍は次の戦闘までの準備を蓄えることができ、見事ペルシア軍に勝利。
貢献したレオニダスは「スパルタ随一の英雄」とも呼ばれるようになった。
彼のことを題材にした映画キャラクターも作られているため、知っている人も多いはず。
タイレーツもレオニダスのことをオマージュしているようなところも見受けられ、

  • ヘイチョーとヘイ→レオニダスと少数精鋭
  • 兜の形→スパルタ兵士の被っていた兜と形状が似ている。レオニダスもこれを被った像が残されている。
  • 隊列を組む→ファランクスも複数の兵の隊列によって行動する。スパルタ軍も戦闘でこれを組み防戦していた。
  • わざの「はいすいのじん」→紀元前3世紀の楚漢戦争の「井陘の戦い」で漢軍が取った戦術「背水の陣」がモチーフ。
    こちらは「絶対に逃げられない状況下で必死に戦う」という意味が込められており、ちょうどテルモピュライの戦いのスパルタ軍の戦況と類似している。
などが確認できる。
+ コラム:史実における「テルモピュライの戦い」&「背水の陣」
上で「テルモピュライの戦いと井陘の戦いは似ている」と記述したが、実際には井陘の戦いは不利な側の漢軍が勝利している

これは単に兵が「背水の陣」で奮戦したからだけでなく、敢えて不利な陣を組む事で敵を油断させ、敵拠点の防衛戦力を戦場まで誘き寄せた上で別働隊に拠点を奇襲させたため。
「背水の陣」の真価はむしろ、敵を拠点から引きずり出す「調虎離山」の策にあると見る向きもある。

ではテルモピュライの戦いにおけるスパルタ軍が無策な脳筋だったかというとそうでもなく、彼らは彼らで騎馬兵の苦手な狭く険しい地に陣を敷き、その狭い陣一杯に長槍を用いたファランクスを展開してペルシャ軍を迎え撃った。
即ち彼らは、脳筋のイメージと裏腹に地形と武装、戦術の利を最大限に活かして敵の利点を削ぐ非常に効率的な戦い方をしていたのである。

要は、単に「逆境をバネに奮戦した」のではなく、「逆境を込みで策を張り巡らせたからこそ戦果を挙げた」という点こそが両軍の共通点と言える。
ある意味、これはこれで「無闇に『はいすいのじん』に頼るのではなく、タイミングを考えて使うべき」というタイレーツの運用方針にも言える話……なのかもしれない。

デザインを担当したのはストリンダーやウィロー博士と同じくコザキユースケ氏である。
コザキ氏いわく「見た目が虫なのはエスパーに対する威嚇」との事。


追記・修正はヘイチョーの命令に従い、陣形を組んでからお願いします。
ヘイチョー「40秒で支度しな!」
ヘイ達「ヘイッ!」

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最終更新:2024年04月15日 17:54

*1 歴史書によると200万もの兵士がいたらしいがどう見ても過剰な数字なので、実際は20万人から1万人だっただろうと言われている。どちらにせよ非常に人数が多いが。