吃音症(障害)

登録日:2011/07/24(日) 11:09:13
更新日:2024/03/28 Thu 09:06:47
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※ご自身の健康問題については、専門の医療機関に相談してください

吃音症(きつおんしょう)とは、言語障害の一種で、恐らく最も我々に身近な言語障害であると言える。
なぜならこの障害は100人に1人が当てはまると言われているほどだからだ。
つまり学年に1人はいるかもしれないということ。

症状

吃音症の主な症状はやはり吃る(どもる)ことだろう。
普通の人も慌てたり緊張したりした時に吃るだろうが、吃音の人は普通に話す時にも吃ってしまう

しかし世間ではまだあまり認知はされていない様子。
学校の教師ですら知らない人もいて、その後の吃音の重軽度がきまる小学生の時に吃ったため教科書が読めなかったり、発表ができないために理不尽に叱られたりしたせいで悪化してしまう場合がある。
それを引きずったまま受験や就職の際の面接に臨もうものなら、難易度はそれだけで理不尽ゲーレベルに上昇する。何せ質問に答えたり自己PRをしたくても、面接特有の緊張感もあって悉くどもってしまい不採用……なんて事態がザラに起こるからだ。

吃音症には種類がある。人によっては1つだけだったり複合型だったりする。

  • 連発型
「おおおおおおはよう」
「ごごごごごごちそうさま」
など言葉の最初の音を連続して言ってしまう症状。
一度言ってしまえば後はだいたい普通に言える。
はたから見るとわざと言っているようにみえるかもしれない。
だが実際はその次の言葉が言えない状態で、言葉を途中で区切るとまた連発してしまうこともある。

  • 難発型
「……………おはよう」
「……………ごちそうさま」
言葉の最初の音が出ない症状。
文字だけ見ると無口な人のように思えるが、実際に相対すると何かを話そうとしている様子がうかがえる。
こちらも一呼吸置いたり、誰かが話した後に話そうとするとまた言葉が出なくなったりすることがある。

  • 伸発型
「おーーーーはよう」
「ごーーーちそうさま」
など言葉の最初の音を伸ばして言ってしまう症状。
こちらも次の言葉が出ない状態で、一度言えれば後は続いて言える。

これらの症状は上記に書いた通り2つや3つ合わせて持ってしまうことがあり、連発と難発を合わせてもってしまうと
「お…………お………おおおおはよう」
という感じになってしまう。


吃音症の人は話すとき、自分の言いやすい言葉を選んで話す特徴があるため、時に婉曲的(悪く言えば回りくどい)独特な言い方をすることがある。
  • アップルパイ→リンゴを使った焼いた菓子
  • お粥→粥・ご飯をお湯で柔らかくして

また物を買う時や何かを発表する時は、自分が他人に説明しやすい名前の物を選ぶなどして吃ることを避ける傾向がある。
例えば、を飼うときダックスフントが欲しかったが、「ダ」で吃るので他人に犬種を言えないからシーズーを飼うなど。

その他、なるべく吃らないうちに言い切ってしまおうと早口に話すのも吃音の特徴である。


◇吃音症の人との関わり方

話す時に吃ったり早口だったときに、「もっとゆっくり喋れ!」というのは禁句。
吃音の人はゆっくりでも話せなくて、必死に話そうとしてる時にそう返されるとかなり傷つく。
同時に「あ?何言ってるの?モゴモゴ喋んなハッキリもの言えや」なんて正に駄目。
頑張ってようやく話せたのにそんな風に一蹴されては、悲しいなんてものではない。

「聞こえない、ちゃんと言って」と急かすように聞き直すのもオススメしない。
不快感を与えないように「ごめん、聞き取れなかったからもう一回」と、聞き返すように普通に接してくれたら大変嬉しい

だからといって、じゃあ明るく流そう!と「え~何言ってるかわっかんなーい♪はいもう一回☆」「ああ、うん、そうだね!よく分かったよ!(棒)」などと茶化すのもNG
重ね重ね言うが喋ってる側は 真剣に伝えようとしている ので、それを茶化されたら悲しいを通り越して屈辱である。あくまでも普通の人と話すように最初に聞き取れなかったことに詫びを入れてそれから聞き返してください。
ましてたまにからかい半分でどもりを真似するなど論外である。特に小児などのいじめで行われる手口だが、幼いうちに吃音の真似をし過ぎるといつの間にかそれがクセになってしまい普通の喋り方ができなくなった……というケースが少なからずある。
自業自得以外の何物でもないが、こんな場面を見かけたら、からかい半分でも相手を傷付けていること、自分も滑らかに話せなくなってしまうことをしっかり言い聞かせていただきたい。

と色々述べたが、このあたりは本人の受け取り方次第な所があるので、傷つく人もいれば、吃音を受け入れてあまり傷つかない人もいる。コミュニケーションである以上、明確に正しい対応というのは無いのかもしれない。
ただ、何気ない会話で相手がやたらとつっかえたり、真剣な話をしているのに妙な言い方で喋られたりしてイライラするのは重々承知だが、 怒りをぶつけた所で望み通りスラスラ喋るようには絶対なってくれない。 それができるなら苦労しないし、とっくの昔にやっている。
なのでイライラをぐっと堪え、下に記すように出来る限り穏便に、あせらず、気長に相手が喋るのを待ち、促してあげよう。

本人は決してふざけている訳でもあなたを馬鹿にしている訳でもなく、必死に意思を伝えようとしているのだから。

そもそも人との接し方にマニュアルなんてないし、相手によって対応の仕方なんて変化するもの。
しかしそれでも
面白おかしく茶化さない・軽蔑しない。この二つは大切にして欲しい。
会話するとき然り、聞き返すとき然り、普通に接すれば何も問題は無いのだから。


吃音の特性を持つ人々

実在・存命・架空問わず列挙する。
  • アルバート・フレデリック・アーサー・ジョージ
イギリス国王ジョージ6世。故・エリザベス2世陛下の父君。
アカデミー賞に輝いた映画『英国王のスピーチ』では、彼が言語聴覚士とともに吃音矯正に挑む様子が描かれる。

本名チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン。イギリスの数学者にして作家。代表作に『不思議の国のアリス』など。
また、同作の序盤にはドードー鳥が登場するが、これはキャロルが苗字を名乗るときに「ド」でつっかえることが多かったのでその投影とされる。

アメリカ合衆国のピアニスト・歌手。
一時は吃音のコンプレックスから身を持ち崩しかけるも、吃音を逆手にとったスキャットを取り入れた楽曲で一躍有名になった。

  • 重松清
日本国の作家。自身の自伝的小説『きよしこ』はドラマ化もされた。

古代中国・春秋戦国時代末期の学者。
王族ながらも吃音のため祖国の宮廷では重んじられなかったが、学術に励み、切れ味鋭い大量の論文を記述。
その論文を読んだ隣国の秦王政に抜擢されるが、秦国宮廷の陰謀を渡りきれず死亡した。

中国・三国時代末期の人物。
下積み時代は長かったが、農政や軍政における才能を司馬懿一族に高く評価され、最終的には蜀漢を滅ぼす功績を挙げる。
しかしその直後に見せ始めた傲慢さと、他の同僚たちへの横柄さによって消されてしまった。

  • ブレインズ/ホラチオ・ハッケンバッカー
特撮テレビ番組『サンダーバード』の登場人物。
天才的な頭脳の持ち主ゆえ「ブレインズ」というニックネームで呼ばれるが、
頭の回転が早すぎて言葉を口に出す速度が追いつかないので吃音という設定。





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最終更新:2024年03月28日 09:06