ふたば系ゆっくりいじめ 386 最終地獄

最終地獄 12KB


※<宣伝>『ふたば系ゆっくりいじめ 385 どうしてそう思ったの?』 のおまけ的なSSです</宣伝>










ここ、泥輪町には、『ゆっくり清掃工場』に並び、ゆっくりを利用した画期的な施設がもう一つある。
これはガチで世界初の施設だ。
世界中が注目していると言っても過言ではなかった。

『ゆっくり清掃工場』を中破せしめた大地震も、この施設には傷一つ与えることすら叶わなかった。
それはつまりどれだけ予算が投じられ、災害対策が成されているという事なのだが、
途方も無いほどの巨額がこの施設に投じられたという事を物語っていた。

では、その施設がどのような役割を果たすのか、少し見てみよう。










        最終地獄 ~または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか~










深く、深く、地下深く。
施設内。
ある一人の男が、無人の通路を歩いている。
その表情は――見えない。
男は防護服を纏っていた。それも、凄まじく厳重なものを。

通路の奥深く、そこで彼は一旦止まる。
目の前には重厚極まりない鉄――何かしらの金属――の扉があった。
懐からカードキーを取り出し、通し、12ケタの暗証番号を入力する。
それで漸く、扉は開くのだ。

扉に備えられたバルブが自動回転し、ゆっくりと大気を吹く。
調圧完了。
1~2メートル程の分厚さを誇る厳しい金属板が開いていく様は、なんとも壮観だろう。

―――まるで核シェルターだな。
男は毎回、ここに来る度にそんな事をふと考える。
いや、間違ってはいないのだろう。
一つ違うとするなら、これは外からではなく内からの………
扉が開ききった。男は考えを打ち切る。

部屋の中へと進む。
そこにはまた扉が。
更にその先には、もうひとつ扉が待ち構えているだろう。
三重の封印、そんなものが果たして必要なのかどうか。
あんなに可愛くて、安全……?なのに。
彼は時々そのことを疑問に思う。



ここまで仰々しい過程をこなさねば彼は「彼女たち」に出会う事は出来ない。
そういう決まりなのだ。
だが、それを苦と思った事は一度も無い。
なんたって、彼は「彼女たち」が好きでこの仕事を選んだようなものだからだ。

最後の扉が開く。
防護マスクの下で、最高の笑顔を浮かべながら―――





「ゆっくりしていってね!!!」

「うにゅ?」
「うにゅ!おにーさん!」
「おにーさんだ!」
「うにゅ!!ゆっくりしていってね!!!」





ここは、世界初の放射性廃棄物、その最終処分場。
通称「しゃくねつじごく」である。










「さぁみんな、ご飯だよ。沢山お食べ」
『うにゅーーーっ!!!』

おとこはおくう達に『ご飯』を振舞う。
勿論それはただの食料ではなく、それどころか世界でも有数の危険物質と呼べる代物だった。

青かったり、光ってたり、なんだかradっぽい石とか何とかかんとか。
とにかくそういう尋常の神経の持ち主ならば一度たりともお目にかかりたくないものを、おくう達は食べている。
それも幸せそうに。
男も幸せそう。
別に脳が放射線でやられたとかそういう訳ではない。
単純におくう達の姿を微笑ましく眺めているのだ。



ここでもう一つ追加設定。
ゆっくり達が無生物ならばなんでも餡子に変換することはもう前作とかで散々に挙げた。
そして、特定のゆっくりには好みというものが存在するのだ。

例えば、ゆっくりもこう。
彼女は主に焼き鳥と灰を好んで食べる習性がある。

他にも、ゆっくりひなは不幸、というか厄、ゆっくりにとりは機械(をバラす)、ゆっくりめでぃすんの毒物。
ありすのとかいは、ぱちゅりーの本好き、ゆうかの植物を栽培する、といった行動もこの好みの範疇とされる。
(あと、てるよふは怠惰が好物で、よく惰眠を貪っている、なんつって)

そしてこのゆっくりおくうは、核燃料、あるいは廃棄物を好物とするのだ。
おまけに放射能などはほぼ消える。
とんでもない厨ゆっくりである。



「お兄さん、いつもごはん、ありがとね」
「いや、お礼なんていいんだよ。好きでやってるんだし」

そう言いながら彼の横にちょこんと腰かけ、何やらヤバそうな物をパクついているのは、
胴付きのゆっくりおくう(以後、彼女をうにゅほと呼称する)。
1000匹にもなるこの部屋唯一の胴付きゆっくりである。
彼は微笑みながらその様をじっくりと鑑賞する。
実際好きでもないとこんな仕事やってられないだろう。

「………お兄さん、ちょっと……食べてるの見られると、はずかしい、かも」
「あっ、ごめん!あっち向くから!ゆっくり食べててね!」
「ん、ありがと……ごめんね」

放射能が飛び交う中でラブコメじみた会話を繰り広げるふたり。

『うーにゅ、うーにゅ、しあわせー!!!』

ぺかー

「おお光った、綺麗だなぁ」

クァンタムな食料を咀嚼、訂正、飲み込み、喜びの声を上げるおくう達。
その身体からはなんとも綺麗な、チェレンコフっぽい青い光が漏れ出している。
綺麗の二文字で済ます辺り、この男、神経ぶっといなぁ、である。



元々彼は、ゆっくりおくう種が病的なほどに好きだった。
それが高じて、原発職員――当時からおくう種は原発で利用され始めた――に就職したほどだ。
幸せだった。例えようも無く幸福だった。
ガラスの向こう、遠くから眺めるゆっくりおくうの姿。
それだけで毎日胸が高鳴っていた。

そこに振って湧いた最終処分場「しゃくねつじごく」の話。
1000匹単位のゆっくりおくうと(防護服越しに)触れ合えるなんて。
右を見ても左を見ても上も下もおくうだらけ。
一も二も無く彼は飛びついた。
狂喜して他の職員から仕事を奪い、毎日こうしてうにゅほと会う始末である。

ついでに、此処「しゃくねつじごく」では副業的に、
原発の真似事、つまり原子力発電も行われている。
「副業でやるもんじゃねぇだろソレ」とかツッコミが入りそうであるが、そんなもん知らん。

………泥輪町がゆっくり清掃工場だの、放射性廃棄物の処分場(兼原発)だの、
バイオハザードかクライシスパニックでも引き起こしたいかのような施設ばっかり建ててるんだ、
という疑問には答える事は出来ない。
ぶっちゃけるならそういう設定だからだ。
こまけぇこたぁ(ry
それにそのお陰もあってか、泥輪町、ひいては虹浦市には莫大な補助金が下りている。



「……で、『この家には囲い(サークル)が出来たのかね?』って上司が言ったんだよ。
 そこで僕は答えたね。
 『へぇ、そいつはSir Cool!(かっこいー)』ってさ」

「……う、うん…………あの、お兄さん?」
「うん?」
「このまえ言ってた、ゆーえんちのこと、教えて?」
「うん、いいよ。えっとね、遊園地ってのは………」

彼はうにゅほに毎日こうして、食後に外の世界の出来事を教えている。
そうして欲しい、と、うにゅほにせがまれたからだ。
彼女とおしゃべりできるのは彼にとって至上の喜びであり、断る理由など一つもないため、
出来得る限りの話題を毎日探しては話している。

「そんで、ジェットコースターってのが酷くアクロバティックな乗り物で………あ」

男の左腕、そこに巻かれた時計が鳴る。
これは合図だ。残酷な合図。

「………今日も、これでおしまい?」
「……うん、ごめん」

酷く悲しげなうにゅほの顔を正視しきれずに、俯きながらも肯定する。
一日につき1時間、それが彼にとってうにゅほと一緒に居られる時間だった。
それももう、過ぎ去ろうとしている。

「これ以上は規定で罰則になっちゃうから。
 本当に、ごめん。
 ………明日も、絶対来るから……それじゃ」
「……まって、お兄さん!」

謝り立ち去ろうとする男の防護服を、うにゅほが掴んだ。
くしゃりとよれる程度の、非力な握力。
しかしそれは、男を引き止めるには十分すぎるほどだった。

「………ほんとうに、明日もきてくれる?」
「もちろん、約束するよ」

そっと、彼の背に頭を預けるうにゅほ。
防護服というどうしようもない隔たりを介して、うにゅほの体温が伝わる。
脱ぎ捨てたい。
こんなもの脱ぎ捨てて、彼女を抱きしめてやりたいと、男の脳裏に衝動が走っていた。

「……ごめんね、わがまま言って。お兄さん、私とのやくそくやぶった事ないもんね。
 …………嫌だったよね、お兄さん」
「嫌じゃない!」

思わず、叫んでいた。
振り返り、少ししゃがみ、うにゅほの肩を掴む。
「うにゅっ」と彼女は少し怯んだようだが、関係ない。
兎に角、想いをぶつけてやる。
後悔はその後だ。

「僕は嫌だと思った事なんて一片も無い!
 僕がこんな場所まで来る理由、それは君達に、いや、君に会う為なんだ!
 そうでなけりゃ元からここの職員になろうとすらしなかった!!
 いいかい、僕は、君が好きなんだ!
 分かったら二度とそんな事を言わないでくれ!」

「え………あ……う、うん………」

一言ずつ喋る度に、うにゅほの顔が赤く染まっていく。
防護マスクに遮られてよく見えないが、きっと彼も似たようなものだろう。
だが収まらない。
この程度では収まるはずも無かった。

うにゅほの額に、マスクをぴたり、とつける。
特に意味は無いが、気持ちの問題だ。
そっと、彼女にだけ分かる程度の声で話しかける。

「…………いつか絶対、君を此処から連れ出して見せる。
 今は無理だけど、いつか、絶対だ。
 だから、それまで我慢しててくれ」

「……え………?」

うにゅほの瞳が、驚きに見開かれる。
今まで思いつきすらしなかった外への想い。
それを彼は連れ出してくれるというのだ。
じんわりと、胸から何か温かいものがこみ上げてくる。

「……えっ、あぁっ!?
 泣いてるっ!!?
 ご、ごめん、僕、君の事を考えずに、勝手に……」

「………ううん、ちがうの、お兄さん………」

とは言っても、涙は止まらなかった。
ぽろぽろと、透明な雫が落ちていく。
慌てふためく彼に、出来る限りの笑顔をのせて、

「嬉しいの。ありがとう、お兄さん」

うにゅほはそう囁いた。










「うにゅー、おにーさん、いっちゃうのー?」
「ばいばーい」
「またきてねー」

「それじゃ、お兄さん。また明日。
 ………やくそく、忘れちゃやだよ?」
「HAHA、任せなさい。
 明日また君達の元に必ず参上します、ってね。
 ………いかん、もう時間ギリギリだ」

再び開いた扉に身を挟んで、男は今日最後となるおくう達との会話を交わす。
見送りには1000体のゆっくりおくう(と、それなりの量の残留放射能)。
彼にとっては名残惜しい。
また明日の同じ時間を夢見て、職務に復帰しなくてはならない。

「よっし、それじゃ、また明日。
 ………うにゅほ、さっき言ったこと、本気だからな。
 ちゃんと考えててくれよ」
「…………うん、お兄さん」

「うにゅ?」
「うにゅほ、さっきいったことってなにー?」
「おくーたちにもおしえてー」

ぴょんぴょんとうにゅほに群がるおくう達。
もちろん、その程度で彼女が喋る事は無かった。

少しずつ、扉が閉まっていく。

「………あのっ、お兄さん!」
「えっ、あっ、何!?
 もうすぐ扉閉まっちゃうよ!!」

もうほぼ完全に扉が閉まりかけた頃、うにゅほは弾かれるように声を上げる。
反射的に声を返す男。

「あの、ね………えと、お別れの、ごあいさつ。
 …………わたしと、ふゅーじょん、してね?」

「ああ、挨拶かっ!しまった忘れてた!
 OK、うにゅほ!えっと、なんだっけ?
 フュージョン承認!それどころかファイナルフュージョン承認!勝利の鍵はきm」

扉は閉まった。










(はぁ………鬱だ、これからまた通常業務か………)

とぼとぼと、無人の通路を歩いて帰る男。
その顔には覇気が無い。
それどころか、夢も希望も失くしたような顔つきだった。

(あ~嫌だ嫌だ、もっとゆっくりしたかったよ……違う、おくう達と戯れていたかった……)

テンションはダダ下がり、イケイケモードの真逆、鬱々モードだ。
彼にはおくうたちと会う、それ以外の業務は苦痛でしかない。
23時間後までこの調子が続くだろう。

(………それにしても、言ってしまった。
 我ながら、なんと大言壮語を吐いたものか)

うにゅほに言ったことを反芻する。
今更ながら、少々の気恥ずかしさに悶える男。
だけど相手もまんざらじゃなさそうだったので兎に角良かったとしか言いようが無い。
2~3時間ごとに思い出して喝采を叫んでも良いくらいだ。

彼には実際の権力として、「さいしゅうじごく」内のゆっくりをどうこうする力は無い。
ただし、それは今のうちだ。
これからもっともっと出世して――あるいは裏工作でもしようか――いかねばならない。
それがうにゅほの為になるのだから。

(………ところで、あの挨拶は一体なんだったのだろう?)

思い返す。
今日の最後、うにゅほに言われた挨拶を。
………フュージョンしてね、だったか?
今までそんな事は言われたことが無かった。

(フュージョン……合体……もしや、エロい事?
 おいおいおいおい何だそりゃあ色々漲ってきてしまうんですけど)

余計な妄想を滾らせ、挙動不審となる男。
結局その日は無駄なことを考えすぎて、仕事は(いつも通り)手につかなかった。
出世の決意も空回りである。



ちなみに。
彼の推測は当たらずとも遠からず、という所だ。

ゆっくりおくう種の「ふゅーじょんしてね」、という言葉は、
ゆっくり間の「すっと一緒にゆっくりしたい」という言葉とほぼ同義である。

つまり、彼はうにゅほからプロポーズを受けたわけなのだが。

悲しいかな、無知は罪。
女の方から告白させておきながら、一向にそれを知る由も無い男なのであった。










余談。

元々ワーカホリック気味(限定)だった彼は、この日を境に完璧なそれへと移行。
仕事仲間から「自殺志願者(仕事的、被爆的な意味で)」の称号を頂き、出世街道を驀進する。

人間とゆっくりという種族的、倫理的、そして何よりも核融合的な境を乗り越えて、
彼が本懐を果たすのは数年後の話となる。










        おわり










   *   *   *   *   *
愛する二人を引き離すとは、何と残虐、非道、そして悲劇的なのでしょう!
これは疑う余地も無く、紛う事なき虐待SSですね!!

………うん、ごめん。
元々は『どうしてそう思ったの?』のおまけ扱いだったのに、長くなったので分割しました。
最終処分場しゃくねつじごく、略して最終地獄。
byテンタクルあき

過去作品
ふたば系ゆっくりいじめ 2 散歩した春の日に
ふたば系ゆっくりいじめ 3 ちょっと鴉が多い街のお話
ふたば系ゆっくりいじめ 22 伝説の超餡子戦士
ふたば系ゆっくりいじめ 38 とある野良ゆっくり達の話
ふたば系ゆっくりいじめ 46 散歩した5月の日に
ふたば系ゆっくりいじめ 48 ゆうかにゃんと色々してみよう!
ふたば系ゆっくりいじめ 128 れいむとまりさがだーい好き!!
ふたば系ゆっくりいじめ 136 つむりはとってもゆっくりできるんだよ!
ふたば系ゆっくりいじめ 324 散歩した秋の夜に
<無かったことにしたい>-ふたば系ゆっくりいじめ 343 湯栗学園にて ~教師・背徳編~<無かったことにしたい>
ふたば系ゆっくりいじめ 372 新世代清掃工場
ふたば系ゆっくりいじめ 385 どうしてそう思ったの?










        ~おまけ~










愛するワイフ(うにゅほ)との結婚の果てに、多量のγ線を浴び、緑色の巨漢へと進化した男!

「…Who's Next…」

対するは、ゆっくりやまめに異常な偏愛を向ける、新キャラの男B!

「ゆっくりと人の愛の絆を守る男、スパイ○ーマッ!!!!」

ふたりの超雄が(特に理由もなく)激突する!
次回、「マーヴゆ・ヒーローズ」!!
ご期待ください!!!

(嘘です。期待しないでください)



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感想

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  • 完全にハルクになっちゃったじゃないですかー!! すげぇ・・・ -- 2014-08-01 10:18:34
  • この部屋にでいぶやゲスまりさいれてみたらどうなるかなwww -- 2014-05-28 20:50:51
  • 俺福島県民なんだけどこれからは原発には無数のうにゅほがいるんだと思うわ。うにゅほの出した放射性物質だと思っとく…ちょっと萌え -- 2013-05-02 18:42:01
  • 泣いた -- 2013-03-09 02:46:06
  • ↓そうだよな、今じゃ不謹慎で叩かれるし・・・傷跡は未だに残ったまま・・・ -- 2013-01-23 04:20:22
  • 地震と放射能か・・・こんな話を気にせずかけた時代が懐かしい -- 2011-09-26 22:59:58
  • かっこいいんだか馬鹿なんだか…… -- 2011-08-16 12:22:29
  • やだ…カッコイイ/// -- 2010-11-03 22:50:28
  • やったー!お兄さん、カッコイー!! -- 2010-06-30 06:29:48
  • 期待しちゃったよ!!
    そして、こういう作品は好きだ! -- 2010-06-10 01:03:19
  • でめたしでめたし -- 2010-05-25 20:32:32
最終更新:2009年10月26日 17:39
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