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「[[判定不一致修正依頼]]」にて判定と記事内容の不一致が指摘されています。対応できる方はご協力をお願いします。 ---- *鎖 -クサリ- 【くさり】 |ジャンル|アドベンチャー(ビジュアルノベル)|&amazon(B0009XOZDQ)| |対応機種|Windows 98~XP|~| |発売・開発元|Leaf|~| |発売日|2005年9月22日|~| |定価|8,800円(税別)|~| |レーティング|BGCOLOR(black):''&font(#FF69B4){アダルトゲーム}''|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| |ポイント|Leafでは珍しい陵辱ジャンル&br最低の悪友:早間友則&br外道だが屈指の人気キャラ:岸田洋一|~| |>|>|CENTER:''[[Leaf/AQUAPLUS作品リンク>Leaf/AQUAPLUS作品]]''| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 『[[To Heart]]』や『WHITE ALBUM』などの数々の純愛作品を主とするLeafが2005年に発売した、同ブランドにおいては珍しい陵辱ジャンルのゲーム((『雫』『痕』もダーク系ではある。))。~ 海上、客船の上という逃げ場のない舞台で、主人公達と殺人鬼の生死をかけた戦いが始まる。~ 大別すると「月の扉」と「夜の扉」の2つのルートがあり、それぞれのルートで攻略できるキャラクターが違ってくる。 **ストーリー 『奴さえ助けなければ』 高速実験船『バシリスク』。そのテスト航海に便乗することになった主人公(香月恭介)たち。~ おりしも夏休み。同乗する航行責任者は幼なじみの母親ということもあり、みな修学旅行気分で船旅を続けていた。~ そんなある日、公海上で漂流していた海洋調査船と遭遇する。乗っていたのは、海洋学者と名乗る岸田洋一ただひとり。~ ひとあたりの良い若者で、特に問題もなく時は過ぎていくのだが、彼を収容してから船内では航行機器の不調が相次ぐ。~ 陽が暮れて海上が闇に塗り込められる頃、事件は起こる。突然の停電から復帰してみると、そこには容赦なしにいたぶられ、~ シャンデリアに縛られた女性の姿があった。それは航行責任者である折原志乃だった……。~ (※公式サイトより抜粋) -プレイヤーは基本的に主人公『香月恭介』の視点で物語を進めていく。 **登場人物 -香月恭介(こうづき きょうすけ) --本作品の主人公。幼いときに父を亡くしている。妹思いであり、父の葬式で悲しんでいた妹:ちはやのために、父の友人「アンクル・パピィ」を演じて慰める。その後も妹の誕生日やクリスマスには、アンクル・パピィとなってプレゼントを渡していた。普段は素っ気無いが、面倒見も良く、いざという時に頼りになるのでヒロイン達には好かれている。 -折原明乃(おりはら あけの) --主人公の幼馴染。今回の試験航海の責任者である折原志乃の娘。成長期に差し掛かり、母のように胸が大きくなってきている事にコンプレックスを抱いている。恭介に好意をよせている。 -綾之部可憐(あやのべ かれん) --高貴な家柄である綾之部家の長女。恭介には「綾小路」などと冗談で呼ばれることが多々ある。気が強くわがままであり、何かと主人公には食ってかかる。親が決めた婚約者がいるが…。 -綾之部珠美(あやのべ たまみ) --可憐の妹であり、姉とは対照的にあちこち駆け回る明るく活発な性格。主人公達より1歳年下なのだが、年齢より幼く見えるため、姉にまでロリと言われることも。それに反してカンはかなり鋭く犯人岸田洋一との戦いでは、様々な珍発明や発想で主人公を助ける事もある。 -片桐恵(かたぎり めぐみ) --メガネをかけていて、小柄だが大人びた性格で感情を表に出さない。 -香月ちはや(こうづき ちはや) --主人公の実の妹で主人公の1歳年下。幼いときに父を亡くしており、母親に代わって家事を一人で切り盛りしている。実の兄である主人公に対して恋愛感情を抱いている。 -折原志乃(おりはら しの) --主人公の幼馴染である折原明乃の母親。今回の試験航海の責任者であり、船長を含む船員達の信頼は厚い。大変おおらかで無頓着な性格。ときおり、大学を出たばかりと年齢を詐称している。停電から復帰した後に、裸でシャンデリアに縛られていたのを発見される。明乃同様に緊急時には実に役に立たない。 -早間友則(はやま とものり) --主人公の親友''(一応)''。自意識過剰で恩着せがましい。主人公の妹ちはやに興味があるロリコン。事件が起こったときには岸田洋一のアリバイを証明する。状況次第で主人公達をあっさり裏切るクズである。 #region(詳細(ネタバレあり)) --はっきりいって悪友どころか真性の人間の屑である。おそらく本作で最も「吐き気を催す邪悪」といえる存在。 --そのさまや『Fate/stay night』の「間桐 慎二」、『[[School Days]]』の「澤永 泰介」、『[[ほしフル ~星藤学園天文同好会~]]』の「海道 惑」の隣にたっていてもおかしくないほどの酷さである。 --真犯人である岸田のアリバイ立証に協力して主人公を陥れ、一見すると主人公に協力すると見せかけて隙あらばわが身かわいさに寝返ろうとし、自分が有利になったら傲慢になり即座に女性を犯すなど屑の極みである。因みに矮小らしい(理由はあえて問わない)。 --この有様のために大半のルートでなんらかの形で殺されるが、自業自得なので同情の余地などない。可憐ルートなら恭介の手で友則を殺せるおまけつきであり、ユーザーの溜飲を大きく下げた。 --ただし、悪役として活躍し悪役らしい末路を迎えること、ゲームの雰囲気から逸脱しているわけではないことから、彼の存在自体は問題点ではない。 #endregion -岸田洋一(きしだ よういち) --漂流していたところを助けられた男。主人公達に海洋研究者を名乗る。この男を拾ってから、「バシリスク」の機関に不具合が起きはじめる。 **特徴 -アリバイがなかったという理由で犯人扱いされ、ウィンチルームに投獄された主人公は命からがら船内のモニター室に逃げ込み、モニターごしに仲間達の様子を見ながら、仲間との誤解をときながらも船内でアイテムを集めつつ、どうやって岸田と戦い、倒すかを考えるのが主な流れとなる。 --船内ではさまざまなアイテムが手に入るが、中には役にたたないもの、特定の場面までに持っていないとバッドエンド確定になるもの、持っていると逆にバッドエンドへのフラグがたったりするなどさまざまである。 -バッドエンドがとても多い。 --2004年に発売された『[[Fate/stay night]]』並みにバッドエンド・デッドエンドが多い。その数計32個。 --選択肢を1つ間違えるだけで死ねる上、「タイガー道場」のような回避のためのヒントはないため、攻略情報なしでは死因がわからないことがほとんど。また、かなり複雑な手順を踏まないと見ることのできないバッドエンドも存在する。 //--さらに、ゲーム序盤の選択肢次第で、どちらかのルートに入った段階でバッドエンド確定になっているというすさまじい罠がある((一例を挙げると、ゲーム開始後2番目の選択肢で「機関室へ」を選んだ状態で「夜の扉」ルートにいくと、その時点で既にバッドエンドが確定してしまう。))。 //こういう追い詰められた状況とかのゲームだと普通じゃね?評価点でも問題点でもない //バッドの多さは特徴でもあるのでこちらに移動。 **評価点 -『船の上』という、逃げ場のない舞台で紡がれる物語。 --これにより、常に殺人鬼が近くにおり、閉じ込めても決して安心できない緊張感を、次にどういった行動を取るべきかと考える雰囲気をいっそう際立たせている。 --知り合いが殺人鬼に拘束され、今にも陵辱されようとしているのを止めに行けず、黙ってモニター越しに見るしかできないシーンもある((なぜかモニター越しなのに音声が聞こえるのはご愛嬌。))。 -岸田洋一のキャラクター性 #region(以下ネタバレ) -本作における諸悪の根源にして屈指の人気悪役。この男を拾ってから、「バシリスク」の機関に不具合が起きはじめたのが事の始まりである。男は殺す、女は犯すをモットーとしている人物であり、どのルートでもそれが遺憾なく発揮されている。武器の扱いや体術はもちろんの事、交渉術にも長けており、決して油断ならぬ最大の敵である事は間違いない。バッドエンドになる大半の原因はいうまでもなくこの男の仕業である。 --戦闘狂な一面もあり、自分に戦略で挑んできたり、敢然と向かってくる相手には敬意を表しながらも嬉々として挑む。恭介によって船底に閉じ込められてもあわてず、どうやって反撃するかを楽しそうに考えている一面すらあり、恭介との戦いを命がけで楽しんでいる節がある((友則に関しては命乞いしてばかりで戦おうともしない為、内心ではつまらなく思っていた模様))。 --一方で''「しゃぶるか、少年」「surprise party!」「火気厳禁って書いてあるだろうが!」「本当に撃ちやがった…」((※撃ってみろ、と挑発して本当に撃たれた時の台詞。))「FUUUUUUUUUUCK!!!」「ビンゴ!いやっはー!今日はついてるらしい」「男同士の勝負に割り込みやがって!! ち○ぽ生やして出直してこい!!」「釣り場では声を立てないように」''などの本気かそうでないのかわからない、プレイヤーが思わず笑ってしまうネタ台詞の数々があり、冷酷な殺人鬼とのギャップの激しさに人気が出た。なお、担当声優は安芸怜須氏。 --見方によっては''「ヒーロー:恭介、ヒロイン:恵、主人公:岸田」''という意見もあるほど。 --一見すると狂人だが、過去にあった出来事・それによって岸田が狂人となってしまった理由など、考えさせられる一面もある。 #endregion -『鎖』というタイトルに秘められた意味。 #region(以下、さらなるネタバレ) -本作における真のヒロインは、下記の明乃の項目にあるとおり恵である。1キャラにつきEDは1つが基本なのだが、彼女のみEDが4つもあるのがそれを裏付けている((ただし、そのうちの1つはバッドエンドに等しくもあるが…。))。 -作品名の『鎖』とはヒロイン達を縛る『なんらかの鎖』であり、その鎖を解き放つのが主人公である恭介となっている。それこそ「''──時には誰かを殺めてでも''」である。 --一例を挙げるとちはやに関してだが、恭介もちはやに対し妹以上の感情をもっていたようで、戸籍をしらべたほど((このルートの恭介曰く「血の繋がりがなければその晩からめちゃくちゃに犯していた」とのこと))。ちはやルートにおいて最終的に相思相愛だったことを知った実の兄妹は『兄妹』という『鎖』を解き放ち、『自分達が兄妹である事を闇に葬る為に、その事実を知る者を全て消さねばならない』という目的のもと、仲間も岸田も皆殺しにし、船の中、2人だけの世界を築いて終わるという、異彩を放つ結末を迎える。 --メインヒロインの恵の持つ『鎖』は『殺人』であり、岸田に脅されて人を殺してしまい、それを理由に脅迫されている。それ故に彼女のルートでは岸田を抹殺し、恵が殺人を犯したという事実を知る者を消す流れとなる。 ---上記の岸田も含め、各キャラクターがどういった『鎖』を持つかは、プレイしてEDまでたどり着けばおのずとわかると思われる。…明乃を除いて、だが。 #endregion //評価点よりかと思ったのでこちらに移動 -2005年当時でも珍しい、主人公がフルボイス。 //担当声優は中本伸輔氏((声優の名前はこのゲームのWikiより引用。))。 //Wikipediaなのか個人Wikiなのか分かりません。単にWikiとするのは紛らわしいです。 **問題点 -フォント --こんな作品であるにもかかわらず『[[ファイアーエムブレム 聖戦の系譜]]』のような丸文字で書かれている。 --おどろおどろしいフォントよりは余程マシかもしれないが、劇中の緊迫が薄まってしまうという意見も。 -非常時なのにもかかわらず、キャラの心情や行動に対し疑問を抱かされる箇所がある。 --特に指摘されるのが、冒頭で志乃をシャンデリアに吊るし上げた犯人が「バーベキューの時にいなかった」という理由で恭介にされてしまうシーン((なお、この時の恭介は疲れて寝ていただけ))。実はよく考えるとつっこみどころがあり、友則が岸田のアリバイを証明するのだが、その友則はバーベキューに(恭介が確認していない)わずか10分ほどしか出てきていない為、岸田と口裏を合わせた可能性に思い至ればアリバイが消滅する((実際に岸田は自分のアリバイを証言するように友則を脅していた))にもかかわらず、誰もが疑わず恭介をウィンチルームに閉じこめる流れになるのは不自然である。~ 閉鎖空間における人間不信をこれでもかこれでもかと煽ったシーンともとれるのだが、そもそも見ず知らずの他人である岸田より顔見知りの友人(しかも被害者とは幼少期からの付き合い)である恭介を先に疑う時点でおかしいという指摘もある。 --他にも、わがままでヒステリックな面が強調されがちな可憐や((ただし、可憐ルートではメインヒロインの1人として、それまでの印象を覆すかのような活躍をする。可憐ルートを先にやるか後でやるかで、可憐に対する印象は人によって大きく変わる))、後述する明乃の言動も批難されることが多い。付け加えるなら基本的にこのゲームの女性陣(と友則)は役立たずであり、役にたつのは珠美(と恵。ごく稀にちはや)くらいのものである。 -パッケージヒロインである「明乃」の扱いについて #region(以下ネタバレ) --おそらく本作のヒロインで最も批判されたであろうキャラ。 --パッケージでもセンターをかざるなど、いかにもメインヒロイン的な扱いをされているが、実際のゲームでは「空気が読めず、突出して何もしないで被害者ぶる」ヒロインとして描かれている((他のヒロインは何かしらの形で自分の意思で行動する場面があるのだが、明乃に関しては何一つ自分の意思で決めず、流されてばかり。))。恵からは蔑まれ、ちはやからはその役立たずっぷりから憎まれ、ついでに犯人であるはずの岸田からも「出来損ない」とまで言われてしまう。さらに恭介に想いをよせている割には和姦シーン((本作で和姦シーンがあるのは可憐と恵のみ))はおろか告白の場面もない為、扱い的にはサブヒロインといわれても仕方がないレベル。 ---さらに、彼女のエンディングでは「お前は何を言っているんだ」と言わざるを得ない発言をするため始末が悪い。なお、作中で岸田に「豚」と呼ばれるシーンがある事から、プレイヤーの間では専ら''「明乃」=「豚」''の蔑称(愛称?)が定着している。その反動か、『月の扉』ルートでは、最もすさまじい陵辱をされるキャラとなるのだが。 ---因みに『月の扉』『夜の扉』の分岐条件は、実は『3人目の犠牲者が誰になるか』がターニングポイントとなる。『月の扉』ルートに入るには可憐を助けて明乃を見捨てることが条件となっている事がそれを裏付けしているといっていいだろう。 ---このルートは、''CGで恭介の素顔が見られる''のが唯一の良点と思われる((多くのゲームでは主人公は髪で目を隠すことが多いが、このシーンでは恭介はその凛々しい顔を見せてくれる。))。 --製作陣も明乃に対して思うところがあったようで、本作の一部EDでは「ゲームを製作する側の人間による皮肉」が見れるのだが、その時の会話を要約すると''「明乃というキャラクターに関しては、萌えゲーにありがちな“自分の意志の無い”ヒロイン像の否定」''をしたかったという内容となる。 --また、パッケージやCG閲覧モードなどでは、常に明乃が前に、恵が後ろに書かれているのだが、一通り攻略を終えれば実はこれこそが''「真のヒロインが恵であることを隠すためのスケープゴート」''であったことに気がつかされるだろう。 --つまり明乃の人物像や扱いはスタッフの意図した通りではある。だが、パッケージを飾るメインヒロインと目されていたキャラがこのような人物であること自体が色々な意味でフラストレーションの溜まる要素であり、問題点として扱われても仕方のない部分ではある。 #endregion ---- **総評 極限の閉鎖空間における殺人鬼との戦い、その緊張感と恐怖心を楽しむ世界観・ストーリーには十分なものがある。また、残虐と萌えを紙一重で表現する岸田のようなキャラクターは非常に貴重であり魅力的である。~ その一方で、CG不足・キャラクターの行動や発言などに疑問が生じる箇所・陵辱モノにしては陵辱要素が薄く、期待していた人にとっては肩透かしを食らってしまうといった意見も確かにある((尤も、本作は極限状態の打破を目的としたサスペンスホラー作品という性質が強く、純粋な凌辱モノに分類すべきかは議論の余地がある))。~ 万人受けするとはいえない作品だが、バッドエンドの多さにくじけない心や、逆にバッドエンド収集に挑戦したい方には、ぜひとも手にとってもらいたい。
「[[判定不一致修正依頼]]」にて判定と記事内容の不一致が指摘されています。対応できる方はご協力をお願いします。 ---- *鎖 -クサリ- 【くさり】 |ジャンル|アドベンチャー(ビジュアルノベル)|&amazon(B0009XOZDQ)| |対応機種|Windows 98~XP|~| |発売・開発元|Leaf|~| |発売日|2005年9月22日|~| |定価|8,800円(税別)|~| |レーティング|BGCOLOR(black):''&font(#FF69B4){アダルトゲーム}''|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| |ポイント|Leafでは珍しい陵辱ジャンル&br最低の悪友:早間友則&br外道だが屈指の人気キャラ:岸田洋一|~| |>|>|CENTER:''[[Leaf/AQUAPLUS作品リンク>Leaf/AQUAPLUS作品]]''| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 『[[To Heart]]』や『WHITE ALBUM』などの数々の純愛作品を主とするLeafが2005年に発売した、同ブランドにおいては珍しい陵辱ジャンルのゲーム((『雫』『痕』もダーク系ではある。))。~ 海上、客船の上という逃げ場のない舞台で、主人公達と殺人鬼の生死をかけた戦いが始まる。~ 大別すると「月の扉」と「夜の扉」の2つのルートがあり、それぞれのルートで攻略できるキャラクターが違ってくる。 **ストーリー 『奴さえ助けなければ』 高速実験船『バシリスク』。そのテスト航海に便乗することになった主人公(香月恭介)たち。~ おりしも夏休み。同乗する航行責任者は幼なじみの母親ということもあり、みな修学旅行気分で船旅を続けていた。~ そんなある日、公海上で漂流していた海洋調査船と遭遇する。乗っていたのは、海洋学者と名乗る岸田洋一ただひとり。~ ひとあたりの良い若者で、特に問題もなく時は過ぎていくのだが、彼を収容してから船内では航行機器の不調が相次ぐ。~ 陽が暮れて海上が闇に塗り込められる頃、事件は起こる。突然の停電から復帰してみると、そこには容赦なしにいたぶられ、~ シャンデリアに縛られた女性の姿があった。それは航行責任者である折原志乃だった……。~ (※公式サイトより抜粋) -プレイヤーは基本的に主人公『香月恭介』の視点で物語を進めていく。 **登場人物 -香月恭介(こうづき きょうすけ) --本作品の主人公。幼いときに父を亡くしている。妹思いであり、父の葬式で悲しんでいた妹:ちはやのために、父の友人「アンクル・パピィ」を演じて慰める。その後も妹の誕生日やクリスマスには、アンクル・パピィとなってプレゼントを渡していた。普段は素っ気無いが、面倒見も良く、いざという時に頼りになるのでヒロイン達には好かれている。 -折原明乃(おりはら あけの) --主人公の幼馴染。今回の試験航海の責任者である折原志乃の娘。成長期に差し掛かり、母のように胸が大きくなってきている事にコンプレックスを抱いている。恭介に好意をよせている。 -綾之部可憐(あやのべ かれん) --高貴な家柄である綾之部家の長女。恭介には「綾小路」などと冗談で呼ばれることが多々ある。気が強くわがままであり、何かと主人公には食ってかかる。親が決めた婚約者がいるが…。 -綾之部珠美(あやのべ たまみ) --可憐の妹であり、姉とは対照的にあちこち駆け回る明るく活発な性格。主人公達より1歳年下なのだが、年齢より幼く見えるため、姉にまでロリと言われることも。それに反してカンはかなり鋭く犯人岸田洋一との戦いでは、様々な珍発明や発想で主人公を助ける事もある。 -片桐恵(かたぎり めぐみ) --メガネをかけていて、小柄だが大人びた性格で感情を表に出さない。 -香月ちはや(こうづき ちはや) --主人公の実の妹で主人公の1歳年下。幼いときに父を亡くしており、母親に代わって家事を一人で切り盛りしている。実の兄である主人公に対して恋愛感情を抱いている。 -折原志乃(おりはら しの) --主人公の幼馴染である折原明乃の母親。今回の試験航海の責任者であり、船長を含む船員達の信頼は厚い。大変おおらかで無頓着な性格。ときおり、大学を出たばかりと年齢を詐称している。停電から復帰した後に、裸でシャンデリアに縛られていたのを発見される。明乃同様に緊急時には実に役に立たない。 -早間友則(はやま とものり) --主人公の親友''(一応)''。自意識過剰で恩着せがましい。主人公の妹ちはやに興味があるロリコン。事件が起こったときには岸田洋一のアリバイを証明する。状況次第で主人公達をあっさり裏切るクズである。 #region(詳細(ネタバレあり)) --はっきりいって悪友どころか真性の人間の屑である。おそらく本作で最も「吐き気を催す邪悪」といえる存在。 --そのさまや『Fate/stay night』の「間桐 慎二」、『[[School Days]]』の「澤永 泰介」、『[[ほしフル ~星藤学園天文同好会~]]』の「海道 惑」の隣にたっていてもおかしくないほどの酷さである。 --真犯人である岸田のアリバイ立証に協力して主人公を陥れ、一見すると主人公に協力すると見せかけて隙あらばわが身かわいさに寝返ろうとし、自分が有利になったら傲慢になり即座に女性を犯すなど屑の極みである。因みに矮小らしい(理由はあえて問わない)。 --この有様のために大半のルートでなんらかの形で殺されるが、自業自得なので同情の余地などない。可憐ルートなら恭介の手で友則を殺せるおまけつきであり、ユーザーの溜飲を大きく下げた。 --ただし、悪役として活躍し悪役らしい末路を迎えること、ゲームの雰囲気から逸脱しているわけではないことから、彼の存在自体は問題点ではない。 #endregion -岸田洋一(きしだ よういち) --漂流していたところを助けられた男。主人公達に海洋研究者を名乗る。この男を拾ってから、「バシリスク」の機関に不具合が起きはじめる。 **特徴 -アリバイがなかったという理由で犯人扱いされ、ウィンチルームに投獄された主人公は命からがら船内のモニター室に逃げ込み、モニターごしに仲間達の様子を見ながら、仲間との誤解をときながらも船内でアイテムを集めつつ、どうやって岸田と戦い、倒すかを考えるのが主な流れとなる。 --船内ではさまざまなアイテムが手に入るが、中には役にたたないもの、特定の場面までに持っていないとバッドエンド確定になるもの、持っていると逆にバッドエンドへのフラグがたったりするなどさまざまである。 -バッドエンドがとても多い。 --2004年に発売された『[[Fate/stay night]]』並みにバッドエンド・デッドエンドが多い。その数計32個。 --選択肢を1つ間違えるだけで死ねる上、「タイガー道場」のような回避のためのヒントはないため、攻略情報なしでは死因がわからないことがほとんど。また、かなり複雑な手順を踏まないと見ることのできないバッドエンドも存在する。 //--さらに、ゲーム序盤の選択肢次第で、どちらかのルートに入った段階でバッドエンド確定になっているというすさまじい罠がある((一例を挙げると、ゲーム開始後2番目の選択肢で「機関室へ」を選んだ状態で「夜の扉」ルートにいくと、その時点で既にバッドエンドが確定してしまう。))。 //こういう追い詰められた状況とかのゲームだと普通じゃね?評価点でも問題点でもない //バッドの多さは特徴でもあるのでこちらに移動。 **評価点 -『船の上』という、逃げ場のない舞台で紡がれる物語。 --これにより、常に殺人鬼が近くにおり、閉じ込めても決して安心できない緊張感を、次にどういった行動を取るべきかと考える雰囲気をいっそう際立たせている。 --知り合いが殺人鬼に拘束され、今にも陵辱されようとしているのを止めに行けず、黙ってモニター越しに見るしかできないシーンもある((なぜかモニター越しなのに音声が聞こえるのはご愛嬌。))。 -岸田洋一のキャラクター性 #region(以下ネタバレ) -本作における諸悪の根源にして屈指の人気悪役。この男を拾ってから、「バシリスク」の機関に不具合が起きはじめたのが事の始まりである。男は殺す、女は犯すをモットーとしている人物であり、どのルートでもそれが遺憾なく発揮されている。武器の扱いや体術はもちろんの事、交渉術にも長けており、決して油断ならぬ最大の敵である事は間違いない。バッドエンドになる大半の原因はいうまでもなくこの男の仕業である。 --戦闘狂な一面もあり、自分に戦略で挑んできたり、敢然と向かってくる相手には敬意を表しながらも嬉々として挑む。恭介によって船底に閉じ込められてもあわてず、どうやって反撃するかを楽しそうに考えている一面すらあり、恭介との戦いを命がけで楽しんでいる節がある((友則に関しては命乞いしてばかりで戦おうともしない為、内心ではつまらなく思っていた模様))。 --一方で''「しゃぶるか、少年」「surprise party!」「火気厳禁って書いてあるだろうが!」「本当に撃ちやがった…」((※撃ってみろ、と挑発して本当に撃たれた時の台詞。))「FUUUUUUUUUUCK!!!」「ビンゴ!いやっはー!今日はついてるらしい」「男同士の勝負に割り込みやがって!! ち○ぽ生やして出直してこい!!」「釣り場では声を立てないように」''などの本気かそうでないのかわからない、プレイヤーが思わず笑ってしまうネタ台詞の数々があり、冷酷な殺人鬼とのギャップの激しさに人気が出た。なお、担当声優は安芸怜須氏。 --見方によっては''「ヒーロー:恭介、ヒロイン:恵、主人公:岸田」''という意見もあるほど。 --一見すると狂人だが、過去にあった出来事・それによって岸田が狂人となってしまった理由など、考えさせられる一面もある。 #endregion -『鎖』というタイトルに秘められた意味。 #region(以下、さらなるネタバレ) -本作における真のヒロインは、下記の明乃の項目にあるとおり恵である。1キャラにつきEDは1つが基本なのだが、彼女のみEDが4つもあるのがそれを裏付けている((ただし、そのうちの1つはバッドエンドに等しくもあるが…。))。 -作品名の『鎖』とはヒロイン達を縛る『なんらかの鎖』であり、その鎖を解き放つのが主人公である恭介となっている。それこそ「''──時には誰かを殺めてでも''」である。 --一例を挙げるとちはやに関してだが、恭介もちはやに対し妹以上の感情をもっていたようで、戸籍をしらべたほど((このルートの恭介曰く「血の繋がりがなければその晩からめちゃくちゃに犯していた」とのこと))。ちはやルートにおいて最終的に相思相愛だったことを知った実の兄妹は『兄妹』という『鎖』を解き放ち、『自分達が兄妹である事を闇に葬る為に、その事実を知る者を全て消さねばならない』という目的のもと、仲間も岸田も皆殺しにし、船の中、2人だけの世界を築いて終わるという、異彩を放つ結末を迎える。 --メインヒロインの恵の持つ『鎖』は『殺人』であり、岸田に脅されて人を殺してしまい、それを理由に脅迫されている。それ故に彼女のルートでは岸田を抹殺し、恵が殺人を犯したという事実を知る者を消す流れとなる。 ---上記の岸田も含め、各キャラクターがどういった『鎖』を持つかは、プレイしてEDまでたどり着けばおのずとわかると思われる。…明乃を除いて、だが。 #endregion //評価点よりかと思ったのでこちらに移動 -2005年当時でも珍しい、主人公がフルボイス。 //担当声優は中本伸輔氏((声優の名前はこのゲームのWikiより引用。))。 //Wikipediaなのか個人Wikiなのか分かりません。単にWikiとするのは紛らわしいです。 **問題点 -フォント --こんな作品であるにもかかわらず『[[ファイアーエムブレム 聖戦の系譜]]』のような丸文字で書かれている。 --おどろおどろしいフォントよりは余程マシかもしれないが、劇中の緊迫が薄まってしまうという意見も。 -非常時なのにもかかわらず、キャラの心情や行動に対し疑問を抱かされる箇所がある。 --特に指摘されるのが、冒頭で志乃をシャンデリアに吊るし上げた犯人が「バーベキューの時にいなかった」という理由で恭介にされてしまうシーン((なお、この時の恭介は疲れて寝ていただけ))。実はよく考えるとつっこみどころがあり、友則が岸田のアリバイを証明するのだが、その友則はバーベキューに(恭介が確認していない)わずか10分ほどしか出てきていない為、岸田と口裏を合わせた可能性に思い至ればアリバイが消滅する((実際に岸田は自分のアリバイを証言するように友則を脅していた))にもかかわらず、誰もが疑わず恭介をウィンチルームに閉じこめる流れになるのは不自然である。~ 閉鎖空間における人間不信をこれでもかこれでもかと煽ったシーンともとれるのだが、そもそも見ず知らずの他人である岸田より顔見知りの友人(しかも被害者とは幼少期からの付き合い)である恭介を先に疑う時点でおかしいという指摘もある。 --他にも、わがままでヒステリックな面が強調されがちな可憐や((ただし、可憐ルートではメインヒロインの1人として、それまでの印象を覆すかのような活躍をする。可憐ルートを先にやるか後でやるかで、可憐に対する印象は人によって大きく変わる))、後述する明乃の言動も批難されることが多い。付け加えるなら基本的にこのゲームの女性陣(と友則)は役立たずであり、役にたつのは珠美(と恵。ごく稀にちはや)くらいのものである。 -パッケージヒロインである「明乃」の扱いについて #region(以下ネタバレ) --おそらく本作のヒロインで最も批判されたであろうキャラ。 --パッケージでもセンターをかざるなど、いかにもメインヒロイン的な扱いをされているが、実際のゲームでは「空気が読めず、突出して何もしないで被害者ぶる」ヒロインとして描かれている((他のヒロインは何かしらの形で自分の意思で行動する場面があるのだが、明乃に関しては何一つ自分の意思で決めず、流されてばかり。))。恵からは蔑まれ、ちはやからはその役立たずっぷりから憎まれ、ついでに犯人であるはずの岸田からも「出来損ない」とまで言われてしまう。さらに恭介に想いをよせている割には和姦シーン((本作で和姦シーンがあるのは可憐と恵のみ))はおろか告白の場面もない為、扱い的にはサブヒロインといわれても仕方がないレベル。 ---さらに、彼女のエンディングでは「お前は何を言っているんだ」と言わざるを得ない発言をするため始末が悪い。なお、作中で岸田に「豚」と呼ばれるシーンがある事から、プレイヤーの間では専ら''「明乃」=「豚」''の蔑称(愛称?)が定着している。その反動か、『月の扉』ルートでは、最もすさまじい陵辱をされるキャラとなるのだが。 ---因みに『月の扉』『夜の扉』の分岐条件は、実は『3人目の犠牲者が誰になるか』がターニングポイントとなる。『月の扉』ルートに入るには可憐を助けて明乃を見捨てることが条件となっている事がそれを裏付けしているといっていいだろう。 ---このルートは、''CGで恭介の素顔が見られる''のが唯一の良点と思われる((多くのゲームでは主人公は髪で目を隠すことが多いが、このシーンでは恭介はその凛々しい顔を見せてくれる。))。 --製作陣も明乃に対して思うところがあったようで、本作の一部EDでは「ゲームを製作する側の人間による皮肉」が見れるのだが、その時の会話を要約すると''「明乃というキャラクターに関しては、萌えゲーにありがちな“自分の意志の無い”ヒロイン像の否定」''をしたかったという内容となる。 --また、パッケージやCG閲覧モードなどでは、常に明乃が前に、恵が後ろに書かれているのだが、一通り攻略を終えれば実はこれこそが''「真のヒロインが恵であることを隠すためのスケープゴート」''であったことに気がつかされるだろう。 --つまり明乃の人物像や扱いはスタッフの意図した通りではある。だが、パッケージを飾るメインヒロインと目されていたキャラがこのような人物であること自体が色々な意味でフラストレーションの溜まる要素であり、問題点として扱われても仕方のない部分ではある。 #endregion ---- **総評 極限の閉鎖空間における殺人鬼との戦い、その緊張感と恐怖心を楽しむ世界観・ストーリーには十分なものがある。また、残虐と萌えを紙一重で表現する岸田のようなキャラクターは非常に貴重であり魅力的である。~ その一方で、CG不足・キャラクターの行動や発言などに疑問が生じる箇所・陵辱モノにしては陵辱要素が薄く、期待していた人にとっては肩透かしを食らってしまうといった意見も確かにある((尤も、本作は極限状態の打破を目的としたサスペンスホラー作品という性質が強く、純粋な凌辱モノに分類すべきかは議論の余地がある))。~ 万人受けするとはいえない作品だが、バッドエンドの多さにくじけない心や、逆にバッドエンド収集に挑戦したい方には、ぜひとも手にとってもらいたい。

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