沙羅曼蛇

【さらまんだ】

ジャンル 縦横両スクロールシューティング
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売元 コナミ
開発元 コナミ開発2課
発売日 1987年9月25日
定価 4,900円
プレイ人数 1~2人
配信 バーチャルコンソール
【Wii】2008年12月24日/500Wiiポイント
【3DS】2013年02月20日/500円
【WiiU】2014年10月08日/500円
判定 なし
ポイント カプセルゲージ式パワーアップに変更
FC版『グラディウス』から大幅進化
実質ファミコン版『グラディウスII』のプロトタイプ
カセットがスケルトンボディ
グラディウスシリーズ


概要

1986年にゲームセンターで稼働したシューティングゲーム『沙羅曼蛇』をファミコンに移植した物。

発売された1980年代後半は家庭用と業務用のハードにおける性能差の開きが顕著に現れつつあった時代という事もあってか、本作もオリジナル要素の強い作品としてリリースされた。


システム等

  • 自機の装備及びパワーアップシステム
    • AC版『沙羅曼蛇』ではレーザー・リップル等の個別アイテムを用いたいわゆる「アイテムパワーアップ方式」だったが、本作ではカプセルを用いたゲージ式のパワーアップに変更された。(マイナーチェンジ版である『ライフフォース』と同様の方式)
      • なお『ライフフォース』においては2Pのゲージの装備順は1Pと異なっていたが、本作では同じ並びになっている。
    • オプションの最大数はFC版前作(2個)よりも増え、3個に。
      • 前作ではACそのままのサイズで移植していたのを、本作ではグラフィックのサイズを縮小したことで表示数を増やせるようになった。
    • 前作におけるレーザーは短い物を発射する形式だったが、本作におけるレーザーは短いレーザーを等間隔に置くという所謂「目の錯覚」を利用して長いレーザーを再現。
    • AC版におけるミサイルは、縦スクロールステージでは左右に加えて地上の敵にミサイルを放っていたが、FC移植に伴い対地ミサイル攻撃は削除されている。また、3面ではステージ内に存在する見えないハッチがミサイルでは破壊不可能になった。
    • AC版のバリアは前作同様のシールドを最大4方向に付けるものだったが、FC版ではちらつきを考慮して全身を覆うタイプのフォースフィールドに変更された。
  • ステージ構成
    1面 2面 3面 4面 5面 6面
    AC版 細胞 アステロイド1 プロミネンス 火山 アステロイド2 要塞都市
    FC版 細胞1 火山 プロミネンス 細胞2 神殿 要塞都市
    • FC版では2つのアステロイド面をカットし、オリジナルステージを追加している。
      • 4面(細胞2):細胞面が再び登場。神経や骨・赤血球などをモチーフとした敵が登場し、道中の途中が高速スクロールで進行したり時間経過で打ち返し弾を放ってくる破壊可能物など、同じ細胞面でも1面とは差別化されたギミックが待ち受けている。
      • 5面(神殿):完全オリジナルステージ。前半は『グラディウス』の火山面を彷彿とさせるような地形だが、中ボスの「クラッシュバム」を撃破してからは一転、エジプト文明を彷彿とさせるような神殿内部を探索するステージに変貌を遂げる。
    • また各ステージの内容にもFC版オリジナル要素が見られる。詳細は評価点にて。
  • その他システム面
    • 『ライフフォース』からの逆輸入要素としてスコアエクステンドが採用。得点を一定数稼ぐと残機が1つ増える。
    • AC版はゲームオーバーになるとゲーム終了だったが、FC版でゲームオーバーするとコンティニューするかどうか聞かれるようになった。コンティニューを選択するとステージの最初に戻される。コンティニューは3回まで可能で3回コンティニューした状態でゲームオーバーになるとタイトルに戻される。
    • ステージ内における特定ポイントでは隠しアイテムとして1UPカプセルが存在する。
    • スクロールのスピードはAC版は少し速かったが、本作は『グラディウス』同様の遅いスクロールに変更。

評価点

  • ファミコン版『グラディウス』からの進化
    • 本作はプレイサイドに配慮したボタン配置や、オプションの数が3個に増加、スプライトの錯覚を利用した長いレーザーの再現などシステム面は前作からの改善が多く見られている。
      • プレイヤーの装備面が強化された事によって、前作以上に爽快感のあるプレイが可能になったのは評価出来る。
    • グラフィック全般は前作は粗めだったが、続編である本作のグラフィックはファミコンの限界近いレベルと言っても過言では無い位で書き込まれていて、結果的に1986年当時では最高峰と評されたAC版と引けをとらないほどのグラフィックに変化した。
      • ステージは1面の細胞壁はもちろん、多くのプレイヤーにインパクトを与えた3面の揺らめく炎や地形の所々で噴き出すプロミネンスまでAC版の物をファミコンというハードで忠実に再現している。
      • ボス戦も背景色を黒にすることによって、AC版で特徴的だった巨大ボスの数々をファミコンで再現するという頑張りぶり。
      • 各キャラのグラフィックはAC版よりも小さめのサイズに変更されゲーム内でのちらつき(スプライト欠け)も最小限に抑えられている。このため美麗なグラフィックのゲームながら快適にプレイできるのは嬉しい。
    • BGMはAC版の2面「Fly High」以外の全曲を収録。音質はボイスが削除されるなどオリジナルから若干下方修正されたが、FC相応の音源ながら各曲の再現度は前作以上にAC版に近く、例によって完成度が高い。
  • 魅力的なオリジナル要素の数々
    • 今作は当時のFC移植作品の例によってファミコンオリジナル要素が強化されているのが特徴的。
    • 自機の装備はAC版から弱体化している部分も見受けられるが、パワーアップ方式がゲージ制にバリアが全身を守るタイプに変更されていたりと、独自要素が見られる。
    • パワーアップ方式がカプセル制に変更されたことによって『ライフフォース』同様にステージ1からレーザーを装備出来る様になったのは嬉しい。
    • ステージは序盤面こそACを忠実に再現したステージを中心とした構成ではあるが、2面のボス戦が二段階に変化している事を皮切りに、以降はFCオリジナルの展開やギミックが見受けられるようになる。
      • 3面(プロミネンス)は見た目こそはAC版をなぞっているものの、プロミネンスの発生速度が遅く破壊すると火炎弾になって撃ち返してくる火の鳥や小サイズのファイヤードラゴンことプラウラーが雑魚敵として登場する。
      • 6面は前半こそはAC版とほぼ同じなのだが中ボスのビッグコアは出現せず、要塞内部に突入後ではパネル剥がれ地帯や地上からの対空砲がカットされ『グラディウス』3面で登場した固定型モアイが再登場するというステージ構成に。
      • 4、5面はどちらもファミコン版のために制作されたオリジナルステージ。どちらも地形や敵、ギミック等などAC版では見られなかった要素が多く登場していて、どの面も実にAC版以上に個性的な内容のステージとも言える。
    • ボスキャラはAC版から多くのボスが続投していることに加えてFCオリジナルも追加された事によって、只でさえ多かったAC版と同等かそれ以上のバリエーションを見せている。
      • ファミコンオリジナルボスはどいつもこいつも個性派揃いの3体が登場。
        「ギーガ」…ステージ4で登場。頭蓋骨のような姿のボスキャラ。口が弱点だがダメージを与えるとボス自身の目玉を飛ばしてくるようになる。FC版『グラディウスⅡ』にも横スクロール仕様になって引き続き登場する。
        「ツタンカーム」…ステージ5で登場。エジプトのファラオのような見た目で、遺跡の奥で待ち受けているという「いかにも」な設定が特徴的。
        「沙羅曼蛇」…ステージ6で登場。ラスボスの「ビッグアイ」*1の周囲をまわりつつ弾を放ってくる。
      • AC版からの続投ボスのうち3面ボスの「イントルーダ」は巨大な龍の頭のみが画面に出ているという見た目に変更され、実力はともかくその姿から度肝を抜かれたプレイヤーも少なくはない。
    • EDもクリアまでに掛かったコンティニューの数で変化する内容に変更された。ノーコンティニュークリアすると……(後述)
  • 前作はAC版の内容を半ば無理矢理移植していた事から、ハードスペック的に無理している部分がちらほらと見られていた。 だが、本作は基本的にオリジナルゲームへと方向転換したことによって、前作よりは比較的無理も少なくなっている。
  • 同時プレイが出来る
    • 当時のファミコンは2人同時プレイが出来る作品が少なかったため、本作は貴重な存在と言える。
  • 比較的簡単になったミスからの復活
    • AC版はその場復活ではあるが、スクロールのスピードが速めという事もあってか、ミスった際に散らばるオプションを回収できなくなる事が当たり前だった。だが、FCへの移植に伴いスクロールの速度が減少した事によって、ミス時におけるオプション回収が行いやすくなり、結果的に復活難易度も低下した。

賛否両論点

  • オリジナル要素の強い内容
    • 本作はアーケードからファミコンへ移植される際に様々な要素にアレンジが加えられているため、AC版のプレイヤーから「もはや別物」と評されやすかった。
    • 本作発売当時は「ファミコンにおけるアーケードからの移植作品はアレンジ中心」という認識がまだプレイヤーの間で浸透していなかったため、AC版の完全移植を希望するファンも多く、本作は多くのプレイヤーからバッシングの標的にされやすかった。
    • 翌年以降は流石に「アーケードゲームをファミコンに完全移植することは無理な話」とプレイヤーも分かっていたのか、このようなバッシングや論争は落ち着きつつあるのだが、同時に本作は「オリジナル要素が強化された一作」として再評価される運びに至った。
  • オリジナル要素について
    • スクロールのスピードが遅くパワーアップの仕組みも『グラディウス』と同様のゲージ式に変更されている点は「沙羅曼蛇じゃなくてグラディウスの続編」とみなされた。
    • また、FC移植に伴いステージ2、5のアステロイド面が別のステージに差し替えられた点はAC版からのプレイヤーから批判されやすい。
      • だが、元々この2つの面は容量などの都合により、やむを得ず手を抜かざるを得なかった制作上の背景がある。このことから両ステージは移植の際にオリジナルステージに変更するのは妥当だったと言える。
      • またとっつきやすくなったことで、FCユーザーに「沙羅曼蛇というタイトルだがグラディウスシリーズの一作」という認識を広めるのには役立った。
    • BGMもACの時点で人気だった「Fly High」が削除されライフフォースの「Thunderbolt」に差し替えられた件に関してはAC版のファンから残念がられた。
      • ただ、入れ替えで収録された本曲もこちらで人気を獲得したので、一長一短である。
    • 火山ステージBGM「Starfield」はACでは遅めのテンポの楽曲という事もあってか全体的に壮大なイメージの一曲だったが、FC移植に伴い楽曲のテンポが早くなったことからAC版のプレイヤーから「コレジャナイ」と指摘されやすい。
      • もっとも、同曲は近い時期に発売されたMSX版やその後に発売されたPCエンジン版でもFC版同様のテンポの速いバージョンが引き続き使用されていたことから、制作側も密かにこちらのバージョンを気に入っていたのかも知れない。
  • 隠しEDについて
    • 本作では隠しEDとしてビックバイパーのパイロットがヘルメットを脱いで性別が女性と判明する演出が存在するが、沙羅曼蛇ではパイロットの設定が曖昧である事から賛否が分かれやすい。
      • 前年に発売された『メトロイド』と同じネタなのはどうかと……。

問題点

  • 音声合成の削除
    • AC版は合成音声によるアナウンスボイスが存在していたが、FC移植版である本作ではオミットされてしまった。
    • AC版ではアナウンスボイスがゲームを盛り上げていたのだが、これがスポイルされてしまったことによって、ゲームの盛り上がりも少し抑えられてしまった。
  • 1面の高難易度
    • 本作で最初にプレイする事になる1面はAC版ではギミックこそ多いもののステージ自体の難易度が低かったことから、最初のステージとしては妥当な難易度と評価されていた。
    • しかし、FC版の1面はAC版の内容を処理が遅く画面サイズの小さいファミコンへ無理矢理移植した様な内容になっているため、スクロールの遅さ+盛り上がる細胞壁のギミックが大幅に凶悪化されてしまい、しょっちゅう道が塞がれる様になってしまった。これによって、1面にしては初見殺しだらけの面と化してしまった。その細胞壁の中に隠しボーナスがあったりするので、難しいながらも旨味も増えてはいるのだが……。
    • 加えて、自機も最初のステージらしく装備がまだ整っていない状態で進むことも多く、攻撃範囲及び火力が不十分という点も相まって、1面にしては非常にきつい。
    • 中盤に出るシャープクロッサー(上下するトゲ)や終盤の復活する細胞壁は地形扱いなので、接触すると即死(更にトゲは破壊不能)。ここまでにようやく整えた装備が事故で無くなってしまい、その状態でボスと戦わなければならない。
    • 1面がきつい反面、2面以降は自機の装備が整い、3面*2以外は地形及びトラップ共に穏やかになる事から逆に簡単に感じやすく、結果的に本作の難易度曲線は歪となってしまっている。「本作の最難関ステージは1面」、「3面までクリアすれば全クリ確定」等と揶揄されることも。
  • リップルレーザーの弱体化
    • 本作のリップルレーザーは、地形等に当たると消滅してしまうことからAC版より大幅に弱体化。
      • AC版の時は初登場の新装備であったのと、レーザーの登場が遅い事もあり多少は出番があったのだが、本作では1面からレーザーを装備出来る様になった点も相まって、全く使われる事のない空気装備と化してしまった。
    • 次回作の『グラディウスII』でもリップルは瞬間火力の低さも祟って事実上レーザーの下位互換という状態。従って、FC版グラディウスシリーズにおけるリップルの性能改善はファミコン末期の『パロディウスだ!』まで待たされることになった。
      • 特にこの点がきつかったのが『コナミワイワイワールド』のシューティング面。プレイヤーはビックバイパー(レーザー+追尾ミサイル装備)とツインビー(リップルレーザー+パンチ装備)のどちらかに乗って行くのだが、リップルが微妙&追尾ミサイルが非常に使いやすいことから、二人同時プレイの際には壮絶なビックバイパー争奪戦が繰り広げられた。
  • 2人同時プレイについて
    • AC版ではオプションを4個まで表示出来たので、2Pプレイの際には各プレイヤー共オプションが2個ずつ装備できた。
    • だが、ファミコンへの移植に伴いオプションの最大数が3個に減少した事によって、各プレイヤーは1個目のオプションは確実に装備出来るものの、2個目の方はどちらが装備出来るかどうか早い者勝ちになる。当然、2個装備できなかったプレイヤーはオプション1個でゲームを進める必要がある。
      • この事から、本作の2Pプレイではオプションの奪い合いが非常に起こりやすく、下手すると友情破壊に繋がってしまう事も…
    • 2P側のパワーアップゲージは1P側の下に『グラディウス』と同様の物が直接表示される形式になっていることから見えづらく感じる事がある。
      • 以降の2P協力プレイ可能な作品におけるゲージは画面端に小さく表示される『ライフフォース』と同じタイプの形式に統合されているが、PS2『グラディウスV』では2P協力プレイ時に本作と同じ形式のコックピット配置が採用されている。

総評

アーケードで大人気だったグラディウスシリーズ第2作目をファミコンへ移植した物だが、システムやステージなど全体的にアレンジされている部分が多く、前作以上にアーケード版からかけ離れてしまった内容と化しているのは否めない。
故に発売当時はAC版のファンから批判されやすかった。
ただ、AC版を知らないプレイヤーからは純粋に前作FC版グラディウスを発展させた続編に他ならず、好評を博したことは明記しておく。
「アーケードからの移植」という固定観点をさらりと捨て、ファミコンにおけるアレンジ作品と考えてプレイすれば十二分に楽しめる良作である。
この点はSFC版『グラディウスIII』と同様の関係性を持っている。


その後の展開

  • 本作の発売から約1年後には次回作『グラディウスII -GOFERの野望-』のファミコン移植作『グラディウスII』が発売された。
    • 同作では本作同様にオリジナル色が強くなった他、BGMやオプション装備数の増加など前作からパワーアップされた要素が多く、結果当時のファミコン版グラディウスシリーズの集大成的な一作となった。
    • こういった要素から、同作と共通している要素の多い本作は実質的に『グラディウスII』のプロトタイプ的な作品という存在となった。本作なかりせば『グラディウスII』の成功も無かったと言える。
  • 『沙羅曼蛇』の移植は本作と同時期に発売されたMSX版と約4年後に発売されたPCE版も存在する。それぞれの移植版についての情報は原作の記事にて。

余談

  • NES版『LIFE FORCE』について
    • パワーアップゲージの表示がMSX『グラディウス2』形式の物に差し替えられている。
    • オプションの最大数は国内版では3個までだったが、海外版では2個までに減少。装備可能なオプション数が減少した事によって、ゲーム自体の難易度も上昇している模様。
    • 救助処置として国内版にはないコナミコマンドを実装。タイトル画面にコマンド入力で残機30増やす事ができる。
    • ストーリーやステージ構造及び背景は国内版と同様。従って、海外アーケード版で見られていた特有のストーリー・背景はNES版では見られない。
  • クリアカートリッジ
    • 本作のカートリッジは当時としては珍しく中身が透けて見えるクリア素材で出来ている。
    • ちなみに当時放送していたCMなどではこのスケルトンカートリッジについて猛烈にアピールしていたため「ゲームは知らないけどソフトが透明なのは知っている」というようなプレイヤーもいるのでは。
  • ステージ5 BGM「Thunderbolt」
    • 今作でステージ5のBGMとして使用されている「Thunderbolt」はAC版沙羅曼蛇の没BGMだった曲を『ライフフォース』の2面のBGMに採用したのだが、ゲーム自体の出回りが悪かったことからプレイヤーからも「知る人ぞ知る楽曲」として扱われていた。
    • だが、今作のステージ5に「Thunderbolt」が採用されたことにより楽曲の知名度が大幅に上昇する。
  • 発売延期
    • 本作は当初1987年8月21日に発売される予定だったが、約1ヶ月後の9月25日に発売日が延期になった。
      • その発売延期だが、CMで発売延期を表明している。この珍しい「発売延期CM」が印象に残っている人も多い。

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最終更新:2021年09月26日 00:56

*1 AC版で登場した「ゼロスフォース」の名称変更

*2 炎エリア面で、地面から吹きあがる炎のタイミングや場所を覚えないと炎を食らって即死する