紙謎 未来からの想いで
【かみなぞ みらいからのおもいで】
ジャンル
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謎解き紙ゲー
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対応機種
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Nintendo Switch
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発売元
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ディライトワークス
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開発元
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GIFT TEN INDUSTRY K.K.
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発売日
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2019年11月28日
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定価
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2,480 円
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プレイ人数
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1人
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レーティング
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CERO:A(全年齢)
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備考
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ダウンロード専売
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判定
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なし
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ポイント
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紙を用いた変わり種の謎解きゲーム 現実のイベントの予習にも使えるが……
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概要
『マドリカ不動産 -Madorica Real Estate-』(Switch/Win)を手掛けたGIFT TEN INDUSTRYが送る、
ニンテンドースイッチ専売となる「実際の紙を使った」謎解きゲームの第2弾。
プレイヤーは本ゲームアプリの他に、公式サイトからpdfファイルをダウンロードし、印刷しておく必要がある。
プレイ時はゲーム内で示される謎に対し、手元でそれらの紙を使って書き込んだり、切ったり、貼ったりしながら解答を導き出し、それをゲーム中で入力することによって進行していく。
操作体系
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ゲームの舞台は一人称視点の3Dマップとなるが、「移動」という操作はなく、スティック操作で前後左右天地に視界を移動することのみができる。
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また、LもしくはRボタンで「目をつむる」操作となり、目をつむったまま↑↓←→ABXYのボタンを押すことで最大8ボタンまでのコマンド入力ができる。
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主人公・音無トキオは「記憶が欠落した超能力者」という設定であり、そのコマンドが有効なものであれば「タイムリープ」「テレポート」などの超能力が発動、別の空間に遷移する。
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そうして移動を繰り返し、最後に「キオクダマ」と呼ばれる球体を包む紙に火炎の魔法を当て(その名も「チャッカスール」)、自身の記憶を呼び戻すことでステージクリアとなる。
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このコマンドの内容こそが謎解きの解答であり、手元の紙を折る、重ねる、切って貼るなどの加工をすることで「何のボタンをどの順番で押すべきか」が解る仕掛けとなっている。
評価点
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リアルな紙を使うという唯一無二性
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ゲーム上に手がかりが提示され、紙でそれを解く、という体験はやはりコンシューマゲーム機では類を見ない珍しさがある。勿論、現実世界の物品がヒントになること自体は古くからあり、「パッケージに無線の周波数が書かれている(メタルギアソリッド)」「説明書に暗号の規則性が記載してある(シルバー事件)」、PC98時代までさかのぼれば「付属の地図にコマを乗せながらフィールドを冒険する(覇邪の封印)」など複数の例があるが、ゲーム全編を通して、更に工作をすることでゲームを進行できるというコンセプトは唯一無二と言ってもよい独自性がある。
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解答は先述の通りコマンド、つまり「A」や「↑」などのボタン名で示され、ひらめきと試行錯誤によってモニターを通さない自分の手元にそうした記号や文字が出現する体験は、いわゆる「一周回って新しい」感覚を与え得る。
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アナログな行為により徐々に攻略の道筋が見えてくるという意味では、もしかすると、往年の3Dダンジョンゲームにおける「自作の方眼紙マップ」のワクワク感に近いかもしれない。
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「リアル脱出ゲーム」イベントの予習としての有用性
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かつてFLASH文化から発生した脱出ゲームブーム、或いは脳トレブーム・クイズブームの傍流で「リアル脱出ゲーム」といったイベントが国内でしばしば開催されているが、本作の問題の性質はそうしたイベントの出題傾向にかなり近い。
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その手のイベントはそこそこ参加料が高く、且つ大抵制限時間もあるためハードルが高く感じられるが、本作は好きな時に自分のペースで雰囲気や難度感をつかめるため、イベントの予習に役立てることができる。
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豊富な問題数
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短めのストーリーが付随した全20ステージで構成されており、ボリュームとしては多め。謎の物量でいえば先述のようなリアルイベント4~5公演分ほどあるため、謎解きに慣れた人でも、すぐに終わってしまうといったことはない。
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これはこれである種、困る面もあるのだが……(後述)
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うまく調節されたヒント機能
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公式サイト上にヒントがあり、ゲーム中からもポーズメニューからのQRコード表示という形で参照することができる。
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ヒントはひとつの謎ごとに複数の段階に分かれており、「もっと見る」というボタンを押すことで一段階ずつヒントを開示することができる。そのため、予期せず重大なヒントまで見てしまう事態が少ない設計になっている。
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最後は答そのものも閲覧可能。また、あくまでゲーム内ではなく公式サイト上のヒントを読んでいるだけなので、ゲーム進行において一切のペナルティはない。
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クセのない絵柄とキャラクターデザイン
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ステージの前後には主人公・音無トキオをはじめとしたキャラクターによる紙芝居形式のストーリーが挿入される。絵柄やキャラクターデザインは全体的にクセがなく、水彩画のような淡い色合いもあり親しみやすい。
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「特徴が無い」ともいえるが、性質上そこまでストーリーの端々が重要なわけでもなく、感情移入を要するものでもないため、ちょうどいいライン。
賛否両論点
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ある意味長すぎるプレイ時間
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「リアル脱出ゲーム」にはグループ参加型のイベントもあることから、本作も気の合う仲間とプレイすると盛り上がると思われる……が、本編20STAGEのクリアには目安として15時間程度は見積もっておいたほうが良いと思われる 。
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即ち、仲間内で集まって遊ぶなら短くても2~3日行程の予定を組んでおく必要があり、その時点でハードルとしては高いといえる。
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同居家族であっても同様、集中力や全員の予定などを鑑みると1週間程度取り組むことになり得る。
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通常、プレイ時間が長いというのはゲームプレイにとって長所であるし、それでもアドベンチャーゲームとしては「そこそこのボリューム」程度なのだが、こと本作においては状況により難点となるかもしれない。
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専用用紙もヒントもオンライン上であることへの不安
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「懸念点」というべき内容となるが、前述の用紙(pdfファイル)やヒントはいずれも公式サイトにあり、万一公開終了となった場合は実質プレイ不可能となる。
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特にpdfファイルの方は印刷後もローカルに保存しておいたほうが良いかもしれない。
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高難度とは少し違う追加ステージ
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無料アップデート21ステージ目は、まさに「リアル脱出ゲーム」の公演でおなじみの株式会社SCRAPが謎を制作している。公式サイトでも「高難易度で解き応えがある」と銘打っているが……
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どちらかといえば「謎」の難度ではなく「工作」の難度が高いステージとなっている。手がかりはほとんどゲーム画面上に提示されているのに、指先ほどの紙片を複数枚とっかえひっかえするため、「問題文の意味も解き方もわかっているのに解けない」という不思議な事態が生じる可能性がある。
問題点
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印刷コストへの懸念
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専用用紙はA4サイズで全33ページとなる。自宅にプリンターがない場合、2021年1月現在のネットプリントで白黒1枚20円→ゲームプレイにあたりソフトの価格とは別に660円かかることになり、若干割高感が生じる。
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プリンターがあるとしてもインク代には少々の抵抗がある人もいるだろう。カラーは一切なくモノクロで良いのが救い。
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工作を要する謎はともかく、書き込んだり並び替えたりするだけならタブレット端末上で行うのも手か。
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プレイ中かなり散らかりやすい
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工作を伴う33ページ分の紙、となるとプレイ中は結構な量の紙片が量産されることになる。小さなパーツも生じるし、間にごはん休憩などを挿めばなおのこと収拾がつかなくなることがあり得る。
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前述の通り思いのほかプレイ日数も要するため、箱やファイルなどを用意し、使用済み用紙や未使用の問題などに分けて収納していった方が良いだろう。
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ごく一部のいまいちな設問
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基本的に粒ぞろいの謎が待ち受ける良質なレベルデザインではあるのだが、ボリュームに比例し、キレイでない問題もわずかながらある。
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具体的な例は避けるが、暗号に不要なノイズが含まれており解けたとしても爽快感を阻害するものや、本来簡単な仕組みの謎を分かりにくく表現しただけのもの、といったタイプとなる。
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設問数から鑑みれば仕方ないとも思える程度なのだがモヤっとくる場面はあるかもしれないので、制限時間を自身で設けてヒントを開放していく、というプレイスタイルのほうが良いかもしれない。
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なぜか大きめの音量
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本作品、他のゲームに比べると異常に音量が大きく、そのくせオプションがない。
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なお音楽は増子津可燦が担当している。人によってはありがたいだろうか……?
総評
アナログの紙を用いるという発想は一見古臭いと見せかけて、ダウンロード専売・オンラインで専用用紙配布といった現代のデジタル市場の整備あってこその新しいゲームの形といえる。
謎解き好き、脱出ゲーム好きという方はまた一歩先のゲーム体験として触れてみると面白いだろう。
最終更新:2024年04月12日 09:37