SHUFFLE! エピソード2~神にも悪魔にも狙われている男~

【しゃっふる えぴそーどつー かみにもあくまにもねらわれているおとこ】

ジャンル 恋愛アドベンチャーゲーム
対応機種 Windows 7~10
発売・開発元 Navel
発売日 2020年5月29日
定価 通常版 9,800円(税別)
豪華限定版 14,800円(税別)
レーティング アダルトゲーム
判定 なし
ポイント 続編兼疑似リメイク
キャラは高評価
Navel作品リンク


概要

Navelブランドの中でも根強い人気を誇る『SHUFFLE!』の続編。

同シリーズは2011年発売の『SHUFFLE! Love Rainbow』を最後に展開が止まっていたが、2018年にSHUFFLE!15周年記念プロジェクトとして新作PCゲーム『SPYRAL!!』の発売日と共に「初代SHUFFLE!の次のステージ」との触れ込みで制作が発表された。
派生作品の展開は継続されていたとはいえ、15年前の作品の、それもファンディスクではなく続編が出るという情報はシリーズファンに衝撃をもたらした。
また、初代『SHUFFLE!』及び複数の関連作品のシナリオライターであった故・あごバリア氏の構想を引き継いで開発するとの情報もあり、総じて多大な期待感の中での発売であったと言える。

前作『SHUFFLE!』未プレイでもシナリオの理解は可能だが、やはり関連した要素が多いため、上述の『SPYRAL!!』にも本作にも初代『SHUFFLE!』が(通常版でも)付属される。
一方で『SPYRAL!!』は舞台を同じくする本作の前日譚ではあるものの直接の繋がりは薄く、未プレイでも全く支障はない。


システム

  • 概ねごく一般的な恋愛アドベンチャーゲームのシステムと言える。
    • テキストを読み進めて時折出現する選択肢を選ぶ→
      選択内容によって直後の展開とヒロインの好感度が変化する→
      シナリオの特定の時点で好感度が最大値のヒロインが存在した場合(=目当てのヒロインに関わる全ての選択肢に正解していた場合)、そのヒロインの個別ルートに突入する
      …といった流れ。
    • 個別ルートに入れなかった場合、少しのメッセージを挟んでタイトル画面に戻される(実質バッドエンド)。
      どの選択肢がどのヒロインに対応するのか分からない場面もあるが、一度選んでみれば展開そのものは分かりやすいので判別は容易。
    • ルートロックはないので選択ミスさえなければ好きな順で攻略可能となっている。

特徴

  • 世界観は『SHUFFLE!』と同じく、
    「人間界とは別に神界・魔界とそこに住む神族・魔族が存在し、各世界での交流が盛んで住民の往来は当たり前、魔法・錬金術といったファンタジックな概念も流入している」
    と結構何でもアリなもの。
  • 時間軸としては前作よりかなり後の話で、メインキャラクターは一新されている。
    • 続編らしく前作の世界及びキャラクターのその後を垣間見ることができる等、ファンサービス要素が多い。
  • やはり初代『SHUFFLE!』同様に、キャラクターは総じて個性的でありながらも極めて善良。サブタイトルは物騒なニュアンスにもとれるが特に深い意味はなく、シナリオの雰囲気は常に明るい。
    公式サイトには「前作は優しい世界を体現していた」との記載があるが、今作もその方向性は徹底されており、ゲーム全体を参照しても憎しみや嫉妬、暴言等の攻撃的な要素そのものが非常に少ない。
  • さすがに各シナリオの終盤ではシリアスな展開にもなるが、今作の主人公含む味方陣営は様々な面で有能かつ協調的であるため、必要以上に重い気持ちにならずにプレイすることができる。
  • 今作は前作の疑似的なリメイク作*1としての性質もあり、上で述べたような世界観や作品コンセプトの踏襲に始まり、キャラクターの設定や要所の話の展開、果てはゲームそのものの長所と(意図的ではないだろうが)短所までもが多くの類似点を持っている。

ストーリー

あの夏をもう一度──
美少女だけどポンコツなお姉ちゃんの世話をしつつ、
周囲の女生徒たちからも一目置かれている主人公
「相生頼斗(あいおいらいと)」
聞くところによれば、世界は一度、崩壊寸前の危機を迎えたらしいが、
そんな過去はすでに忘れ去られてしまったかのように平和な日常が続いている。
神族・魔族といった異世界の文化とも交流が進み、それが当たり前になって世界は退屈を取り戻した。
そんな退屈がずっと続くものだと思っていた。
そこに突然、神界と魔界のプリンセスが現れる。
「私は人間というものと決別するためにここにやってきたのです」
「貴方のお命、頂戴しますわ」
ある日を境に、主人公は「神にも悪魔にも狙われている男」と呼ばれるようになってしまった。
彼は退屈な日常を取り戻すことができるのか?
主人公とヒロインたちの新しい夏が始まる。
退屈な日々よ、ワンスモア!

※公式サイトから抜粋。


キャラクター

名前の由来が前作及び『SPYRAL!!』から変わっており、今作では石・宝石が名前の由来となっている。

主人公とヒロイン

前作のキャラについてはこちらを参照

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  • 相生 来斗 (あいおい・らいと)
    • 主人公。幼少期に父親を事故で亡くしている。
      同じ事故で両親を失った琥珀(ヒロインの一人。詳しくは後述)を母親が養子として引き取ったため、彼女とは姉弟同然に育つ。母親が仕事でほぼ家を空けているのでほぼ二人暮らしであり、琥珀の生活能力が低いため家事全般は彼が取り仕切っている。
      • 幼少期、とある事情から琥珀に辛く当たったことを悔やんでおり、彼女への献身的な態度もその出来事の責任を感じてのものである。
        前作の楓と稟の関係に近いが、楓ほどは表立って後ろめたさや一歩引いた態度を出さない。
    • 公式サイトには「やるべきことは先に済ませた上での退屈な時間を好む」・「一見ドライ」との記述があるが、「やるべきこと」の範囲には家事や勉強の他、目の前の人間が困っていれば助ける…等も含んでいるようであり、物事に対する積極性は低くない。正直特にドライではなく普通に優しい。
      • その優しさも独りよがりのものではなく、あくまで本人の望みを逸脱しない範囲にとどめている。
    • ゲーム中では指摘されないが、情報が交錯している状況・難しい質問にも妥当な判断や返答を素早く返すことができ、頭の回転は早いものと思われる。
    • 容姿についても言及が少ないものの、他キャラの発言や反応を鑑みると高いレベルであることが推察できる*2
    • 総じてかなり高スペックな主人公だが、本人は鼻にかけることはなく、作中で過剰な持ち上げもないため、プレイヤーからの評価は高い。
  • リシア
    • 明るく優しい上に真面目な神王の娘。自己紹介の際にリシアと名乗り、本名は明かしていない。
    • 名前も見た目も前作のリシアンサスに似てはいるが、内面はかなり異なる。
    • 頼斗に対しては無理に壁を作るような不自然な発言が目立つが、最序盤以外は本来の優しく穏やかな態度になる。
    • 神王の後継者としての将来を真剣に考え、人間と人間界を見極めるため(そして幼少の頃に出会った気になる男の子に会うため)に頼斗の学校に留学してきた。
      • 前作で同じような立場にあったヒロインや下記のネリアは、「要人でありながらも一人の恋する女の子でもある」といったキャラ付けが濃い一方、王族の使命や責務にはあまりフィーチャーされなかったため、シリーズでも珍しい方向性のキャラクターである。
    • 思い込みが強い面があるものの基本的に聡明な人物である。
      単純に勉強ができるというだけではなく、現状の世界の文化や政治面の問題点を考察・指摘するシーンもあり、上述の王位継承者としての問題意識とも合わせた内面描写がなされている。
      • もちろん、普段は年頃の女の子であるためそこまで堅物というわけでもない。女の子のとしての恋心と王族としての責任感の折り合いや葛藤・二面性が彼女の個性として打ち出されている。
  • ネリア
    • 魔王の娘。ネリアは愛称であり、本名は「カーネリアン」
    • 一見前作のネリネと同じく清楚で控えめ…と見せかけて、かなり積極的でフレンドリーな性格。
    • やや癖のある他のヒロインと比較して言動は極めて常識的。かつ物腰も丁寧。
    • ただし、頼斗へのアプローチは違和感を感じるほど露骨。
      そしてあらすじの通り「頼斗の命を頂戴する」との意味深な発言もするが、その後も態度は好意的なままなので余計に謎。
      • もちろん個別ルートでその謎に迫ることになる…のだが、核心部分の大半が公式サイトに載っている*3
    • 見た目や話し方から誤解されやすいが、行動は意外と場当たり的で適当である。
    • 彼女の積極性は恋愛のみに対するものではない。
      人間界の文化に関わる機会があれば積極的に参加・質問し、またはちょっとした遊びの誘いや提案にも喜んで乗ってくれる。留学生としての生活を本当に楽しんでいる様子が見て取れ、本編の雰囲気の明るさの一助を担っている。
  • 木下(きのした) きらら
    • 頼斗・リシア・ネリアの一つ下の学年の後輩。琥珀に心酔している。
    • 神界生まれ魔界育ちを経て人間界にやってきた帰国子女。
      長らく人間界に憧れを持っていたため知識豊富なのだが、妙にステレオタイプの思い込みが多かったり、本来年頃の女の子は使わないような言い回しを知っていたりとその内容には偏りがある。
      • 人間界での生活歴そのものは短いので自身の偏った知識と実態とのギャップに驚くこともあるが、琥珀の存在もあって現在の生活は大変気に入っている。
    • 序盤は(表面上は)頼斗を琥珀のおまけ扱いしている。
      さらにセリフにギャグ色が強く、早口で喋る上に琥珀の話ばかりするので慣れない内は癖が強く感じる。
      しかし、少し話を進めると頼斗への態度はむしろ好意的なものであるが容易に理解でき、(しゃべり方はそのままだが)態度も丸くなるので、彼女と頼斗のやり取りもむしろ微笑ましく感じられるようになる。
    • 演劇部所属で、彼女の演劇へのこだわりは非常に真摯なものである。
      普段の言動のギャグ色が強い分、部活動がらみのイベントでの実直さは強く印象に残る。
  • 安場 琥珀(あんじょう・こはく)
    • 元は頼斗の従姉弟兼幼馴染で現在は姉弟のような関係。学年は一つ上。
    • 生活能力が極めて低く、家事全般は頼斗頼みである。寝起きも悪いので頼斗がいつも起こしている。
      しかし、ひとたび外に出れば信頼の厚い優等生・成績優秀でスポーツ万能、柔和な性格ながら演劇部の部長も務める完璧な女性に変身する。
      • ただ、他人に対する穏やかな態度は変化しないのでプレイヤー目線では豹変したとは感じにくい。
    • 頼斗が苦戦する、あるいは解決できない問題に立ち向かえるだけの柔軟性と度量があり、彼女の存在が心強く思えるシーンは多い。
      • 一方で、頼斗にのみだらしない様子や甘える行動を見せる等、人間らしいと言える程度の弱点や愛嬌をも併せ持っている。
    • 主人公と同居しているという立場もあってヒロインの中でも見せ場が多い。今作自体の評価が乏しくないプレイヤーでも彼女のキャラクター性に関しては評価している場合が多い。
  • リムス
    • 出自が謎に包まれた少女。リムスは愛称であり、本名は「リムストン」
    • 見た目は幼いが年齢は頼斗の一つ下。町一つ消せるだけの絶大な魔力を持つ。
    • 頼斗との接触が心身に良い影響を及ぼしたことが確認されたため、頼斗の母親の部屋を使って一緒に住むことになる。
      • 研究所育ちであるために家族や学校、異性や恋愛等の一般的な常識に疎く、感情表現も最初は薄い。
    • 表面上は前作のキャラに似ていても中身は結構違ったリシア・ネリアと異なり、彼女は内面も含めてプリムラにかなり近い。
      • しかし、今作はプリムラ本人も登場するので先達と後継者という関係になり、話の展開としては丸々焼き直しとはなっていない。感情表現も初期のプリムラほど薄くはないため、プリムラほど劇的には変化しない。
    • 独学で様々な物や技術・文化に関する知識は学んでいるが、それらは実践経験に即してはいない。しかし、料理・運動・コミュニケーションの取り方等、あらゆる技術の飲み込みが早い上に本人の積極性も高く、意外にも早々にかなり一般的な立ち振る舞いが可能になる。
      • 前作のプリムラは終盤まで子供に近い扱いであったのに対し、彼女は一人前の女性として、あるいは家族として頼斗や琥珀から頼りにされるシーンを見ることができる。

サブキャラクター

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  • プリムラ
    • 前作のヒロインの一人。
    • 人口生命体であるためかあまり年を取っていないが、感情表現は一般的な人間と遜色ないほど豊かになっている。また、肉体的にも成長している事が分かる。
      • 前作にも増して強大な魔力を、それも自在に制御できるためにもはや何でもできる存在だが、今作ではとある世界的に重要な役割を担っており、自由に行動可能な時間は限られる。
  • 白玉、黒玉、虎玉(しろたま、くろたま、とらたま)
    • かつてプリムラが所持しており、今作ではリムスに譲渡されたぬいぐるみ。なぜか今作では意思を持って動く。
    • シナリオ全体を通して頻繁に登場する上に重要な役割を担うこともあるので、単なるマスコットキャラクターにとどまらない存在感がある。
  • 神保 虎次郎(じんぼ・とらじろう)
    • 頼斗の親友。
    • 頭脳明晰、容姿端麗の生徒会長。教師からも信頼されている。
      • 頼斗曰く「ヒューマンウォッチング」と称して道行く女性を視姦する変態…とのことだが、ゲーム中ではギャグ描写こそ多いが普通に親切で、いざという時は持ち前の頭脳と胆力で協力を惜しまない、友情に厚いキャラである。
  • 麻梨(まりん)=オブシウス
    • 頼斗と虎次郎のクラスメイトの少女。神族と人間のハーフで、オッドアイが特徴的。
    • 趣味は睡眠で、地獄耳と睡眠学習により極度の情報通。
    • 本人は強調しないが、情報通以前に洞察力に優れており、作中の事態の考察やアドバイスはことごとく的を得ている。
    • テストの情報が入るので学業優秀、ファッションの情報も入るのでおしゃれ、他キャラの困り事の情報も入るので的確な気配りもできる…とあらゆる方面で高スペック。
      • しかもその情報を(冗談は言うものの)悪用するでもなく、有事の際は無条件で協力する善良さも持ち合わせている
    • のんびりとした話し方に加え、ヒロイン5名を差し置いて作中で最も良いプロポーションを持つが、前作で似たポジションの麻弓=タイムと異なり、別段学内で人気がある等の描写は一切無い*4
  • シトリン
    • 頼斗の一つ下の学年で、きららの幼馴染。
    • 人間界に来た時期がきららより早いので彼女よりもかなり常識的。
    • 超現実主義で趣味はバイトと貯金。かと言って守銭奴でも薄情というわけでもなく、きららや頼斗達との関係も大切にしている。
    • 今作の他キャラがいわゆる「二次元特有の属性」にあふれている中、極めてまともな人物である。
  • 石竹 瑪瑙(いしたけ・めのう)
    • 頼斗のクラスの担任。余計な仕事はしない主義なので出番は多くない。
    • 容認主義の緩い教師でいい加減な性格だが、虎次郎と頼斗によるとそれに救われている生徒もいるとのこと。
    • 見た目が生徒と同じくらい若くスタイルも良いが、作中では特に言及されない。
  • クンツァイト
    • リシアの父親で今作の神界を統べる王。
    • 豪快な面もあるが決して悪い人物ではない。また、極度の親バカではあるが、王としての責務は常に忘れない。
  • カルセドニー
    • ネリアの父親で魔界を統べる王。
    • 身長2mを超える強面の大男だが、実際は権力者らしからぬ礼儀正しさと優しさを持った人物。こちらも親バカではあるが、心配性の延長といった側面もある。
  • フローラ
    • リシアのお世話係のメイド。
    • 料理や洗濯等の家事全般のスキルに加え、ボディーガードとしての高い能力も有している。
  • アレックス
    • 護衛から家事全般まで何をやらせても完璧な召使い中の召使い。
    • 男性ではあるが女性にあまり興味はない。頼斗のことは気に入っている。

評価点

  • キャラクター
    • ヒロイン(と主人公)の特徴付けが秀逸。
      その人物が持つ長所はもちろん、短所をも他キャラが補うことによって過失を目立たなくしつつ、「完璧でないことによる人間らしさや親近感」といった(プレイヤーが愛着を持つ上では)プラスの要素に転換している。
    • 彼らの設定は表面上は前作のメインキャラクター達と被る部分はあるが、内面はかなり違うので新鮮な印象でプレイできる。
      • また、今作単体においても、ヒロインたちは場面の変化やシナリオの進行とともに様々な一面を見せてくれるため、キャラクター性に深みを感じることができる。
      • ヒロインが主人公と恋する様子も重要な魅力の描写の一つだが、前述したように主人公が好印象なため、やや性急に仲が進展しても不自然に感じにくい。
        主人公もヒロインの為に動くシーンが大きな見せ場であるため、互いの魅力を引き出しあうような構成になっている。
    • 声優諸氏の演技も安定している。場面ごとに異なる感情を演じつつもキャラクターの個性からは逸脱しない、自然なキャラ作りが実現されている。
    • 登場キャラクターのほとんどに立ち絵が用意されている。サブキャラクターも個性はあれど揃って根は親切なので純粋に好感を持ちやすい。
  • シナリオの雰囲気
    • キャラクターだけでなくシナリオへの工夫も通して「優しい世界」が突き詰められている。
    • 終盤以降はどのルートでも何らかのひと悶着が発生するが、その原因も自由度の高い世界観設定を利用して「どのキャラクターにも明確な非が無い」形に落とし込んでいる。
      • よって展開としては「主人公とヒロインが仲間と共に問題の解決に臨む」という構図になり、事態は深刻でも後ろ暗い気分にはなりにくい。
  • 前作ファンに向けた『SHUFFLE!』の空気感の再現性
    • 上でも述べた作品の雰囲気の踏襲に加え、シナリオの舞台・序盤の展開・各キャラクターの(表面上の)設定等の具体的な部分もかなり初代『SHUFFLE!』に寄せられている。
      やや力業な部分があるが、その分明確に「同じ世界に帰ってきた」という印象を得られるため往年のファンにとっては感慨深い。
    • 西又葵氏、鈴平ひろ氏両名のグラフィックも当時の画風の面影がありつつも今風の美麗さをも両立しており、懐かしいながら決して古い印象は受けない。
    • OPムービーについて。少し軸をずらした工夫ではあるが凝っている。
      + 少し解説が長いので収納
    • フルアニメーションであり、こちらは初代『SHUFFLE!』のアニメ版に寄った内容になっている。
      映像の流れも類似・対照的な部分が多いが、当時のアニメ版に関わっていたスタッフが関わっていることもあり*5、ビジュアル面での印象はかなり当時に近くなっている。
      特にアニメも視聴していたファンに対して「続編らしさ」を印象付ける内容である。
      • ただ、別段アニメ版に思い入れがないプレイヤーからは作画クオリティの粗さを指摘する声もある。
    • テーマ曲の「CONNECT」に関してもアニメ版のSHUFFLE!の主題歌であった「YOU」に寄せるようにオーダーされて作曲されているが、純粋に単体の曲としての評価も高い。
      本作の内容も絡めた前向きさと少しシリアスさに加え、物語の広がりを期待させる勢いのある歌詞と曲調となっている。
    • 暖色系でまとめられたユーザーインターフェースも続投。操作に連動してヒロインが喋る点も同じ。
      細かい点だが雰囲気作りとして引き続き有効に作用している。
  • BGM
    • オープニングテーマ曲のように単体での印象が強いものはないが、よく聞くと場面ごとに実にマッチした選曲がなされている。自宅での静かな夜、学園内での団欒、ヒロインとのコメディチックなやり取り等、多様な雰囲気が違和感無く演出されている。
      • 前作『SHUFFLE!』由来の曲も数こそ少ないが効果的に使用されている。

賛否両論点

  • プリムラ以外の前作キャラの扱い
    • 公式サイトのあらすじ紹介では「『SHUFFLE!』からしばしの時が流れた」との記載があるが、実際には何と100年以上経過しており、当然前作キャラはプリムラ以外故人。プレイヤーによっては寂しく感じる。
      もちろん彼らの過去の活躍や存在は様々な手段でシナリオに関わり、クライマックスの感慨にも大きく生かされているため決して無駄な設定ではなく、寂しさはあれど問題とは思わないプレイヤーも多い。
      • 過去キャラのさらに詳しい内容
        + ネタバレを含むため収納
      • 「前作の主人公はリシアンサスと結婚して神王となり、生涯他の女性を妻として迎えることはなかった」との歴史が明確に語られる。
        • 一般的に恋愛アドベンチャーゲームの続編として「前作主人公が特定のヒロインと結ばれた状態を正史とする」こと自体は珍しくない。
          しかし、『SHUFFLE!』のヒロインは主人公が他のヒロインと結ばれても好意を隠さず持ち続けるため、世界観として一夫多妻という手段も存在している中でなおスルーされた彼女らの心情を考えると気の毒である。
        • 彼女らのその後が不幸でなかったことは作中でフォローされているが、 やはりシリーズのコンセプト上、「ハーレムエンドか結末をぼかす形が無難だったのでは」との意見はある。
    • 総じて公式側からは取り立てて強調されてはいないものの、メインターゲットである往年のファンほど衝撃を受ける可能性もある、挑戦的な内容を含んだ設定であったと言える。
  • 前作の踏襲の加減
    • 本作は複数の面で初代『SHUFFLE!』に寄せられているのは上に述べたとおりだが、キャラや世界観はともかく序盤のシナリオの寄せ方はやりすぎとの意見がある。
      前作をフラッシュバックさせるのは悪いことではないが、あまりにも同じ展開が繰り広げられるため、人によってはキャラクターの言動に違和感や窮屈さを感じる。
      • 中盤以降も前作を意識したであろう展開は存在するが、不自然と言えるほどの内容にはなっていない。

問題点

シナリオ面

  • なぜか何度も同じ話をする主人公とヒロイン。
    • 複数ライターの弊害からか、以前した話を覚えていないかのように同じ話をもう一度話す、といったシーンが複数存在する。主人公かヒロインのどちらかが忘れている…といった演出ではなく、会話した過去そのものが無かったかのように話す。
      重大なシーンではなく日常パートであるだけマシだが、違和感を覚える。
  • 話が薄い(ように感じる)。
    • 薄さの要因は大きく二つ挙げられ、一つ目は作品内の展開の重複である(初代『SHUFFLE!』との重複という意味ではなく、本作内でダブっているという意味)。
      • プール開きイベント(いわゆる水着会)の後に個別ルートに分岐して夏休みに突入するのだが、どのルートでも「夏休み中に再びプールで遊ぶ→海辺の旅館で合宿」という展開になるので実質的にはあまり分岐していない。
      • 合宿はルートごとに省略する部分と描写する部分を入れ替える等して完全に同じテキストになることは避けているが、結局やっていることはほぼ同じなので周回時は飽きやすい。
      • さらに、合宿が終わった後の展開もリシアとネリアルート、琥珀ときららルート間にそれぞれ重複が見られる。
      • リシア・ネリアは内容的に意図的な類似と思われるので一概に欠点とは言えないが、琥珀ルートは影響が目立つ(後述)。
    • 薄さの要因の二つ目は結末部分の短さである。
      • 特にネリア・琥珀・リムスのルートは大変あっさり終盤の問題が解決してエンディングになる。今作は味方陣営に強力なキャラが多いため問題解決が早いことそのものは不自然ではないのだが、解決後の描写も少ない為打ち切りのように終わってしまう*6
      • 前述の通り琥珀ルートはきららルートと重複する部分があるのだが、きららルートが締め方も含めて丁寧(後述)であることもあって一方的に物足りなく感じてしまう。
      • 本作は伏線の張り方そのものは意外と入念であり、終盤への期待感が高まりやすい。が、回収の仕方がその丁寧さに比例せずあっさりなため勿体なく感じる。
      • 特に主人公の「過去の出来事の記憶が曖昧」という伏線は何度か描写されるが、肝心の説明が少ない上に二つのルートにまたがっているので理解しにくい。
        + その内容。ネタバレも含むため収納
      • 主人公は本編から七年前にリシアまたはネリアと出会いペンダントを受け取っていたが、どちらと出会っていたかはルートによって変わる。
        これは何の説明もなく変わるのではなく、パラレルワールドの概念(作中では「不確定な事象」と呼ばれる)として作中で明確に言及される。
        • 作中の流れとしては「シナリオ序盤でペンダントは2つあるが主人公はそれが何なのか思い出せない→終盤で主人公と結ばれなかったネリア(リシア)のペンダントは消えるが、主人公と結ばれたリシア(ネリア)との当時の記憶は思い出すことができ、ペンダントも残る(=「不確定な事象」が「確定」する)」というもの。
          主人公と同様にネリア側も同じ条件でのみ主人公と会っていた記憶を思い出せるのだが、リシア側の主人公に会った記憶のみなぜか最初から存在している。
          • 大筋は以上だが、以下の3つの理由により普通にプレイしていても全容が分かりにくい。
            1.そもそも主人公とリシア・ネリアの出会いがなぜ「不確定な事象」になったかの説明が作中に無い*7。また、主人公・リシア・ネリアの内、リシアのみが最初から当時の記憶を保持できていた理由についても説明が無い。
            2.主人公が自身の記憶の欠落の原因を、当時父親を失った事故によるショックによるものと思い込んでいる。一応主人公自身もその仮定には「なぜか俺の記憶は幾重にもガードされている」と違和感を覚えている描写はあるが、リシアルートでは上の思い込みを誰も否定しないためにプレイヤーにとってミスリードになりやすい。
            3.リシア・ネリア以外のヒロインのルートの場合はペンダントと「不確定な事象」の話題自体ほとんど出なくなるので普通に忘れやすい。
      • シナリオの本筋ではないためか、作中のキャラクターも上記の話題は流しがちであり、ほとんどのプレイヤーには忘れられるかスルーされてしまったと思われる。
  • 上記のシナリオの諸問題について、きららルートは例外とされることが多い。
    + 具体的な内容ではないがネタバレを含むため収納
  • 個別ルートのそもそものボリュームがなぜか他ルートよりも大きく、終盤から結末部分にかけてもまさに大団円と呼ぶにふさわしいまとめ方である。
    今作の命であるキャラクターの使い方も上手く、メインであるきららの魅力を描写しつつも、他のキャラクターも各々に十分な見せ場と存在感が与えられている。
    • 総じて他の個別ルートよりも明らかに完成度が高い為、作品のシナリオ全体がこのルート程度の水準であれば良作たり得たと惜しむ声もある。

システム面

  • 個別ルートに入るのが難しい。
    • 「一つも選択を間違えられない」というのは結構な初見殺し。
      しかも前作がどう選択しても特定のヒロインルートには進める仕様だったため、同じ仕様だと読んで一周目を選択肢を適当にしていると間違いなくタイトル画面に戻される。
      • そして二周目のプレイでもそこまで条件が厳しいとは予想しにくいため、一つ二つ選択を間違えて再びタイトル画面ヘ…ということも起こる。
      • ゲーム体験として最も重要な初見プレイで何度もタイトルに戻される(あるいは頻繫なセーブ&ロードを強要される)のは少々興が削がれる。
      • 二人目以降のルートに目指す頃には選択肢は概ね把握でき、(インターフェースの見た目上少々分かりにくいが)選択肢間スキップも可能なので問題になりにくい。

総評

満を持して発売された人気作品の続編ではあるが、シナリオの完成度が低い部分があり、読み物としての微妙さから期待外れであったという声もある。
しかし、変わらない秀逸なキャラゲーとしての演出や雰囲気作り、加えてファンサービス要素の評価は概ね高い。
『SHUFFLE!』の世界が帰ってきた、という部分については往年のファン待望の作品であり、いくつかの欠点も気にならなかった、またはそれを踏まえてもなお楽しめたというプレイヤーも多い。
シリーズファンでなくとも、とにかく明るい雰囲気やキャラを楽しみたいのであれば前作ともどもプレイしてみるのも良いだろう。


関連作品

  • 本編のリシアルートのその後を描いた『Princess×Princess』が2021年8月27日に発売された。
    • もともとは初代『SHUFFLE!』のファンディスクの一つとして企画されながら長年音沙汰が無かったタイトルであったが、この度「エピソード2の」関連作品として発売が決定した。
    • とある事情から初代のキャラクターも今作よりも多く登場するためか、通常版・限定版のいずれにも(またしても)『SHUFFLE!』が付属する。今回は上位バージョンである「エッセンス・プラス」版であるため初代『SHUFFLE!』をすでにプレイ可能なプレイヤーにとっても無駄になりにくい。
      • ただ、肝心の『Princess×Princess』そのものは完成度に問題があり、評価は芳しくない。

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最終更新:2023年05月26日 00:51
添付ファイル

*1 公式サイトでは「現代にアップデート」と表現。

*2 非常にナルシストであるサブキャラクターから「見た目はそれなりの部類」と評される・作中の女性キャラの一人に一目惚れされる・二枚目とされていた前作主人公に(ルックスのことだけではないにしろ)似ていると言われる等。

*3 (幼少期のとある経験から、)神族の王女が執着する人間を誘惑し、略奪した上で、酷い形で捨ててやろうと画策。しかし実際に頼斗と接触したところ、一瞬で惚れてしまう。その思いを振り払うように「自分は誘惑しに来た、捨ててやるんだ」と言い聞かせている…とある。

*4 一応頼斗の独白で「可愛さでは他のヒロインに負けていないと思う」と述べられるシーンはある

*5 キャラデザイン及び作画監督として平山英嗣氏が、アニメーション作成には株式会社アスリードが参加

*6 問題発生から解決までが早いのは前日譚『SPYRAL!!』でも同じだが、ルートによっては非常に雑だったあちらに比べれば改善されていると言える。

*7 ネリアルートでの疑似タイムスリップの魔法の対象となった時代と場所であるから、と仮定できなくもないが、タイムスリップの動機そのものが「不確定な事象」による記憶障害なのでやや無理がある。