カブトクワガタ

【かぶとくわがた】

ジャンル 甲虫冒険RPG
対応機種 Nintendo Switch
発売元 小学館
開発元 コロコロコミック編集部
発売日 2023年3月15日
定価 1,980円
プレイ人数 1人
レーティング IARC:3+(3歳以上対象)→
CERO:A(全年齢対象)
備考 ダウンロード専売
判定 バカゲー
ポイント ディレクター:ブラック博士
圧巻の甲虫達のグラフィック
臨場感皆無の機械音声フルボイス
超展開の迷シナリオ
ウワアアアアアアアアアアアア!!^q^
コロコロコミックシリーズ


概要

  • 2022年8月15日に存在が発表されたタイトル。コロコロオンラインにて連載されているゲーム制作漫画『ゲーつくっ!!』との連動企画であり、コロコロコミック編集部が制作に携わっている。
    加えて甲虫王者ムシキングの生みの親である植村比呂志氏がディレクターを務め、「製作費1億円」「小学館とムシキングの製作者が手を組む」といったことから、かつてのムシキングユーザー達から熱い期待を持たれながら制作された……が、発売後はいろんな意味で話題となった。

システム

  • フィールドマップから行きたい場所を選択し、アイテムを貰ったりカブトクワガタをバトルして捕まえたり、よろずやの地下でオスとメスを交尾させて強い虫を育てたりしながらバトルに勝ち進んでいく事でストーリーが進行する。
  • カブト・クワガタには3すくみの性格「つよき」「ちょうわ」「れいせい」のいずれかが設定されており、バトル開始時に相手に有利な性格だと相手のつよさが弱体化する。逆もまた然り。
    バトルが始まるとルーレットが回り出し、止めた値をお互いに出し合って高い数値を出した方が攻撃する。
    また、ルーレットの数値は虫の「つよさ」の値に依存し、つよさは「げんき」が無いと下がってしまう。げんきは「えさ」を与えることで回復可能だが、カブト・クワガタ用と成虫・幼虫用にそれぞれ対応したえさが分かれているため、間違えたものを与えてしまうと回復しない。
  • カブトクワガタは各地のご神木に目が赤い状態で配置されており、自分の虫でバトルに勝つことで正気に戻った虫を入手することが出来る。
    しかし、野生の個体のみではストーリー攻略でいずれ詰まってしまう。虫のつよさの上限は虫の体格によって定められているため、よろずやの地下でオスとメスを交配させて生まれた幼虫にえさを与え、より体格の大きい個体を育てる必要がある。

評価点

  • 植村氏が手掛けただけあって、ムシキングを彷彿とさせる要素が散見される。
    • カブトムシ・クワガタムシのグラフィックの出来に関しては本当に目を見張るものがある……というか虫の体格によって角のバランスなどもキチンと変化する、作中に登場する虫ショップでのオオクワガタの販売価格がかなり現実的な値段である等、最早リアルすぎて甲虫愛の熱量が狂気を感じるレベル。
      更に虫1種類につき色違いも用意されている他、メディアで公開されるスペシャルコード専用カラーの個体も用意されているため、コレクションに熱が入りやすい。
      • ちなみに、超リアルな交尾シーンもガッツリと描写されている。 どこに力入れてんだ
    • また、虫の鳴き声はムシキングのものに近く、懐かしいと感じたユーザーも少なくない。
    • 尚、ご神木の野生の個体は全てムシキングの改造甲虫のように目が赤くなっている。ムシキングを知るプレイヤーならニヤリとできるだろう。
  • ゲーム内で小学館の図鑑NEOの情報を見る事ができる。
    • 図鑑NEOは普通に購入すると2000円以上する上に大きくかさばるため、これがゲーム内で閲覧できるのは非常に良心的。
  • 採集・収集・飼育と昆虫趣味の要点を抑えている。
    • 前述の虫各種の色違いや体格による変化の他にも虫の大きさも目盛りが細かく設定されており、より大きな個体に育てるやりこみ要素となっている。
      • インタビューにて現実の昆虫愛好家が1mm刻みでカブトムシやクワガタの大きさを競っている*1点を踏まえて実装したとのこと。
    • 現実のカブトムシやクワガタを踏まえて、メスの大きさが次世代の大きさに影響するという徹底ぶり。

おバカな点

  • 隅々まで読み上げる合成音声のフルボイス仕様
    • 本作が発売直後に話題となった最大の要因にして最大のおバカポイント。
      台詞は勿論、システムメッセージはおろか、カーソルが移動した先に文字がありさえすれば節操なく読み上げる。主人公の名前決めの五十音の一覧であろうと例外は無い。
      先述のリアルな交尾シーンまでNPCが棒読みで「オスと、メスが、交尾しましたー!」と読み上げるのはシュール極まりない。
    • おバカ要素として親しまれる一方で、このゲーム中の文章ほぼ全てを読み上げる点が全盲など視覚障害がある人や字が読めない子供でもプレイがしやすいという思わぬ評価を得ている。
  • 超展開の迷シナリオ
    • やたら説明不足な上、ツッコミどころ満載の超展開が平然と巻き起こる。
    • 始まったばかりの冒頭部分でさえも、
      ①夏休み真っ只中な主人公が何をして遊ぼうかと思案するが、今日は登校日である事が判明する。
      行き先の選択肢に学校が出ず、何故か「むしショップ」しか出ない。 いや学校に行きなさい
      ③むしショップで立派なオオクワガタに見とれるも、あまりの高価格のため意気消沈していたところ、むしショップ前の公園で発見した憧れオオクワガタを追って、主人公は木のうろの内部に出現した謎のバチバチに手を突っ込む。
      ④バチバチに吸い込まれた主人公は、巨大なカブトムシやクワガタが蔓延る異世界に転移した上、むしショップで出会った女の子「さなぎ」が既に異世界に順応した様子で平然と登場する。
      ……と、こんな具合である。
      • ちなみに元の世界と異世界を移動する際には主人公が叫ぶのだが、登場人物全員が感情の乗っていない機械音声によるフルボイスで喋る本作の仕様のせいで迫真の棒読み絶叫になってしまっている。 ウワアアアアアアアアアアアア!!^q^ 実写版デビルマンかよ
  • ぶっ飛んだキャラ付けの登場人物
    • 学校に行くと言いながら真っ先にむしショップを見に行き、オオクワガタが消えたであろう木のうろのバチバチに「手を突っ込んでみるしかないぜ!」と行動を起こす「主人公」
    • 虫ショップで主人公がオオクワガタを買えないでいると「お金が無いって寂しいものね」と現実を突きつけて煽って来る上、主人公よりも早く異世界に馴染んでいるヒロイン(?)「さなぎ」
    • 何故か現実世界のキャラよりもリアルな名前の異世界人「つよし」
    • 明らかにどこかのオープンワールドRPGのキャラの2Pカラーにしか見えない「よろずや」の店主 誰が呼んだか偽ウェンティ 「ゆず」
    • ……等々、メインキャラのキャラ付けもいろいろとツッコミどころ満載な仕上がりになっており、説明不足のシナリオも相まってカオスな様相を呈している。

賛否両論点

  • 幼虫のグラフィック
    • シンプルにリアルすぎる。しかも成長するにしたがって最終的に画面いっぱいのサイズになる上、演出を飛ばすことが出来ない。
      • 一応、Rスティックで背中を正面に向かせれば大分マシにはなる……が、脱皮の度に横から見たアングルに戻ってしまうため、苦手な人にはきつい。
  • 文字フォントやSEにフリー素材が使用されている。別に違和感がある訳ではないが、気になる人は気になってしまう。

問題点

ファミ通のインタビューでプロデューサーの和田氏が「僕ら(小学館)が用意できる開発費は他の出版社のプロジェクトと比べると圧倒的に予算が少ない」とぶっちゃけており、その影響が露骨に見えてしまっている部分が幾つも存在する。

  • 戦闘システム
    • 本作のゲーム体験を単調なものにしてしまっている最大の問題点。
    • 体力のメモリは5つあるが、ダメージがメモリ4つで統一されている都合上、2回攻撃すれば勝てるため意味がない。
      • 攻撃わざも1つだけとなっている。
    • ルーレット関連
      • 戦闘が長引くほど回転速度が上がるため、2回判定して高い方の数値を参照できる「ダブルチャンス」が使える虫が強すぎる。
      • 虫によってルーレットの数字の並びが違うせいで、高い数値を狙うとミスしやすい配置の虫が存在する。
      • また、ルーレットは目押しが可能なため、すぐにバトルが単調になってしまう。
      • 尚、ルーレットの値は虫の強さに比例して変動する。そのため序盤に手に入る虫の最大体格個体を入手したとしても、後に登場する虫には次第に勝てなくなってしまうため、好きな虫で自由に攻略することは出来ない。
      • ただ、この「遥か格上のでかい虫に勝てない仕様」と「プロデューサーがブラック博士に扮していた植村氏であること」を踏まえて、本作を「でかい甲虫こそ正義という思想の持ち主であるブラック博士が制作したゲーム」として捉えてみると、この問題点があるからこそ一気に完成度が跳ね上がるという現象が発生する。
      • また、実際のカブトムシ・クワガタムシの「幼虫時代の栄養状態や健康状態で成虫になったときの体格が決定づけられて、成虫になるともう大きくはなれない*2=決定された強さ以上は強く出来ない」という特性を反映しているとも取れる。
  • サブキャラの影が薄い
    • 登場人物自体はそれなりにいるのだが、モブ同然のキャラが大半を占めてしまっている。
  • ご神木での虫探し中のUI
    • カーソルが近くの虫に自動で吸い寄せられていく仕様なのだが、「近くに別の虫が配置されているせいで思った通りの位置にカーソルが行かない」という事態が頻発する。仕様の理解には慣れが必要。
    • また、野生の虫とのバトルが終わる度にNPCが「バトル前に虫にエサを与えて強くしよう」というアドバイスを毎度毎度入れてくるため、テンポを阻害してしまっている。
  • 機械音声をOFFに出来ない
    • DSの『グレイテストチャンピオンへの道2』でも機械音声による台詞の読み上げ機能はあったが、あちらは音声のON/OFFが切り替えられたのに対し、本作は音声をOFFや0にすることは出来ず、読み上げ速度と音量を変える事しか出来ない。
  • 1980円とはいえ、DLC抜きだと登場する虫が24種とかなり少ない。
    • GBA/DSの「グレイテストチャンピオンへの道」でさえ、「種の下位分類」「技カードとして登場するとくしゅわざの虫」を除いたとしても40種だったのだが…
      • ただし代わりに虫1種につき3色のカラーバリエーションがあり、色違い個体を収集する要素である程度リカバリーされている。
    • 高いと言われることを見越してか、発売後一か月間は1000円引きの半額以下で販売されていた。また、虫を追加するDLCも6月15日の発売当日から30%OFFのセールが行われている。
    • なおムシキング層のユーザーを意識してか、ラインナップは「ニジイロクワガタ」とDLCの「ジュダイクスミヤマクワガタ」を除いてムシキング最初期から登場したものに偏っていて、有名どころといえる「サンボンヅノカブト」「ティティウスシロカブト」「スマトラオオヒラタクワガタ」「ヨーロッパミヤマクワガタ*3」などが登場しない。その上今やムシキングシリーズ以外ではほぼ用いられないヘ クレスオオカブト表記(百獣大戦アニマルカイザーなどの他の場では「ヘ クレスオオカブト」表記)がされる徹底ぶりである。
      • その関係でヘルクレスオオカブトだけ図鑑NEO解説文との表記名が違っておりチグハグなことになってしまっている。
      • なお、図鑑NEO本書では「パリーフタマタクワガタ」表記だった「セアカフタマタクワガタ」、「ゾウカブト」表記だった「エレファスゾウカブト」、「ヒラタクワガタ」表記だった「パラワンオオヒラタクワガタ」の図鑑NEO解説文はゲーム内表記に統一されている
      • 「コーカサスオオカブト」「ブルマイスターツヤクワガタ」「ケンタウルスオオカブト」など、有名どころでムシキング初期のうちから登場している中でもDLCになっている虫もいる。
      • 前述した「ブラック博士に扮したプロデューサー」とある割に「アクティオンゾウカブト」もDLCでしか登場しない。「タランドゥスツヤクワガタ」も同様。
      • なお「タランドゥスツヤクワガタ」も上記「ブルマイスターツヤクワガタ」などの属するオドントラビス属ではないため「タランドゥスオオツヤクワガタ*4」表記が正しいのだが、やはりムシキングシリーズに準じた誤表記となっている。
  • その他細かな点
    • Bボタンで図鑑を閉じることが出来ない。虫一覧の画面まではBボタンで戻れるため、尚更目立つ。
    • 体験版からのデータ引き継ぎは出来ない。そのため体験版で捕まえられる特別なヘルクレスオオカブトを引き継げるものと思ってプレイすると肩透かしを食らう。

総評

かつてのムシキングユーザー達の注目の的となった一作だったが、その尖りきったゲーム内容によって発売後に全く別の方向で話題になってしまい、ムシキングの幻影を求めて本作のリリースを心待ちにしていたユーザーからはこれじゃないという感想が噴出する事態になってしまった。
しかし、本作を通して「リアルなグラフィックのカブトムシやクワガタでバトルをする」「ムシキング以上に”昆虫“というテーマに真剣に向き合ったゲームを作る」という制作側がやりたかったことに対する狂気レベルの熱量は十分過ぎるほど伝わってくる。
また、そのままであれば凡作止まりであったであろう本作に読み上げソフトを導入するという開発陣の判断が無ければ話題にならなかったであろうという事は想像に難くない。
戦闘システムの問題点も「ブラック博士のキャラゲー」もしくは「実際の昆虫のシビアな要素を逃げずにゲームシステムに組み込んだ」と考えれば逆に完成度が高くなるため、色んな意味で他に類を見ない一作と言える。 特に発売開始後1ヶ月限定特価の980円で購入したプレイヤーからすれば十分その値段に見合ったゲームなのかもしれない。

余談

  • ホーム画面で本作にカーソルを合わせた際に表示されるタイトルが「カブトクワガタ」と誤植されていた。植村氏も発売後に気付いたようで、Twitterに嘆きツイートした後、発売10日後の最初のアップデートで真っ先に修正された。
    • ちなみに体験版の方も間違えていたが、こちらも発売1か月後に無事修正された……というツイートが行われたのだが、何故か数か月間そのまま放置されていた。
  • 昆虫がモチーフのひとつであるスーパー戦隊シリーズ作品『王様戦隊キングオージャー』とのコラボ実施*5や、プレイ日記のブログ連載と本作のインタビューを大塚角満氏*6に依頼する等、販促への気合いの入れようはしっかりと伝わって来る。
    • ……かと思いきや、発売直前に公開されたWebCMは何のゲームなのか分からない意味不明なものばかりだったりと、大いにプレイヤーを困惑させた。
      • かと思っていたら、DLC発売記念CMやたら気合いの入ったアニメになっていたため、ユーザー達は「あの夏に風邪ひいた時に見る夢のような今までの宣伝映像は何だったんだ」と逆に困惑する事態となった。
  • スペシャルコードは合言葉入力によるアンロック形式ではあるが、雑誌掲載分のスペシャルコードは販売期間中ネットなどに公開しないようガイドラインに明記されている。
    • コロコロコミックは紙版の販売が終わっても電子版が一年ほど販売されているため、原則として掲載から一年間はネット上に公開してはいけないので注意。
  • 大の昆虫好きとして知られるホロライブ所属のVTuber・桃鈴ねね氏とコラボしており、本人も本作を配信でプレイしている他、コロコロ連載の漫画『ゲーつくっ!!』には彼女がゲスト出演している。
  • 2023年11月15日に、ゲーム本編とDLCの追加ムシパスに加えて『図鑑NEO 特別編集版 カブトムシ・クワガタムシ』が付属してくるパッケージ版『カブトクワガタ デラックス』が発売された。
+ タグ編集
  • タグ:
  • RPG
  • 小学館
  • コロコロコミック

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最終更新:2024年04月27日 19:47

*1 実際に昆虫の生体や標本、それに関する用品や書籍を販売している『むし社』が、年1回その種毎の体長を競うコンテストを開催している。

*2 カブトムシ・クワガタムシに限らず節足動物全般は脱皮なしで大きくなろうものなら外骨格が砕けてしまう

*3 ただし、前述の「ジュダイクスミヤマクワガタ」はこちらの亜種。

*4 「合虫ガッツ!」に限りこの名称が使われた。

*5 実際にはてれびくんの付録スペシャルコードに封入、「ギラファノコギリクワガタ(6・7月号)」「ヘルクレスオオカブト(9月号)」のステータス変更・スキン変え。

*6 モンハンプレイ日記『逆鱗日和』シリーズや『熱血パズドラ部』シリーズの著者