本項ではアーケード版『ハイパーオリンピック』『ハイパーオリンピック'84』と、ファミリーコンピュータ移植版『ハイパーオリンピック』『ハイパースポーツ』について記述する。



ハイパーオリンピック

【はいぱーおりんぴっく】

ジャンル スポーツ(オリンピック)
対応機種 アーケード
発売・開発元 コナミ
稼働開始日 1983年10月27日
プレイ人数 1~4人
判定 なし
ポイント 80〜90年代を代表するSPGの起源
シューティングとは違った連打ゲー
ハイパーオリンピックシリーズ
初代(AC / MSXI / MSXII / FC)/ '84 / アトランタ /
ナガノ(AC / PS / N64)/ GB / 2000

概要

1983年にアーケードで導入された、オリンピックを模したスポーツ競技のゲーム。
陸上競技の6種目が収録されている。


内容

  • 陸上競技の6種目を「100m走」→「走り幅跳び」→「槍投げ」→「110mハードル」→「ハンマー投げ」→「走り高跳び」の順番に行う。
    • それぞれにクオリファイ(予選通過目標)が設定されており、それを上回ればクリアーとなり次の競技に進める。
    • スコアはその競技を終えた時点で最高記録に基づいて加算される。
    • 走り高跳びをクリアすると表彰式のデモを挟んで、次の周の100m走に続き以後周回の度にクオリファイが上がっていく。
    • それぞれの競技に世界記録が設定されており、上位3位まで記録されている。
      • これを更新するとファンファーレとともに褒め称えるメッセージが出る。

100m走

  • 「RUN」ボタンを叩くほどグングン加速して速く走る。
    • 完全な連打勝負。
    • 2人での競走となり、同タイムでクリアーするとブタが登場しボーナス点が入る。
    • フライングを三度行うと失格となる。

走り幅跳び

  • 「RUN」で助走し連打するほど速くなり、踏切線手前で「JUMP」を押して飛ぶ。
    • 「JUMP」は長く押せば押すほど高角度でジャンプできる(ベストは45°)。
    • 踏切線を超えてしまうとファールとなり無効。
    • 3回試技を行うことができる。

槍投げ

  • 操作自体は「走り幅跳び」と同じ。
    • 走って跳ぶか槍を投げるという挙動が違うのみ。
    • ファールにならず槍を画面外に出るほど高角度で投げると宇宙人が槍に刺されて落ちてきてボーナス点が入る。

110mハードル

  • 100mと同じトラックで2人で行われる。
    • 20m地点から90m地点まで10mおきにハードルが設置されている。
    • フライングを三度行うと失格となるのは同じだが「JUMP」ボタンを押した場合でもフライングとなる。

ハンマー投げ

  • 「RUN」ボタンを押してスタート。
    • グルングルンとハンマーを振り回し始め、どんどん加速されていきタイミングを計って「JUMP」で投げる(長く押すほど角度が高くなる)。
    • 回すスピードがつくほど飛距離が増すのだが、投げるタイミングが取りにくくなり前以外に投げてしまうと当然ファールとなる。

走り高跳び

  • 「RUN」を押して助走し(連打は不要)、「JUMP」を押すほど角度が落ちていく(初期値は90°)。
    • つまり、まずは1回押して上に跳ぶの限界の高さまで待ち、あとは落下に応じて長押しで角度を調整する。
    • 3回失敗するまで試技を続けられる。

評価点

  • 連打とタイミングというスポーツゲームの礎を築いた。
    • 今となっては当たり前だが、パワーが必要な場面では連打、コントロールではタイミングというプレイヤーとの一体感をしっかり表現できている。
  • プレイヤーに段階的にスキルアップを求めるようなバランス。
    • まずひたすら連打の「100m走」、そして連打+一発長押しで走り+ジャンプ(投げる)角度を決める「走り幅跳び」「やり投げ」、連続でタイミングが要求される「110mハードル」、タイミングを間違えば即ミスにつながる「ハンマー投げ」、ただジャンプするだけでなくそのジャンプ中に角度の微調整が要求される「走り高跳び」といった具合に後の競技になればなるほど、操作が増え、テクニックが必要となっていくバランスになっている。
      • 初ジャンルということもあって、徐々に慣れていける点は非常にプレイヤーに配慮されている。

問題点

  • 単純だけに、どうにもならないケースもある。
    • 例えば最初の100mをクリアできるだけの連打ができないと本当に先に進めない。
  • ボーナスキャラが実質ボーナスにならないことも。
    • 「やり投げ」の宇宙人はファールになると出ないとはいえそれを出すとまずクオリファイは超えられない。
    • ボーナスながら自損行為推奨という微妙な位置付けになっている。

総評

このような陸上競技のゲーム自体初作品で、ゲームそのものは当時の中では可も不可もないような出来ではあるが連打とタイミングを織り交ぜたスタイルは後々のスポーツゲームの礎となったことが大いに評価できる。
根本的に連打勝負のゲームなので競技の特性上単調になるのは否めないが、そんな中でタイミングも重要な「ハンマー投げ」や角度を調整しながら跳ぶ「走り高跳び」などが織り交ぜられ初作品ながら単調さを緩和する工夫がみられる。


その後の展開

  • 翌1984年のロサンゼルスオリンピック開催に合わせてアーケードで『ハイパーオリンピック'84』が導入。
    • 全く新しい7競技で構成されている(詳細は後述)。
  • 1985年6月にはファミリーコンピュータ版『ハイパーオリンピック』が発売。
    • 本作から「100m走」「走り幅跳び」「110mハードル」「やり投げ」が移植されている(詳細は後述)。
    • 「走り高跳び」は1985年9月に発売された『ハイパースポーツ』の種目の1つとして移植されている。
      • このため「ハンマー投げ」のみがハブられた形となった。
  • 2019年9月12日には『アーケードアーカイブス』の一作としてニンテンドースイッチとプレイステーション4で配信開始。
    • 上記の移植作同様『TRACK & FIELD』名義での発売となっている。
    • 炎のランナーのBGMが削除されている。
    • 同シリーズの他作品では連射機能が標準装備されている事が多いが、さすがに本作では元々のゲーム性の面から非実装である。

余談

  • 本作は翌年に控えた第23回ロサンゼルス夏季オリンピックをイメージして作られておりポスターにはそのマスコット「イーグルサム」が描かれていた。*3
  • ゲーム中で100m走の世界記録は1968年の第19回メキシコシティ夏季オリンピックでジム・ハインズが叩き出した9秒95*4になっているが、この年の7月に行われた世界選手権でカルビン・スミス(アメリカ)が9秒93*5を出して15年ぶりに塗り替えられていた。
  • 当時の日本はオリンピックから最も縁遠い時期だった。それというのもその前の大会、1980年の第22回モスクワ夏季オリンピックは開催国ソ連のアフガニスタン侵攻に抗議するためアメリカのカーター大統領の呼びかけに日本は無視できずボイコットする羽目になったのだ。
    • 日本人にとってはオリンピックが最も恋しい時期だったと言えるだろう。また1981年には1988年第24回夏季オリンピックに立候補していた名古屋が韓国のソウルに敗れて落選するというショッキングなニュースもあった。
      • ただ本作に取り入れられている陸上競技は日本としては苦手な部類ではある。
  • 実はディップスイッチの変更で2ライフにでき、一度失格になってもライフを減らして継続できるようになる。

ハイパーオリンピック'84

【はいぱーおりんぴっくはちじゅうよん】

ジャンル スポーツ(オリンピック)
対応機種 アーケード
発売・開発元 コナミ
稼働開始日 1984年7月28日
プレイ人数 1~4人
判定 なし
ポイント 陸上以外の競技も続々登場し種目数もアップ
リアルなオリンピックと並行した初作品
一部世界記録が独自基準

概要('84)

前年アーケード導入された『ハイパーオリンピック』の続編。
この年行われた第23回ロサンゼルス夏季オリンピックに合わせて作られた。

前作は専ら陸上競技だったが、連打が重視され「こすり」など筐体を痛めるテクニックが横行したため、本作はタイミング重視の競技を含め7種目が収録されている。


内容('84)

  • 7種目が収録され「100m自由形水泳」→「クレー射撃」→「跳馬」→「アーチェリー」→「三段跳び」→「重要上げ」→「棒高跳び」の順番に行われる。
    • 前作同様クオリファイ(予選通過目標)を超えれば次の競技に進め、越えられないとゲームオーバー。
  • 前作は試技回数が異なる都合で、3回試技を行う競技でも3回中有効は最高記録のみだったが、本作は全試技がスコアに反映されるようになった。
    • 「クレー射撃」と「アーチェリー」は競技の点数がそのままスコアになる。
    • 試技は「自由形水泳」が1回、「重量上げ」が2回で他はすべて3回。

100m自由形水泳

  • 「RUN」ボタンで泳ぐのだが、あくまでも水泳であるため息つぎが必要となる。
    • 息つぎは「BREATH」と出るので、そのタイミングで「JUMP」を押して行う。
    • 全体的には前作に照らし合わせると「100m走」より「110mハードル」に近い。

クレー射撃

  • 左右から放たれるクレーを左右の「RUN」ボタンで狙い撃つ。
    • 撃つのは左右のターゲット枠に弾が入った瞬間で、そのタイミングで撃つと破壊できる。
    • 破壊するごとにターゲット枠が大きくなり、逆に空撃ちしてしまうと元のサイズに戻ってしまう。
    • 基本は100点だが、青弾は500点、赤弾は1000点、1つも逃さないと最後に宇宙人が出現しこれを撃つと3000点が入り、更にその宇宙人を左ターゲット枠で撃つと最後にレインボーロリキートが一直線に通過する。これは1000点だが不死身なため左右のターゲット枠で撃てる。
    • レインボーロリキートを出すと次の試技から難易度パターンが1レベル上がったもの(次の周のもの)になる。

跳馬

  • 「RUN」連打で走りタイミングを見計らって「JUMP」でに飛びつき、空中姿勢で「RUN」を連打して回転数を稼いで着地する。
    • 欲張りすぎると着地に失敗してしまう。
      • 採点は体操恒例の10点満点方式。

アーチェリー

  • 最初に風の方向をルーレット式で決める。
  • 画面上部から下部に向かって的が動いてくるので、左右のコントロールは上記の風向きと強さを加味した上での放つタイミング、上下は「JUMP」ボタンを長押しで0°~10°
    • ド真ん中を射ると「ナイス」の声と共に600点、以後外れる度合いによって400・320・290・260・150・100・10。
      • 最後の1本で「ナイス」を出すと、矢が3本追加となり以後リンゴが3連続で登場し、これを射ると1000点。
    • 矢は8本で、その合計点を競う。

三段跳び

  • 「RUN」連打で助走をつけ「JUMP」を3回押して「ホップ」「ステップ」「ジャンプ」で跳ぶ。
    • 踏切線を超えたり、砂場に達せない(11m未満)とファールとなる。
    • また連続して跳ぶため、跳んで一定時間次を跳ばないとファールとなる。

重要上げ

  • バーベルの重量は150~350kgから選択。
    • 「RUN」を連打してパワーを溜め、バーベルが光ったら「JUMP」で持ち上げる。そのまま「RUN」を連打して持ちこたえジャッジの3カウントを聞ければその重量がスコアになる。

棒高跳び

  • 「RUN」連打で助走をつけ「JUMP」で跳び、そのまま押し続け空中姿勢で離すことで棒を離す。
  • つまり、ただ押せばいいだけでなく、放すタイミングもカギとなる。
  • 前作の「走り高跳び」同様に3回失敗するまで試技を続けられる。

評価点('84)

  • バラエティ豊かな競技種目。
    • 前作に比べて単に1種目多いだけでなく、その中身も陸上一辺倒だった前作と違い多種多様なものになっている。
      • しかも似通ったものすらないという点でも、その多彩さが感じられやすい。
    • 前作で確立した操作をまるで違う競技に上手く活かしている部分が多い。
      • 特にそれを感じやすいのが「重量上げ」や「跳馬」であり、特に前者は「RUN」と「JUMP」と意味合いは異なるもののその連打とタイミング要素を全く違う形に活かしている。
  • スコアは全試技で有効。
    • 前作は数回試技を行う種目でもあくまで最高記録のみが有効だったが、試技すべてが有効なためスコアアタックの幅が拡大した。

賛否両論点('84)

  • 一部オリンピックらしくない光景も見られる。
    • 例えばクレー射撃は宇宙人が出たり、アーチェリーでリンゴを射て高得点など、さすがにオリンピックではありえないので「オリンピックのゲーム」と考えると不自然。
    • ただしあくまでもゲームとしてスコアアタック観点で考えると面白い部分ではある。
    • 世界記録が架空(独自)のものもあり。
      • 前作はすべて陸上競技ということもあって、現実での記録がそのまま使われていたが本作は得点が独自なものがあり、そういった種目には反映されていない。

問題点('84)

  • 最初の種目「自由形水泳」の息継ぎのタイミングが少々シビア。
    • 最初の種目にしては障壁が高く、これを超えない限り次へは進めないため多彩な種目を体験できないまま終わることも。

総評('84)

前作は完全に基本形だったことに対して、それを活かして様々な競技を実現した発展形。操作のポイントは増えたものの連打とタイミングによる全体的にシンプルな構成は変わらず。
競技のバリエーションが増えただけでなく、その中身はより特色や個性のある様々な競技になったことで、陸上一本だった前作よりも華やかになったことは間違いないだろう。
また全競技のスコアが有効化したことでゲームとしてスコアアタックの幅を広げたことはプレイヤーにとっても濃い内容になったとも言える。


その後の展開('84)

  • 以降「オリンピック」の名前が使えなくなったことで、その名は冠しなくなった。
    • 本作同様、1988年のソウルオリンピックに合わせて1988年9月にアーケード導入された作品は『ハイパースポーツスペシャル』となっている。
      • ファミコン展開としては時期を同じくして『コナミックスポーツ イン ソウル』として1988年9月16日に発売。
        海外NESでは『Track & Field II』と続編と分かるタイトルでの発売となった。
  • 翌1985年9月発売のファミリーコンピュータ用ソフト『ハイパースポーツ』に「クレー射撃」「三段跳び」「アーチェリー」の3競技が移植されている。
    • 他に「走り高跳び」を前年の『ハイパーオリンピック』から移植して4競技構成。
  • 2019年11月28日には前作に続いて『アーケードアーカイブス』シリーズでニンテンドースイッチとプレイステーション4に移植されている。
    • やはり本作も権利関係から過去の移植版同様に海外版タイトルである『HYPER SPORTS』名義となっている。

余談('84)

  • 本作も前作同様にこの年開催の第23回ロサンゼルス夏季オリンピックありきで作られたこともあってマスコットの「イーグルサム」がポスターに載っており、同時に「ロスを超えろ!」とも書かれている。
  • 前作および本作はPC-88やX1という当時のパソコンにも移植されている。前作はコナミ製作だが本作の開発・販売はデービーソフト。

ハイパーオリンピック (FC)

【はいぱーおりんぴっく】

ジャンル スポーツ(オリンピック)

対応機種 ファミリーコンピュータ
発売・開発元 コナミ
発売日 【一般版】1985年6月27日
【殿様版】1985年11月16日
定価 4,500円
プレイ人数 1~2人
周辺機器 「ハイパーショット」(2,000円)専用
判定 劣化ゲー
ポイント 任天堂以外では初の専用コントローラー
ハードルの繊細さがなくなった
超人的な記録が可能になった
限定なのにレアではない「殿様版」
TBS関連作品リンク

概要(FC・オリンピック)

コナミが1985年6月に発売した上記『ハイパーオリンピック』のファミリーコンピュータ移植版。
ゲーム性は引き継いでいるが種目は4種類に絞られている。
専用コントローラーである『ハイパーショット』が必須であり、普通のコントローラーではプレイできない。
本項目ではAC版からの変更点のみを扱うものとする。

当時最終回が迫っていたTBSのバラエティ番組『8時だヨ!全員集合』1985年9月14日放送回用に作られた通称「殿様版」も番組でプレゼントとして用意され、後に限定販売された。
カセットやパッケージに「限定版!」と書かれた殿様のシールが貼られている。
こちらは1Pの白人選手が殿様に置き換わっているだけで、ゲーム性自体は全く変わりない。


内容(主に変更点)(FC・オリンピック)

  • アーケード版から「100m走」「走り幅跳び」「110mハードル」「槍投げ」の4種目が収録されている。
  • ハイパーショットの仕様により「RUN」のボタンが1つになっている。
    • ただボタン自身は大きく、隅の方でもしっかり感応するので両手で連打するのに支障はない。
  • スタート時にモードA・Bから選択できる。
    • Bの方はAの4周目からのスタートとなる。
    • 殿様版のみ番組同様モードを決めた後4種目からプレイする競技を自在に選択できる。
      • どの種目から始めようが「槍投げ」をクリアーすれば次の周に進めるのでモードBの「槍投げ」スタートならほぼ5周目からのスタートとなる。
  • AC版では世界記録は上位3位まで記録されていたが、最高記録のみに変更されている。
    • 他に名前の登録ができなくなっている。
    • 世界記録のファンファーレは『'84』ではなく無印版のアレンジとなっている。
  • 当時のFCでは無理があったか、音声は使われていない。
  • 走り幅跳びで、距離を測るスタッフなど一部演出がカットされている。
    • 下3桁がゾロの記録(10m00・9m99・8m88等)を出すと、隠れキャラ「モグラ」が出現しボーナス点が入る。
  • 110mハードルではハードル衝突の挙動は簡略化され、少しでも触れれば「バタッ」と全力で転んでビタ止まりする形になった。
  • やり投げで画面外まで投げると刺さって出てくるのが宇宙人ではなくUFOになった。

評価点(FC・オリンピック)

  • 選手の能力の最大値が急激に上がっており、連射によりスピードが高められれば100m走7秒台、走り幅跳び10m超、110mハードル10秒台、やり投げ110m超ととんでもない超人的記録が出せるようになった。
    • 折しもファミコンは直後にハドソンが行う『全国キャラバン』により連射が1つのトレンドとなるので、連射ゲーとしては非常に盛り上がりやすい。
    • 1人プレイならハイパーショットのIIコン側も有効なので協力した連打も可能で超人化もしやすい。ジョイボールの反則技を使えば存分に超人気分を味わえる。

問題点(FC・オリンピック)

  • 似通った競技が2つずつのペアのような格好になっており、当時にしても変化の少なさが感じられる。
    • 特に種別の違いが際立った「ハンマー投げ」や「走り高跳び」が入っていれば、その単調さも少しは薄らいだことは間違いない。
  • 「やり投げ」をクリアして1ループした後のデモ(エンディング?)が、1P(白人選手or殿様)と2P(黒人選手)がタイトルのBGMに乗って交互に走っていくだけ。
    • AC版は表彰台のデモがあったりFC版『ハイパースポーツ』では専用BGMで世界記録を披露したりと、それなりに作られていることを思うといくらファミコン草創期とはいえ寂しいものがある。
      • また、やり投げ用の芝の上を走っていくのもオリンピックにしてはシュールである。
  • ハードルのジャンプバランスはACを思うと大味。
    • ACでは、ジャンプのタイミング次第で引っ掛けるだけだったり(スピードダウン)、モロに衝突して転んだり(ビタ止まり)と細かかったのに本作ではどんな場合でも「転んでビタ止まり」のみ。
    • また、その態勢でもジャンプをいきなりできたりと当時のFCだから仕方ないとはいえ大味な一面が否めない。

総評(FC・オリンピック)

元々単調な競技だったAC版の中でも特に単調なものばかりが選ばれての移植で、いくらファミコン初期に加えて対象の専用コントローラー初作品とはいえ単調さは否めない内容。
そんな中でもハードルの挙動は「0か100」か「YES」or「NO」のような極端なものになるなど、当時のファミコンらしくアーケードからの移植によるレベルダウン感が明白。
本作のネームバリューは伝説的バラエティ番組に由来した特別の『殿様版』あってのものと言い切って過言ではない。


その後の展開(FC・オリンピック)

  • 主にAC版『'84』をベースにして4種目を移植したFCソフト『ハイパースポーツ』が同年9月27日に発売。
    • 『オリンピック』と冠していないが、本作同様移植には違いない。
    • 本作よりもアレンジの幅が広いが、見方によっては劣化と取られやすく見える一面も否定できない。

余談(FC・オリンピック)

  • 上記の通り本作の定価は4,500円だったのだが「ハイパーショット」がないとプレイできないこともあり、ハイパーショット同梱パッケージが6,500円で発売されていた。
    • そのため「定価 6,500円」と表記された記事も当時多々存在した。
  • 基本的には『ハイパーショット』専用だが実はHAL研究所から1985年8月に発売された「ジョイボール」の連射スイッチを中間位置に設定することにより本ソフトで使用可能。この際、連射機能も維持されているため、(面白いかどうかはさておき)非常に簡単にクリアできた。
    • また、続編の『ハイパースポーツ』でも使用可能(ただこちらはそれだけで楽勝というわけにはいかない)。
    • 独特な操作感で否定的な評価をされがちだった「ジョイボール」の、数少ない活用例として記憶している人もいるだろう。
  • 限定品ということもあってか「殿様版」では殿様(1P)の方は性能で上回っていると言われたことがあるが実際は全く同等で特に優遇措置などはない。
    • というより本来あのような殿様の格好は陸上競技にはお世辞にも向いておらず、いくらオリンピックのトップアスリートと言えども本来のポテンシャルに遠く及ばない力しか出せず大ハンデになることは言うまでもない。
      • 言い換えれば、そんな格好で陸上をして互角に渡り合えているのだから本来の実力はとんでもないものであろうことは想像に難くないので、ある意味「殿様の方が(素での)能力が高い」は間違っていないといえるかもしれない。
  • 『殿様版』ルーツとなったTBSの『8時だヨ!全員集合』は、言わずもがな最高視聴率50.5%を記録し、1969年10月~1985年9月と16年にもわたり放送され続けたテレビ史屈指の「お化け番組」として現在も語られ続けている伝説のバラエティ番組であり、幾多の裏番組がこの影響で視聴率が低迷し打ち切られた。
    • しかし野球中継の雨傘番組としてスタート(初回は1981年5月)した裏番組『オレたちひょうきん族』(フジテレビ)が1981年10月にレギュラー化された頃、『全員集合』の方では当時既に10年以上を経過し、ドリフメンバーのやる気の低下が見られ始め*6、それに伴うマンネリ化や質の低下が目立っていくようになる。一方で『ひょうきん族』側の巧みな戦術もあって、年間平均視聴率で1983年には肉薄され1984年には逆転を許した。そして『全員集合』は1985年7月19日に9月一杯での終了を発表した*7
    • 「殿様版」の話が放送された1985年9月14日は、最終回のわずか2週間前で「終了の知らせを聞いたかつての視聴者が惜しんで戻ってきた時期」でもあったため、再び視聴率が高まってきた時期で*8存在そのものはかなり多くの層に認知されていた。
      • 実際当時のファミコン全タイトルを載せたような記事では専門誌でもない小学館の学習雑誌等でも「一般版」と「殿様版」が両方とも載せられていたほどである。殿様版の方は番組の写真をそのまま載せていたものもあった。そんなこんなで結構売れており「限定版」「特別版」などと言われているが現在でもそれほどレアモノではない。
      • 併せて『ハイパーショット』も対応ソフトわずか2本というニッチな専用コントローラーながら同等にかなりの数が売れており現存数が多く、中古のゲーム市場で専用コントローラーの類では最安クラス。
      • 後の2020年3月29日、新型コロナ感染による志村けん死去のニュースをきっかけにPCエンジンソフト『カトちゃんケンちゃん』(1987年11月30日発売)は一般販売品で売上本数も多く特別でも何でもないのに価格が高騰したことがあったが、本作の殿様版は似たような立ち位置にありながらその影響をほとんど受けなかった。
  • 番組の当該話では家老(いかりや長介*9)に、勉強するよう言われたバカ殿(志村けん)がそれをすっぽかしてこのゲームを始め、長々と遊んでいたところ最後はスタートを押してもゲームが始まらず真っ黒な画面でボタンを連打すればするほど、青い光の点が、まるでマウスドラッグでラインを引くかのように顔の輪郭のような線が描かれ、線が繋がって完成するとその家老の実写がドアップになり怒られて(勉強をすっぽかしてファミコンをしたため)終わる。
  • 当時の漫画「ファミコンロッキー」の題材に本作が採用された回がある。
    • 主人公のロッキーは得意の連打を封じられ、100M走は敗北、走り幅跳びは記録で負けたがゾロ目ボーナスで勝利、110Mハードルはジャンプ操作に手こずったライバルに追いつき引き分け、勝負は最終戦の槍投げに持ちこまれた。そして…
    • トンデモ設定の多い漫画であるが、本作回は珍しく実力勝負で決着が付いている。あえて言うなら槍の飛距離を示す120Mがおかしいことくらいか(実際のゲームの位置表示は110Mまでしかない)。
  • 海外版では「ハイパーショット」が不要、というか周辺機器として作られなかったため通常のコントローラーで操作するよう変更されている。
    • 内容も日本版では続編だった『ハイパースポーツ』の競技も収録されている。また欧州版はかなり遅れての発売となり92年に出たためタイトルも「Track & Field in Barcelona」とバルセロナ五輪にちなんだものに改められている。
      • ただ世界記録はこの間に更新されたもの*10は取り入れられておらずゲーム中での世界記録の初期値は1985年当時のままになっている。

ハイパースポーツ

【はいぱーすぽーつ】

ジャンル スポーツ(オリンピック)
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売・開発元 コナミ
発売日 1985年9月27日
定価 4,500円
プレイ人数 1~2人
周辺機器 「ハイパーショット」(2,000円)専用
判定 劣化ゲー
ポイント 『オリンピック』と冠していないがオリンピック
スコアアタック要素がアップ
世界記録は独自のものが多い

概要(FC・スポーツ)

上記『ハイパーオリンピック』同様アーケード既存作から4種目をファミリーコンピュータ用に移植したものコナミから1985年9月に発売された。
『ハイパーオリンピック』同様専用コントローラーである『ハイパーショット』が必須であり、普通のコントローラーではプレイできない。
本項目では上記AC版及びFC版『ハイパーオリンピック』からの変更点のみを扱うものとする。


内容(主に変更点)(FC・スポーツ)

  • 上記作品から「クレー射撃」「三段跳び」「アーチェリー」「走り高跳び」が収録されている。
    • 「走り高跳び」は初作から、それ以外の3種目は『'84』から引き継がれている。
    • 世界記録更新のファンファーレや後述のスコア仕様など全体的に『'84』に近い作り。
  • FC版の『ハイパーオリンピック』からモード(実質難易度)選択(A・B)が引き継がれておりBはAの4周目からスタートとなる。また世界記録も1位のみ。
  • FC版では『ハイパーオリンピック』は競技終了時の最高点にのみ紐づいてスコアが加算されていたが本作ではすべて3回ずつ試技するためか全試技が有効としてスコアが加算される。
  • 「クレー射撃」はAC版では「RUN」が2つあったので左右の「RUN」で打ち分けていたが「ハイパーショット」に合わせて右を「RUN」、左を「JUMP」で撃つ。
    • 宇宙人はUFOになり、レインボーロリキートは黒いカラスになり、こちらは得点も5000点に大幅アップしている。
      • カラスはうまく連打すれば片方のターゲット枠で2連撃できるので、それを両方ですることで2万点ゲットも可能。
  • 「三段跳び」は砂場の位置(有効距離の最低で満たない場合はファール)が13mからになった。
    • 下3桁がゾロの記録を出せばロケットマンが出現しボーナス点が入るようになった。
  • 「アーチェリー」の隠れキャラ「ウイリアムテルのネコ」の出現条件が異なる。
    • ド真ん中の最高点を出さず、ラストの1本前で初めて出すこと(それまでに一度でも出していると無効)。
    • ネコのリンゴを射ると1000点で、矢が3本追加されるのは変わらないが、その後出てくるのは普通の的。
  • 「走り高跳び」は高さの変動がなくなり常にクオリファイの高さに挑戦することになる。
    • つまり一度でもクリアーすればいいのだが、3回の試技で全てクリアーするとロケットマンが現れボーナス点が入る。
    • SEが使い分けられており、マットの上に着地できれば「ドン ドンドン」でトラックの上に落下すると「ドサ!!」と鈍い音になる。

評価点(FC・スポーツ)

  • 全競技の試技回数が3回で統一されており、ムダになる試技がない。
    • 純粋なスコアアタックやそれで対戦をするには全試技が有効なのはよりエキサイトしやすい。
  • FC版『ハイパーオリンピック』を思うと、それぞれが個性ある競技での構成。
    • 上記作品では、「100m走」「110mハードル」がそっくりなトラックで似通った内容、「走り幅跳び」「やり投げ」は操作性が似通っていたが本作は、いずれも全く異なっている。
      • そのためバリエーションで相対的に多く感じられる。

賛否両論点(FC・スポーツ)

  • 『'84』に乗っ取って連射パワーよりタイミング・コントロールに重きを置いたバランスになっているためか連射はそれほど重要ではない。
    • 『ハイパーオリンピック』では連射パワーだけでほぼ楽勝だったのだが、本作で「連射で走る」という操作が使われる三段跳びや走り高跳びではある程度のボーダーラインを超えれば大差ない程度に落ち着く。
      • 三段跳びならジャンプの角度がバッチリでないと大した距離が出ないし、走り高跳びはもちろん角度を調節しないと元も子もない。
    • そのため超人的な記録は出せないので地味臭さはある。
    • もちろんゲームとしては単調さを排しており、だれにくくなっている。

問題点(FC・スポーツ)

  • アーチェリーが純粋にスコアアタックができない。
    • 当り前ならばすべてド真中を射抜く方が良いに決まっているのだが隠れキャラ「ウイリアムテルのネコ」を出すためには、途中でド真中を射抜いてしまうと出なくなる。
    • そのため、準ド真中の400点を続けて出すという、少々煮え切らないコントロールをしなければならない。
      • 裏を返せば「ギリギリを狙って外し続けるのもワザの内」とも言えるわけだが。
  • 走り高跳びが均一な高さになったことで競技そのものが単調化した。
    • 周回ごとに高さが高くなっているが、他の競技を3つも挟むため、その上がり度合いが感じにくい。
    • 一応3回ともクリアすればロケットマンが出るというフォローこそされているが、カバーしきれているとは言い難い。

総評(FC・スポーツ)

競技単体で見ると移植の質はなかなか高い方で、6月発売の『ハイパーオリンピック』を思うと競技の個性は出ておりスコアアタックの重みが増したものの、やっぱり大元のAC版を思うと種目数が少ないのは否めずといったところ。
ある意味で上記と合わせてやっとAC版一作品分ぐらいな感覚ではある。また4人対戦ができない点もやはりAC版に遠く及ばないイメージを強めている。


その後の展開(FC・スポーツ)

  • これ以降「オリンピック」という名前が商標登録の問題で使えなくなった影響か『コナミックスポーツ』というタイトルを冠することになる。
    • ファミコンでは1988年9月16日、ソウルオリンピックに合わせて『コナミックスポーツ イン ソウル』が発売。
    • この作品は普通のコントローラーでプレイする形になっている。また連射パッドが使用不可。

余談(FC・スポーツ)

  • タイトル画面放置で見られる「クレー射撃」のCPUデモプレイでは、途中でワザと外してUFOもカラスも出ず4000点で終わる。
  • 上記『ハイパーオリンピック』の方は『ハイパーショット』込みの値段で表記されていたが本作は普通にカセットのみの4,500円という表記が多かった。
  • 『オリンピック』という名前こそ冠していないが本作のルーツは上記のAC版『ハイパーオリンピック'84』にある。
    • しかしACに縁遠かった層では、その名前から『オリンピック』より一段劣って見られる少々不遇な扱いだった。
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  • ハイパーオリンピック

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最終更新:2024年04月19日 21:35

*1 IOCが「Olympic」や、日本語の「オリンピック」「五輪」を商標登録したため。過日の「東京2020」などの不自然な表記は、IOCが制定した「オフィシャルスポンサーとは無関係な広告主や企業がイベントに便乗して広告活動を行うアンブッシュマーケティングを禁止する」という規制の賜物である。

*2 余談ではあるが、首都圏を中心に展開しているスーパー/ホームセンターの「オリンピック」は創業が1962年と古く、IOCによる規制が本格化するよりも前に命名した歴史的経緯があり、JOCとの協議も経ていることから現状社名と店舗名に使用することを特別措置として認めている。

*3 1980年のモスクワ大会のマスコット「ミーシャ」と、このロサンゼルス大会の「イーグルサム」は、日本国内で製作されたアニメが放映されたのだが、各大会のマスコットは大会終了時に権利がIOCに移管されてしまうため、ソフト化も配信も行われていない。2020年の東京大会が1年遅れで開催された後、「ミライトワ」「ソメイティ」の関連商品が一斉に市場から消えたのも、キャラクター管理がJOCからIOC/IPCに移管されたためである。

*4 ただし当時は手動時計のため1/10までの計測で記録は「9秒9」という扱い。またメキシコオリンピック当時は同じアメリカでチャールズ・グリーンとロニー・スミスが同じ手動時計9秒9を出しており「9秒9トリオ」と呼ばれた。

*5 この記録はカール・ルイス(アメリカ)が第24回ソウル夏季オリンピック(1988年)で9秒92を出すまで5年間維持されていた。取り消された記録を含めてもカナダのベン・ジョンソンが9秒83(1989年に抹消)を出した1987年の世界陸上まで4年間維持。

*6 アドリブ一切なしで完全に筋書き通りにこなさなければならず、生放送のために失敗できないことから木曜のネタ会議、金曜のリハーサルなどで、出演者、スタッフとも相当な労力を強いられたとのこと。実際、メンバーの加藤茶は長年続いた番組が終わる時「終わってみれば寂しいなどとは少しも思わなかった」「これから好きなことをやれるという嬉しい気持ちしかなかった」と後年語っている。また同時期にはリーダーのいかりや長介がネタ会議を欠席することが増えて、メンバー間で不満が蓄積していたのもやる気の低下した原因として挙げられている。

*7 「視聴率が低迷して打ち切られた」と表現されることもあるが、終了発表前までの1985年内平均でも15%程度はキープしており、強制的に打ち切られるような視聴率ではなかったので「自分たちの意思で打ち切った」と言った方が正しい。前述の通り当事者たちにとっては苦痛の方が強かったため、「それまでは高視聴率のためやめられなかったが、ようやくやめられるようになった」という感じだった。

*8 終了告知後の放送回全11回中7回で『ひょうきん族』を上回っている。ただしこの間『ひょうきん族』の視聴率は下がっていなかったため(参考までに『全員集合』最終回の視聴率34.0%に対し同日の『ひょうきん族』は20.9%とこの年の年間平均よりも高かった)、戻ってきたのは「『ひょうきん族』に乗り換えた層」ではなく「どちらも見なくなった層」が中心と思われる。「『全員集合』離れ即ち『ひょうきん族』乗り換え」というイメージが強い、が1984年あたりからは『ひょうきん族』も伸び悩んでおり『全員集合』から離れた分をほとんど吸収できず前年比で微増(19.0%→19.5%)にとどまっており、同年に逆転したとはいえ『全員集合』の前年同様大幅ダウン(20.8%→18.2%)に起因するところが大きい。

*9 後に単独番組として独立し特別番組ながら三十数年続いた『志村けんのバカ殿様』では家老は東八郎(1988年に死去してからは「クワマン」こと桑野信義)が演じているが、ドリフとしてのバカ殿様では主にリーダーのいかりや長介が演じていた。

*10 1991年世界陸上で打ち立てられた100m走の9秒86(カール・ルイス)、走り幅跳びの8m95(マイク・パウエル)、1989年の陸上ワールドカップで打ち立てられた110mハードルの12秒92(ロジャー・キングダム)、1987年の世界選手権で打ち立てられた走り高跳びの2m42(パトリック・ジョベリー)。