バーチャル・ソー

【ばーちゃる・そー】

ジャンル シューティング
対応機種 3DO interactive multiplayer
発売元 イマジニア
開発元 Elite Systems
発売日 1995年9月1日
定価 8,580円 (税込)
プレイ人数 1人
レーティング 3DO用審査:E(一般向)
判定 クソゲー
ゲームバランスが不安定
ポイント 海外で配管工に次いで悪名高い3DOソフトの一つ
仮想現実に逃避したミュージシャンが主人公
実写取り込みが仇となり操作性最悪
無敵時間なし+不意打ちだらけの極限コンボ
見つからないゴールの数々
現実世界で生きる素晴らしさを再認識できるゲーム


概要

3Dゲーム黎明期にMS-DOSから移植されたTPS*1
芸能界に疲れたミュージシャンが仮想現実(バーチャルリアリティ)の世界に逃避し、冒険を繰り広げる。

英語圏では3DO専門誌でかなりの酷評を受けた事で知られる。
海外での3DO最悪クラスのクソゲーの話題になると『Plumbers Don't Wear Ties』『シャドー・ウォーリアー』*2(※同名の人気FPSとは無関係)と合わせて話題に上がることも。

あらすじ

まだ耳の奥で矯声と歓声が響き渡っている。ホテルの部屋という一種の牢の中でくつろいでいても、人生の成功と引き換えにした苦痛が襲いかかる。ここから出ても、別の意味で牢の中である。偉大なるミュージシャンに触れようとする大勢の熱狂的なファンの多くの手に追い求められる。音楽こそ人生であり、同時に牢に縛り付けるものである。
どこに行っても、追いかけ回される。君にはもう目の前の奇妙な装置しか逃げ道が残されていない。一風変わったヘルメットをかぶり、マシンを操作する。ぼんやりした明かりの中、ヘルメットの中のヘッドフォンから生命の音が聞こえてくる。ヘルメットのバイザを下ろし、シートに座り、この世界からバーチャル・リアリティの世界への出発である。

さあ、想像の世界へようこそ。無限の可能性にあふれた世界… 本物さながらの世界 Virtuosoの世界へ…

(3DO版説明書「序文」より引用)


特徴

  • 今作は実写取り込みを積極的に用いた三人称シューティングである。
    • 主人公はヘビーメタルのロックミュージシャン。長髪にサングラスといういかにもと言った出立ちで、ショットガンを両手に敵を殲滅する。
      • 今作はこの主人公が実写取り込みで表現されており、妙にイロモノ臭の強い絵面となっている。
    • BGMももちろんヘビーメタル調で、歌詞付きの曲が後ろで流れている。
    • 敵のグラフィックは、プリレンダによる3DCGとビルボードによる2Dドットが混在している。これもまた混沌とした世界観を表現する特徴の一つ。
  • そんな実写ミュージシャンが冒険するのは、バーチャルリアリティで表現された異空間(全3種)。好きなものから選んで遊ぶことができる。
    • MARS MISSION:火星の地表に着陸し、基地の最深部へと進んでいく。
    • HAWNTED HOUSE MISSION:雪に囲まれたお化け屋敷の最深部へと向かう。
    • MARINE MISSION:潜水艦を探索し、最後は海底遺跡の奥地に潜り込む。
  • ゲームの進行
    • 今作の目的は、3D空間を探索してゴールを目指し、最終ステージまで完走すること。
    • 各ステージには鍵が落ちていて、これを拾ってからゴール地点に到達するとクリアとなる。
  • 構成
    • 3つのワールドはそれぞれ、8〜10のステージで構成されている。
    • 難易度は4段階。
      • それぞれ初期の残機が異なり、最低のEASYでは5機、最高のVERY HARDは2機でスタートする。
      • 難易度による違いは、敵の出現頻度。高難易度では一度倒した敵が何度でもリスポーンする。
  • システム
    • 弾数制限は無く、ボタン押しっぱなしで連射が可能。
    • 画面右上にはレーダーがあり、周囲を索敵できる。
      • レーダーは基本的に各ワールドの最初のステージでしか取得できず、取りこぼすと再入手できない。
    • ステージ内に一つだけ落ちている地図を拾うと、Xボタンでステージ全体と現在地を見渡すことができる。
    • セーブはステージクリアごとに可能。
      • 残機と武器はロードしても引き継がれる。
  • 攻撃手段
    • Bボタンで射撃。
      • ステージ内には上位種の武器が落ちていて、拾う事でパワーアップする。
      • 同じ種類の武器を連続で拾うと威力が増強する。ただし実感できるほどの変化はない。
      • 武器は4種類あり、後半ステージに進むほど強い物が手に入る。最終的には敵をホーミングするミサイルで無双することができる。
    • Aボタンを押すと、画面に映る敵全てを一掃する「スマートボム」が発動する。
      • 使用すると、画面内の敵を全て一撃で倒すことが可能。
      • 回数制限があり、ステージで拾うたびに弾数が追加される。
      • 簡単にいうと、一般的なスクロールシューティングにおけるボムと同じようなシステムである。
  • アイテム
    • ステージの至る所には、黄と黒のチェック模様を彩った球体のカプセルが落ちている。
      • 近くを通ると独特なSEが鳴るため、視界に入れなくても存在は察知できる。
    • これに触れると、場所ごとに決まった種類のアイテムを入手する。
      • カプセルを攻撃すると、事前にアイテムの中身を確認できる。
    • ここまで説明した武器やスマートボム・地図以外だと、残機や得点アイテム、ステージ突破に必要なキーアイテムなどが入手できる。
  • ミス
    • 体力が無くなると、そのステージのスタート地点に戻される。
      • ステージ内でフロアの遷移がある場合、代わりにその部屋の最初に戻される。
      • パワーアップした武器はそのままで、リセットされることはない。
    • 今作は残機制を採用している。
      • 全て失った状態でやられるとゲームオーバーとなり、セーブ地点からやり直しとなる。
    • ミスしてからの再開時は一度倒した敵がある程度減少するが、ゲームオーバー時はその情報も消えてしまう。結果的に、今作は残機が沢山残っているほど有利なゲームになっている。
      • ただしVERY HARDはこの限りではなく、倒した敵も必ず復活するようになっている。

問題点

システム全体の問題点

  • 実写を取り入れた主人公はインパクトこそすごいのだが、ゲーム面では何かと支障が出ている。
    • 実写映像を取り込んでからゲームを作ったのか、映像素材が存在しないモーションを取ることが出来ない。
    • まず弾を撃ちながら移動ができない。あらゆるシューティングゲームの基本動作だが、今作は実装されていない。
      • これにより「敵を避けながら相手に撃ち込む」といった駆け引きが弱く、爽快感が薄まっている。
      • 敵のスポーン地点を横切る場合、「弾を打ち込む」→「前に進む」→「弾を打ち込む」→……といった、みみっちぃ戦いを余儀なくされる。
      • 敵が大量に出る面の攻略を突き詰めると、安置から敵がいなくなるまで長時間弾を撃ち込みまくるというセコい戦法を余儀なくされる。
    • 主人公が射線の手前に堂々と陣取っており、前が見えない。
+ 参考画像

  • 上記画像は敵に当たる寸前のもの。頭の左上にロボットの頭部が映っているのがわかるだろうか?
  • 取り込んだ画像をきちんと見せようとした結果と思われるが、弾除けの邪魔になってしまっている。
  • こうしたサイズの主人公は注視点からズレた位置に配置されることが多いが、今作にはそういった工夫は無い。TPSがジャンルとして確立される前の作品なので、ノウハウが無かったのは仕方ないが……
  • 遊んでいると案外慣れてくるのだが、ステージによっては彼の死角にいる敵に気付かず、そのまま衝突して死ぬことも。
  • 壁にぶつかると壁を背にして立つのだが、この仕様のせいでかなり操作性が悪い。
    • こうなると左右キーの入力しか受け付けなくなり、手前に戻ったりその場で弾を撃つことはできない。一瞬のアクションが生死を分けるシューティングゲームとしては致命的である。
    • 特に狭い道を進む室内ステージでは頻繁にこの状態となるので、敵を避けるのもままならずストレスが溜まる。
    • このときの主人公は何とも言えないドヤ顔をしているため、印象に残りやすい。
  • 無敵時間が0.3秒くらいしかなく、敵に接触すると一撃死まっしぐら。
    • 大体の敵は全体力の1/4くらいを削る接触ダメージを与えてくるが、接触した敵はノックバックしたり自滅したりせず連続でダメージを与えるため、1秒ちょっと接触しているだけでそのまま体力が空になる。
      • このせいで、今作は殆どのステージが即死の危険性と隣り合わせである。苦労した旅路が頻繁に水の泡となるので、何かとストレスが溜まりやすい。
    • 特に飛び道具は油断ならない。前から飛んできたものを避けようとして、うっかり後ろに下がって追従すれば、そのまま3連続くらいヒットするのもザラである。
    • そういうわけで、今作は敵に当たらないよう慎重なプレイが求められるのだが……
  • かなり多くの場面において、プレイヤーのすぐ近く(背後含む)に突然敵がスポーンする。
    • とにかくレーダーに注視していないと、突然現れた敵にぶつかり、無敵時間の仕様でそのままお陀仏である。
      • 先述の「自機がでかすぎて前が見えない」という問題と合わさり、突然死は頻繁に起こる。
      • 幸い敵の出現パターンは固定だが、初見では対処が難しい。後述するが、今作のステージ構造は初見プレイを想定していない難所がやたら多く確認される。
    • 背後から来るパターンは厄介で、『DOOM』のように露骨な効果音が鳴ったりせず、気がつくと敵が真後ろに来ていたなんて事も。
    • 時には大量の敵が挟み撃ちで襲ってくるなど、容赦が無い。
      • こうなったら1秒の操作ミスすら許されず、対処を間違えると死亡確定である。
  • 今作は各ステージで特定のゴール地点に足を運べばクリア扱いとなる。しかしその場所は明示されておらず、共通の目印などもないため、ステージによってはゴール判定の場所がわからないまま数十分、下手すれば数時間規模でステージを徘徊させられる。
    • 大半のステージはいかにも最深部という場所に配置されているのだが、変則的な隠し方がされている面も少なくない。
    • ただでさえ思ったように操作ができないのに、そもそもクリアすらままならない厄介さである。
  • グラフィックの質も低い。
    • フレームレートは低く、処理落ちが多発する。
    • 敵を倒して爆風や血しぶきが発生すると、コマ送りのような状態になりやすい。
  • その他の問題点
    • 初期装備のSEが安っぽい。
      • まるでドラム缶を手のひらでバンバン叩いたような音で、妙に没入感を削がれる。
    • 今作の説明書には「各コースは平均8つのステージで構成されている」とあるのだが、これは大きな間違いで、前情報が無いとリソース管理を狂わされる。
      • MARSが全10面、HAWNTED HOUSEが全8面、MARINEは全9面で構成されているので、実は「平均9ステージ」が正しい。
      • 平均8ステージということは、多めに見積もっても全26ステージという計算になり、これに基づいて行動するとゲーム終盤で残り人数やボムが足りなくなる事態に陥る。
      • 原語版のマニュアルには"8 levels to traverse"(8以上のレベル)と書かれており、日本語版スタッフの誤訳が原因のようである。
    • オープニングムービーの類が一切ない。
      • 起動するといきなりモード選択画面となり、画面右上には淡々とスタッフロールが流れるのみ。
      • 背景設定の説明だとか、主人公が演奏を繰り広げるシーンだとか、気の利いたものは無い。初期のファミコンゲー並みに質素で、演出が貧弱である。

難関ステージの数々

問題点の箇条書きだけでは伝わりづらい難点も多いため、ここからは具体的なゲームの流れが伝わるよう、実際のゲーム展開に沿って、特に厄介なステージを抜粋して紹介する。

+ 詳細
  • MARS MISSION-2
    • 先述した、「背後から突然敵がスポーンしてくる」というギミックが登場する最初のステージ。
    • 歩いていると、突然背後からコウモリが襲撃し、意味もわからないまま体力を削られていく。
      • 画面右上のレーダーを注視し、Cボタンによる向き反転を活用すれば、いちおう対応できるようになっている。このゲームの基本を叩き込まれるチュートリアルの側面があるステージとなっている。
    • 進行方向から微妙に弾の角度を変えないとコウモリを倒せないなど、構造が地味にいやらしい。最低難易度でも死にかけるステージとなっている。
  • MARS MISSION-3
    • 難易度こそ優しい方だが、問題はゴール地点。
+ 詳細

  • 上がこのステージのマップ。下画像の右側がゴール地点の様子。
  • このステージは(1)がスタート地点となっており(2)にカギが配置されている(暗い部分は壁)。普通に遊んでいれば周辺の広場(特に画面左上のあたり)を探すことになるが、いくら歩いても、一向にクリアとはならない。
  • 何を隠そう、実はこのステージのゴールは(3)の地点で、奥まで進む意味は全く無い。
    • ゴールだと判断できる材料は「大きな扉がある」という点しか無く、初見で判断するのは困難。まさか奥まで進む意味が全く無いとは思いもしないだろう……
    • このステージはまだわかりやすい方で、本作はこうしたノーヒントのゴールがもっとひどい形で次々と出てくる。
  • MARS MISSION-5
    • このステージから牙を剥くのが超高速シャッター。猶予数フレームのタイミングで通過しないと、体力の1/4を削られる。それがステージのあらゆる場所に点在しており、必ず通過しなければならない。
    • 敵が近くを歩く間はシャッターが止まるため、その間に通過するのが正攻法なのだが、これもなかなかに厄介。
      • まず辺りをうろつく敵を放置しなければいけない。ただでさえ操作性の悪い今作で敵を放置するのは大きなリスクを伴う。
      • そして放置すべき敵は初見だとノーヒント。しかも倒してしまったら下手すると二度と出現しなくなる。厄介な敵がいても気軽に射撃できなくなるうえに、うっかり倒してしまったら最後、猶予数フレームの過酷なトラップに自力で挑まなければならなくなる。
    • ちなみにこの攻略法は説明書の後ろの方にチラッと書かれている公式テクニックである。説明書を読まずに進めたプレイヤーにはとんでもない罠として立ち塞がることに。
    • もっともこのステージはまだマシな方で……
  • MARS MISSION-6
    • このステージからは、一定間隔で道の幅全体を攻撃する電撃レーザーがトラップとして出現する。
      • プレイヤーは攻撃の合間を見切り、攻撃位置をタイミング良くすり抜けなければならない。
    • 一見するとよくあるトラップなのだが、攻撃感覚がランダムな上、連続で配置されているせいで、確実にノーダメージで切り抜ける方法が存在しない
      • どんなに気をつけていても、運が悪いと大量ダメージを食らってしまう。無敵時間が短すぎる仕様と相まって、体力満タンから瀕死状態になるのもザラである。
    • これがステージの重要トラップとして立ち塞がるのだが、そもそも単調すぎて面白くない。
      • 結局は数フレームのタイミングを見切るだけの単純作業で、それでいて運要素も強く、ストレスばかりがたまる。
    • さらに酷いのがゴール地点の配置。
+ 画像

  • (1)がスタート地点で(2)の地点に鍵があり、最深部までひたすら進もうとすると(3)にたどり着くため、その周辺を探せばゴールできそうに見える。
    • しかしここをいくら歩いてもゴールには辿り着かず、実は(4)のあたりにある柱にかかったハシゴに触れてワープしないとゴールに進めない。
    • 例によってステージ後半完全無視という謎配置もさることながら、初見での発見が中々に困難である。
    • 大量に柱があるせいで、一つだけ特徴あるものが紛れ込んでいるとは気付きづらい。
    • またゲーム内でデフォルト表示されているMARSから遊んだ場合、特定の位置に瞬間移動するギミックはこれ以前のステージに全く出てこない。何も無い場所に進む導線が無く、余計に気付きづらくなっている。
  • MARS MISSION-7
    • ステージ5の超高速シャッターが計10個以上も登場する。体力を1/4も削るシャッターが、である。
      • 安全に通過するには逐一敵を残さなければいけないし、万が一倒してしまったら地獄を見る。
      • 説明書を読まず、先述のテクニックを見落としたプレイヤーにとっては、今作最難関ステージとして立ち塞がる。
    • しかもいくつかのシャッターは敵が通過してくれず、自力で猶予数フレームのタイミングを通過しなければいけない。
      • それらの周辺には何故かその場で立ち往生している雑魚敵がいる。これがシャッターの方に進めば問題なく安全タイミングが生じていたはずなので、プログラムミスの疑いがある。
    • ステージ構造は「鍵のあるルートの一番奥まで行ってスタート近くに戻り、そこから分岐するゴールへのルートに進む」というもの。長期戦になるうえに、初見だと分岐点をどちらに向かえば良いのかわからないのも嫌らしい。
  • HAWNTED HOUSE MISSION-2
    • このステージでは『Wizardry』のような3D迷路を探索し、ゴールに向かう。しかし新しい舞台に来て早々、上述のシャッター地獄と並ぶ本作最難関ステージをやらされる羽目になる。
    • この迷路はあらゆる場所に障害物のスポーン地点があり、初見で対策しようがない近距離からいきなり雪玉が転がってきて、体力の半分を削ってくる。
      • ひどい時には2個や3個同時に転がってくる時もあり、無敵時間の無い仕様と相まって即死する事も少なくない。
    • 雪玉はこちらから攻撃して破壊できるが、耐久性は高く、出現タイミングを熟知して先手を打たなければ対策はほぼ不可能。
      • 場所によっては前後から挟み撃ちにされ、弾を打つだけでは全く対策できないことがある。
      • ひどい所では、全く通らせる気のないくらい雪玉が押し寄せるハズレルートも存在する。
    • 結局このステージでは、トラップの配置地点を地道に覚え、何度も死にながら進むという、文字通り古典的なダンジョンRPGをやらされることに……
      • TPSらしい駆け引きはなく、何のゲームをやっているのかわからなくなるステージである。
  • HAWNTED HOUSE MISSION-3
    • またしてもマップ構成がひどいパターン。
+ 画像

  • (1)でスタートし、鍵は(2)の地点にあるが、ゴールは最深部の(3)周辺ではなく(4)、スタート直後にある大きな扉。
    • 過去のステージと同じパターンなので薄々予測が付くとはいえ、これだけ大胆にステージ後半を無視するのは……
  • HAWNTED HOUSE MISSION-4
    • このステージでは、バッタのようにジャンプする小さな敵がレーダーの上半分を埋め尽くすほど大量に発生し、襲いかかってくる。
      • 本作は照準を上下に動かすことができないため、こうした敵はジャンプした瞬間にしか攻撃が当たらない。そんな嫌らしさにもかかわらず、集合体恐怖症のプレイヤーを刺激しかねないレベルでこの敵がレーダーを埋め尽くす様は圧巻である。
    • これだけなら極端に難しいだけのステージで済むのだが、問題はゴール地点。普通に遊ぶだけではステージをどれだけ徘徊しても見つからず、今作最大の詰みポイントの一つとなる。
      • そのゴールはなんと、落ちると即死する穴に飛び込んだ先にある。通常だと残機を失うだけだが、鍵を取った状態ではゴール判定になる仕組みである。
      • しかもゴールの位置はステージの最深部というより、数ある分岐点の一つでしか無いため、一見してゴール位置だとはわかりづらい。
      • 穴に飛び込むというのはただでさえ難しいステージをやり直させられるリスクに繋がるため、普通は試そうと思わない。今作でも断トツで理不尽なゴール地点の筆頭である。
  • HAWNTED HOUSE MISSION-5
    • 入り組んだ屋敷の中を探索するステージ。
    • このステージより、「主人公が視界の邪魔で敵にぶつかる」という先述の事故が多発する。特にステージを徘徊するゾンビや騎士のダメージは大きく、対処しようと思った時には大体操作が間に合わずに死ぬ。
    • 道が狭く「壁に張り付くと動きにくくなる」という仕様が悪さをする。その割に敵が多いので、常に即死の危険が潜む難関ステージ。
    • 特に恐ろしいのは、あらゆる場所から主人公を追跡し、壁をすり抜けてまで襲う幽霊。
      • 捕まったら最後、連続ヒットすると瀕死になる今作の仕様が悪さをし、そのままお陀仏である。ステージが全体的に狭いため、確実に逃げるのはほぼ不可能である。
      • 探索要素の濃いゲームなのに、じっくりステージを回る事もできず、残機がどんどん溶けていく。
  • HAWNTED HOUSE MISSION-7
    • 広間と付属の部屋で構成された単純なステージ。ここまで来る実力があるならばステージの難易度は支障にならない。問題はゴール地点。
    • このステージはとある部屋に置かれている、いかにも出口めいたハシゴに到達すればゴールとなる。しかし3DO版はそのハシゴのグラフィックがバグってドットの羅列となっており、出口だとわからなくなっている。
+ DOS版との比較画像(乱れたグラフィックが苦手な人は注意)
  • これにより、このステージもまた「ゴールがどこかわからない」という弊害が生じてしまい、難関ステージと化してしまった。
    • ステージ5の強敵がこのステージにも大量出現するため、探索するだけでも精一杯なのに……
    • 今作はどのステージも終盤になるほど不具合が多く、移植スタッフがまともに最後まで遊んだのか甚だ疑問である。
  • HAWNTED HOUSE MISSION-8
    • HAWNTED HOUSEの最終ステージ。
    • 繰り返しになるが、今作は照準を上下に動かすことができない。しかしこの面では主人公の射線などお構いなしに、宙を舞うカラスが大勢でプレイヤーを襲う。
      • 弾が当たるのはこちらを狙って襲撃する直前、それも正面から来た場合のみ。群れに飛び込もうものなら、前後左右からなす術もなくやられるだけである。
      • 唯一の対策法は、カラスが来れない場所を背にし、数分かけてひたすら影からカラスを殲滅するというもの。地味な上に時間がかかる上、これを最低でも3箇所で行わなければならないという……
  • MARINE MISSION-1
    • 弾を遮る障害物がない、正方形状の広場が舞台。全方位から偏差射撃で弾を撃つ砲台と、沢山のカモメが大量に押し寄せる平原で、ひたすら鍵とゴールを探す事になる。
      • 宙を舞う敵が異様に強いのは、これまでに何度も書いてきた通り。
      • 砲台は一度スポーンしたが最後、どんなに離れていてもプレイヤーを狙ってくる。
    • よりにもよって最初のステージからこれである。
  • MARINE MISSION-3
    • このステージから、歩きながら主人公を撃ってくるロボットが牙を向く。前のステージにも少数登場する敵だが、この面からが本領発揮。
      • 何がひどいのかと言えば、プレイヤーがやりたくても出来ない、歩きながらの射撃を平然と行ってくること。機動力に圧倒的な差があり、スポーンのタイミングを熟知していないと一方的にやられる羽目になる。
      • それでいて複数体出てきた時には絶望するしかない。スマートボムがどんどん溶ける羽目になる。
  • MARINE MISSION-4
    • 潜水艦の中を探索するステージ。構造はそこまで理不尽では無いのだが、クリアに必要な鍵が消失するバグがある。
      • このステージに登場する鍵は、周囲を壁で囲まれた部屋の中にある。取得するには、別の場所からワープ地点を経由して辿り着かなければならない。
      • しかし一度鍵を視線に入れた後、別の場所からワープすると鍵が消えてしまい、ステージごとやり直す羽目になる。
      • 綿密な探索を行う初見プレイ時ほど引っかかりやすく、一度はやり直しを余儀なくされる。
  • MARINE MISSION-5
    • 同じく、潜水艦の中を探索するステージ。そしてここでも鍵消失バグが発生する。
    • さらなる問題として、またしてもゴールを見つけるのが困難である。
      • 例によってステージ最深部ではなく中腹部にゴールが隠されているという理不尽設計なのだが、今回は探索範囲がやたら広く、探すのも一苦労である。
      • そしてゴール判定がやや小さく、該当エリアに到達しても気付かずに引き返す事故が起きやすい。
      • サラッと書いたが、結果的にステージは総当たりしても中々ゴールが見つからず、ゲーム終盤にふさわしい理不尽さ?を誇っている。
  • MARINE MISSION-7
    • このステージでは、STAGE3に登場した「歩きながら弾を撃てる強敵」が本領を発揮する。
    • ステージに突入するや否や、主人公は広間に放り出される。そして例の敵が6方向くらいから同時に襲いかかり、初見ではほぼ確実に数秒で即死する。
      • これがどれだけ惨いのかピンと来ない人は、ドッジボールで敵が周囲から6人がかりでボールを投げてくるところを想像して欲しい。なお外野と内野の境界線は無いものとする。
      • スマートボムを使わない限り対策は困難で、弾が尽きていたら死を覚悟するしかない。
      • 実は進行方向と反対の右側からは出現しないのだが、果たしてどのくらいのプレイヤーが気付けるのか…
      • この序盤さえ突破すれば後は普通のステージだが、このあまりのヤケクソな配置は間違いなく印象に残るはず。
  • そしてコース内の全てのステージをクリアすると……
+ ...
  • OPでスタッフロールが流れるところから察せられるかもしれないが、残念ながらエンディングの類は一切ない。それどころか、通常難易度の場合は無音で「難しいレベルに挑戦してみよう」と出るのみである。
    • キツいステージの数々を苦労して乗り越えた挙句、お祝いどころかねぎらいの言葉すらなく、さらにやり込むことを促される。絶望感もさることながら、見方によっては『えらいっ』以上に神経を逆撫でされる結末である。
  • なお最高難易度でクリアした場合、ちゃんと専用のおまけイベントが発生するようにはなっている。一度クリアしてゴールの位置さえわかってしまえば難易度は大きく下がるので、腕に自信のある人は試してみてほしい。
    • ちなみに一番クリアしやすいのはHAWNTED HOUSE。ステージ数が最も少ないうえ、鍵とゴールの位置さえわかればステージの大半を無視できるステージが多く、パズルを解くだけで戦闘要素の無いステージも含まれる。特に最終面に至っては後半の敵が消滅する不具合により大きく難易度が下がるおまけつきである*3
  • 専用EDは極めて反応に困る内容であることも明記しておく。

賛否両論点

  • 作品設定と大きく紐づく要素にもかかわらず、作中BGMのロックは評価が割れている。
    • ゲームの出来と併せて酷評されるのは珍しくなく、特にボーカルの評価は低い。
    • しかし90年代らしい雰囲気をきっちり抑えたメロディー構成は魅力を感じる声も多く、AVGNの動画で今作を知った英語圏の視聴者からは再評価の声も挙がっている。

評価点

  • いびつながらも工夫の凝らされたゲームバランス
    • 今作の問題は初見プレイをする人間にとっての難易度調整が考えられていないという部分に尽きるのだが、逆に攻略法を理解した上でのバランスに仕上がっている側面もある。
      • 背後から攻めてくる敵も突然出てくる敵も、初見時にはなすすべもない強敵も、出現パターンを覚えてしまえば何かしら突破の余地が残されている。
    • 一見してとんでもない難所でも、アイテム回収や敵の撃破順序などを工夫すればかろうじてクリアできるようになっており、うまく突破した時の快感はなかなかのもの。
      • 最難関の一つであるHAWNTED-HOUSE2面の迷路は最高難易度でも使える一本の正規ルートが決まっていて、これに沿えばきちんとクリアできる調整になっている。
      • 同じく難関である「歩きながら襲ってくる敵の大群」についても、真正面から突入せずに壁に接しながらスポーンさせることで、死角を減らしながら反撃の余地を生み出すことができる。
      • かの『ファイナルソード』よろしく、作り手がプレイヤーの立場を想定せずに作ってしまった場合に起こりうる、典型的な調整と言えるかもしれない。
    • 操作性が悪い分、テクニカルな動きを要求される場面が多いため、上達する実感も得られやすい。
      • 厄介な敵弾を少し並行移動するだけで避けられたり、背後からの不意打ちも反転操作を素早く撃つだけで何とかなったりする。スピーディな操作がハマると気持ちが良い。
    • また回復アイテムの設置も絶妙。
      • 体力回復アイテムは難所周辺ほど大量設置されている傾向にあり、死にかけのタイミングで一気に回復できることが多い。HAWNTED-HOUSEの最終面など、極端に苦戦を強いられる場所には過剰なほど配置されていることがある。
      • 残り人数追加アイテムも1〜2ステージに1つくらいの頻度で配置されているため、慎重に進めば詰みセーブも起こりにくい。
    • もっとも、初見時にはどうしようも無い難所ばかりでストレスが溜まりやすく、突き止めた攻略法も時間をかけてチマチマと攻めるような楽しくないものが大半で、やりこむことで面白さが見えてくるゲームとは言い難い点には注意したい。
  • 何もかも遊べないというほど酷くはなく、上記ステージ以外は最低限遊べる面も多い。
    • 特にMARS前半はゲーム序盤ということもあり難易度が低く、そこまでクソゲーとも言い切れない調整に収まっている。
      • 操作性の悪さやグラフィックの酷さは否めず、今作の理不尽設計の片鱗は見えているのだが、それでもプレイヤーの頑張りで十分突破できる範疇に収まっている。
    • 難易度曲線のメリハリは大きく、ひどい難所の後にサービスかと思うくらい簡単な面が来ることもある。その時の爽快感は他のゲームでは中々味わえない。
      • 難しいステージに直面しても、その次は簡単かもしれない……と、最低限の希望は残されている。
  • ステージ構成はバラエティ豊かで、単調さは感じさせない。
    • 印象的なステージに溢れているのは、ここまで説明した通りである。ステージごとにハッキリとしたコンセプトが打ち出されていて、(クリアさえできれば)退屈しづらく好奇心をそそられる設計になっている。
    • 操作が限られたゲームでありながら、きちんとした攻略行程が用意されているのは評価できる点。どこか惜しいところも感じられるゲームに仕上がっている。
      • なお武器アイテムは後に出る物ほど強く設定されている。このためゲームを進めるにつれ武器がパワーアップし、前とは違った戦いを楽しめるようにもなっている。
    • ステージの出入り口が前後でストーリー的な繋がりがある面が多く、冒険の感触を強く得られる。
      • 梯子を登った先の面では穴を背にしてスタートしたり、門を潜った先のステージで同じデザインの門からスタートしたりするなど。中には、以前入ったステージで入れなかった壁の先を冒険するステージもある。
  • 操作感について唯一褒められる点として、前進時に主人公が東西南北のうち一番近い角度に向いてくれる仕様がある。
    • アナログスティック誕生以前の3Dゲーム、それもカメラが固定されていない作品の場合、移動の際は角度合わせに苦心しがちである。しかし今作は方向を良い感じに調整してくれるため、前進の操作をテンポ良く快適に行うことができる。

総評

「現実から逃避するための仮想空間」という背景設定がある本作だが、実際は現実逃避に使うには逆効果極まりない。やりこめばやりこむほど、むしろこのゲームから逃げたくなること請け合いである。
序盤こそ最低限遊べる出来にはなっているものの、ゲームを進めるに連れて様々な欠陥がじわじわとプレイヤーを襲う。初見プレイで潰しの効かないトラップの数々は、何かとストレスが溜まる一方である。トドメと言わんばかりに、一部のステージに至ってはゴールが碌に見つからず、まともにクリアすることすらままならない。
そうした事情からか、今作はネット上にもクリア動画がほとんど上がっていない始末である(2023年秋現在)。*4
果たしてこのゲームを現実逃避に使える主人公の生活はどれだけ過酷だったのか……一流ミュージシャンの日常は、凡人には想像できないほど苦難に満ちているようだ。

しかしこのゲームも悪いところばかりではなく、クリアした時の達成感については間違いなく本物である。
爽快感こそ欠けているものの、きちんと攻略手順を見出せば突破できるようにはなっており、戦略がハマったときの気持ちよさはなかなかのもの。
初見プレイヤー目線のバランス調整がなされていれば、今作はまだ遊べるゲームになっていたかもしれない。

理不尽設計のゲームでも好奇心を糧に探索できる奇ゲーマニアや、苦労の先にある快感に喜びを見出せるクソゲーハンターにとっては、
もしくはバーチャルに逃避しがちな人間への喝としては、今作はうってつけのソフトと言えるかもしれない。
(寧ろこの主人公、生粋のクソゲーハンターだったのでは……?)


余談

  • 開発元Elite(エリート)の名前負けっぷりが酷い。
    • これでは人を苦しませる方のエリートのような…。
    • 尚、同社は1984年設立のゲーム会社で、オールドPCマニアにおいては日本のアーケード作品を当時のホビーパソコン*5へ移植したものを(クオリティはともかく)数多く出したことでも知られている。現在はApp Storeにて当時のZXスペクトラムや8bitホビーパソコンにて発売した自社作品をiOS向けに配信している。
    • ちなみにNES版『ドラゴンズレア』を欧州で発売したのもここである。
  • 日本語版タイトルは誤訳の可能性が高い。
    • タイトルの"virtuoso"とは「音楽の巨匠」というニュアンスのイタリア語で、文字通り"virtual"に引っ掛けた言葉遊びとなっている。
      • イタリア語読みでは「ヴィルトゥオーソ」と読む事が多いが、英語読みだと「バチュオソー」になる。
    • しかし担当者はこれを造語と勘違いしたのか、それとも綴りをちゃんと読まず「virtual so」と誤読したのか、「バーチャル・ソー」なる意味の通らない名称でローカライズしてしまっている。
      • 「ソー」は一見すると主人公の名前を指しているように思えるが、実はこのゲームの主人公に名前は無い。説明書にも名前を指した文言は一切なく、洋ゲーにありがちな名無しの人物となっている。
      • 結果的に「ソー」は意味不明な単語となっており、意訳としても破綻している。
      • 「ソー」で連想されるのは北欧神話の雷神ソー(トール)だが、彼の英語表記はThorで、こちらはsoなので全く違う。
  • 日本向け3DO版は出荷本数が少なかったらしく、中古市場にも滅多に出回らない。取引価格も安くは無く、入手困難なソフトとなっている。
    • 逆に原語である英語版は中古市場でそこそこ出回っており、予算さえあれば海外通販サイトのeBayを経由して入手できる(2023年現在)。
      • 日本語版でローカライズされている要素はほとんど見受けられず*6、3DOはリージョンフリーなので、手っ取り早く遊びたい人は原語版の入手が推奨される。
    • 余談だが、北米版の発売元は在りし日のデータイースト(正確には米国法人であるデータイーストUSA)である。*7
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最終更新:2023年11月19日 17:12

*1 2023年秋現在、FPSとして紹介しているサイトがいくつかあるが、これは誤り。今作は主人公が画面に映り込んでいるのでTPSである。

*2 英語版のタイトルは『Shadow: War of Succession』。『モータルコンバット』の流れを汲んだ実写取り込み格闘ゲーム。海外ではあまりの酷さから返品騒動にまで発展した。日本でも酷評を受けており、「3DOマガジン」が95年初頭までに出た全ソフトのレビューを行った際には10点満点中0点を付けられてしまった。ちなみに同点だったのは、編集部からウケの悪かった実用・教育ソフトを除くと『ファラオの封印』『シュトラール』『モンタナ・ジョーンズ』の3本のみ。

*3 おそらく敵が多く出現する事で処理が追いつかなくなったものと思われる。なお運が悪いとゴールに必要な鍵まで消滅することがあるため、若干運も絡んでくる。

*4 2023年時点では、YouTubeにDOS版クリア配信が1つあるのみ。3DO版は動画こそちらほらあるものの、多くが途中で挫折している。ただし静止画も含めるのであれば、3DO版でMARINE最高難易度をクリアした際のスクリーンショットがネット上で確認できる。

*5 ATARI-8bit、コモドール64、ZXスペクトラム等

*6 明らかな変更点として確認できるのは、セーブ時のメッセージと全ワールド通常難易度クリア時のメッセージ(それぞれわずか一文)が日本語訳されていることと、オープニング等に発売元のイマジニアがクレジットされていることのみ。

*7 欧州版はDOS/3DO版ともElite Systemsによる自社パブリッシング