ファニー・ヴァレンタイン


「我が心と行動に一点の曇りなし…………! 全てが『正義』だ」

『ジョジョの奇妙な冒険』第7部『スティール・ボール・ラン』の登場人物であり7部における黒幕。
『オールスターバトル』『アイズオブヘヴン』での担当声優は、アニメ版第4部において支倉未起隆を演じた 加瀬康之 氏。

作中における第23代アメリカ合衆国大統領で国民からの支持率も高い。
実際、アメリカという国とその国民の繁栄と安寧を考える心は真摯なものであり、この上ない自国への愛に溢れている
……しかし、それは他国には一切適用されておらず、
「アメリカという国とその国民さえ幸せであればいい」という国家単位でのエゴイズムに溢れている危険人物である。
それが例え「外交関係で他国に恩を売っておく」「援助などをして国際的に良いイメージを国家に築いておく」等という、
一般的な国のトップに立つ政治家としてとるべき選択肢をとらないのが彼の恐ろしい所でもある。
一歩間違えば独裁者である

所有スタンドは、いくつものパラレルワールドを自在に行き来できる能力を持つ「D4C(いともたやすく行われるえげつない行為)」。
下院議員時代に一枚の「地図」が指し示す場所の一つであるサンディエゴを捜索した清教徒達のグループに同行した際に、
多くの聖人達の遺体が眠る「悪魔の手のひら」に遭遇。多くの仲間を失いながらも「遺体の心臓部」を手に入れ奇跡的に生還し、一年後には大統領に就任。
そして、自らの地位を利用してスティール・ボール・ランレースを遺体を集めるゲームに作り替え、
「聖なる遺体」を見つけていくジョニィ達に刺客を次々送り出し、自らの「愛国心」のために遺体を奪うなど暗躍していく。

物語終盤では、自らに反逆したDioとホット・パンツを激戦の末に打ち倒し、ジョニィ達との最終決戦に突入。
全ての遺体を自らの手元に収めた事で、遺体の力によってスタンドが強化され「D4C-ラブトレイン-」に進化。
強力なスタンド能力でジョニィを追い詰めるが、
戦いの過程でジョニィのスタンドも「タスクACT4」に覚醒したことで形勢逆転され、追い詰められる。
最後は自らの愛国心を語りながら「戦死したジャイロを別世界から連れてくる」と言う取引を持ちかけるが、
それはジョニィに敗北したことで屈辱を受けた大統領が彼を倒すためについた嘘であり、
ジョニィにそれを見抜かれた事でそのまま銃撃戦に発展し、頭部を撃ち抜かれ死亡。その遺体はスタンド諸共崩壊し次元の彼方へと消え去った。
しかし、死の間際に自らの能力でDioを並行世界から連れてきており、決死の思いで大統領を倒したジョニィはすぐさま並行世界のDioと交戦する事になる。




 余談だが、最初期における大統領は肥満体型で、
 とてもこれが強大なボスキャラには見えない風貌だったのだが、
 登場の機会のたびに次第にスリムになっていき、
 最終的にはページトップの画像の通り精悍なイケメンになっている。
 あまりにも変わりすぎなので読者からは
 「『聖人の遺体』の力で痩せた」
 「広瀬康一の『付近の人間を少しずつ小型化させるスタンド』の亜種で
  メタボな本体を少しずつダイエットさせるスタンド」
 等とネタ交じりに推測されていたが、
 作者の荒木飛呂彦氏は、
 まぁ、あれは鍛えているからいいってことで(笑)
 と言うコメントを残している。

+ スタンド「Dirty Deeds Done Dirt Cheap (いともたやすく行われるえげつない行為)」

「同じ場所に隣の世界を同時に存在させられる
 それがスタンド能力 “いともたやすく行われるえげつない行為”
 『D・D・D・D・C(ディー・4・シー)』」

破壊力 - A スピード - A 射程距離 - C
持続力 - A 精密動作性 - A 成長性 - A
名前が大変長いので上記の通り「D4C」と省略される。
スタンドのヴィジョンは頭部からウサギの耳のような長い突起が生えた人型。
縫い目のようなディテールがある他、カラー画稿では薄水色やピンクのカラーリングで描かれる事が多く、
どこかファンシーなキャラクターを思わせるがムキムキで不気味な顔なので可愛くはない

何かの間に挟まることで基本世界と別次元を行き来したり、他者を移動させる能力を持つ。
さらに、別次元の運命に干渉したり、同じ空間上に基本世界と別次元の出来事を同時に起こす事もできる。
これにより、複数の別次元からヴァレンタインを複数人連れて来たり、D4Cとヴァレンタインの記憶を他のヴァレンタインに移し替えることができる。
このため、基本世界にいるヴァレンタイン大統領全員を殺害しない限り決してヴァレンタインを倒すことができず、
ヴァレンタインが別次元へ逃亡する度に、別世界の無傷のヴァレンタインが記憶を引き継ぎ入れ替わり襲いかかってくる。

ただしD4Cは多次元で一つしか存在しない。別次元への移動能力を持つのは基本世界の大統領のみである。
また、一つの世界に「同じもの」はヴァレンタインを除いて存在することはできず、「同じもの」同士が出会ってしまった場合、
それらはお互いにメンガーのスポンジのような破片となって崩れ、消滅を始めるというルールがある。

ちなみに意外に思う人もいるかもしれないが、第7部に登場するスタンドの中では非常に希少な相手を直接攻撃できる人型スタンド*1
しかもパラメータに至ってはあのスタープラチナと完全に互角。
こう書くと能力抜きでも強そうに聞こえるものの、ヴァレンタイン大統領の性格上積極的に近接戦を挑むようなことはなく、
劇中では手刀を主に用いたくらいでラッシュなども披露せず、言うほどスタンド本体の強さを実感できるような場面は少なかったりする。


ゲームにおけるヴァレンタイン大統領

PS3用格闘ゲーム『オールスターバトル』にプレイアブルキャラとして参戦。流石に初期の肥満体型ではなかった
同作ではDioが参戦していないため7部の事実上のラスボス枠として登場した(Dioはリメイク版『ASBR』で参戦)。
正当防衛として使用した拳銃や並行世界から連れてきた自身を飛び道具に使い、
国旗に隠れて移動したり、並行世界の自分と入れ替わり体力を回復するなど個性的な技が揃っている。
攻撃の火力が低い反面防御力はかなり優れており、遺体を集めることで防御力が上がるなどの恩恵があり、
最終的にはスタンドが「D4C -ラブトレイン-」に進化し、飛び道具が無効化されたり一部の必殺技の性能がアップする。

『アイズオブヘヴン』ではストーリーモードにおいて主要キャラとして登場。
ジョニィに打ち込まれたAct4から逃れるために多くの並行世界を巡る間に「第3部でDIOがジョースター一行に勝利した世界」に遭遇し、
天国に到達したDIO(天DIO)の「真実を上書きする能力」によってAct4の能力を打ち消される。
原作に於ける敵味方を問わず多くのキャラクターが天DIOの配下になる(「天DIOの配下である」と真実を上書きされてしまう)中、
彼だけは洗脳される事は無く、世界全ての脅威=大統領が守るべきアメリカ合衆国にとっても脅威である天DIOを倒すために、
密かに承太郎を始めとしたジョースターの血族達に協力していた。
しかし、それを天DIOに勘付かれた事で窮地に追い詰められ、あらゆる並行世界に逃げ込もうとも「真実の上書き」によって天DIOの前に引き戻されてしまう。
それでもなお誇り高く天DIOに立ち向かったが、「ザ・ワールド・オーバーヘブン」の能力には敵わず、
「いかなる並行世界にもファニー・ヴァレンタイン大統領は存在しない」という真実を上書きされてしまった……。
『EoH』紹介動画

天国DIOが倒された後のエンディングでは、第3部では花京院、アヴドゥル、イギー達が大怪我はしたが全員存命、
第4部では杜王町を訪れた承太郎が幼い徐倫を同行させており家庭崩壊はしていない模様、
第5部ではフーゴが最後の戦いまでブチャラティと行動を元にしている……など「原作よりも幸せな並行世界」の誕生を予感させるイラストが表示されていくのだが、
恐らく「大統領が遺体を手にしてアメリカを世界最強国に押し上げた世界」は無い。あんなに頑張ったのに……。
一応、スティール・ボール・ラン・レースは開催されているらしいので「大統領は存在しない」真実からは解放されたかも知れない。
「第23代アメリカ大統領はファニー・ヴァレンタインでは無いが、大統領に就任した別の人物によってSBRレースが開催された世界」かも知れんが

余談だがリーゼントヘアはお気に召さないようで、
「なんともひどい髪型だ。そんなヘアスタイルは我が国民には絶対させない」
大統領権限で法的規制を匂わせる発言までかましている。
……だが、その髪型はヴァレンタイン大統領の時代(19世紀末ごろ)から約50年後、
エルヴィス・プレスリーの影響で全米に大流行するのだった。


MUGENにおけるヴァレンタイン大統領

caxer602 lol氏による『JUS』風ドットの手描きキャラが存在。
拳銃を用いた銃撃やD4Cによるラッシュ、能力で姿を消しての攻撃など、
トリッキーなキャラに仕上がっている。
DLは下記の動画から

この他に、配下であるリンゴォ・ロードアゲインブラックモアもMUGEN入りしている。
また、ニコニコMUGENにおいては、主にジョジョキャラが無尽蔵に分身した時に彼のスタンド「D4C」の名で呼ばれることがある。
発祥は多分この大会の5:50付近から


「この世のルールとは『右か左か』?
 このテーブルのように均衡している状態で一度動いたら全員が従わざるを得ない!
 いつの時代だろうと………この世はこのナプキンのように動いているのだ」

出場大会



*1
スタンドという概念が初めて登場した第3部では、
ジョセフの口から「そばに立つ(Stand by me)から名付けて幽波紋(スタンド)」と名前の由来が語られている。幽波ではない
しかし、大陸横断レースという過酷な状況が舞台となる第7部においては定義が改められ、
「困難に立ち向かうもの(Stand up to)」というマウンテン・ティムの言葉がスタンドの語源となっている。
その言葉通り、7部に登場するスタンド能力は今までのように傍らに寄り添う屈強な人型タイプよりも、
明確なビジョンを持たないタイプや、小動物めいたマスコット型や道具型のような小さなタイプなどが多い。
スタンド同士での殴り合いなども非常に少なく、あくまでも戦闘を行うのはスタンド使い本人でスタンド能力はその補助に過ぎない
ということが強調して描写されている。
主人公であるジョニィの「タスク」やリンゴォの「マンダム」などはその典型。
「他者を恐竜化させて操る」というディエゴの「スケアリー・モンスターズ」でさえもスタンドそのものでの攻撃はできない。
それらのことを念頭に置くと、ヴァレンタイン大統領の「拳打を用いて戦う人型のスタンド」というのがいかに例外的かというのが理解できるだろう。


「どジャアァぁぁぁ~~~ン」


最終更新:2024年03月02日 21:14