ルールを知らない者は社会では生きていけません。

野生のれいむは人里へ訪れた。
冬が近づくにつれてゆっくりは食料と雪や寒さを凌ぐ為の穴を準備する。
しかしこのれいむは怠け過ぎていた為に食料は尽きてしまった。
今まで住んでいた木の穴は雪が積もってしまうととても狭い空間になる為冬を越すことは不可能。
気づけば他の群れはもう冬を越す準備を終えてしまっていた。
当然、遅れた為に食料も僅かしか集めることが出来なかった。
穴も今から掘るとなると冬が来てしまう。何より面倒くさい。
だかられいむは人里に行き、ゆっくりできる場所を探しに行った。

「ゆ!このおうちはとてもゆっくりできそうだよ!!」

れいむはとある二階建て住宅を見つけた。
人間でも広々とくつろげる様な家だ。ゆっくりならとてもゆっくりできるだろう。
しかし、その前に問題が発生した。

「ゆ?ゆゅぅ~~・・・ゆー!!」

むにゅむにゅ。ぽよーん。カーン。

れいむは必死にドアを押す。体当たりする。石を投げる。
当然、鍵が掛かっていて頑丈なドアがゆっくり程度の生物に壊されるはずもない。
れいむの息が上がるまで行った攻撃はドアの前に無残にも敗れてしまった。

「と”お”し”て”あ”け”て”く”れない”のお”お”お”お”お”お”!!!??」

とうとうれいむは動けなくなった。

「どおじで・・・どおじでぇえ・・・」

すると、れいむの周りが影に包まれた。
れいむは後ろを向くと、そこには自分よりも遥かに大きい物体が立っていた。
人間だった。

「何故そんなところで寝ているんだい?れいむ?」
「ゆ・・・ゆううううう!!」


待ちに待った存在。このデカブツならこのドアを開けてくれるだろう。
れいむは自分が強いと思っていた。デカブツ相手でも勝てる力を持っていると思っていた。

「おにーさん!れいむはこのおうちにはいりたいんだよ!!でもこのどあさんがいつまでもうごかないんだよ!!ゆっくりたいじしてね!!」
「・・・はぁ。」

お兄さんは呆気に取られたが、拒む理由も無いのでドアを開けた。
それを待っていたれいむはさっさと家の中に入り、お決まりのセリフをお兄さんにたたきつけた。

「ここはれいむのゆっくりぷれいすだよ!!おにーさんはじゃまだからたべものをおいてさっさとゆっくりでていってね!!」
「・・・はぁ。」

お兄さんは出て行った。

「ぁ、じゃあ他に誰か入らないように鍵閉めとくからね?」
「にんげんにしてはきがきくね!!でもたべものをおいていかないばかなおにーさんはしんだほうがいいとおもうよ!!」

お兄さんはとても穏便な人だった。自分よりも格下の相手に何を言われても気にすることは無い。のほほんとした人である。
お兄さんはその家に鍵を掛けると、車に乗って出て行ってしまった。

「うるさいよ!ゆっくりできないからとっととしね!!」

車の音がうるさかったのだろう。もういない相手に罵言を吐く。


れいむは数時間そこでゆっくりしていたが、徐々に空腹感が体内を襲う。

「ゆぅ~・・・おなかがへったよ!!ゆっくりたべものをさがすね!!!」

れいむは家を探索し始めた。









「たへ”もの”はぁあああぁぁああぁぁぁあ!!!???どこおおおおおおおぉぉぉお!!!???」

数時間かけて食料を探すが、一向に見つからない。
それどころか、周りには何も無い。皿も棚も机も花瓶も何も無い。
やがてれいむは倒れこみ、睡魔に襲われた。仕方ない。今は午後の8時。よい子も悪い子も馬鹿なゆっくりも寝る時間である。

「ゅ・・・ぉなかへったよぅ・・・すやすや・・・」

結局、今日れいむは何も口に出来なかった。





「ゆ?」

目が覚めると日光が窓から照らし出される。昼のようだ。
まぶしい光が当たったことで、一瞬で目が覚めたようだ。

「ゆ!おなかがすいたよ!!ゆっくりたべものをさがすね!!」

これが4日に渡りループした。



5日目。ゆっくりではこのくらいが限界だった。

「ぉ・・・なかすいた・・・」

れいむは眠ることさえ困難な状態になっていた。
腹の虫が睡魔に勝ってしまったのだ。

「おそとにでな・・・きゃ・・・」

ぺちぺちと、腹を引きずってドアの前に立つ。
体当たりをする体力も無く、ドアに寄りかかることで精一杯だった。

「どあ・・・さんごめ・・ん、あやまるがらあいでえぇ・・・」

ドアが「どうぞ」とでも言って開いてくれる程この世は夢で溢れていない。
現実は厳しいものである。
やがて諦めたれいむは窓を割って出ようと考えた。
しかし、それも不可能。
この家には何も無いのである。
ゴミもほこりも一切無い。綺麗ではあるが寂しい家だ。
れいむはもう限界だった。
れいむの中は空腹感も消え、残るは睡魔だけとなった。




「もっど・・・ゆっくりがんばればよかっだ・・・すゃすゃ・・・」




れいむは静かに息絶えた。

家のドアに、一枚の張り紙があった。



『売家』



数日後

人溢れる街のマンションの呼び鈴が鳴る。

「はーい♪」

そこにはとても嬉しそうにドアを開けるお兄さんの姿があった。
お兄さんは懸賞に応募していた。
もう諦めかけていたが、呼び鈴が鳴ったことで再び希望が白く塗り返された。

「ありがとうございますぅ~♪ご苦労様でしたぁ♪ふふ♪」
「・・・えーと、すいません。そこまで喜ぶことではないと思います・・・むしろ逆というか」
「・・・え?」

配達員が紙きれを手渡す。
そこには黒ずんだゆっくりの姿を写した写真と請求書。

「あなたが売家とした家の中にゆっくりがいまして・・・ハエが集っていて駆除に苦労したそうです。よって請求書・・・」




お兄さんはプッツンした。

懸賞のショックと希望を打ち砕かれた絶望と無駄な出費。
お兄さんの髪の毛は逆立っていた。お兄さんの目は際立っていた。

「あの・・?」
「すいません、用事を思い出したんで」


お兄さんは家を出た。
目的地は不動産屋。
都会じゃゆっくりは出ない。ゆっくりは森の中。
田舎だ。田舎に戻ろう。
あの家はもう一度自分で買おう。大丈夫、金ならある。




「このゆっくり野郎・・・ヒャッハァ!!皆殺しだぁ!!」

穏便お兄さんが虐待お兄さんに変わった珍しい出来事でしたとさ。




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あとがき

ゆっくりを無垢なお兄さんに閉じ込めさせた。
生意気れいむほど性欲をそそる生き物がいるのかと問いたいほど可愛い。
可愛くてもう駄目だ、れいむに尺八してもらいた。
そんな思いを抑えつつ放置プレイを選択。いい仕事できたかなあ。



代表作(?)

ゆっくり大福
ゆっくり取引2~(3は執筆中)




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最終更新:2022年05月03日 09:48