神社で行われている夏祭りに、浴衣を着た若い男がゆっくりれいむを一匹連れ添って遊びに来ていた。
一緒に歩くので男の下駄がカランコロンと鳴る間にぽよんという音が入って
カランぽよんコロンという不思議な音色になって境内に響いた。
その珍妙さはまるでゆっくりと人間の組み合わせのようだった。
「ゆ!みんなゆっくりたのしそうだよ!おにいさんいっぱいゆっくりしようね!!」

れいむは普段とは打って変わって屋台が並び煌びやかに飾り付けられた神社の様子を見て
興奮気味に飛び跳ねながら男に言った。
「ははは、どちらかというとゆっくりよりにぎやかと言った方が正しい気もするけど
れいむがそう言うならきっとそうなんだろうね」
男は少し屈むとにこりと笑ってれいむに応えた。
「うん!ゆっくりだよ!」
一人と一匹は軽く笑いあいながら屋台の間を歩いていった。

れいむはものめずらしそうに両脇の屋台を見ては男に何の店なのかを尋ねていく。
男は面倒がるそぶりを欠片も見せずにれいむにもわかるように丁寧に答えていった。
「ゆー、こんなにゆっくりたのしいところれいむはじめてみたよ」
れいむは驚きを隠さずに素直に祭りのことを褒め称えた。
「それはよかった、僕もつれて来た甲斐があったよ」
男はれいむが喜んでいるのを見て嬉しそうに笑った。

「そうだれいむ、こんなものがあるんだけど」
男は浴衣の懐から小さくて丸いものを取り出した。
「ゆ〜?ゆ!あかちゃんだ!とってもゆっくししててかわいいね
ゆっくりしていってね!」
男が取り出したものはゆっくりの赤ちゃんだった。
両目をつぶっていて、どうやら眠っているようだった。
「ぱくっとな」
男はれいむに見せ付けるかのようにそれを口の中に入れた。
「ゆゆ!おにいさんのおくちのなかでゆっくりあそんでね!
おにいさん!つぎはれいむにやらせてね!」
れいむはそれを見て親ゆっくりが子ゆっくりを避難させたり遊ばせたりする時と同じように
男が赤ちゃんゆっくりと遊んでいると思ったようだ。

グチャ

何かを噛み潰す音が男の口の中から漏れた。

「ゆ・・・!?」

唖然とするれいむを尻目にむしゃむしゃと咀嚼音を漏らしながら男は顎を動かし
ゆっくりの赤ちゃんを噛み砕いた。
そしてれいむが何かを言おうとしたその時、ごくりと男は口の中の物を飲み込んだ。

「お゛に゛い゛ざんなんでごどずるのおおおおおおお!?」
祭りの会場に場違いなれいむの悲鳴が響いた。
「あがぢゃんだぢでえええええええ!!ゆ゛あ゛あ゛ああああああ!!」
れいむはぼよんぼよんと男の足に体当たりした。
ぶつかるたびに涙が浴衣の裾をぬらした。
その様子を見て男は堪えきれなくなったのかのように笑い出した。
「あははは!ごめんごめんれいむ
ほら、これを見て」

男は暴れるれいむを抱え上げると脇の屋台の男に話しかけた。
「親父さん、一つ見せてくれないかい?」
「あいよ」
その屋台の中年はさっさと手先を器用に動かして、飴細工を作って見せた。
「ゆゆ!?」
赤白黒肌色の飴を見事に使って、ゆっくりれいむそっくりの飴細工だった。
「すごーい!!!」
「へへへ、お嬢ちゃんそっくりでしょう」
「すごいよすごいよおじさんすごい!とってもゆっくりしてるあめさんだよ!!」
れいむの興奮のボルテージは頂点に達したようで、男の腕の中で跳ねようと暴れまくった。
男はおっとっととなんとかれいむを抑えこんだ。
「はは、実はこういうことさ
このおじさんはこの辺りでたった一人の有名なゆっくり飴細工師なのさ」
「ゆー、れいむすっごくびっくりしたよ!もうにどとしないでね!!」
れいむはぷくーっと膨れて怒りを露にして男に抗議した。
「ごめんごめん、それじゃあ行こうか」
男は手のひらを額に立てて謝罪する手振りをした。
「ゆ!ゆっくり行こうね」

れいむは男の腕の中から降りて神社の本堂の方へと歩いていった。


屋台の男はチッと小さく舌打ちした。
「あんにゃろ、作らせるだけ作らせて結局なーんも買っていかねーでやんの
初めてみる顔だからサービスしてやったってぇのに」
屋台の男は今作ったばかりのゆっくりれいむの飴細工を串立てに立てて並べた。




一人と一匹のカランぽよんコロンという珍妙な音が夜の境内に不気味に響き渡った。





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最終更新:2022年05月03日 15:18