~ゆっくりレティの生涯(前編)~

 前書き

 あまり登場しないゆっくりレティが登場するため、SS中の所々に生態の説明などを書きました。
 より詳しい生態はおまけで述べるので、途中「?」と思うところがあるかもしれませんがご安心下さい。

 -春-

 春、それは冬の寒さが和らぎ様々な動植物が活動を始める季節である。
 長い冬を乗り越えることができたゆっくり達も巣穴から続々と顔を見せ始める。
『ゆ~っ~く~り~!』
 ふとましい声を上げて1匹の大きなゆっくりが地中から顔を出す。
 このゆっくりはゆっくりレティ、捕食種の中でも上位に君臨するゆっくりである。
 特徴は何と言ってもその巨体、このゆっくりレティの体長は1m程あるが、これでも成体でないというのだから驚き
 である。
『ま~ぶ~し~。』
 初めて見る眩しすぎる太陽の光にゆっくりレティは目を瞑った。
 巣穴から出たゆっくり達がまず初めにやる事は食糧の調達であり、ゆっくりレティも同様である。
 鈍重ではあるが跳ねて食料を探しにいく。
『む~しゃ~む~しゃ~・・・しあわせ~♪』
 ゆっくりレティは特徴である長い舌を使い、この春芽吹いたばかりの柔らかい新芽を器用ににちぎって口に運ぶ。
 ゆっくりレティは捕食種ではあるが、ゆっくりを主食とするゆっくりれみりゃ、フランとは違い雑食性が強い種であ
 る。
 ゆっくりの中身は基本甘味であり栄養価も高い。
 春先で空腹なゆっくりレティが通常種を見つけたら当然捕食する。
「「ゆ ゆ ゆ ゆ ゆ!!!」」
 食糧を探していたゆっくり霊夢と魔理沙が不運にもゆっくりレティに遭遇してしまったようだ。
 ゆっくりレティは声のする方へ体を向けると目線の先では2匹がガタガタと震えていた。
『ゆっくりくろまく~。』
 独特の声を上げて2匹目掛けて舌を伸ばす。
「いやあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」
 ゆっくり霊夢が震えながら悲鳴を上げ恐怖のあまりその場から動けずにいる。
 その時、突如ゆっくり霊夢の体に衝撃が走った。
 ゆっくり霊夢の体はゆっくりレティ目掛けて一直線に転がっていく。
「まりさがゆっくりするためにれいむがみがわりになってね!バイバイ!」
 ゆっくり霊夢は転がりながら相方の突然の裏切りに言葉を失った。
 ゆっくりレティは転がるゆっくり霊夢を器用に舌に巻きつけるとそのまま口に運ぶ。
「ゆっぎりでぎない ぃ ぃ ぃ ぃ ぃ !」
 ゆっくり霊夢の悲痛の叫びが木霊した。
 一方、自分が助かるためにあっさり相方を裏切ったゆっくり魔理沙は必死に逃げていた。
「のろまなれいむがいたおかげでたすかったよ!・・・ゆ?」

 ずん!ずん!ZUN!

 突如地響きが響き渡った。
 ゆっくり魔理沙が何事かと周りを見渡すと後方からゆっくりレティがものすごい勢い(ゆっくり比)で迫っていた。
「ゆ ゆ ゆ ゆ ゆ あ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !」
 あまりの迫力にゆっくり魔理沙は発狂してしまった。
 ゆっくりレティはその巨体に似合わず通常種と同様に跳ねて移動することが出来る。
 また、鈍重ではあるが体が大きい分一回の跳躍で進む距離が長いため、通常種が必死に逃げたとしても簡単に追いつ
 く事が出来る。
『ゆっくりくろまく~。』
 ゆっくり魔理沙に追いついたゆっくりレティはすかさず舌を伸ばす。
 涙を流しながらガクガク震えるゆっくり魔理沙にはもはや逃げ延びる術は残されていなかった。
「ゆるじでえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」
 舌を巻きつけられたゆっくり魔理沙は、相方と同様に悲痛の叫びを上げながらゆっくりレティの口の中へ消えていっ
 た。
 ゆっくりレティはリスのように食べきれない分を頬に貯蔵して蓄える習性を持っているが、今は空腹であるため2匹
 はあっという間に噛み潰され消化された。
 もし、ゆっくりレティが空腹ではなかったら2匹は長期間頬の中でゆっくり出来ない時間を過ごす事になっただろう。
 一瞬で噛み潰された2匹は、ある意味運が良かったのかも知れない。
『ゆ~ゆ~ゆ~♪』
 新芽と2匹のゆっくりでお腹がいっぱいになり、ゆっくりレティはご機嫌である。
 ゆっくりレティは狩りのほとんどを舌を使って行い、体はあまり動かさないので非常に燃費が良い。
 そのため、通常種よりは食べるものの、大きな体の割にはあまり食べないのだ。

 ゆっくりレティは何かを探すように辺りを飛び回り、通常種が住んでいそうな洞や穴を見つけると舌を伸ばして中に
 入れていた。
「ゆゆ?」
「おかしゃんこれにゃに?」
「こっちにこないでえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」
「みょーん!」
「わからないよー!」
 様々な巣穴に舌を入れるが、不思議な事に巣穴の中から響き渡る声を聞くと捕まえずにそのまま舌を口に戻している。
 しかしある穴に舌を入れた時、ゆっくりレティの対応が変わった。
「むきゅー!こないでえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」
 巣穴の中から独特の鳴き声が聞こえると、ゆっくりレティはすかさずその声を出した饅頭に舌を巻きつけ巣穴から引
 きずり出す。
 巣穴から引きずり出されたのはゆっくりパチュリー、体は弱いが通常種中一番の頭の良さを持つゆっくりである。
「むきゅぅ~。」
 ゆっくりレティは舌に絡めたゆっくりパチュリーを自分の前に置き、舌を口に戻す。
 そしてずりずりと体を地面につけたままゆっくりパチュリーに近づいていく。
「むっきゅー!むきゅきゅーん!」
 あまりの巨体を目の当たりにしたゆっくりパチュリーは動揺して鳴き声を上げることしかできない。
 ゆっくりパチュリーはもう押しつぶされてしまうと観念したのか目を瞑っていた。
 しかし、ゆっくりパチュリーには予想外の事態が待っていた。
『ゆっくりしていってね~!』
 ゆっくりレティはゆっくりパチュリーを潰してしまわないように注意しながら頬ずりをしていた。
 頬ずり、それはゆっくり達の間では友好を示す行為である。
「ゆっくりしていってね・・・むきゅぅ・・・。」
 張り詰めた糸がプチン!っと切れてしまい、ゆっくりパチュリーは気絶してしまった。


 -晩春-

 ゆっくりレティの頭の上にはゆっくりパチュリーが乗り、その周りには4匹のゆっくりが集まっていた。
『ゆっくりしていってね~。』
「むきゅー、今日もみんなでご飯を集めるのよ。」
 そう、ゆっくりレティは小規模な群れのリーダーになっていた。
 春先、巣穴に舌を入れて探していたのは相方となるゆっくりパチュリーを探していたのだ。
「れてぃがいればこわいものはないね!」
「まりさたちはあんぜんだね!」
「わかるよー、りーだーがまもってくれるんだねー。」
「こころづよいみょん!」
 ゆっくりレティの群れの一員はすべて通常種であり、ゆっくり霊夢、魔理沙、パチュリー、ちぇん、みょんが1匹ず
 つである。
「むきゅ!れてぃはあまりうごくのがすきじゃないからよぶんにしょくりょうがとれたられてぃにわたしてね!」
「「「「ゆっくりりかいしたよ!(よー!)(みょん!)」」」」
 頭の上から降ろされたゆっくりパチュリーも4匹に混ざり食糧を探しにいく。
 ゆっくりレティはお気に入りである大きな木の木陰で眠る体勢に入っていた。
 ゆっくりパチュリーを相方に迎え、小規模ながら群れを作ったのはゆっくりレティ自身がゆっくりするためである。
 ゆっくりレティが群れのリーダーであれば、よほどの事が起きない限り群れの一員は安全が保障される。
 そして安全を保障してもらう代わりに通常種はリーダーに食糧を提供するのである。
『ゆぅ~・・・z z z z z 。』
 気持ちよさそうに食糧が集まるのを寝て待つゆっくりレティであった。

 梅雨、春から夏への季節の変わり目である。
 この季節は雨の苦手なゆっくりにとって様々な脅威が襲い掛かる季節である。

 とある巣では・・・。
「「「ぴぎゃあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !おみじゅこわいよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !」」」
「いそいでおかあさんのおくちのなかにはいってね!」
 立地条件の事など考えもせずに偶然見つけた木の洞を巣にしていたゆっくり霊夢の一家に災難が降りかかっていた。
 周囲よりも少し窪んだ場所に洞があったため、連日の雨で巣に水が流れ込んできていた。
「いやあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !からだがとけちゃうよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !」
「「「おかあしゃあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ん!」」」 

 一方、ゆっくりレティの群れでは・・・。
 雨が降る中、ゆっくりレティはいつもと変わらずお気に入りの大きな木の根元でスヤスヤと眠っていた。
 ただ、いつもと違うのは口の中に群れの通常種が避難しているという事である。
「むきゅ~、れてぃはみずにつよいからあんしんよ!」
「れてぃはすごいね!」
「さすがまりさたちのりーだーだね!」
「わかるよー、ここならとけないんだねー!。」
「あんしんみょん!」
 冬眠に使っていた巣穴をそのまま巣にしているゆっくりレティ達であったが、連日の雨で水没とまではいかないまで
 も水が入り込み、ゆっくりできない状況に陥ってしまっていた。
 いくらゆっくりレティが皮が厚く、水に強いといっても長時間水に浸っていたらさすがに皮が溶け出してしまう。
 そこでゆっくりレティは群れの通常種達を口に避難させ、比較的雨の当たる量が少ないお気に入りの場所へ避難した
 のだ。
『ゆ ぅ ぅ ぅ ・・・z z z z z 。』 
 ゆっくりレティは呑気に眠りながら雨が止むのを待つのであった。

 翌日、久しぶりに雲の中から太陽が顔を覗かせた。
 ゆっくり霊夢一家の巣穴には黒色に染まった水にデロデロニなった皮が浮かんでいた。
 ゆっくりレティの群れでは全員が無事生き延び、久しぶりに晴れた森の中を通常種達は食糧を探し跳び回っていた。


 -夏-

 夏、それは一年で最も気温が上がり、ゆっくりの食糧となる虫や草花が活気に満ち溢れる季節である。
『ゆぅゆぅ・・・z z z z z 。』
 雨や寒さに強いゆっくりレティではあるが、体が大きい分熱がこもりやすいため暑いのは苦手である。
 体温が上がるのを嫌うゆっくりレティは、今日も木陰で涼みながら気持ちよさそうに眠っている。
 通常種達は豊富な食糧を集めに森中を駆け巡っている。
「まりさ、このおはなさんとってもおいしいよ!」
「れいむ、こっちのむしさんもとってもおいしいよ!」
 ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙は互いに見つけた食糧を交換し合い、笑顔で頬張っている。
「「む~しゃむ~しゃ、しあわせ~♪」」 
 普段から仲の良い2匹は、お腹がいっぱいになったところで頬ずりをし合い信頼を確かめ合う。
 しかし、今日の2匹の様子はいつもとは違った。
「れいむ~なんだがあたまがほわ~ってしてきたよ~。」
「まりさ~、れいむもなんだかあたまがほわほわしてきたよ~。」
 2匹は無意識のまま頬ずりを続け、相手に振動を与え続けている。
 そして振動は次第に強くなっていく。・・・・・そして。
「「ゆ ゆ ゆ ゆ ゆ!んほお お お お お!」」

「「すっきりー!」」

 初めに意識がはっきりしたのはゆっくり魔理沙であった。
「ゆ?とってもからだがすっきりしてるよ!ねぇれい・・・ゆ!」
 ゆっくり魔理沙はゆっくり霊夢のあたまを見てびっくりした。
 緑色の蔓が生え、枝分かれした先端にはプチ霊夢とプチ魔理沙が実っていた。
「ゆゆ!まりさとれいむのあかちゃんだね!みんな、ゆっくりしていってね!」
 ゆっくり魔理沙の「ゆっくりしていってね!」に反応し、次々とプチ達が地面へ落ちていく。
「「「「「ゆっくりちていってね!」」」」」
 プチ霊夢5匹、プチ魔理沙5匹の総勢10匹の饅頭がこの世に誕生した。
 すべてのプチゆっくりが切り離されるとゆっくり霊夢の意識が戻り、同時に頭の蔓が抜け落ちる。
「れいむ!このこたちはまりさとれいむのこどもだよ!」
「ゆゆ!?・・・れいむのこども?」
 蔓に栄養をとられている最中、お母さんゆっくりは気絶してしまうことがある。
 このゆっくり霊夢も同じで、突如目の前に赤ちゃんが現れ困惑していた。
「おか~しゃんおなかしゅいたよ。」
 1匹のプチ霊夢の「おか~しゃん」と言う言葉を聞くと、ゆっくり霊夢の困惑も吹き飛んだ。
「みんな、このみどりいろのものをたべてね!」
 お母さんゆっくりは本能か、記憶の奥底に眠っている初めてのご飯の事を思い出すのか、皆同じように抜け落ちた蔓
 をプチゆっくりの初めてのご飯として与える。
「「「「「む~しゃむ~しゃ、ちあわせ~♪」」」」」
 プチ達が蔓を食べ終わると、ゆっくり魔理沙が口を開いた。
「れいむ!あかちゃんをりーだーにしょうかいするよ!」
「ゆゆ!そうだね、かわいいあかちゃんをみたられてぃもきっとゆっくりできるね!」
 2匹は赤ちゃん達を連れてリーダーのもとへ向かった。

『ゆっくりくろまく~』
「「「「「たちゅけて ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」」」」」
 先ほどこの世に生を受けたばかりの10匹のプチゆっくり達にはゆっくりレティの舌が巻きつけられていた。
「なんでこんなことするのお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !」
「れいむの、でいぶのこどもがえじでえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」
 2匹は今にも食べられそうな我が子を見て泣き叫んでいた。
「むきゅぅ・・・、ふたりともわすれたの?れてぃのむれにはいるときのやくそくを。」
「「やくそく?・・・ゆゆゆ!」」
 突如何かを思い出したのか2匹は凍りついた。
 ゆっくりレティが群れを作るのはあくまで自分がゆっくりするためである。
 プチゆっくりは成長するために見た目以上の食糧を食べる。
 親は我が子のために必死で食糧を集めるため、当然ゆっくりレティに差し出される食糧は減ってしまう。
 ゆっくりレティにとってプチゆっくりは「ゆっくりできなくなるもの」以外の何ものでもないのだ。
「むきゅぅ、おもいだしたみたいね。あかちゃんができたらここからでていくか、れてぃにあかちゃんをさしだすかの
 どちらかしかせんたくしはないのよ。・・・ふたりともどうするの?」
 悲しそうな顔でゆっくりパチュリーはゆっくりレティの意思を伝える。
 2匹にとってこの場所は最高のゆっくりプレイスであり、ずっとここに住みたいと思っている。
 しかし、自分達の赤ちゃん達とゆっくりしたいとも思っている。
 この二つを天秤にかけ2匹は答えを導き出した。
 それは・・・。

「「れいむ(まりさ)たちはここでゆっくりするよ!」」

 2匹は自らがゆっくりする事を選んだ、そしてそれは同時にプチ達への死の宣告でもあった。
「「「「「ぴぎゃあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !れいみゅ(まりしゃ)たちをすてにゃいでえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」」」」」
 泣き叫ぶプチ達はゆっくりレティの口の中へ消えていき、口が閉ざされると泣き声は聞こえなくなった。
「ごめんね、ごめんね、れいむ(まりさ)がすっきりしたせいで・・・。」
 2匹は泣きながら食べられた赤ちゃん達にひたすら謝り続けるのであった。 


 -晩夏-

 夏の暑さも和らぎ、ゆっくり達にとって過ごしやすくなる季節。
 しかし、この季節は時としてゆっくり達に悲劇をもたらす事もある。

 とあるゆっくり魔理沙の一家では・・・。
「ゆゆ!?あめがふってきたよ!いそいでおかあさんのぼうしのしたにかくれてね!」
「おかーしゃん、あめさんはいつやむの?」
「これぇじゃゆっくりできにゃいよ・・・。」
 急な夕立で辺りに雨をしのげそうな場所がなかったため、お母さん魔理沙は仕方なく自分の帽子の下に子供達を避
 難させる。
「ゆぅぅぅぅぅ・・・なかなかやまないね・・・。」
「あめしゃんゆっきゅりしすぎだよ!」
「ゆっきゅりしないではやくやんじぇね!」
 なかなかやまない雨に子供達はストレスが溜まり、ゆっくりできなくなっていた。
 そして、お母さん魔理沙の体に変化がおとずれる。
「ゆゆ!?うごけないよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !まりさのからだがあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !」
「おかーしゃんたちゅけち ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」
「とけちゃうよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !」 
 いくら川を渡るのに使えるほどの耐水性の帽子でも体を雨から完全に守る事はできない。
 ゆっくり魔理沙の一家は強い雨に打たれどんどん溶けていく。
「も・とゆ・・り・・かっ・・・・・。」

 一方ゆっくりレティの群れでは・・・。
 この時期突然の雨が降りやすい事をゆっくりパチュリーは知っていた。
 そのため、曇ってきたらすぐにゆっくりレティの下へ戻るように指示されており、通常主達は皆無事にゆっくりレテ
 ィの口の中へ避難していた。
「むきゅーみんなからだはだいじょうぶ?」
「ぱちゅりーとれてぃのおかげでたすかったよ!」
「まりさのからだはだいじょうぶだよ!」
「わかるよーからだがとけてないかしんぱいしてくれてるんだねー!」
「すこしからだがやわらかくなったけどだいじょうぶみょん!」
 突然の夕立など気にもしないゆっくりレティは雨がやむのを寝て待っていた。

 30分後、先ほどの雨が嘘であったかのように太陽が光り輝いていた。
 ゆっくり魔理沙一家のいた場所には3つの帽子とデロデロになった皮が黒く濁った水溜りに浮いていた。
 ゆっくりレティの群れでは通常種達が再び食糧を探すためにゆっくりレティの口から勢いよく飛び出していった。


 夕立以外にもこの時期はゆっくり達にある脅威が襲い掛かる。
「ゆゆ!おひさまがゆっくりしてないよ!」
 ゆっくり魔理沙はいつものように食糧を集めゆっくり過ごしていた。
 この季節、日が沈む速度は日に日に早くなっているため、夜になる前に巣に戻ることが出来ないゆっくりが現れだす。
 天気が良かったため遠出していたゆっくり魔理沙はもうすぐ日が沈むと言うのに群れからだいぶ離れた位置にいた。
「いそがないとゆっくりできなくなっちゃうよ!」
 ゆっくり魔理沙は急いで群れの所まで戻ろうとするが、元いた場所から半分の距離も進まない場所で日が完全に沈ん
 でしまった。
「いやあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!くらいのはいやだあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」
 辺りが暗闇に包まれると、ゆっくり魔理沙は恐怖に耐えられずに発狂しだしてしまった。
 しかしそれがいけなかった・・・。

 バッサ、バッサ、バッサ

「がおー!たべちゃうぞー!」
 ゆっくり魔理沙の悲鳴が捕食種ゆっくりれみりゃを呼び寄せてしまったのだ。
 暗闇の中でも遠くが見通せるゆっくりれみりゃはすぐに見つけたゆっくり魔理沙目掛けて襲い掛かる。
 そして、ゆっくりれみりゃがかなり接近したところでようやくゆっくり魔理沙は自らに迫る危機に気づいた。
「れ、れみりゃ!」
 時既に遅し、ゆっくり魔理沙の運命は既に決まったように見えた。
 しかし・・・!

『ゆっくりくろまく~』

「うあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !」
 牙がゆっくり魔理沙の頬に突き刺さる直前、ゆっくりれみりゃにゆっくりレティの舌が巻きつけられた。
 そして悲鳴を上げながらゆっくりれみりゃはゆっくりレティの口の中へ消えていった。
 そしてゆっくりレティの口の中からは群れの通常種たちが続々と飛び出してゆっくり魔理沙を取り囲む。
「むきゅー!まりさだいじょうぶ?」
「まりさ!しっかりして!」
「わかるよーこわかったんだねー。」
「もうだいじょうぶみょん!」
 あまりの出来事に放心状態のゆっくり魔理沙であったが、次第に状況を理解し・・・。
「うわあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ん!ごわがっだよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !」
 張り詰めていた精神の糸が緩んだゆっくり魔理沙は安心感から泣き出してしまった。

「ありがとう、まりさはもうだいじょうぶだよ。」
 ゆっくり魔理沙は落ち着きを取り戻していた。
「むきゅ、れてぃにもおれいをいいなさいよ、わたしたちをくちにいれてまりさをさがしにきてくれたんだから。」
「ゆ!?そうだったのれてぃありがとう!」
『ゆっくり~♪』
 ゆっくりレティは滅多に食べられない肉まんを食べる事ができ、とてもご機嫌であった。


 -秋-

 秋、それは様々な花が咲き、果実が生じ、多年生の生物は冬を越す準備を始める実りの季節である。
 その寿命が極端に短い(様々な要因で潰されるため)ゆっくり達も越冬のために巣に食糧の貯蔵を始めだす。
『ゆっ!ゆっ!ゆっ~!』
 ゆっくりレティは食糧の貯蔵場所の拡張のため、舌で巣穴の拡張工事を行っていた。
 通常種による越冬のための巣穴の作製は数週間かかるが、ゆっくりレティはもともと自分の生まれた巣穴が越冬用で
 あり、さらにその巨体のおかげで拡張工事は数日のうちに終わった。
『ゆっくり~!』
「むっきゅー!すごいわれてぃ!」
「うわぁ、すごくひろいね!」
「まりさたちのりーだーはやっぱりすごいね!」
「わかるよーゆっくりできるいえなんだねー!」
「すごいみょん!すごいみょん!」
 群れの通常種達はゆっくりレティを褒め称えた。
 そして越冬の食糧確保のため、本格的に活動を始める。

「ねぇまりさ、このきのこはたべられるの?」
「だめだよれいむ!そのきのこをたべるとゆっくりできなくなっちゃうよ!」

「みょんたちはおちばをあつめるみょん!」
「わかるよーべっどにするんだねー!」

「むきゅー、ちょうきかんほぞんできるしょくりょうはこっち、いたみやすいしょくりょうはこっちよ。」

『ゆ~!』
 この季節になると普段寝てばかりいるゆっくりレティも越冬のための食糧の貯蔵作業に加わる。
 長い舌を使って通常種達では届かない位置に実っている木の実を次々と頬に貯め込んでいく。
 ゆっくりレティの群れは順調に越冬の準備を進めていった。


 -晩秋-

 少しずつ寒さが増し、豊富だった食糧も少なくなり、木枯らしが吹き荒れる季節。
 この季節になると外で活動するゆっくりの数が減少を始める。
 そして、越冬に向けての準備もいよいよ大詰めとなる。

 とあるゆっくり霊夢の一家では・・・。
「みんな、あしたすのいりぐちをふさぐからきょうはおそとでおもいっきりあそぼうね!」
「「「おしょとであしょぶよ!」」」
 このゆっくり霊夢の一家には片親となるゆっくりがいない。
 仲の良かったゆっくり魔理沙と越冬の準備をしている最中(さなか)、豊富に食糧を蓄える事ができた安心感から成
 体でもないのに「すっきり」してしまったのだ。
 ゆっくり霊夢が我に返った時には時既に遅し、目の前でゆっくり魔理沙が黒く朽ち果て、3つの実を実らせていた。
 自らの犯した過ちを後悔したが、ゆっくり魔理沙の忘れ形見であるプチ魔理沙達に心の傷は癒されていった。
 食糧も「すっきり」する前に十分に集めていたため、無事に越冬の準備を終わらす事ができた。
「みんなあんまりとおくにいっちゃだめだよ!」
「「「わかったよおかーしゃん。」」」
 プチ魔理沙達は無邪気にはしゃいで追いかけっこをして遊んでいる。
 その姿を見てお母さん霊夢は越冬中の巣の中での幸せな生活を思い描いていた。
 しかし知識のなかったお母さん霊夢に悲劇が襲い掛かる。

 びゅー!びゅーー!

 突如冷たくとても強い風が吹き荒れた。・・・木枯らしである。
 成体ではないがそれなりに体が大きいお母さん霊夢は、その場で体勢を崩してしまった。
「ゆ!?れいむのあかちゃんたちは!」
 お母さん霊夢でさえ、体勢を崩すほどの木枯らしである。
 当然子供達は・・・。
「うわぁ~♪おそらをとんでるよ~♪」
「おか~しゃ~ん♪」
「まりしゃたちおそらをとんでるよ~♪」
 プチ達は風で飛ばされ、自分達がその後どうなるかも知らずに無邪気にはしゃいでいた。
「あ、あ゛、あ゛がぢ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ん!!!」 
 お母さん霊夢は顔を青ざめて絶叫した。
「ど~したのおか~びぎゅ!」
 1匹は木に勢いよく激突して潰れた。
「ぴぎゃあ ぁ ぁ ぁ ぁ びゅ!」
 1匹は先に潰れたプチ魔理沙を見て絶叫しながら木の枝に突き刺さりあの世へ旅立った。
「おかあしゃあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ん、たしゅげ!」
 1匹はそのまま地面へ激突し、物言わぬ潰れた饅頭となった。
「・・・・・。」
 辺りには木枯らしの吹き荒れる音だけが響き渡っていた。
 一度にすべての子供を失ってしまったお母さん霊夢はその現実を認めたくないのか呆然としていた。
 しかし、一度潰れた饅頭が帰ってくる事はなく、次第に現実を理解し始め・・・。
「・・・あ、あ、あ゛、あ゛がぢぁんがあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !ゆぴべぴゅびゃあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」
 大好きだったゆっくり魔理沙の死、そしてそのすべての子供の死。
 餡子脳で受け止められるキャパシティを超えてしまったお母さん霊夢の精神はボロボロになってしまった。
 お母さん霊夢の目からは光が消え、辺りが暗くなっても笑い続けていた。
「ゆふふふふふふふふふふ!ゆはははははははははは・・・・・!」
「うー!ゆっくりしね!」
 次の日の朝、お母さん霊夢のいた場所には赤いリボンがぽつんと落ちていた。


 一方ゆっくりレティの群れでは・・・。
『あしたからゆっくりするよ~。』
「むきゅー、しょくりょうあつめはきょうがさいごよ。ゆうがたにはすのいりぐちをふすぐわよ!」
「「「「ゆっくりりかいしたよ!(よー!)(みょん!)」」」」
 この時期食糧はとなる木の実や草花はほとんど無くなってしまっている為、通常種達は自らが冬の間ベッドにする落
 ち葉を集め巣穴に持ち帰った。
 食糧が取れないとわかっているゆっくりレティは巣穴の奥でスヤスヤと眠っている。
 未の刻から申の刻へ移り変わる頃、帽子いっぱいに落ち葉を入れたゆっくり魔理沙が巣穴に戻り、群れの一員がすべ
 てそろった。
「むきゅ、いまからおくにいるれてぃをよんですのいりぐちをふさいでもらうわよ!」
「「「「ゆっくりり・・・。」」」

「「「あら、なかなかとかいてきなすあなね。」」」

 突如3匹のゆっくりアリスが巣穴に入り込んできた。
 3匹は落ち葉を集めるゆっくり魔理沙を偶然発見し、こっそりと跡をつけていたのだ。
「ゆ!ここはまりさたちのおうちだよ!ありすはでていってね!」
 ゆっくり魔理沙は体を膨らませて3匹の侵入者を威嚇する。
 ゆっくり霊夢、ちぇん、みょんも警戒態勢を取る。
「あら、まりさったらはずかしがっちゃってかわいいんだから。」
「なかなかひろいはうすね、とかいはのありすたちがふゆのあいだつかってあげるわ。」
「どうしてもっていうならあなたたちをるーむめいとにしてあげてもいいわよ。」
 この巣穴の主が誰なのかも知らず傍若無人に振舞う3匹であった。
 しかし、当然その行為を後悔することになる。
「「「ふくれたまりさもかわいいわ!すっき・・・あ゛っ!あ゛っ!あ゛っ!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」」」
 奥から現れたゆっくりレティの姿を見て3匹は悲鳴を上げ硬直した。
「れてぃ、あのありすがしんにゅうしゃよ!」
 3匹が進入してすぐゆっくりパチュリーはゆっくりレティに助けを求めに行っていたのだ。
「「「あ、ありすがわるかったわ!す、すぐにここからでていき・・・。」」」

『ゆっくりくろまく~!』

 逃げようとする3匹にゆっくりレティは容赦なく舌を巻きつける。
「おねがいじまず!だずげでえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」
「いやあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !ごべんなざい ぃ ぃ ぃ ぃ ぃ !」
「ありずはいながものなんでず!ゆるじでえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」
 必死に助けを請う3匹であったが、聞き入れられるはずもなくゆっくりレティの口の中へ消えていった。
 空腹でないゆっくりレティに捕まったこの3匹は、長期間頬に蓄えられ地獄の苦しみを味わうことになるのであった。
「「「「「れてぃ、たすけてくれてありがとう!(とー!、とうみょん!)」」」」」
『ゆっくり~♪』
 お礼を言われた当のゆっくりレティは、越冬を前に栄養豊富な3匹のカスタード饅頭を得ることができ、ご機嫌であ
 った。
 その後、ゆっくりレティによって通常種の巣穴と比べ類を見ないほど頑丈に入り口が塞がれ、本格的な越冬が始まっ
 た。




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最終更新:2022年05月03日 15:57