※虐めというか自滅

鼻血


「うおっ!?」
「せんせー!!タケちゃんが鼻血だしてるー!!」

一同騒然としタケちゃんと呼ばれた少年の周りに集まる。
先生、慧音も少年の元へ寄りその頬に手をあてる。

「大丈夫か?・・・ふむ、どうやら暑気にやられたのかな。」

熱を帯びているのは何も暑さのせいだけではないのだが、顔を赤くした少年は照れくさそうに顔を伏せるだけなのであった。
授業は一先ず中断。慧音は少年に連れ添い手洗い場へ、残された生徒達も一様に彼の心配をしているのであった。
そんな様子を窓から覗く影一つ。

「ゆっふーん・・・いいものみたよ!!」

その正体はゆっくりれいむ、大方寺子屋の生徒達に菓子の一つでもたかりに来ていたのだろうか。
彼女は一言呟くとくるりと踵を返し、森へと向かってぽよぽよと跳ね出したのであった。


「ずーり、ずーり・・・」

数分後、そこには顔面を木の幹に擦り付ける饅頭の姿があった。
痛みからかその目元に薄っすらと涙を浮かべ、しかしその反面口元はだらしなく歪み涎をじゅるじゅると垂れ流している。

「おきゃーちゃん、あのおねーちゃん にゃにちちぇりゅの?」
「こら!! めをあわせちゃいけないよ!! ゆっくりできなくなるよ!!」

側を通るゆっくり達もこの異様さに近寄りがたいものがあるらしく、餡子脳な彼女達に似つかわしくなく声も掛けずそそくさとその場を
後にするのであった。一方のれいむは悪態を突かれてもどこ吹く風やら、すっかり自身の頭の良さに酔いしれているのであった。

彼女の計画はこうである

1.鼻血出る
2.優しくされる
3.スイーツ(餡)

余りにも完璧すぎる計画。汚物をみるような目をしてるド饅頭共め、れいむに尽くすまで精々ゆっくりしていってね!!

そうしてれいむの打ち込みは辺りが暗くなるまで続いた。それはもう凄まじいもので、木の皮がずる剥けになる程であった。
だが目的の鼻血は出ない。息をぜいぜい切らしながられいむはあることに気付いた。

「ゆゆ!? れいむにはおはながついてないよ!!?」

鼻が無いのに鼻血が出るはずも無い。もっとも血肉すら通ってないのだが。

「ぷ、ぷ、ぷ、ぷぴー!!!」

れいむの怒りが有頂天、真っ赤になった体内では餡子の温度がマッハである。
だがその思いが通じたのか、次の瞬間れいむの顔を一本の黒い筋が流れた。

「・・・ゆ? でたよ!! ついにやったよ!!」

体温が上がり緩んだ餡子が念願の鼻血?を流したのである。
こうなってしまえばこっちのもんだ。まずは手始めに冷たい目を向けたあの一家から見舞い品を巻き上げてやる。
その後は群れ一番カッコイイまりさに看病させよう。そしていい感じになった2人は次第に・・・。

「ゆっふっふ・・・ゆっはっは・・・ゆぁーっはっはぁ!!」

己が野望の達成に悪い笑いの三段活用を決める、しかしその時事件は起きた。

「ゆぁーっはっはっはっは『ブッパァァン』あ?」

顔一面に広がる生温い感覚と全身に広がっていく悪寒。
散々傷付けられた顔の皮膚は限界に達し、れいむが大きく仰け反った際についには決壊したのだ。
顔面からぬるぬると流れ出す餡子、その量は凄まじくもはや痛みを感じる余裕すら無い。

「うびいいいぃぃぃぃ!!?」

顔面を真っ黒にしながられいむは叫ぶ。手足の無いその体では傷を押さえることさえ叶わない。

「ゆゆ!?どうしたの!?」
「いったいなんのさわぎなの!?」

夜の戸張が降りているとはいえ、ここまでの大騒ぎがあっては自ずとゆっくり達は顔を集める。
そうして集まった先では地面に突っ伏す声の主の姿があった。

「どうしたの!? しっかりしてね!!」
「いったいなにがあったの!? れみりゃでもでたの!?」

皆が見つめる中、ゆっくりゆっくりとれいむは面を上げる。
固唾を呑んで見つめるゆっくり達、そして次の瞬間激震が走った。

「ばぶべべえええぇぇぇぇぇ!!!!!」
「「「ゆっぎゃあああああああああ!!!!???」」」

そこにあった顔はもはやゆっくりではなかった。
顔の中心から放射状に大きく裂けた皮膚、辺り一面に飛び散る餡子。
全身皺だらけで大きく歪み、大きく飛び出した2つの目玉はギョロギョロと独立した生物の如く忙しなく動く。
ゆっくりどころか人間が見たってショック死しかねないレベルである。

「ぼべばいいぃぃぃ、ばぁぶべぇべえええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

ぐじゅりぐじゅりと音を立てにじり寄るれいむ。本人は助けを求めているだけなのだが端から見たその姿は獲物を見つけた悪魔である。
歪んだ口の隙間から言葉にならない何かをひり出しながら必死に命乞いをする。だが掛けられた言葉は期待したものではなかった。

「こっちこないでええぇぇぇぇ!!?」
「まりさはおいしくないからたべないでねええええぇぇぇ!!!」

違う、そうじゃない!!れいむはただ優しくされたいだけなのに!!
れいむがこんな目に会ってるのに何言ってるの!?馬鹿なの!?死ぬの!?さっさと手当てしろおおおおおお!!!

「ぅぼあああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「むっきゃー!!!?? えれえれえれ・・・・」
「ぱちゅりー!!? おまえ、よくもぱちゅりーを!!!」

辺りを揺さぶるれいむの雄叫び、これに当てられついには1匹のぱちゅりーがショックの余り嘔吐しはじめた。
これに激昂したのはあの群れ一番カッコイイまりさである。彼女は大きくその身を屈め

「ゆらぁ!!!」
「ぼばっ!!!??」

全身をバネにした渾身の一撃をれいむの叩き込んだ。
その衝撃で間欠泉のように噴出す餡子。だがまだまだ悲劇は終わらない。

「ゆゆ!! こいつよわいよ!! みにくいだけでぜんぜんたいしたことないよ!!」

このまりさの一声で今まで怯えていたゆっくり達が一斉に動き出したのだ。

「かおだけなんだねー!! わかる、わかるよー!!」
ぼべっ
「このいなかもの!! さっさとこきょうにかえりなさい!!」
うびっ
「なんというみにくさ、おおきたないきたない」
「「「おお、ばっちぃばっちぃ」」」
ぶびゃぁっ

数分後、群れの皆にリンチを食らったれいむの命は風前の灯であった。
思い思いの制裁を加えたゆっくり達は、唾を吐き捨てながら今後の始末について相談しはじめた。
そんな折、天から救いの神が現れた。

「うっうー☆」
「「「れみりゃだあああああああ!!!」」」

さっきまでの威勢も何のその、蜘蛛の子の如くその身を散らすゆっくり達。後には傷ついたれいむだけが残された。

「うー、きったないまんじゅうなんだど~。」

そう言ってうつ伏せの饅頭を掴み上げるれみりゃ。面を上げたその顔はさっきよりも一層ひどいものになっていた。

「ばぶべべぶべべばびばぼおおおおおおおお!!!」
「うっぎゃああああああ!!!?? ざぐやああああああ!!!!!」

餡子をブビブビと噴出しながら礼を告げるれいむ。
だがれみりゃは思いも寄らぬびっくりフェイスに肝を潰し、れいむを投げ捨てると泣きながら脱兎の如く逃げ出したのであった。
こうして幸運にも命を繋いだれいむは、痛む体に鞭打ちじゅーりじゅーりと黒い筋を残し我が家へと向かったのであった。



1週間後

そこには元気に窓にへばりつくれいむの姿があった。

「リョウタ、鞄持ってやるよ。」
「リョウ!! 俺が雑巾がけしてやるからお前箒頼むわ!!」

リョウタと呼ばれる少年、その右腕は白い大きな三角巾で吊るされていた。

「ゆっふーん・・・いいものみたよ!!」

そうしてれいむは森に向かって跳ねていったのであった。


終わり

作者・ムクドリ(´-ω-`)の人


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最終更新:2022年05月03日 21:45