俺は朝から心が躍っていた
何故なら、苦労して作っていた桃がついに実り、熟し、収穫する日がやってきたからだ

俺は桃をどうしようかと、朝食の時間は期待で胸がいっぱいだった
はたから見ればニヤニヤしながら食事をしている変な人である。

朝食を食べ終わると、食器を洗い場に置き、テーブルを拭いた後、農道具をもって家を出た。
場所は家から少し行った所の自作の果樹園である
俺は自転車の籠に収穫用の道具を放り込み、自転車に飛び乗り果樹園へ向かった
いい天気なので風が気持ちいい、今日はいい日になると思った

果樹園に着くと、自転車を止め、収穫用の道具を手に取って果樹園に入っていった
その瞬間目の前にはおいしそうな桃がこれでもかというほど実っていた

俺は一番手前の木に近づき、このままかじり付きたくなるような桃をもぎ取った
「このまま食べてもいいんじゃないか」という思いを振り切り、籠に1つ目を入れた

何せ、3年前からずっと丹精込めて育ててきたんだ、これほど嬉しいことはないだろう
桃栗3年柿8年…俺はこの3年間をがんばって作ったんだ!

人生で一度しかないんじゃないかというほど笑顔になりながら次々と桃をもぎ取っていく
8本目くらいの桃の木に取り掛かったときだろうか

かすかに奥から声が聞こえてきた、誰かいるのか?と思い籠をもったまま声のした方へ歩いていく
声がはっきりとしたものになってきた、少し走り気味で向かう。
丁度果樹園の終わりの方に着くと、
そこには数匹の霊夢ゆっくりと、魔理沙ゆっくり(以下紅白と黒白)が桃をとろうと「ゆっくり!ゆっくり!」とぴょんぴょんはねていた
俺はとりあえず優しく声をかけてみた
「やあ」
俺の声に驚いたのか、紅白と黒白は「ゆっ?!」と言いこちらを向いた
「おじさんだれ!?ゆっくりできるひと?!」
紅白は間髪いれずに喋ってきた、おじさんという言葉が少し感に障ったが気にしないことにした

「僕はここの果樹園の人だよ、ここで何をやってるのかな?」
俺は続けて優しい声で喋る
「この桃をゆっくりとろうとしてるんだよ!」
俺はその言葉にピクッとしたが、とりあえず一個ずつあげて帰ってもらうと思った
「ふーん、そーなのかー、でもね、これは僕のなんだ」
紅白と黒白は?といった感じで俺を見つめている
「だから勝手に取っちゃだめだよ、これあげるからここから出て行ってくれないかな?」
俺は二つの桃を籠から取り出し、二匹の前に置いた、無論、少し痛んでいるものだ

「一人一個だよ」
当たり前のことだが、知能の低いゆっくりのことだ、喧嘩しないよう一応言った
紅白と黒白は俺が言ったとおり一個ずつ口に咥えた
「「おじひゃんあひがひゅう!」」
と二人は口を合わせていうと、俺に背を向けからぴょんぴょんと飛んで帰っていった
俺は「そういえばあいつらはどこから来たんだろう?」と思ったが、気にしないことにし、
籠を持ち直すと、再び収穫を再開した。

~~~~~~~~~~

丁度昼時になったが、収穫はまだ半分しか済んでいなかった
「流石に…多いな、まぁそれだけ嬉しいが」
土地は祖父の遺産のひとつであり、俺が果樹園に改造しただけだ。
俺は続きは午後にしようと思い、昼飯を食べようと自転車に跨った
籠は持ちきれないほどになったので果樹園においていくことにした。

昼飯は博霊神社で食べることにした、霊夢はいつもどおり神社の前を箒でサッサッと無機質に掃いていた
霊夢が俺に気づき、俺の顔をチラッと見たあと、変な事をいってきた
「…顔の相が悪い、悪いことが起こるかもしれないわね」
「悪い顔は元からだ、縁側借りるぞ」

俺はそれに返答したあと、答えも聞かずに縁側に向かい、座り込んだ
朝は急いで出たかったからか簡素に弁当は数個のおにぎりである
もうすっかり紅白と黒白のことは忘れていた


おにぎりを食べ終わると、おにぎりを包んでいた新聞紙をくしゃっと丸めた
丸めた新聞紙をどうしようか少し迷った後、ポケットに突っ込んだ

博霊神社を出る際に霊夢に「お賽銭箱はあちr「わかりましたよ」
言われる前に小銭を入れてやった。
俺がお賽銭を入れたのを確認すると、霊夢はまた無機質に箒掃きを再開した

~~~~~~~~

果樹園に帰ってくると、そこは地獄の光景になっていた
木に上り、桃を落としているゆっくりと、落ちた桃にかぶりついているゆっくり
果樹園の入り口近くにおいてあった数個の籠を倒し中の果実を取り出して食べているゆっくり
「お、おい…」
俺は思わず声が漏れた
それに一人の籠の桃を食べていたゆっくりが答えた
「おじさんだーれ?!ゆっくりできるひと?ゆっくりたべていってね!」
桃を転がしてくるゆっくり
俺は思わずそのゆっくりを右足を踏みつぶそうとしたが、思いとどまった

3年間の思いが一気に打ち砕かれ、俺は何もできずその場に両膝をついた
放心状態で桃にかじりつくゆっくりを見つめていた

そこにもう一匹のゆっくりがやってきた、どうやら朝に来たゆっくりの黒白の奴らしい
「おじさん!みんなをつれてきてゆっくりしにきたよ!」
こいつには「勝手にとっちゃだめだよ」という意味が理解できなかったのか…
ふつふつと業火のような怒りが沸いてきた

そしてその怒りは次の黒白の発言で爆発することになった
「みんなでそうだんしたけっか、ここはみんなのいえになったよ!おじさんはでていってね!」
と、黒白は俺に体当たりをしてきた。
俺の中の何かが切れた音がした

体当たりをしてきた黒白をわしづかみ、口で体にかじり付き、そのまま噛み千切った
「ゆ゛っ゛く゛゛いぃぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!?!」
何をされたか一瞬理解できなかった黒白は叫ぶことしかできなかった

他のゆっくり達も黒白の声に気づいたのか、いっせいにこちらを向いた
ゆっくり達は何を思ったのか、こちらにぴょんぴょんはねて近づいてきた
「ゆっくりやめていってね!」「おじさんやめて!」「ゆっくりやめて!」
と思い思いの声を俺に放った
食い千切られた黒白は俺の手でプルプルと震えていた
どうやら絶命したらしい、こんなに脆かったのか…
絶命した黒白を地面に落とすと、ゆっくり達が寄添ってきた
「ゆっくり大丈夫?!」「おじさんひどい!ゆっくりしていってよ!」
と黒白をかばっているような隊形にゆっくり達は集まってきた
「おじさんなんかゆっくりやっつけちゃえ!」
一人のゆっくりが言った
その言葉を聞いたゆっくり達は俺に全員で体当たりをしてきた
これだけ入れば人間にも勝てると思ったんだろうか。
俺はうざったいので足にまとわりついていたゆっくり達を思いっきり踏み潰した

餡が飛び散り、他のゆっくり達にかかる。
ゆっくり達は自分の敵わない相手だとわかると、しきりに震えだし、少しずつ後ずさりしていった
俺は一匹も逃がさない。

籠を何個か持つと、逃げようとするゆっくり達を一匹ずつ籠に放り込んでいった
帽子が邪魔な黒白もいたので、帽子を取り捨て、足で踏み躙った

籠は大量に用意してあったので、すぐに全員のゆっくりを捕獲した
どうしても逃げ出そうとする奴がいるので、農業用の大きい袋2つに全匹を纏めて口を縛った

1つ目の袋をどうしようかと、2つ目の袋を足で踏みつけながら考えた
「ゆっくり加工場か…そういうもあるな…1つはそれでいいか」
俺は1つ目の袋に向けて話しかけた
「おめでとう、君達はゆっくり加工場に送ることになったよ、よかったね」
すると中のゆっくり達は絶望の顔を浮かべ始めた
「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!ゆ゛っ゛くり゛じだい゛よ゛お゛お゛お゛お゛お!!」
「お゛う゛ち゛か゛え゛る゛う゛う゛う゛う゛!!」
全員が悲鳴のような叫びをあげはじめた、うるさいのでさっさと倉庫にしまった。持ってくのは明日でいいや

俺は2つ目の袋の方へ行き、袋にむけて話しかけた
「君達はラッキーだね、チャンスをあげるよ、他の友達のゆっくりを食べて、最後の一人になったら助けてあげるよ」
いつのまにか俺は不気味な笑いが顔に浮かんでいた
ゆっくり達は最初は戸惑ったり、泣いたりしていたが、一人の黒白のゆっくりが
「ゆっくりしんでね!」と言い。一人の紅白にかじりついた
紅白は体の一部がかじりとられ、「う゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ!」と悲痛な叫び声をあげた
それに続いて他のゆっくり達も、共食いをはじめた。
最初に仲間にかじりついた黒白は最初の標的にされ、すぐにただの餡子の粕になった
黒白が食べられたあとも、他のゆっくり達は共食いを続けた。

数が多かったせいか、8匹、6匹、4匹、2匹と着々とゆっくり達は減っていった
最後の二匹は、黒白のゆっくりが先手をとり、もう1匹のゆっくりは背中からかじられ、あとは食べられるだけだった
黒白が最後の一匹を食べ終わると、こちらを見て言った
「おじさん!ゆっくり殺したよ!はやくここからだしてね!」
俺は無言で袋の口をあけ、餡子だらけの黒白を取り出した
「それじゃあ、助けてあげるよ、ほらっ!」
俺は森の方へ黒白を思いっきり投げた、
「ゆ゛う゛う゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛う゛っ゛?!」
肩に自信はあるだけあって、黒白は放射線を描いて森に落ちた。
あの様子じゃつぶれただろうな、と思って俺は森に背を向けた

1つ目の袋の口を結んで、ゴミ箱に捨てると。
俺は果樹園にとぼとぼと入っていった
かじりかけの桃、綺麗だがとても食えそうにない桃。
俺は残っているものはないかと、果樹園の奥へと進んでいった

すると、一匹の紅白ゆっくりが虫の息で倒れてるじゃないか
生き残った奴がいたのか!と思い、駆け寄ると、そこらじゅうにかじり傷があった
紅白は俺を見ると何か喋り始めた
「ゆっ…おじ…さん…ゆっ…ゆっくり…おじさんのくだもの…まもれなっ…」
最後まで言い切れずに紅白は息を引き取った
さっきの光景を見て、ゆっくり種を皆殺しにしたいと思ったが、いいヤツもいるんだなということで少しはそれが和らいだ
俺は紅白を果樹園の隅に埋葬した。

そして桃は30個ちょいしか収穫できなかった。明日は掃除だ…

俺は少しの桃を籠にいれ、自転車に乗って帰路についた

少し行くと、博霊神社への石階段が横手に見えたので、自転車を少し止め、
霊夢に少しあげてくるかと思った
俺は自転車を止めて博霊神社の石階段を上った。


ついでに、来年は豊作に、こんなことにならないようにと願い事もするか、とも思い

‐ fin -


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最終更新:2020年03月27日 19:02