(この話は、「ゆっくりボールのあそびかた」に、私アイアンマンが勝手に続編を書いたものです。原作者さん、ありがちょうね!)


■ゆっくりボールのあそびかた・勝手に後日談


 日暮れ後の森の中。大きめの巣の中で、ゆっくりの子供たちが輪になって、楽しそうに遊んでいる。
「ゆっくり!」
「ゆゆぅ、ゆっくり!
「ゆん! ゆっくち!」
 一声かけるたびに、ボールをポンッと押し戻す。円陣の向かいにいる子が、それを別の方向へ蹴る。
 人間で言う、蹴鞠(けまり)のような風景だ。
 使っているのは、茶色のぺらぺらしたものを巻きつけたボール。
 子ゆっくりと同じぐらいの大きさで、何が入っているのか、ポヨポヨして柔らかい。
「ゆっくりっ!」
「きたよ、ゆっく!」
 ポンッと蹴り戻し、ころころと当てる。すべすべしてとても転がしやすく、子供たちはとても気に入っていた。
「おちびちゃんたち、たのしんでね!」
「ゆっ! とってもおもしろいよ!」
「おかあさん、ゆっくりありがとうね!」
「ありがちょう! ゆむっ!」
 礼を言われて、ニコニコしながら見守る親まりさと親れいむ。
 この二匹は昼間、外で子供を一匹見失ってしまった。ずっと探し回っても見つからず、心配でぐったりしかけていた。
 だが、その代わりにというべきか、親切な人間のお兄さんにこんなボールをもらえた。
 子供たちの元気な様子を見ていると、ぐんぐん元気が回復するようだった。
 夫婦で見詰め合って、ささやく。
「ゆう、れいむ、きょうはみつからなったけど、あしたはおちびちゃんをみつけようね!」
「そうだね! ゆっくりみつけようね!」
 満ち足りた、幸せそのものの時間だった。
「さあ、そろそろおねむのじかんだよ!」
「ゆっくりねようね、おちびちゃん!」
「「「ゆっくりねんねしようね!」」」
 その日はボールを部屋の隅に置いて、寝についた。
 大きな母れいむと母まりさを中心に、家族がぴったりくっついて眠る。
「ゆぅ……ゆぅ……ゆふふ……」
「おかーちゃん……むにゃむにゃ……」
「ゆっくち!」
 やわらかなほっぺた同士をすりすりしあって眠るのは、最高のきもちよさ。
 とてもゆっくりできる夜を、家族はいつものように過ごした。
 コロリ、とボールがわずかに転がった。


 次の日も家族はいなくなったれいむを探したが、見つからなかった。
 その次の日も、次の日も。
「れいむのこどもがああぁぁぁ!」
「ばりざのこどもお゛お゛ぉ゛ぉ゛!」
 探している最中だけは悲しみ続けたが、悲しむことも続けられないのが、ゆっくりのゆっくりした性。
「まりさ……こんなにさがしてもみつからないよ……」
「しかたないよ、れいむ。おちびちゃんはどこかできっとゆっくりしているよ……」
 慰めあって、いつしか忘れていった。
 日一日と日時がすぎる。その間、子供たちは毎日、ボール蹴りを楽しんだ。
「ゆゆっく!」
「ゆっくりぃー!」
 こんなによく跳ねるボールは初めてで、みんなはとっても楽しんだ。
 毎日続けたせいでキック力も上がり、思い切りぼこんべこんと蹴れるようになった。
「ゆぅーと!」
 ポンッ! ごろごろごろごろ……バシッ!
 勢いよく壁にぶつけて、人間の遊びのまねをしたりした。
 しかし、そんなことが出来たのも、一週間ぐらいのこと。
 子供たちがうまくなるのと反対に、ボールは弾力を失ってきた。
 まるで中身が乾いてスカスカになってきたみたいに。
 八日目に、子供たちは両親に頼んだ。
「おかーさん、ぼーるがべこべこになっちゃったよぉ」
「ゆっくりなおしてね!」
 子供たちが囲んで持ってきたボールは、地面に接する辺りがべっこり潰れている。
 それを見た母れいむが、ピコンと電球をともして思いついた。
「ゆっ、それはくーきがぬけちゃったんだよ!」
「くうき?」
「そうだよ! にんげんのぼーるはくーきが入ってるって、ぱちゅりーからきいたことがあるよ! ゆっくりなおしてあげるね!」 
 そういうと、母れいむはボールはボールをころころと転がして、空気穴を探した。
 あった。一箇所だけ小さな穴がある。
 顔を近づけると、かすかにひゅうひゅうと空気が漏れるような音がした。
「ここからくうきをいれるんだよ! おちびちゃんたち、よくみててね!」
 そう言って、母れいむは空気穴だと思い込んだ場所に、口をつけた。
「いくよ、ゆぶうぅぅぅぅぅぅぅ……」
 自分の体の大きさの三分の一ほどのボールに、思い切り空気を吹き込んだ。
 ぎゅぅぅぅっ、とボールの中からまるで苦しがっているような声が聞こえるとともに、べこん、とへこみが元に戻った。
 子供たちがわっと浮き立つ。
「なおったよ、おかーしゃん!」
「おかーさん、すごーい!」
「おかあさんはとってもゆっくりできるおかあさんだね!」
 みなに誉められて、照れ照れと赤くなるゆっくりれいむ。
 それを見て、自分も威厳のあるところを見せたい、と思ったゆっくりまりさ。
「ゆっ、つぎはまりさがぷーっするぜ! ぱんぱんにしてやるぜ!」
「おとーしゃん、ゆっくりがんばってね!」
 こどもたちの声援を受けて、れいむと場所を変わるまりさ。
 空気穴に口をつけ、力いっぱい吹き込んだ。
「ゆぶぅぅぅぅぅ……!」
 ぎゅぅぅぅぅぅぅっ、と前より激しい音が聞こえたとともに、ボールの反対側で、むりっ! という音がした。
「ゆ?」
「ゆゆっ?」
 いぶかしがるまりさ。不思議がる子供たち。
 そのときボールの反対側で起こったのは、漏れだった。
 重なり合ったガムテープとガムテープの中に、わずかに重なりの薄い、隙間のようなところがあったのだ。
 そこだけは、他の部分よりもはるかに強度が弱かった。
 何しろ中身は饅頭だ。
 内部からそこに圧力が殺到した結果、隙間から白いものが「むりっ!」と持ち上がった。
 まるで、焼けて破裂する寸前のお餅のように。
「わぁい、にゃにかしろいものが、ふくらんできちゃよ!」
 無邪気に赤ゆっくりがぴょんと喜んだのもつかの間。
 その膨張部が、突然破裂した。
 パァン!
 空気の音とともに、乾きかけてパサパサになった餡子が噴出した。ビチャッ! ともろに顔に浴びて、赤ゆっくり悲鳴を上げる。
「ゆゆうっ! にゃにこれー、あまいよぉ!?」
 甘い?
 不思議におもった親まりさは、ハッと気づいて、ボールに目を落とした。
 この大きさ……どこかで見たことがあるような?
 そして、一週間転がされて半ば剥がれかけていたガムテープの端を口にくわえ、一気に引っ張った。

 ビリョビリョビリョビリョビリョリョリョ!

 くるくるとテープがほどけていくとともに、黒い髪、白っぽい肌、そして赤いリボンが現れた。まりさが空気穴と思っていたのは、お兄さんがたくみに残したれいむの口の一部だった!
「ゆげええええええええ!!? まっまっばりさのおちびぢゃああん!?」
「ゆわあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! れいむのおぢび゛ぢゃぁぁんぁんん!!」
「おねえぢゃぁぁんんん!?」
「ぎゅああああ!? ゆっぐぢできない゛い゛い゛!?」
 ぐるぐるビリョッ! とテープがはがれる同時に、その子の惨状が明らかになった。
 体は全身赤黒いアザだらけで、饅頭というよりモナカのようにパサパサに乾ききり、ひび割れている。
 そんな乾いた肌からガムテープを力いっぱいはがされたので、ボサボサに皮膚が剥がれている。
 ほっぺの肌が剥け、後頭部が髪の毛ごとごっそりはげて、まるで虫食い状態だ。
 それにくわえて、いま後頭部から大量の餡子を噴出してしまった。
 どうやらそれが致命傷になったらしく、白目になりかかった半眼で、「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」と痙攣している。もう数分ももたないだろう。
 まりさとれいむ一家は、あまりことに脳がパンクしかかっていた。
 おちびちゃんがどうしてここにいるんだろう?
 しんだんじゃなかったの?
 もしかして、ずうっとここにいたの?
 それじゃあ……自分たちが毎日蹴っていたのは……。
 え? え? あれ? それって、つまり……。
 れいむたち、まりさたちは、大事な娘の、姉妹のれいむを、一週間も飲まずくわずで蹴り続けて、……半殺しにしちゃったの……?
「ゆゆぐっ……ゆげええええええ!!!」
「おぢびちゃあん、ごべんねええ゛えげげげええええええ!!!」
「おっおっおねえぢゃあああんえ゛れえ゛れえ゛れえ゛れれれれれれ!!!」
「れいぶうぅぅぅぅ!!! おべええええぇぇぇぇぇ!!!」
 死にかけのれいむは囲んだ家族は、その子のぞっとするような苦しみを想像して、あっという間に嘔吐し始めた。
 餡子と餡子が交錯し、床にびたびたと盛り上がる。盛大な阿鼻叫喚だ。
 みるみる壊れていく家族の真ん中で、もはや目の焦点も合わないボールのれいむが、途切れ途切れにつぶやいた。
「もっと……ゆっくり……したかっ……ゆべぇっ!」
 開いた口から、パサパサの硬くなった餡子をぶぷっと吹いて、れいむは死んだ。
「ゆげえええええええ」「え゛ろえ゛ろえ゛ろえ゛ろえ゛ろ」
 悲痛なゲロの音が、巣の中に響き続け、やがてひとつずつ絶えていった。



アイアンマン
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最終更新:2022年05月18日 22:03