幸せなおちびちゃんが出てきて、最後までゆっくりできてます。

夢を見続けるゆっくりが出てきて、最後までゆっくりできてます。

虐待分少ないので脳内保管推奨の上にオチが読めまくります。



 夢見るれいむ

 れいむには夢があった。
 群れで一番でなくてもいい、ごく普通に、ごくありふれたゆっくりとして、幸せにゆっく
りしたいと言う夢があった。
 幼なじみのまりさと一緒に。とてもゆっくり出来るゆっくりで、黒くて大きいお帽子がと
ってもすてきで、いつも自分のことを大事にしてくれるまりさ。原っぱをかけまわって、一
緒にむーしゃむーしゃして、すーりすーりして、一緒にゆっくりして。
 まりさの作ったとてもゆっくり出来るおうちでふぁーすとちゅっちゅ。
 夜になったら、ろまんてっくな闇の中で……。
 秋の実りを蓄えて、冬の訪れを待つばかりの巣の中で、どんな子供達に育って欲しいか、
一緒に語らうのだ。
 まりさとの可愛い赤ちゃんが産まれ、それはそれはゆっくりできるすばらしい赤ちゃん
で。頭の上で、茎に繋がって次第に大きく成長していくおちびちゃんを、まりさはきっと
微笑ましく眺めるに違いない。だから、「とってもゆっくりしたおちびちゃん達だね」と
言って、ゆっくりとしよう。生まれる時も、とってもやんちゃで、少し危なっかしいのだ
けれど、それでも一生懸命生きようと、生まれようとする大切な命を、まりさは優しく受
けとめて上げるのだ。初めて「ゆっきゅりしていってにぇ!」と言われたら、まりさと一
緒に「ゆっくりしていってね!」と言ってあげたい。すーりすーりしてあげて、くすぐっ
たいと身をよじる赤ちゃんをぺーろぺーろしてあげたい。お腹がすいたと泣き出したら、
茎を柔らかくして食べさせてあげる。
 そして「しあわしぇー!」と生きる喜びにうちふるえる赤ちゃんを、まりさは微笑まし
く眺めるだろう。そんなまりさに、愛おしい思いを込めて、すーりすーりしたい。ゆっく
りが生きていくには楽しい事ばかりじゃないけれど、辛い事しかないけれど、でもだから
こそ、幸せを感じるゆっくりに育って欲しい。
 春になれば、まりさは狩りに出かけることが多くなる。おちびちゃんたちはきっと、悲
しくて泣き出してしまうだろう。でもまりさが沢山ごちそうを持って帰れば、みな尊敬の
目を向けるはずだ。可愛いおちびちゃん達。
 まりさは狩がおじょうずだけど、獲物が捕れない日もあるだろう。そんな時、まりさを
慰めてあげられる優しい子に育って欲しい。気落ちしているまりさの隣で、家族そろって
すーりすーりすれば、些細な悩みなんて吹き飛んでしまうだろう。
 ある木漏れ日の差す暖かい日に、一番上のおちびちゃんが、ゆっくり飛び跳ねることが
出来るようになるのだろう。まりさと一緒に微笑みながら、「すごくゆっくりできるね!」
と褒めて上げたい。他の妹たちも、みんな飛び跳ねようとして、うまく出来ないかもしれ
ないけれど、それでもみなが自慢のおちびちゃんだ。その日はみんなでひときわ高い声で、
「ゆっくりしていってね!」とお休みを言おう。
 食べられる虫さんやお花さんの見分け方を教える時、恐いれみりゃやれいぱーの話をす
る時、みんな一生懸命にお勉強をするに違いない。きっとみんなとてもゆっくり出来るゆ
っくりになるよ、と、子供が寝静まった後まりさに報告しよう。きっとまりさははにかみ
ながら、「だってまりさとれいむのじまんのおちびちゃんだからね!」と、静かにすーり
すーりしてくれるのだ。
 暖かさが増してきたら、みんなで広場に出かけよう。同じ幼なじみのぱちゅりーやあり
す達が、沢山の家族が思い思いにゆっくりしているだろう。彼女の子供達も、きっと凄く
ゆっくりしているのだろう。そうして子供達は、姉妹の他に遊び相手を見つけるのだ。
 中には、かけがえのない相手を見つける子もいるだろう。れいむとまりさのように。
 お日様の下で、ちょうちょさんを追って、あるいはかくれんぼをして、一生懸命遊んだ
ら、それもとてもゆっくり出来る為のお勉強だ。はしゃぎすぎて冒険に出てしまい、大人
達が探し回る事になるかもしれない。日が暮れるまで探し回って、ようやく川のほとりで
ゆんゆん泣いている子を、叱るでなしにすーりすーりしてやろう。そしてそれはお姉さん
のまりさで、その日に仲良くなったれいむなのだろう。少しくらいやんちゃなほうが、き
っと小さい頃のまりさに似ているのだ。
 おうちに帰って、まりさにそのことを話すと、やっぱり照れてしまうのだろう。そして
まりさとれいむが出会った、一番大切な思い出を、我が子のせがむままに話してやるのだ。
子供達は目を輝かせて、まりさは顔を真っ赤にして、それでもとてもゆっくりした夜が過
ごせるのだろう。
 だんだん暑くなってきて、食べるものがいっぱいに増えたら、おちびちゃんをつれて狩
りの練習。初めて本格的な狩りをするのだから、さすがの子供達も緊張気味なのだ。むし
さんはいるかな。ちょうちょさんは待っていてくれるかな。
 お姉さんが「まりさはきのこさんを取るよ!」と言うと、妹のれいむは「じゃあね、じ
ゃあれいむはちょうちょさん!」と、みんなで目標を言い合うのだ。

……ぇ、ぃ……

 森の中で、むしさんの声がすごいひびく。
 まりさの狩りの特訓は少し厳しくて、でも一生懸命な子供達は少しづつだけれどもコツ
を覚え始める。妹のれいむは日が傾くまでちょうちょさんを追い続けて、みんなが諦めよ
うと言いかけたその時、姉のまりさがぱっくりと取ってやるのだ。にっこりと微笑んで妹
にちょうちょさんを渡す姉のまりさは、妹達から尊敬の眼差しを受けて、照れてしまうに
違いない。
 本人は、夕日さんが赤いだけだよと言い張るのだけれど、そんな姉まりさに、まりさは
力強くすーりすーりをして上げるのだ。

……ぉぉ、……ねぇぇ……

 夜は風が強くなる。
 入り口が飛ばないように注意しなければならない。れみりゃやれいぱーに襲われてしま
うからだ。けれどまりさは自信満々に、「とても丈夫に作ったからだいじょうぶだよ! 
どんなゆっくりだって入ってこれないように、わなさんだって作ったからね!」と言って
いたので、何も心配いらない。
 とは言え、将来子供達が住まうおうちがそこまで丈夫であるとは限らないので、出来う
る限りのことを教えてやるのだ。恐い話を聞かされて、ゆっくり眠れなくなった子供達は、
きっと泣きながら、自分たちに寄り添ってくるだろう。すーりすーりしあっているうちに、
子供達は夢の中へと旅立つことになるだろう。気持ちよすぎて、自分でもうつらうつらと
してしまい、まりさは呆れながらも、ゆっくりお休みと言ってくれるのだ。
 明かりと言えばお月さまの青白い光だけで、星さんはあまり出ていない夜で、それは開
け放たれた入り口からよく見えて、獣のような顔をしたありすとれみりゃが入り込んでき
たのだ。そして、ああこれは夢だなと思って、先ほど子供達に恐い話を聞かせたから、自
分で夢を見てしまったのだと苦笑しつつ、だってまりさが自信満々で仕掛けた罠が破られ
るはずもないのだから。だずげででいぶううううとまりさは叫んでいるけど、なにかぬち
ょぬちょするものに絡め取られて身動きが取れなくなっている。
 子供達はと見回すと、いつの間にか居なくなっていて、みんな逃げられたんだねと、だ
から夢なのだと、もう一度安心したところで目が覚めるのだ。
 今日もゆっくり出来るのだと教えてくれる暖かい日差しの中で、まりさや子供達にうな
されていたことをからかわれて、でもとても安心してゆっくり出来るのだ。
 風が強かったのでその日は一日、おうちのなかでおゆうぎ。姉のまりさは踊りが上手。
真ん中のありすは踊りが上手。妹のれいむはお歌が上手で、みんなとてもゆっくりしてい
るよと褒めて上げるのだ。
 その日は大事に貯めてあったごちそうを出して、みんなでゆっくりご飯を食べるのだ。
綺麗なお花さんに、ぴかぴかしたむしさん。とてもゆっくり出来るご飯になって、子供達
もみんな満足するだろう。
 みんながお花さん綺麗だったねと言うと、まりさはつい口を滑らせて、れいむもお花さ
んみたいに綺麗だよと言ってしまうのだ。
 幼なじみだったまりさと自分がつがいになった切っ掛けは、綺麗なお花さんだったのだ。
きらきらと光る夕日を後ろに、まりさが綺麗なお花さんをプレゼントしてくれたことは、
今でも忘れられない思い出だった。「一緒に暮らそう、れいむ! ぜったい、ぜったい幸
せに、ゆっくりにしてあげるから!」
 いつも厳しいまりさがそう言ったのよ、と子供達に教えてやろう。子供達は頬を染めな
がらも、幸せを祝福してくれるだろう。その後は、昔見つけた宝物を子供達に自慢してや
るのだろう。まりさの一番の宝物はれいむだよ、と言って欲しいな。でも多分、プロポー
ズした時に見つけた綺麗な石さんを、まりさは取り出すのだろう。
 それは、一番の宝物はれいむだよ、そう言っているのと同じなのに。

……ぃぃ……ょぉぉ……

 夜はまだ、風が強い。
 恐い夢を見ないよう、まりさに寄り添って眠るだろう。すーりすーりとしてくるまりさ
に、とてもゆっくりしているわと言われて照れるのだろう。一緒にすっきりしまじょうね
と言われて久しぶりに高ぶってしまう。
 もうすぐ実りの秋だし、子供達に妹が出来るのもいいかもしれない。狩りもうまくなっ
たし、むしろ小さいあかちゃんが居れば冬ごもりの間、子供達はもっとゆっくり出来るか
も知れない。ああでもやっぱり。
 心地よい闇の中で、やはり夢を見た。

……どぼじ……げでぐでだ……

 あたま がおもい
 つたがはえて おちびちゃ ん
 ゆがんだ おかお
 だいぶくろいけど れいむはおちびちゃんと
 おちびちゃ ん、おちびちゃ……どこ?
 おちびちゃ……

……の……ちびちゃ……

 秋になると、みなで一斉に狩りをする。
 姉のまりさも真ん中のありすも妹のれいむも、みな狩りがお上手に育っているだろう。
でもやはり、まりさによく似た姉のまりさは、ぬきんでて狩りがお上手のはずだ。
自慢のかちゅーしゃに沢山の獲物をしまい込んで、得意げに跳ねるのだろう。群れに餌を
納めても、まだ十分に蓄えが出来るのだ。これなら妹達を増やしてもいいかもしれないね。
 広場で仲良くなった家族と一緒に、ゆっくりと狩りをする。いつも一緒なのは、やはり
ぱちゅりーとありすが番いになった、幼なじみの家族だ。四人で一緒に、小さい頃はよく
遊んでいた。大人になって、独り立ちして、家族を持ってからも、交流を続けていた。
 ずっと本当は、ありすはまりさが好きだったんじゃないかなあ、と思っていた。
 まりさにプロポーズされた後、ありすとぱちゅりーの二人には報告しに行ったのだ。そ
のとき、少しだけありすが悲しそうな表情をしたのだった。もしかしたら、自分たちのた
めに身を引いたのだろうか、と勘ぐってしまう。ありすはとても賢くて、友達思いだから。
でもすぐに笑顔になって、プロポーズのことを根堀り葉堀聞かれたのだ。二人して頬を染
めていると、とってもとかいはね、と褒められ、くすぐったかった。
 だからと言うわけじゃあないけれど、ありすとぱちゅりーはすっごくお似合いに見える。
とても賢い二人は、とてもゆっくりとしていて、だからいつも四人で悩みや夢を語り合っ
た。ありすはいつも引っ込み事案で、それはどうやら親がれいぱーだったことが原因だと、
知り合ってしばらく後で聞かされた。本人もいつれいぱーになってしまうか判らないと、
少し疲れた微笑みを浮かべていたけれど、悩みすぎだよ、とみんなで慰めた。ありすはあ
りすで、れいぱーじゃないから。でも、もしれいぱーになったら、ああ、歪んだお顔です
っきりーするんだろうなあ、と、とても不安になったことを覚えている。
 湖に行った時に、自分のお顔を歪めてみたけれど、とてもじゃないけれどれいぱーみた
いな表情は作れなかった。きっとゆっくり出来ないのだろうと、子供ながら身震いしたも
のだ。

 野いちごさん、ぶどうさん、かきさん。
 秋は実りがいっぱいだ。その分、可愛い子供達の笑顔も、いっぱいになる。おうちにの
中で、ささやかなパーティーを開く。子供達が生まれて、もう一年が過ぎるのだ。「みん
な、春になったらもう立派なゆっくりだよ!」そう告げるまりさの、誇らしさの中にうれ
しさと、巣立ちを控えた悲しさを感じ取れるのは、多分自分だけなのだ。
 子供達が寝静まってからまりさに寄り添うと、まりさは声を立てずに泣き出してしまう
のだろう。すーりすーりをして、ぺーろぺーろをして、次第に高ぶる心と体に身を任せて。
ああ、でも子供達が起きないかしら。呟いたからか、とかいはだから大丈夫だよ、と言う。
 闇の中で綺麗に光る金色の髪の毛をはーぐはーぐしながら、くすぐったがるまりさの頬
をすーりすーりしながら、自慢のお帽子をぺーろぺーろしながら、体中が幸せな感覚に包
まれる。空を飛んでいるよりも、湖を自由に泳いでいるよりも、もっと素敵な浮き上がる
感覚に、次第に意識が闇の中に飲み込まれて。
 ああまたあの夢が。ありすがまりさとれいむにのしかかっている夢。れいむを犯してい
るはずなのに、顔の一部分だけがまりさになっている。奇妙な夢だなあと思ったらすぐに
現実に引き戻される。
 お顔をすり合わせて、どんどん振動が強くなって、ゆ”っ、ゆ”っとうめき声なのか快
楽の叫びなのかが漏れ出でて、まりさはよだれを垂らしながらお顔を歪めて、二人一緒に
すっきりー!
 闇の中で、寝入ってしまったまりさの頭からツタが生えてくる。しゅるしゅると生える
何本ものツタに、新しい命が宿るのだ。まだ実は育っていないけれども、このおちびちゃ
んたちもゆっくり出来る子に育ってくれるのだろう。次第に黒ずんで行くまりさを眺めな
がらふと、幼なじみのありすを思い出した。
 彼女はれいぱーになることを恐れていた。幸せなすっきりー! が出来るのだろうか。
幸せに、ゆっくり出来ているのだろうか。気にしても仕方がないことだ、自分に出来るこ
とは何もないが、でも親友でいることは出来るのだ。
 幸せを噛み締めて、ゆっくり元気に育っている我が子を見回す。暗くて見えないが、子供
達はみな幸せそうに寝入っている。
 まりさに似て芯の通った姉のまりさ。彼女はきっと群れのリーダーとなるだろう。よく気
が利く真ん中のありす。きっととてもゆっくり出来るだろう。妹のれいむは少しどじだけれ
ど、幼なじみのまりさと幸せな家庭を築くに違いない。みな綺麗なかちゅーしゃがとてもよ
く似合う、素晴らしいゆっくりに育ってくれた。
 もう、すぐに冬がくる。
 まりさが作ってくれたこの巣は、とても頑丈な入り口で、ああでもいつの間にか壊れちゃ
っているから直さないと。巣の中も汚れている。いくつかの黒い塊がところどころに、ああ、
あれはおちびちゃんだったっけ。開け放たれた入り口の近くにひときわ大きい塊が、とても
ゆっくりした表情の、黒く歪んだまりさが。
 まりさ。……まりさ。……。

……

……しゃん……

……おきゃあしゃん! ……

「もう、おきゃあしゃんってば! ありしゅはありしゅよ! まりしゃじゃにゃいわよ!」
「しょうよ、ときゃいはなありしゅはれいみゅじゃないわ!」
「しょれにおきゃあしゃんはれいみゅじゃにゃいよ! しっかりしてよね、ありしゅおきゃ
あしゃん!」

 おちびちゃん達はたまに判らないことを言う。
 お母さんはありすじゃなくてれいむだよ。
 ありすはれいぱーだよ。
 親友を犯して殺して巣を乗っ取るれいぱーだよ。
 だかられいむはれいむで、ありすじゃあないんだよ……。
 れいむはれいむで、ありすじゃあ、ない、よ。

 今宵も闇に、夢を見る。

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最終更新:2022年05月19日 12:14