ティガれみりゃ その2
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≪はじめに≫
- 他の作者様の設定や名称を一部使わせていただいております。
- 文字数設定の関係上、改行が変な箇所があるかもしれません。
(あまりにも読みづらいようでしたら、修正版をupします)
以上、何卒ご理解・ご容赦ください。
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2、異常震域
月夜の下に広がる森。
小動物達が俄にざわめきだし、
彼等がさきほどまで寝床にしていた木々が、バキバキと折れていく。
その原因は、全て一体の巨大生物によるものだった。
よったよった、どったどった。
よったよった、どったどった。
短い足で、不器用なステップを踏みながら、
その巨体とは裏腹に、実にゆっくり進んでいく巨大生物。
『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~♪』
その巨大生物、通称・ティガれみりゃは、
歌いながら楽しそうに夜の森を往く。
見た目は、中綿たっぷりの、だぶだぶくたくたの恐竜型ぬいぐるみ。
恐竜の口の部分がぱっくり開き、そこにれみりゃ種特有の、憎たらしげな下ぶくれスマイルが覗いている。
だが、その滑稽な見た目に反して、その体は尻尾をあわせれば20メートルにも届かんとする巨大さを誇る。
短い手足をバタバタさせて、「うぅーうぅーうぁうぁ♪」とやるたびに、足下の生物達は生命の危険にさらされる。
それゆえ、数多くの命が暮らすこの森にあっても、
意図的にティガれみりゃに近づこうとする者は、まずいない。
『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~~♪ とぉ~ってもぷりちぃ~~ティガれみりゃ~~♪』
本人はといえば、そんなことは気にも留めず、相変わらずの御機嫌ノリノリで森を進む。
いっそさっさと通過するなら、
動物達や森で暮らす他のゆっくり達にとっても、まだマシだった。
けれど、ティガれみりゃにそんな空気を読む力があるはずもなく、
よったよった、えっちらおっちら。木を倒し、ゆっくりを踏みつけ、動物達を脅かして歩いていく。
「ゆゆゆっ! ティガれみりゃはゆっくりしないで、どっかへいってね!」
「ゆぅ~~! おかーしゃん、こわいよぉぉっ!」
ティガれみりゃの足下、逃げ遅れたれいむの親子が、木々の影に隠れていた。
こんな恐い場所からはさっさと逃げ出したかったが、
ティガれみりゃが歩く度に震動が起こり、なぎ倒された木々が倒れてくるせいで、
おちおち移動することもできずにいた。
「おかーしゃーん! おかーしゃーーん!」
「だ、だいじょうだよ! あかちゃんのことは、れいむが守るよ!」
身を寄せ合い、震える親子。
そんな親子の願いが通じたのか、
ティガれみりゃは親子を踏みつけることなく、
そのすぐ横を通過して、森の奥へと向かっていく。
「ゆぅ~~~? なんとか助かったよぉ~~!?」
「やったねぇ~~! おかーしゃーん!」
顔を見合わせ喜びあう、れいむの親子。
だが、次の瞬間。
どっすん!
「ゆべぇぇぇっっ!」
「ゆぐぎゃぁぁぁ!」
ティガれみりゃの尻尾が振り下ろされ、れいむの親子はぺちゃんこに潰される。
残されたのは、地面に貼り付けられた、あんこの染みだけだった。
『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~~~♪』
もちろん、ティガれみりゃが一々そんなことに気付くはずもない。
ティガれみりゃは、その後も歩き続け、30分後目的地の前で足を止めた。
『う~~、ついたどぉ♪ さっすが、れみりゃ! すらっとのびたあしは、あるくのもはぁやいどぉ~♪』
自分の短足・鈍足を棚に上げ、自画自賛するれみりゃ。
ちなみに、ここまで歩いてきた平均歩行速度は、その巨体からすれば驚くほど遅い時速4kmしかない。
うぁうぁダンスをしながらの歩行とはいえ、この遅さこそ、この突然変異種が"ゆっくり"であることの証ともいえる。
『う~♪ みんなぁ~まっててねぇ~♪』
猫なで声をあげるティガれみりゃ。
ティガれみりゃの目の前は崖になっており、その中の一角に沢山の岩が積み上げられていた。
岩の奥には巨大な洞穴が広がっており、そこがティガれみりゃの巣穴となっていた。
"こーまかんのあるじは、留守のあいだのとじまりもかんぺきだどぉー♪"
ティガれみりゃはそう言って、洞穴の入り口に岩を積み上げ、栓をしていたのだ。
『うー、岩はじゃまだどぉ! ぽいするのぽーい♪』
言うや否や、ひょいひょいと岩を持ち上げ、ぽいぽい投げ捨てていくティガれみりゃ。
その岩を積み上げたのが自分自身であることは、既に忘れてしまっているらしい。
『うー♪ あいたどぉ♪』
積み上げられた岩のバリケードは瓦解し、その先に大きな洞穴が姿をみせる。
長年をかけて山の地下水が空けた空洞は、ティガれみりゃが余裕で入れるほどの大きさだ。
『れでぃ~は、しっかりかぎをしめるどぉ♪』
洞穴の中に入ったティガれみりゃは、再び岩を積み上げ、洞穴の入口に栓をしていく。
『うっ? おかしぃーどぉ、岩がたりないどぉー?』
手近な岩を全て積み上げても、洞穴の入り口はまだ半分ほどしか塞がれていなかった。
ついさっき、ティガれみりゃ自身が岩を「ぽぉ~い♪」してしまったためだ。
『う~~! だれか岩をもってきてぇ~~!』
叫ぶが、当然そんな誰かがいるわけもない。
『うー・・・』
ティガれみりゃは、岩をあきらめ、洞穴の奥へと歩を進める。
すると、そこにはティガれみりゃの帰りを"待っていなかった"たくさんのゆっくり達がいた。
「「「うーっ!! ゆっくりしねっ!」」」
『う~♪ ふりゃ~ん、ただいまだどぉ~♪』
ティガれみりゃが満面の笑顔を浮かべた先、
そこには、いるはいるは、胴体付き・無しあわせて100体近いゆっくりフランたちがいた。
「「「しねっ! ふらん達をとじこめるティガはゆっくりしねっ!」」」
笑顔を向けるティガれみりゃに対して、ゆっくりフラン達は明確な敵意を露わにする。
全員が中空に舞い上がり、臨戦態勢をとりながらティガれみりゃを睨み付けている。
『うっう~♪ そんないじわる言っちゃダメなんだどぉ~♪』
その敵意をまるで理解していないのか、
ティガれみりゃは、よったよったとフラン達の下へ近づいていく。
だが、フラン達の集団は、すぅーと静かに移動し、ティガれみりゃが近づいたぶんだけ距離をとる。
『うぅ~~?』
不思議そうに顔を傾けるティガれみりゃ。
額に少し汗を浮かべつつ、今度はお気に入りのフレーズとポーズを決める。
『ぎゃお~♪ いっしょにあそんでくれないと、た~べちゃうぞぉ~♪』
バッチリだ。
ティガれみりゃは自分に惚れ惚れした。
こんなにもかっこよくて、ぷりちぃ~な自分の姿を見せられては、
照れ屋さんなフラン達もメロメロになって、自分に寄ってきてくれるにちがいない。
手を大きく広げて、いつでもフラン達を受け止められるように準備するティガれみりゃ。
……だが。
「「「…………」」」
ゆっくりフラン達は微動だにせず、軽蔑するような冷たい視線をティガれみりゃに送るだけだった。
『うぅ~~~~……』
ティガれみりゃは困ってしまった。
そして、なんだか鼻の奥が少し熱くなっているのを感じた。
『うー♪ ふりゃーん♪』
すすすっ。
『まつんだどぉ~♪』
すすすっ。
『うっう~うぁうぁ~♪』
すすすっ。
ティガれみりゃは何度となく、フラン達とのスキンシップを試みようとアプローチを繰り返す。
しかし、フラン達は、そんなティガれみりゃに敵意だけを向けて、空中を静かに逃げ回るだけだった。
『うぅぅぅぅ……。なんで、れみりゃをむしするんだどぉ……』
目の端にたまる涙が流れ出さないよう、鼻の上に力を込めてこらえるティガれみりゃ。
その瞬間、ティガれみりゃは大事なことを思い出し、ぱぁーっと顔を輝かせる。
『うー! そうだどぉ! 忘れるところだったどぉ!』
ティガれみりゃはゴソゴソとポケットに手をつっこみ、一本の枯れ木を取り出して掲げた。
『うっうー♪ れみりゃとくせいのおだんご~♪ とぉーってもおいしぃどぉー♪』
ティガれみりゃが掲げたもの。
それは、ちょうど昨晩、ティガれみりゃが山間の窪地に築かれたゆっくり達の集落を遅い、
ゆっくり達を枯れ木に突き刺して作った、れみりゃ印の"とくせいゆっくりだんご"だった。
きっとフラン達はおなかが空いていて、それで遊ぶのを嫌がっているに違いない。
そう結論づけたティガれみりゃは、そのゆっくりだんごをフラン達に向ける。
「「「…………」」」
しかし、フラン達は何の反応も示さなかった。
それもそのはず。
本来、生粋の捕食種であるフランは、生きた獲物を捕らえ、嬲り、そして圧倒的な力を誇示しながら食すのだ。
野生の動物がそうであるように、誇り高き捕食者は、生きた獲物にしか興味を示さない。
死んだ獲物を食べるなど、食べ残しで生をなすハイエナか、意地汚い被捕食種ゆっくりくらいのものだ。
少なくとも、このゆっくりフラン達は、その矜持を忘れてはいなかった。
『うぅ? どうしたんだどぉ? おいしぃおかしだどぉ?』
ちっとも興味を示さないフランに、戸惑うティガれみりゃ。
『う~! たべないと、た~べちゃうぞ~!』
おかしなことを口走りつつ、ティガれみりゃは無理矢理ゆっくりだんごをフラン達に近づける。
けれど、フランはゆっくりだんごを食べることはなく、空中からティガれみりゃを睨むだけだった。
「うぅー……どぉーしていうこときいてくれないんだどぉー……」
どっすん!
ティガれみりゃは目尻に涙を浮かべながら、地面に座り込む。
その刹那。
何匹からのフランが、この時を待っていたかの如く、
急にスピードを上げて飛行を開始した。
目指すは、この洞穴の出口!
このフラン達は、空腹にも耐えながら、
ティガれみりゃに隙ができるこのタイミングを狙っていた。
「「うーっ!!」」
赤い弾丸となって、洞穴の暗闇を裂くフラン達。
『うーっ!?』
遅れながらも、数匹のフランが脱走しようとしていることに気付くティガれみりゃ。
しかし、いくら巨大なティガれみりゃといえ、敏捷性は小型のゆっくりフラン達の方が上。
ゆっくりフラン達の脱出は成功するかに思えた。
『うーっ!! 逃げちゃだめぇーっ!!!』
ティガれみりゃは、もっていたゆっくりだんご……もとい立ち枯れた木を、
いままさに洞穴の外へ出ようとしていたフラン達に投げつけた。
「「ううーっ!」」
いきおいよく飛んでいった木は、見事フランに命中する。
そして、尖った枝はフラン達に突き刺さり、彼女達を"ゆっくりだんご"の一つにしてしまった。
「「ううっ!!??」」
その光景を見て驚く、他のゆっくりフラン達。
彼女達は、今回の脱出計画がうまくいき次第、同様の手でこの洞穴から抜け出そうと考えていた。
『だぁーめぇぇぇ! ふりゃんはれみりゃとあそぶのぉぉっ!!』
洞穴の中にティガれみりゃの叫びが響き渡る。
『う~~~! 逃げちゃ、めぇ~~なの! はやくもどってくるのぉ!』
ティガれみりゃは、ゆっくりだんごと化したフラン達へ呼びかける。
「う、うぅぅぅぅ……」
「ゆ、ゆっぐり、じねぇぇぇ……」
他ならぬティガれみりゃの手によって、ゆっくりだんごとなったフラン達は、
当然動くこともできず、地獄の苦しみを味わっていた。
極めて高い生命力と再生力を持つゆっくりフランであったが、
数日前にこの洞穴に連れ込まれてからといたものの、食べたのは最初から洞穴内に住んでいたゆっくりや、小動物だけ。
ろくな食事もとらぬまま体を貫かれたフラン達は、本来の再生力も発揮できず、間もなく息を引き取った。
『う~~? ふりゃ~~ん?』
フラン達の様子がおかしいことに、ようやく気付いたティガれみりゃ。
が、時すでに遅く。ゆっくりだんごとなったフランは、二度とティガれみりゃの声に反応することはなかった。
『うぁぁぁぁぁっ! なぁんでだどぉぉぉっっ!?』
数匹とはいえ、フランが死んでしまったことを知り、
ティガれみりゃはこらえていたものを一気に噴出させる。
『うわぁぁぁぁぁぁん!!』
その鳴き声は凄まじく、洞穴を反響して振るわせる。
『しゃくやぁー! しゃくやはなにしてるんだぉー! ふりゃんがぁーーーっ!!』
来るはずもない、遺伝子に刻み込まれた従者の名を連呼するティガれみりゃ。
ドタンと大の字に倒れ込み、仰向けのまま手足をバタバタさせる。
『ひっく、ひっく、ひっく……うぅー…ふりゃーん……』
嗚咽を続けるティガれみりゃ。
『うぅ……うぅ……』
ティガれみりゃの涙は本物であった。
ティガれみりゃには、"ゆっくりフランを自分の巣に閉じこめて愛でようとする"習性があるのだ。
ゆっくりフラン達からすればたまったものではないが、
ティガれみりゃからすれば良かれと思ってやっていることだった。
『……うぅ……うぅ?』
ひっくひっくと肩で泣くティガれみりゃ。
やがて、涙もかれてくると、今度は眉根をへの字にしかめさせた。
『うぅー……泣いたら、おなかがへったどぉー♪』
今までの涙がウソのよう。
すっかりいつも通りの下ぶくれスマイルを作って、自分のお腹具合を心配しだすティガれみりゃ。
れみりゃ種……ひいてはゆっくり全体に見られるこの思考の切り替え・責任転嫁は、
あるいは"辛いことはさっさと忘れる"ことでゆっくりしようという、ゆっくり達なりの知恵なのかもしれない。
『うっうー♪ 今日はひさしぶりにぷっでぃーんが食べたいどぉー♪』
そう言うと、れみりゃは自らの体を起こそうとする。
起こそうとして……違和感を覚える?
『う~、はやくぷっでぃん食べにいくどぉ♪』
せーの!
体を起こそうとするティガれみりゃ。
『う~♪』
よいしょ!
『うーーっ!』
こらしょ!
『うーーっ! うーーーっ!!』
ティガれみりゃは何度も上半身を起こそうと試みる。
しかし、起きあがれるのはせいぜい頭部のみで、
筋肉のついてないお腹はすぐにプルプル震えだし、力尽きてしまう。
ずてーん!
体を起こすことができず、ティガれみりゃは後頭部を地面にぶつける。
『ぅぅぅぅぅぅぅぅ~~~~っ』
後頭部の痛みに、ティガれみりゃは鼻の上のあたりを真っ赤にしながら、声にならない嗚咽をもらす。
その後も何度か起きあがろうとするが、結果は同じだった。
『うわぁぁぁぁん! 起きられないどぉーーーっ!』
泣き出すティガれみりゃ。
ゆっくりゃザウルスにも見られる傾向であるが、
ティガれみりゃもまた、仰向けに倒れてしまうと中々立ち上がることができないのだ。
『しゃくやぁぁぁ! はやくおこしてくれないと、なーいちゃうぞぉーー!』
既に泣いてるって!
洞穴に残されたゆっくりフラン達が、心の中で一斉に突っ込む。
そして、捕食種の本能がそうさせるのか、起きあがれないティガれみりゃを見ると、
ゆっくりフラン達は一斉にティガれみりゃへの攻撃を始めた。
今、一斉攻撃をすればティガれみりゃを倒せると判断したのだ。
「うぅーっ!」
「ゆっくりしねっ!」
「ティガれみりゃはしねっ!」
「ゆっくりしないでしねぇぇ!」
「しねしねしねしねぇぇぇーーっ!」
ゆっくりフラン達の怒濤の攻撃。
噛みつき、体当たりし、にくまんの顔に拳を打ち込み、
レーヴァティンと呼ばれる突起物をガシガシ叩きつける。
これだけの集中攻撃を受ければ、たとえドス種であってもひとたまりもないだろう。
ゆえに、経験したことの無い脅威に対して、本能が誤った判断を下したとしても責めることはできない。
『うぅぅ~~~? ……ふりゃんたち、れみりゃをなぐさめてくれるのぉ?』
フラン達の攻撃を受ければ受けるほど、ティガれみりゃは徐々に泣きやんでいく。
ティガれみりゃに、ふらん達の攻撃は効いていなかった。
それどころか。
『う~~♪ くしゅぐったいどぉ~~♪』
とうとう下ぶくれスマイルを取り戻し、きゃっきゃと喜びはじめてしまった。
「「「うぅーーっ!?」」」
自慢の攻撃が全く効いておらず、流石に驚愕をあらわにする、ゆっくりフラン達。
もし、ティガれみりゃが起きられずに泣いている間、ティガれみりゃに構わず逃げ出していたらなら、
今頃このフラン達は気持の良い満月の夜空を謳歌していたことだろう。
しかし、もう遅い。
「しねっ!しねっ!」
『う~~~?』
ティガれみりゃのにくまん顔に馬乗りになり、拳を打ち続けるゆっくりフラン。
その姿を見たティガれみりゃは、肉まん脳をフル回転させる。
『うー! ひらいめいたどぉー!』
ティガれみりゃは、うんしょ、うんしょと、
苦労しながら体を回転させ、徐々に俯せの姿勢へとなっていく。
その間、ティガれみりゃの体にまとわりついていたフラン達は振り落とされ、
離陸に失敗したものは、そのままティガれみりゃの体に押しつぶされてしまった。
俯せになったティガれみりゃは、両手を使い、上半身を起こす。
と同時に、膝を立て、両手と組み合わせることで立ち上がっていく。
『う~~~~! やったどぉ~~~~!』
バンザーイ!と両手を大きく広げて、立てたことをアピールするティガれみりゃ。
『すっごいどぉー! れみりゃはやっぱり天才だどぉ♪』
「「うううううう……」」
喜びを爆発させるティガれみりゃに対し、
フラン達はせっかくのチャンスを無駄にしてしまったことを悔しがる。
『うっう~うぁうぁ♪ うっう~うぁうぁ♪』
どったばったと手足を動かし、洞穴の中で踊り出すティガれみりゃ。
ティガれみりゃが踊る度に、洞穴が揺れ、天井からは希に小さな石つぶが落ちてくる。
身の危険を感じ、洞穴の奥で一カ所にかたまるゆっくりフラン達。
『ティガ☆れみ☆りゃ☆う~~~♪』
ご自慢のダンスを踊りきり、最高にハイになるティガれみりゃ。
やっぱり自分ってば凄い!
かわいいし! かっこいい! 頭もいい!
こうまかんのおぜうさまにふさわしい、すてきなれでぃーだ!
ティガれみりゃは御機嫌なまま、洞穴のすみっこに固まるフラン達に向き直る。
さぁ、こんどは何をして遊ぼう?
そんなことをティガれみりゃが考えた時だった!
「……ぅー」
『うっ?』
ティガれみりゃは、頭の奥の方で、自分を呼ぶ声が聞こえた気がした。
「……ぅーぅー」
まただ。
やっぱり誰かが自分のことを呼んでいる。
だって、あたまのなかで声がするんだもん。
そう結論づけたティガれみりゃは、周囲をきょろきょろ見回したのち、
どったどったと慌てて洞穴の外へと出て行く。
「…う?」
残されたフラン達は、その様子を不思議そうに眺めていた。
洞穴の外。
ティガれみりゃはそらを見上げて目をこらす。
『うー……、うー……、うーっ♪』
空を飛ぶあるものを見つけ、歓声をあげるティガれみりゃ。
空を見上げる視線の先では、うーぱっくの親子が満月の夜空を横断していた。
『う~~♪ まっでぇぇ~~♪』
うーぱっく達を見つけたティガれみりゃは、
そのままうーぱっく達の後を追って歩いていく。
『う~♪ まつんだどぉ~♪ れみりゃもおそらをとぶんだどぉ~♪』
よったよった、どったどった。
よったよった、どったどった。
ティガれみりゃは楽しそうに、うーぱっく達の後を追う。
空を飛ぶうーっぱくと、地面をどすどす歩くティガれみりゃでは、どんどん間の距離が離れていってしまう。
現に、すでにうーぱっく達はれみりゃの視界から消えていた。
しかし、れみりゃには不思議な確信があった。
このままこちらへ歩いていけばよいのだと。
「ぅーぅー」
「ぅーぅー」
「ぅーぅー」
だって、頭の中にあのうーぱっく達の声が聞こえてくるのだから。
そして、この声の先には、だいたい美味しそうなおまんじゅう達がいっぱいいるのだ。
『う~~♪ まっててねぇ~ふりゃ~ん♪』
笑顔で闊歩するティガれみりゃ。
ふと空を見上げると、おしそうな真ん丸お月様が輝いていた。
まるでおまんじゅうみたい。
でも、色はぷっでぃーんに近いかな?
そんなことを考えながらティガれみりゃは木々を押し倒していく。
こんなにもお月様が美味しそうだから、歌っちゃおう♪
ティガれみりゃは短くずんぐりむっくりした手足を、うぁうぁと動かす。
『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~♪』
一方、その頃。
洞穴に残されたフラン達は、ティガれみりゃがいなことを確認して、月夜へ飛翔を開始していた。
余談だが、その後しばらく、ゆっくりフランによる必要以上のれみりゃ種への虐待が続いたという……。
to be continued
次回予告
『ティガれみりゃ3・(タイトル未定)』
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(あとがき)
byティガれみりゃの人
……とか名乗っておいた方が良いのでしょうか?
どうも、前回『ティガれみりゃ』を書いた者ですm(_ _)m
とりあえず今回が2回目です。
1回目を書いた時点で、今回の範囲まではほぼ終わっていたので、
連日になってしまいましたが、upさせていただきました。
(少しでも楽しんでいただければ幸いです)
その3は……しばらくお時間をいただくことになるかもしれません(汗
なお、作中のティガれみりゃとうーぱっくの関係ですが、
某有名怪獣映画のとある設定のオマージュにだったりしますw
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最終更新:2022年04月11日 00:42