※警告、善良なゆっくりが死にます
※警告、ドスまりさが出ます
※警告、酷いのは人間です


いつもの山小屋にゆっくりまりさと男がやってくる。
「へへ、冗談じゃねぇな」
「まったくだよ。ゆっくりできないね」
「ちげぇねぇ。たっく、どうしてお前らの群はあんなに馬鹿ばかりなんだ」
「ゆゆ?おにーさんのむれだってバカばっかりだよ」
「確かに。俺の群もお前の群もバカばっかりだ」
「ゆっくりできるね」
「バカ万歳だな」
お互い少し黙る。ゆっくりまりさが持ってきた握り飯を食べ始める。
男は静かに持っていた刀でゆっくりまりさを刺す。
「ど、どうぢで」
「商売は終わったんだぜ。先に地獄で待ってろ」
「いやだ、もっどゆっぎりじだい」
「どうせお前も俺も屑なんだ。行き着く先じゃゆっくりできねぇよ」
「旦那、終わったかい?」
外で待機していた若い男が、小屋に入ってくる。
「いんや、始まったのさ。若いのに集合かけろ。かちこみかけんぞ」



さきほど、村の代表とゆっくりの群の代表による話し合いは決裂した。
ドスまりさは話し合いの前に殺されたゆっくりの死体を持ってきて一方的に村が悪いといい始めた。
村の代表もそんな事言われては引き下がれない。自分達だって前に畑を荒らされたばかりだ。
おかげで話し合いは決裂し、ドスまりさはとあるゆっくりまりさを、村長はとある男を呼び出した。

「村長、どうしたんだい。今日はゆっくりの群と約束事を決めにいったんだろ」
「ああ、でもな。群のドスとかいう長が一方的にいちゃもんをつけてきてな」
「何だい、こっちの畑が荒らされたことは言わなかったのか?」
「それはこっちの捏造だろうって言ってきやがるんだ」
「へー、そいつは悪党としては模範解答だな」
「でだ、俺は今までの考えを改めようと思うんだ」

村長はそこから仕事の話に入った。
村長が呼んだ男というのはゆっくり退治も請け負う博徒連中の頭で、
口は悪いが、頭はキレる。ああいう男も村には必要なのだと村人からは侮蔑と尊敬、
どちらのまなざしも受けて生きてきた。

「考えを改めるってーと、揉め事かい?」
男の口元がニヤリと緩む。
「ああ、ドスまりさの群を殺す。このままじゃ、村は群に押しつぶされちまう」
「へへ、冗談じゃねぇな」
「全くだ。笑い話にもならん。お前さんトコの若い衆を借りたい」
「・・・待ちな。暴力は俺らの領分、そこを仕切られちゃあ頭の俺の立場がないんだよ」
「じゃあ、どうする?お前が仕切ったんじゃ、村の者は協力せんぞ」
村長は男を信頼している。だからこうやって男にとって耳障りのよくない事も言える。
「いんや、悪いがクワ持った百姓が何人いても、ドス持った若いの一人敵わねぇ。俺達だけでやるさ。その代わり」
「分かってる。前金だ。それとこっちは準備金だ」
「ん、なんだこりゃ、俺らの稼ぎ三年分はあるぞ」
「それとこの仕事が上手くいけば、お前らを人里の自警団に推薦しようと思う」
今まで口元を緩めていた男の顔つきが変わる。
「ゆっくりに対抗するため新しく組を作るらしい。お前達さえよけりゃ、そこに推薦する。全員だ」
「・・・そうか、いい話だ。最高だ。村長、この話受けるぞ」
村長の家から男が出てくる。どうでした?なんて数人の若い男が尋ねる。
男はまず山小屋に行くと言い出した。いつもの山小屋に。


ドスまりさはゆっくりまりさが来ると巣の中に通した。
「ゆっくりしていってね」
「あいさつはいいよ、ドス。しごとだろ」
「ゆゆ?そうだよ。にんげんさんのむらをおそうよ」
「やくそくごとをきめられなかったの?」
「う、うん・・・むらのひとたちがドスのむれがはたけをあらしたっていうんだ」
「じゃあ、しかたないね。むらのひとたちにはゆっくりしんでもらおう」
「そうだね」
ドスとまりさの会話は村長と男の会話よりシンプルだった。
まりさにとってはいつもの事だったからあまり長く話す必要はなかった。
男の場合だけ、少し事情が違っていた。


ゆっくりまりさの仕事は畑荒らしだった。
手ごろな畑を見つけてはゴロツキのゆっくりを唆し畑を襲わせる。
それがある男と出会ってから仕事の内容が変わった。
それまではゴロツキのゆっくり達から野菜を貰って食っていたが、
男と出会ってからは男が指定した畑をゆっくりに襲わせ、
男がそのゆっくりを殺す。それによって男から報酬を貰って生活していた。
逆に男と打ち合わせて、自分が人間を退治しているように芝居を打ったこともあった。
男とゆっくりまりさは互いを利用しつつ利益を貪ってきた。
そして、今回、村長はゆっくりまりさが齎す利益より遥かに大きな利益を提示してきた。
「悪いな、相棒。お前よか俺のが屑だったみたいだ」
ゆっくりまりさの墓を作ってやる男は目は悲しそうなのに口元は緩んでいた。


「いいか、この仕事を終わらせりゃ、俺達は晴れて自警団、こんなボロ屋敷とはおさらばよ」
男が鉢巻を締め、屋敷の前に集まった男達に叫ぶ。
「おっしゃあ!!」「絶対、ドスの首取っちゃる!!」「バカ野郎、ゆっくりに首はねぇよ」
「こういうのは気分だぜ」「頭、絶対にいい思いさせてやるぜ」「ゆっくりなんて今度こそやっちまおうぜ」
「刀の錆にしてやるよ」「そうだそうだ。やっちまおう」「腕が鳴るぜ!!」
男達は口々に決意を叫ぶ。その光景を見ればゆっくりは恐怖で震え上がるだろう。
「作戦はさっき話した通りだ。いいか、酒なんて飲んで忘れるんじゃねぇぞ!!」
それからしばらくして、朝日がまだ昇りきらぬうちに男達はドスまりさの群のいる山に入った。
男達は一様に静かだ。さっきまで屋敷の前で叫んでいた連中とは思えない。
手で合図を送りあい、群に近づく。途中、ゆっくりがいると布で口を塞ぎ悲鳴をあげれなくしてから刀で真っ二つにした。
男は進んでいく自分の部下達を見ながら、百姓なんざ連れてこなくて正解だったと痛感している。
男達は一際大きな横穴を見つける。ここがドスの巣だろう。
持ってきた火薬をまだ眠りこけているドスまりさの周りに仕掛ける。
あとは各々、悲鳴をあげさせないようにしてゆっくりを殺していく。頭である男は太陽の位置をちらちら確認している。
「よし、点火だ」
ゆっくり達が起きてくる少し前、火薬に火がつけられドスまりさは何が起こったか知る前に吹き飛んだ。
「うっしゃあ!殺せぇ!!」
頭がそう叫ぶと、既に半分ほどにされている群に一斉に男達は切りかかった。



「頭、団長がお呼びですぜ」
「頭はよせ。もう俺はま組の組長だぞ」
「ああ、とにかく団長が」
「分かった分かった」
ドスまりさの群を全滅させ戻ると、屋敷には既に自警団の使者が来ていた。
そこでニ、三決まりごとの確認のする。俺も部下達に再度、自警団になる是非を問う。
なにせ、もう悪さもできないからな。俺はみんなの意見を聞くと使者に「これでもう悪さもできなくなっちまった」と言った。
何気なく握手した使者の嬢ちゃんが自警団の親玉だと知ったのはそれから少し後の事だった。
それからは損得勘定なしでゆっくりの群をぶっ潰せるのが良かった。あのゆっくりまりさと悪巧みをしてた事が懐かしく思える。
酷く煩わしかったが、嫌ではなかった。ま、こっちの方が頭を使わない分、楽だけどな。
俺はしばらく屑なりに生きてみた。








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最終更新:2022年04月14日 23:47