※ぬるいじめ





【登場人物】
  • お姉さん
自称アル中で、超がつくほどの酒豪。
やたらと多くのゆっくりを飼っているが虐待家でも愛好家でもHENTAIでもない。
しかし、いい性格をしているのでさりげなく酷いことをやってのける。
なのに何故かゆっくりに(あくまで人間として)好かれやすい不思議な体質。

  • すいか
2本の角を生やした鬼っぽい外見のゆっくり。
酒かす饅頭であり、角は甘さ控えめのかりんとうで出来ている。
なおかつ、角の中は空洞になっていてそこにはお酒が蓄えられている。
みっしんぐぱわーという芸を持ち、威嚇の為に膨れた時の膨張具合が尋常じゃない。



「おーい、すいかー?」
「ゆゆっ!なあに、おねえさん?」
「喰らえ♪」

我が家のゆっくりの1匹、すいかが振り返った瞬間に全力投球の豆を散弾の如く浴びせる。

「ゆぎゅ!?・・・ゆぅぅぅ、いだいよ!いだいことぢないでね!ぷくうううううう!」
「的が大きくなったな。続いて第二投目・・・行きます!」
「ゆぐっ!?」

本人曰く“みっしんぐぱわー”とやらでバスケットーボール大から直径80cmくらいにまで膨れるすいか。
いわゆる一般的なゆっくりの威嚇パワーアップバージョンみたいなものなのだが、やっぱり人間には効果がない。

「おーい、れいむ達も豆まきやらないか?」
「ゆぅ、まめまきってなあに?」
「そういう遊びだ」

遊び、と聞くや否や我が家の他のゆっくり共もわらわらと集まってくる。
メンバーの構成比は成体れいむ1、成体まりさ2、子れいむ3、子まりさ3の9匹。

「で、まめまきさんってどんなあそびなの?」
「鬼役の人に豆をぶつける遊びだ。これで鬼をベランダまで追い出すとその年はすごくゆっくりした年になるんだ」
「「「「「「「「「ゆっくりりかいしたよ!」」」」」」」」」

そして始まる第2ラウンド。
元ソフトボール部の私の投球、もとい投豆を食らってグロッキー状態にあったすいかも慌てて逃走を再開する。
が、逃げても逃げても9匹と1人からの豆弾幕の雨はとどまることを知らずに彼女に降り注ぐ。

「鬼は~外~」
「「おにさんはゆっくりおそとにいってね!」」
「おにさんはゆっくりおそとにいくんだぜ!」
「「「「「「いってね!」」」」」」
「ゆええええええええん!」

「第三投、行きまーす」
「ゆびゃ!?いぢゃいいいいいい!!」

「ゆっくりあてるよ!」
「おにさんはゆっくりでていってね!」
「どほぢでそんなごどいうのおおおおお!?」

「第四投~」
「ゆぐっ!おねーざぁん、もっどやざじぐなげでね・・・?」

「「「「「「「「「ゆっくりでていってね!」」」」」」」」」
「もうやだ!おうちかえる!?」

そして、開けっ放しにされていたドアから何とかベランダへと逃げ込む。
その頃には、すいかは頬を涙でふやけさせた見るも哀れな姿になっていた。

「よし、鬼さん出て行ったな」

ぴしゃ!と軽快な音がした事に気付いたすいかが振り返ると、ドアが閉められ、鍵がかけられていた。
あまりの事態に理解が追いつかない酒かす饅頭は目と口をくわっ、と大きく開いたまま、ぷるぷると小刻みに震えている。

「おねえええええざあああああん!おそどはざむいよ!おうちにいれでね!?」
「大丈夫、今日の為に既にベランダに仮設の寝床を用意しているから」
「ぜんぜん、だいじょうぶじゃないいいいいいいい!」

私もそう思う。が、今年一年の家内安全のための尊い犠牲なんだ、諦めてくれ。

「さて、晩御飯にするか?」
「「「「「「「「「ゆゆっ!ゆっくりいただきますだよ!」」」」」」」」」
「ずいがもごはんだべだいよおおおおお!?」

叫ぶスイカを爽やかにスルーしつつ、台所からぶっとい巻き寿司を持ってくる。

「えー、饅獣ども。これは恵方巻きと言って、食べ終えるまである方角を向いたまま黙って食べないといけません」
「ゆぅ、どういうこと?」
「つまり、『むーしゃむーしゃ、しあわせー』は禁止」
「「「ゆぇ~・・・れいむ、しあわせ~したいよ!」」」
「「「まりさもしあわせ~したいよ!」」」

口々に不満を垂れる子ゆっくりども。しかし、この程度ならば想定通りのリアクションだ。
余談だが我が家では食べ散らかすなとは言っているが、しあわせ~は禁止していない。

「ちなみに喋ると・・・死ぬ」
「ゆゆゆゆゆっ!?」
「「「れいむえほーまきさんいらないよ!」」」
「「「まりさもいらないよ!?」」」
「食べなくても死ぬ」
「「「「「「ゆがーん!」」」」」」

と、そんなわけでしぶしぶ食べ始める子ゆっくりども。
ちなみに恵方は真上(もちろん嘘)と言っておいたので、子ゆっくりに限らず皆物凄く食べづらそうだ。

「ん!?んぐ・・・ん゛・・・」

それでも、喉の奥へと落ちてくる恵方巻きを必死になって咀嚼するゆっくり達。
しあわせ~、出来ないのが悲しいのかあまり美味しそうには見えないが実際どうなのだろうか?
そんな調子で10分後。何とか恵方巻きを食べ終えたゆっくり達に一言。

「あ・・・今年の恵方間違えた」
「ゆぅ、どういうこと?」
「つまりあれだ、お前ら死ぬ」
「「「「「「「「「ゆがーん!?」」」」」」」」」

驚愕する連中を放っておいて立ち上がると、食器を手に台所へ向かい、代わりに餌皿に入れた豆を持ってくる。

「冗談だけどな」
「ゆゆっ!おねーさん、れいむたちをからかったんだね!ぷくううううううううう!」
「「「「「「「「ぷくううううううううううう!」」」」」」」」
「そんなことより豆食え」

そう言って皿を置いてやると、さっきの憤りは何処へやら。満面の笑みを浮かべて豆を食べ始める。
そんな豪快な食べっぷりを少しの間見守っていた私は、不意に物足りなさを感じていることに気がついた。

「あー・・・そうか」

物足りなさの正体に気づいた私は再び立ち上がると、ベランダのドアを開け、スイカの元へ。

「ゆぅ~・・・どうせすいかはゆっくりできないおにさんだよー・・・」

すいかはダンボールと綿で出来た臨時の巣でふて腐れていた。
聞き耳を立ててみると時々嗚咽が漏れだしており、よほど悲しかったことを伺わせる。

「お~い、すいか~?」
「すいかじゃないよ、おにさんだよー・・・」
「じゃ、おにさ~ん?」

少しむくれた表情のまますいかはのっそりと私のほうを振り向いた。
拗ねてはいるが、その目には「これでゆっくり出来る」という若干の期待が込められていた。

「角貰ってくぞ?じゃあ、また明日」
「ゆっ!ゆゆっ!?」

そう言って、すいかの頭の2本の角をひったくって、寒いベランダから暖かい室内へ。
まったく、私としたことがお酒の準備を怠ってしまうとは・・・。

「ゆあああああああああああ!おねえええざんのばがああああああああああああああああああああ!!?」

ベランダでは近所迷惑なすいかの悲鳴が響き渡っていたが、まあ、大丈夫だろう。


‐‐‐あとがき‐‐‐
節分ということでひとつ

お姉さんは別にゆっくりのことが嫌いというわけではなくて
ただ、「鬼っぽいのがいたから」というだけの動機で動いています
他の連中に対しても「何となく面白そうだから」というのが理由
ちなみに今年(2009年)の恵方は東微北(東北東やや右)です

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2022年04月15日 23:41