※ぬるいじめ




いきなりだが、我が家ではゆっくりぱちゅりーを飼っている。
若干体が弱いのがネックだが、その分暴れまわらないし、頭も良いので躾けやすい良いゆっくりだ。
やってはいけない事は3度言えば大体理解するし、行儀作法を覚えるのも早い。
それに、一度痛い目に遭えば二度と罵詈雑言を吐くような事もないのでこちらの精神衛生にも宜しい。

しかし、何より重要なのはそのゆっくりの中ではトップレベルの頭の良さゆえにある程度会話が成立することだろう。
かと言って、人間を論破できるほど賢いはずも無いし、屁理屈や詭弁で簡単に言いくるめられてしまう。
要するに適度に馬鹿なのだ。
さて、今日もそんな適度な馬鹿で楽しく遊ぶとしよう。

「なあ、ぱちゅりー?」
「むきゅ!なあに、おにいさん?」
「お前、どうしていつもナイトキャップ被ってるんだ?」

朝一番、おはようの挨拶もなしに開口一番そんな質問をぶつけてみた。

「むきゅ~、ぱちゅりーのだいじなおぼうしだからよ!」
「でも、ナイトキャップだよな?」
「た、たぶんそうよ。それがどうかしたの?」

俺の突拍子もない質問に首をかしげるぱちゅりー。
実に可愛らしい仕草である。思わずキャップさせたくなってくる。
が、朝なので流石にソレは止めておこう。

「だったらなんでいつも着けてるんだ?」
「むきゅ!だから、だいじなおぼうしだからよ」
「そうかそうか・・・」

と、頷く。が、もちろん、納得したわけではない。
と言うか、納得する気なんて最初ッから持ち合わせていない。

「じゃあ、訊くけど俺がこの前買ってあげたご本は大事じゃないのか?」
「そんなわけないでしょ!おにーさんがかってくれたごほんだもの、とってもだいじよ!」
「でも、今持ってないよな?」
「むきゅ!?」

ようやく俺の意図を把握したらしいぱちゅりーは、目を大きく見開いて驚いている。
こういう百面相もゆっくりを飼う上での楽しみの一つだろう。

「それは・・・ごほんはよむものだからよ!」
「でも、ナイトキャップは寝るときに着けるものだよな?」
「むきゅ~・・・・・・そ、それは」

冷静に考えてみればアレがナイトキャップかどうかは微妙なところなのだが、ぱちゅりーもそのことには気が回っていないようだ。
俺としてはそのほうが都合がいいので、余計なことは言わずにさっさと話を続ける。

「もちろん、俺だっていつでも何処でもご本を読めとは言わないよ。食事中なんかにはそんな事をやったら怒るだろうし」
「そ、そのとおりよ。ぱちぇはれいぎただしいからてぃーぴーおーをわきまえてごほんをよむのよ!」

TPOなんて言葉知っていたのか。まあ、どうせ意味は知らないんだろうけどさ。

「じゃあ、何で寝るとき以外にナイトキャップを被ってるんだ?ソレはTPOを弁えていないんじゃないか?」
「む、むぎゅ~・・・でも、おぼうしさんがないと・・・ゆっくりできないわ・・・」
「建物の中で帽子を被ること自体無作法だって事は理解しているか?」
「むぎゅ!?」

ぱちゅりーは眉?をへの字にまげて、むきゅむきゅ鳴きながら右往左往している。
大分動揺しているようだ。よし、あと一押し。

「夜でもないのにナイトキャップを被るなんて馬鹿なの?寝るの?」
「むっきゅ~~~~~!ぱちゅりーばかじゃないわ!」
「じゃあ、なんでナイトキャップを被っているんだよ?」
「む、むきゅ・・・」

ゆっくりの中では賢いというその一点でプライドを保っているぱちゅりーにとって馬鹿、という言葉が相当堪えたらしい。
大きいくせに眠そうな瞳にいっぱい涙を溜めて、恨みがましそうな目でこちらを見ている。
しかし、ここまで面白くなってきたものをソレくらいで投げ出すつもりはさらさらない。

「なあ、ぱちゅりーは賢いんだよな?」
「そ、そうよ!」
「お兄さんの言うことを聞くお利口さんだよな?」
「そのとおりよ!」
「じゃあ、そのナイトキャップはどうするのかな?」
「・・・・・・・・・むぎゅううぅぅぅぅぅぅぅぅううう!」

ついに我慢の限界に達したぱちゅりーは奇声を上げながら大粒の涙を零し始めた。
ああ、チクショウ・・・可愛いな~、もうっ!
ってことで、更にもう一押し。

「おや、間違っていることを指摘されて泣き出すなんて・・・まるで赤ちゃんみたいだな」
「むっぎゅううううううう・・・!?」

俺の言葉を聞いたぱちゅりーは、涙を零しながらも必死に歯を食いしばって泣きじゃくりたい衝動を堪える。
その様子をしばし観察してから、最後通牒を食らわしてやる。

「よし、もう一度聞くぞ?寝るとき以外にナイトキャップを被ることが悪いことなら、ぱちゅりーはどうすればいいのかな?」
「ば、ばぢぇ・・・ばぢぇは、おぼうぢさんを・・・むきゅうぅぅ・・・」

あ、泡を噴いて倒れた。
プライドを守るために帽子を取ってゆっくり出来ない状況に陥るか、帽子を守ってプライドを捨てて病弱な無能饅頭に成り下がるか・・・
どちらをとっても失うものの大きい絶望的な二者択一は、ぱちゅりーの繊細かつ貧弱な精神には刺激が強すぎたらしい。

「やれやれ・・・仕方がない」

数分後、俺の懸命の看病の甲斐あって目を覚ましたぱちゅりー。
しばらく俺と会話をしていたが、不意に頭が涼しいことに気付いてしまった。

「おにいさん、ぱちぇのおぼうしは?」
「マナーに反するから俺の部屋に持って言ったよ」
「むきゅ~・・・もってかないでー。おぼうしがないとゆっくりできないわ」
「ふぅ・・・ぱちゅりーには失望したよ。建物の中では帽子を脱ぐ、ナイトキャップは寝るときに被る。どっちも当たり前のことなのに・・・」

ぱちゅりーはそう言いながら俯いた俺を見て、一緒に落ち込んだ。

「結局、帽子もお前が気絶している間に俺が取ったしな・・・これじゃあ、ぱちぇは馬鹿の汚名を返上できないな!」

一転して最高の笑顔を浮かべる俺。
そして、ゆっくり出来ない上に馬鹿確定という状況を把握したぱちゅりーは・・・

「むっぎゅううううううううううううううううううううううううううううううううう!?」

体裁も何もかも捨て去ってひときわ大きな叫び声をあげると、再び泡を噴いて気を失った。


‐‐‐あとがき‐‐‐
大貫さんからのお題『ナイトキャップ』
余談ですがCapというのは俗語で「フェラチオ」という意味があります。
つまり「キャップを朝だから自重した」というのは2つ目のナイトキャップを仄めかすものですね。
きっと夜になるとけほけほむせながらお兄さんのナニを・・・う~んHENTAIお兄さん!
あとがきより前にこれに気付いた人はゆっくりレイパーの資質があるに違いない。

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最終更新:2022年04月15日 23:43