せつゆんとぺにこぷたー

 *舞台は現代、ただし空想世界です
 *ぺにこぷたーが出ますので、お嫌いな方は読むと体に毒です



 ここは、とある理工系大学の私設研究所。
 表向きは、美味しい餡子を作るのに最適な小豆の品種改良を研究していることになっている。
 が、その実態は、BC兵器の研究開発を請け負う、政府の軍事研究施設である。

 その巨大な丸いドーム型の屋根をもつ研究所は、いつになく落ち着かない雰囲気が漂っていた。
 じつは今日は、完成したばかりの最新兵器のお披露目式が極秘で催される日なのである。
 それだけではない。
 研究所が建設されて以来の超VIPが来客として予定されている。
 すなわち、今回完成した兵器とは、それほど先進的かつ驚異的なものだということだ。

 …ふと、空からプロペラ音が聞こえてくる。
 研究所の前には、早くも多数の研究員たちが来客を迎えるべく整列していた。

「君が責任者か?」

 何人ものボディガードを従え、ダークスーツに身を包んだ老人がヘリから降りて、最前列の研究員と握手を交わす。
 黒いサングラスの似合う、なかなか渋みのある老人だ。
 その老人と握手を交わした研究員も、笑顔を見せることなく応える。

「主席研究員の鬼意(おにい)です。お目にかかれて光栄です、首相」

 そう…このダークスーツの老人とは、この国の行政府の長・内閣総理大臣だった!

「なにか恐ろしい兵器を開発したようだな?」
「はい」

 特に多くを語ることもなく、鬼意は首相と並んで研究所の中に入っていった。
 研究所の外では、100人の警察官による厳重な警備体制が敷かれていた。


 鬼意は首相をともなって実験室に入ると、放射能さえ遮断する厚い扉を閉めた。
 円錐型の広い実験室は、無機質な白い壁に囲まれた、静かな空間だった。

「では、見せてもらおうか。君が開発した新型兵器を」
「はい。 ……では、頼む」

 鬼意が携帯電話に合図を送ると、ものものしい轟音とともに上方の壁のシャッターが開いた。

「ご覧ください。わが国最高の技術と叡智を結集させて開発した……饅頭型大量破壊兵器『YUKKURI』シリーズです!」


(注)この曲をBGMに物語をお楽しみください→ http://jp.youtube.com/watch?v=cGsez2Acyys


「な、なんとっ!?」

 首相が絶叫する。
 よほど驚愕したらしく、かけていたサングラスが吹っ飛んで床に落ちた。

「まずは『YUKKURI』シリーズ・ゼロワン、自律型バンカーバスター『REIMU』の登場です!」

 上空でポッカリと口を開けた格納庫の中から出てきたのは、なんと空飛ぶ9匹のゆっくりれいむだった。
 雁の群れのように凸型に並びながら、みんな一様にもみあげをピコピコと動かしている。
 威嚇するようにプク~ッと体を膨らませているその姿は、まるで小型の爆弾を思わせる。

「馬鹿な! こんなことが…!」

 驚くのはまだ早い。

「次は『YUKKURI』シリーズ・ゼロツー、自律型大陸弾道ミサイル『MARISA』の登場です!」

 れいむの後からつづいて出てきたのは、同じく9匹のゆっくりまりさだった。
 人を小馬鹿にしたような憎らしい表情はそのまま、進行方向にとんがり帽子の先っちょを向け、それを軸としてクルクル回転しながら飛んでいる。
 おなかのあたりで動いているのはぺにぺにだった。
 れいむとは違った飛行方法に、首相はあんぐりと口を開けていた。

「最後は『YUKKURI』シリーズ・ゼロスリー、誘導型地対空ミサイル『ALICE』の登場です!」

 驚いて声も出せない首相にトドメを刺すがごとく、まりさの後につづいて姿を現したのは、仰向けになって飛ぶ9匹のゆっくりありすだった。
 全匹とも血走った目で前方のまりさたちを凝視したまま、黄色い涎を噴き散らし、おなかのぺにぺにを回転させながら飛んでいる。

 9匹のゆっくりれいむ。9匹のゆっくりまりさ。9匹のゆっくりありす。
 総勢27匹の空飛ぶゆっくりが、実験室の上空をグルグルと周回している。
 研究員たちから、お披露目会の大成功を祝して割れんばかりの歓声と拍手がまきあがった。
 首相の目には涙があふれ、枯れた肌を伝った。

「おおおおおなんという光景だ……このような光景が現実のものになるとは!」

 首相の言葉に、実験室は大歓声につつまれる。

「この『YUKKURI』シリーズに爆薬を装備させれば、たちまち強力な兵器となりえます」
「うむっ」
「しかも一発にかかるのは爆薬代とエサ代のみ。放熱もほとんどないため、赤外線レーダーやノクトビジョンにも映りません」
「素晴らしい!」

 この生物兵器が、21世紀の世界の勢力図を塗りかえることになるだろう。
 わが国が生んだ最新の饅頭型大量破壊兵器『YUKKURI』が世界を席巻する日は、すぐそこまで来ている!
 首相は往年の熱い血をたぎらせながら、拳を握りしめて確信していた。

「いかがです、首相?」
「すばらしい!! どうやって飛んでいるのかね!?」
「れいむ種はもみあげを上下に振ることで揚力を生み出して飛びます。さらにぺにぺにを回すことで空気の流れを変え、推進力を得ています」
「ほう!」
「まりさ種はぺにぺにだけで揚力を生み出します。そして帽子の先端の向きを操作することで進行方向を変えます。体の回転を加えているのは、
よりスピードを重視したためです。まりさは全種類の中で最高の巡航速度を誇ります」
「まさにミサイルそのものだ! 実に頼もしい!」
「ありす種は、れいむ種やまりさ種に比べてぺにぺにが大きいため、飛行に他の器官を必要としません」
「うらやましいのぅ…若い頃を思い出す…」
「あえて難を挙げるとすれば、仰向けでとんでいるために進行方向を失いやすい点です」
「改善は?」
「済んでいます。ありす種はまりさ種を追尾する性質があるので、誘導したい方角にまりさ種を飛ばせばいいのです」
「なるほど」
「まりさ種はスピードがあるので滅多に捕まりません。まりさ種さえ巧く飛ばせば、ありす種の誘導はきわめて容易です」

 主席研究員・鬼意の説明に、首相は力強くうなずいた。

「しかも首相、この兵器の存在は他国に一切伝わっていません。もし『YUKKURI』が飛んできても、誰も兵器とは思わないでしょう」
「そのとおりだ」
「ことによると、新種のゆっくりを発見したと喜んで歓迎するかもしれません。そしてドカンッ! です」
「ぶわーっはっはっは!! それでは、鬼意くん」
「さん付けでお呼びください」
「では鬼意さん! 君は今日づけで3階級昇進! さらに研究開発費を2倍にしてやろう! これからも国のために励んでくれたまえ!」
「恐縮です」

 鬼意が深々と頭を下げ、首相は実験室を後にした。
 そのときである。

「ゆぎゃあーーーーーーーっっ」

 実験室に『YUKKURI』の悲鳴がとどろいたかと思うと、先頭を飛んでいたれいむが落ちてきて床に餡子を撒き散らした。

「もっど……ゆっぐりじたがっだ……」

 空飛ぶ生物兵器も、死ぬときはただの饅頭にすぎなかった。
 直後、それまで空中を周回していた残り26匹の『YUKKURI』が、悲鳴をあげながら床に落ちて中身をほとばしらせた。

「なにごとだ!?」

 鬼意はちょうど自分のほうへ落ちてきたありすをキャッチして、体を確かめてみた。

「しまった、これか!」

 ありすのぺにぺにのあった場所からカスタードが漏れている。
 散々グルグル回したために、ぺにぺにが千切れて飛んでいってしまったらしい。
 まりさもぺにぺにが千切れ飛び、れいむはもみあげが千切れ飛んで、次々に落下して餡子とカスタードで床をデコレートした。

「ありずのぺにぺにがぁ!! どがいはのぺにぺにがぁ!! ぺにぺにがあああああああ!!!」

 性欲の強いありすにとって、ぺにぺにはカチューシャと並ぶ大切なアイデンティティーのひとつである。
 それを失ったありすは傷口からカスタードをべちょべちょと垂らしながら、これからどうやって生きればいいんだと絶望していた。

「ぺにぺに…ありずのぺにぺに…ぺにぺにぺに…ぺにぺにぺにぺにぺにぺにぺにぺにぺにぺに」

 右目は床を、左目は天井を向いたまま、ぺにぺにを失ったありすはとうとう発狂してしまった。

「ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 一方の鬼意も発狂寸前だった。
 約2年間も研究所に篭もって品種改良をくり返し、飛行できるまで育て上げた『YUKKURI』が、このありすを除いて全滅してしまったのだから。
 がっかりしながら手の中のありすを見てみると、

「ぺにっ…ぺにっ…ぺにっ…」

 と、カスタードを流し尽くして痙攣していた。
 こうしてすべての饅頭型大量破壊兵器『YUKKURI』は、実戦配備を迎えることなく存在を消した。
 実験室はただの饅頭となったゆっくりの皮と餡子、カスタードが散乱し、甘ったるい匂いが充満していた。

          *          *          *

 ちなみに、今日は節分だった(笑)
 先ほど官邸から電話があり、昇進と研究費倍増の話はなかったことにすると伝えられた研究員たちは、やる瀬のない怒りで爆発寸前だった。

「ちくしょー! 俺はこの2年間、あんなキモい饅頭を必死に育ててきたのに! また振り出しかよ!」
「俺なんか嫁さんに逃げられちまった! シャワーカーテンまで持ってっちまったんだぜ!?」
「てやんでぇ! もともと饅頭ごときに期待した俺らが馬鹿だったんだよ!」
「どぼじでごんなごどに……」

 研究員たちは食堂に集まって、歯を食いしばって泣いていた。
 そのとき……

「おには~そと! ふくは~うち!」

 キッチンのおばちゃんがそんなかけ声とともに豆を撒いていた。
 おばちゃんをボゥ…と眺めていた研究員たちは、5分後には食堂から消えていた。


 ガイーン…

 鉄の戸が開けられ、室内に電灯が点けられる。

「ゆ?」
「ゆゆ?」
「ゆっゆっ!」

 室内にはプラスチック製のケージが山と積み上げられ、中には失敗作のゆっくりがギュウギュウ詰めにされていた。
 研究員たちは扉を閉め、ケージから次々に失敗作ゆっくりを出していった。

「ゆっ! おにいさん、ゆっくりしていってね!」
「「「「「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」」」」」

 失敗作とはいえ、ただ飛べないだけであって健康そのもの。
 ケージから出されたゆっくりたちは「ゆっくりしていってね!」を叫びながら、研究員たちの足元にすり寄ってきた。

「みんな、準備はいいか?」
「オッケーでぇす」
「なんか俺ワクワクしてきた!」
「ハァハァ…」

 『YUKKURI』の失敗で殺気立っていた研究員たちは、どこから調達したのか、全員が大豆の弾丸を装填したエアーライフルを持っている。
 そんなアブナイ雰囲気を感じ取ることもできないゆっくりたちは、優しくしてもらおうと体を擦りつけてくる。

「すーりすーり」
「ゆっゆっゆっ!」
「おにいさん、かわいいれいむをな~でな~でしてね!」
「やさしくほごしてね!」
「ゆゆ~ん、まりさにおいしいごはんをもってきてね!」
「ゆゆっ? そのくろいのはなに? ゆっくりできるもの?」

 鬼意ほか、数人の研究員たちは銃のセーフティを外した。

「やっちまいなぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「「「ヒャッハーーーーーッ!!!!! おにわぁぁそとおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」

 ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!!

 ゆっくりたちの阿鼻叫喚の宴がはじまった。
 ライフルから発射された大豆弾丸が、饅頭であるゆっくりたちの柔らかい体にめり込んでいく。

「ゆぎゃーーっ!! いだいよぉぉぉぉ!!」
「やべでね!? ゆっぐりやべでね!?」
「ゆっぐじざぜでぇ!!」
「ゆびゃびゃびゃびゃびゃびゃ!!」
「どぼぢでごんなごどずるのおおおおおおおおお!!?」

 ゆっくりたちは必死の形相で壁のほうへ逃げ出した。
 だが…

「ゆっくりにげるよ! ゆっくりにげるよ! ゆっぐべぇ!?」

 あるゆっくりまりさは、パニックを起こした仲間たちに押し潰され、餡子を吐き出して死んだ。


「ゆゆ!? これたべられるよ! むーしゃむーしゃ、それなり゙り゙り゙り゙り゙り゙り゙り゙り゙り゙り゙り゙」

 あるれいむは、逃げることも忘れてむしゃむしゃ大豆を食べていたところを狙い撃ちにされ、壊れた目覚まし時計のような声を発しながら息絶えた。


「れいむのおちびちゃんたち! ゆっくりしないではやくおくちにひなんしてね!」
「おかーしゃん!」
「ゆっくちはいりゅよ!」
「ゆゆっ! これでむてきだね! ぶびゅびゅびゅびゅびゅびゅびゅびゅ!? あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙でいぶのあがぢゃんがぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 口の中に2匹の赤ちゃんを保護した母れいむは、研究員に口のあたりを集中砲火されて穴だらけになった。
 瀕死の母れいむは小さなトンガリ帽子と赤いリボンをペッと吐き出すと、PTSD(心的外傷後ストレス障害)になってから悶死した。


「ゆぐっ! まりさ! れいむといっしょにゆっくりにげようね!」
「まりさはしにたくないぜ! れいむはまりさのたてになるんだぜ!」

 まりさは、つがいのれいむを盾にして後ろに隠れた。

「ゆっへっへ、これでゆっくりあんしんだぜ!」
「どぼじでそんなことするのぉぉ!? まりさはれいむのだーりんでしょおおお!? ゆぎゃーーーががががががががががががががががが!!!」

 まりさの盾となったれいむに雨あられと大豆がふりそそぎ、れいむはハチの巣になって全身から餡子を垂れ流した。
 さらに、

「ゆぼぉ?? ゆごぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ!!?」

 れいむの体を貫通した大豆が、まりさの皮を貫いて餡子をこねくり回した。

「「もっど……ゆっぐり……じだがっ……だ……」」

 まりさとれいむは、折り重なるようにして逝った。


「ゆくぅっ…とかいはのありすのみりょくで、おにいさんたちをゆっくりせっとくするわよっ」

 あるゆっくりありすは、自分の魅力で研究員をメロメロにして助けてもらおうと、決死の覚悟で皆とは逆方向にポインポインと跳ねていった。

「おにいさん! ありすをゆっくりみていってね! それからゆっくりめでてね! きゅーとなとかいはのありすでべべべべべべべべべべべ!!!」

 あわれ…ありすの都会派の魅力はこれっぽっちも人間に伝わらなかった。
 だが、同じことを考えるゆっくりは他にも存在した。


「そんなんじゃだめよ! もっとかげきにあぴーるするのよ!」

 別のありすは決死の覚悟で研究員たちに近づくと、艶っぽい流し目を研究員に向けながら、熱い息を吐いた。

「ゆふんゆふん…ゆっふふん……ちょっとだけよぉ……ちょっとだけなんだからぁ……」

 カスタードの詰まった体をくねらせながら、研究員の足にウニウニと自分の体を擦りつけた。
 動きの止まった研究員に、ありすは内心「いけるわ!」とガッツポーズしたが、研究員はスチャッと銃口をありすの体に押しつけた。

「むほっ! おてつきはだめよぉ…でもすてきなおにいさんになら、すこしだけゆるしてあばばばばばばばばばばばばばばばっ!!?」

 ちょっと大人だったありすは、床にカスタードを撒き散らしてその生涯を終えた。


「むきゅん! ほんとうのみりょくはからだじゃないわ! ないめんのみりょくこそたいせつなのよ! ぱちぇがみをもってしょうめいするわ!」

 あるゆっくりぱちゅりーは、むきゅむきゅ言いながら決死の覚悟で研究員に近づいていった。

「むきゅっ! おにいさん! ぱちぇはそのじゅうをしってるわ!」

 ぱちゅりーは銃の知識を披露して、研究員たちの仲間に加えてもらおうと考えた。

「あめりかりくぐんさいよう、こるとしゃせい、えむじゅーろくえーわん。ぜんちょう、きゅうひゃくきゅうじゅうみり。じゅうりょう、
にせんはっぴゃくろくじゅうぐらむ。はっしゃそくど、まいふんはっぴゃくはつ……」

 ぱちゅりーは滔々と解説をつづける。
 最近のゆっくりにはガンマニアもいるのかと、研究員たちは驚いた。
 実際には、ぱちゅりーは誰かが落としていった「月間 Gun」を拾って読んでいただけなのだが…。

「りゅんぐまんほうしきのさいようと、にーにーさんみりたりーぼーるかやくのしようによって、けいりょうかとこすとさくげんにせいこうしたが、
めんてなんすさいくるがみじかく、ぼるとのふかんぜんへいさのたはつにより、じっせんでは…」

「残念だったな、これはM16A5だ」
「むぎゅうっ!!?」

 ダダダダダダダダダダダダダダッ

「むぎゅうっっむぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ!!!」

 ぱちゅりーは全身に大豆を浴びて生クリームを撒き散らした。

「むぎゃ…っはぁ……ぱちぇが……まちがえるなんて……」

 どうやらぱちゅりーの知識は少々古かったようである。
 真っ白な生クリームにまみれてクチャクチャになったぱちゅりーを見て、ゆっくりたちはぷるぷる~っと震え上がった。

 床と壁一面に皮や餡子やカスタード、生クリームが付着する中、生き残ったのはれいむ、まりさ、ありすの3匹だけだった。
 みんな壁の隅っこに固まって、怯えながらこっちを見ている。

「どぼじで…どぼじでこんなことするの…?」
「どうしてって、今日はせつゆんだろ?」
「れいむせつゆんなんてしらないよぅ…」
「ゆっくりに大豆を投げるお祭りだよ」
「どぼぢでだいずをなげるのぉ!? いっしょにゆっくりしていってよぉ!!」

 3匹は固まってゆんゆんと泣き出した。

「だって、ふつう餡子って小豆からできるもんだろ? だから、偽物の餡子を体内に詰めこんでる悪いゆっくりを大豆で祓うのさ」
「でいぶのあんこさんはにせものじゃないよおおおお!!」
「ばりざはわるいゆっくりじゃないよ!! いいゆっくりだよ!! ゆっくりりかいしてね!! ぷんぷん!!」
「ありすはあんこじゃないわ! かすたーどよ! しつれいしちゃうわ!!」
「知るかボケが!!」
「「「ゆぐっ」」」

 3匹は押し黙った。

「じゃあお前ら、ハチの巣になって死にたくないわけ?」

 3匹は、もちろん死にたくないと言うように顔(顔しかないけど)を縦に振った。

「じゃ、生き延びたいなら空を飛べ。お前らはそれができなかったから失敗作になったんだ」

 それを聞いた3匹は、空を飛ぼうと頑張った。
 発情してもいないのに必死でぺにぺにを膨らませ、ぷるんぷるん振り回す姿は意外とかわいい。
 だが不幸なことに、ここにいるのは愛でお兄さんではない。

「ゆぐっ…れいむはゆっくりおそらをとぶよ……ゆっくりとぶよ……ゆっくりおそらをとびたいな……ぴこぴこぴこぴこ……ぷくぅ~」

 "ぴこぴこ"とか"ぷくぅ~"とか、どうしていちいち擬音を発するのか……ゆっくりにまつわる不思議のタネは尽きない。
 れいむは懸命にもみあげを上下に振りながら、体をぷっくりと膨らませている。
 ほぼ総受けのれいむ種はぺにぺにが小さいので、まりさやありすのように揚力を生み出すことができないのだ。


「ぺにぺにさん、まりさのすてきなぺにぺにさん、まりさをゆっくりとばせてね! くるくるー! くるくるー!」

 まりさは「くるくるー」と言ってフィギュアスケートのスタンドスピンのように回転しながら、ぺにぺにを振り回した。
 だが、まりさの体は少しも飛ばない。
 そのうち、まりさは回転のしすぎで目が回ってきた。

「くるくるー…くるくるー…くるく……る…るー……る……る……」

 とうとうまりさはヘタリと座りこみ、頭をクルクル回してピヨッてしまった。


「ゆほぉっ! とんでぇ! ゆっくりとんでぇー!」

 ありすはまりさを凝視しながら、自ら発情状態になった。
 性欲もなかったのに、誰も振動を与えていないのに、ありすは発情した。
 しかも驚いたことには、目の前のまりさを襲うことなく必死にぺにぺにを振り回して飛ぼうとしている。
 レイパー状態のありすとは思えない姿である。
 命の危険にさらされると、ゆっくりは想像以上の進化を見せるらしい。

「とぶのよありす! ありすはかれいにおそらをとぶのよ! とかいはらしく、おそらからみんなをみくだして…」

 プチュンッ

「ゆぎゃあーーーーーーッ!!!!」

 ありすのぺにぺにが、振り回しすぎて千切れて飛んだ。

「あじずのじまんのべにべにがぁーーーーーーーーーーッ!!!!!」

 ありすは泣きながらぺにぺにのところまで這っていくと、傷口同士をくっつけた。

「ゆっ! くっついたわ! ありすのぺにぺにが、もとにもどったわ!」

 だが、オレンジジュースも水溶き小麦粉もないのに皮が再生するわけがない。
 ありすのぺにぺには再びポテッと床に落ちた。

「どぼぢでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!???」

 実験室でのありす同様、アイデンティティーのひとつを喪失したありすは発狂した。
 発狂したあげく、本能のまま視界に映ったまりさに突撃する。

「ばぁぁぁぁぁじぃぃぃぃぃざぁぁぁぁぁあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!!!」

 都会派らしく、後ろからまりさに襲いかかるありす。
 目を回していたまりさもさすがに意識を取り戻した。

「ゆんやあーーーーーっ!!! はなじでぇーーーーー!!!!」
「ごっすんごっすんごっすんごっすん!!」

 ありすはぺにぺにも無いのに、まりさに体を打ちつけた。

 ビタンッ! ビタンッ! ビタンッ! ビタンッ!

「ゆがはぁっ! ごぼぉ! あんこでちゃうぅ…ゆげろげろげろげろげろ…」
「ばじざのあんごもずでぎよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 愛のない乱暴な行為に、まりさは大量の餡子を吐き出した。そして、

「いくわよばでぃざ!! んほおおおおおおおおおすっきりーーーっ!!」
「ずっぎりなんでじだぐないよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! ずっぎりーーーっ!!!」

 まりさの額からニョキニョキと茎が生えてきた。
 だが、ありすはまりさを放さない。
 長い舌をベロンチョと伸ばしてまりさの吐いた餡子を味わいながら、背後から襲いつづけた。
 …ぺにぺにを失ってもにんっしんっするなんて、ゆっくりってば本当に便利なものだ。

「もっと……ゆっくりしたかった……」

 まもなく、まりさは黒ずんで死んだ。
 ありすはしばらくの間へっこへっこと体を振っていたが、ようやくまりさが朽ち果てたことに気づいた。

「ユヒー…ユヒー…ユヒヒヒヒヒヒヒッ」

 ニヤニヤ笑いながら、涎を垂らすありす。
 レイプされてハリネズミのように茎を生やして死んだまりさ。
 そんな光景を目の当たりにしたれいむは恐怖でガクガク震えながらも、足がすくんで動けなかった。

「でいぶううううううううううううう!!!!」
「ゆぎゃーーーっ!!! こっちこないでぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「つんでれいむもだいずぎよおおおおおお!!!!」
「ぢぬぅぅぅぅぅ!!! でいぶぢんぢゃうぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

 ビタンッ! ビタンッ! ビタンッ! ビタンッ!

「だずげでぇ!! おにいざんだずげでぇぇぇ!!」

 れいむは近くにいた主任研究員・鬼意に助けを求めた。

「助かりたかったら飛んでみろ。飛べばありすから逃げられるだろ?」
「ゆぐっ!?」

 れいむはありすに押し潰されながらも、もみあげをバタつかせてぷく~っとふくれた。

「ぴこぴこぴこぴこ! ぷくぅぅぅぅぅ!」
「んまあああでいぶったら!! そんなによろこんでぐれるなんで、あじずのあいがあふれぢゃうううううううう!!!」

 もみあげの動きを悦びの証だと信じて疑わないありすは、ますますハイになって体を打ちつけた。

 バチンッ! バチンッ! バチンッ! バチンッ!

「ゆぎょほぉ!!? ぷひゅうーるるるるるるるる…」

 れいむはショックに耐え切れず、溜めこんでいた空気を漏らしながら縮んだ。
 しかし健気にも、もみあげをバタつかせることだけはやめなかった。
 自分は飛べるはずだと信じて、涙を流しながら、もみあげを動かすれいむ。

「頑張れいむ!」
「飛べっ!」
「研究費倍増の夢を叶えてくれ!」
「まぢ頼む!」

 鬼意たち研究員は、れいむが奇跡を起こすのではないかと考えていた。
 命の危険にさらされたありすが自らレイパー状態へと覚醒したように、このれいむも飛べるようになるのではないか…と。

「ゆぐっ、ゆぐっ、ぴこぴこぴこぴこ…」

 鬼意たちに励まされ、れいむは茎を生やしながらも必死にもみあげを上下に振った。
 すると……れいむの体は少しずつ空中に浮きはじめた!

「「「「おおおおおっ!!!?」」」」

 鬼意たちから歓声が上がる。
 失敗作だったれいむが、命の危険を回避するために、今、確かにお空を飛んでいる。
 ありすの魔の手から逃れたれいむは、全身を駆けぬける浮遊感に、満面の笑みを浮かべて歌うように言った。

「ゆ~♪ おそらをとんでるみたい~♪」

 その瞬間、

 ぷちぷちぃっ

「ゆんぎゃあーーーーーーーーッ!!!」

 れいむのふたつのもみあげが、激しい上下運動に耐えられずに千切れて飛んだ。

「でいぶぅぅぅぅ!! あじずのどごろにがえっでぎでぐれだのねぇぇぇぇぇぇぇ!!?」
「でいぶのきゅーとなもみあげがぁぁぁ!! あじずがぁぁぁぁ!! ゆぎえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「ごっすんごっすんごっすんごっすんごっすんごっすん!!! んほおおおおすっきりいいいいい!!!!」
「ゆぐゔゔゔっ!! でいぶはあじずとのあがぢゃんなんがほじぐないよぉぉぉぉぉぉ!! ずっぎりーーーっ!!!!」

 れいむはまりさと同様に、大量の茎を生やしてその生涯を終えた。
 後に残ったのは、発狂したありす1匹だけとなった。

「駄目だったか」

 鬼意はがっくりと肩を落とした。

「主任、もみあげやぺにぺにの接着面の強化が、今後の課題ですね」
「それに、命の危険にさらされることで、ゆっくりは脅威の進化をはかることが確認できました。これは大いなる成果だと思われます」
「まぁまた頑張りましょーよ、主任!(笑)」

 自分を慰めてくれる研究員たちに、鬼意は心から感謝した。
 彼らがいるからこそ、今までの研究の歴史があり、再び成功への希望が持てるのだった。

「そうだな…。よし、明日からまた頑張ろう! その前に景気づけだ!」
「「「それでこそ主任です!!」」」

 鬼意たちはエアーライフルを握りなおした。

「諸君! 明日の未来のために邪気を祓っておこうじゃないか! 鬼は外――――っ!!!」
「「「おにはぁそとぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」

 ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ!!!

「ゆぎゃあばばばばばばばばばばば!!!!!!」

 こうして、邪気…レイパーありすは大豆によってお祓いされ、研究所はいつもの希望をとり戻した。

 『せつゆん』……なかなか楽しいイベントである。




~あとがき~
生牡蠣にあたって何日も伏せってました...(>_<;)・゚゚・。泣
よく考えたら、野生のゆっくりも食べたらあたりそうじゃんね...*1))

今回はいろいろ新しいことに挑戦しました。
ふたばで「BGMはワルキューレの騎行だよな」ってレスを見て、使わせていただきました(笑)
武器の情報とか集めるの大変だったな…でもすごく勉強になったかも。
『竹取り男とゆっくり』もちゃんと書くから待っててくださいねヾ(*ゝω・)ノ

あ、あと、名乗らせてください。
「ユ~カリ」と申します、よろしくお願いします!(人´ω`)~♪

ではまた次回お会いしましょう。
じゃね~♪

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最終更新:2022年04月16日 23:41

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