ゆっくりブリーダーの訓練所では、今日もゆっくりのエリートと呼べるほどの良いゆっくり達を作り出す訓練が行われている。

「ゆっくりしていってね!」
 その部屋は、人工的だが、どこか温かみがあり、そのまま眠ってしまいたくなる様な風情がある。
 ゆっくり達の部屋は、これから続く長い訓練の日々に耐えられる精神を身に付けるためにも、ゆっくりにとって本当にゆっくり出来る場所となっているのである。
 そんな部屋に、一人の男が、ゆっくりれいむを置いた。

「ゆっくりしていってね!」
 このれいむは、どうやら新しく訓練を受けるゆっくりらしい。そのふてぶてしい面構えから見るに、野生のゆっくりのようだ。
「ゆっくりしていってね! ここはれいむのいえだから、おじさんはさっさとでてってね!」
 ゆっくりれいむは身勝手な事を言い、環境の良さからここを自分の住みかだと言い張った。
 最初、ゆっくりはこの場所の居心地の良さから、必ずこういう態度をとる。
 そんなゆっくりを、当然だがブリーダーは即座に叱る。
 だが、その言葉は非常に穏やかなものである。
「ここは君の家か……じゃあ、出て行く事にしよう」
 そう言い残して、部屋に鍵をかける。数日間の絶食の始まりだ。

「ゆ……ごはん……おなか……すいた……」
「まだご飯をあげるわけにはいかないな、君はまだまだ死なない」
 数日前、まるまると太っていたゆっくりれいむが、見る影もなくやせ細っている。
 もはや動く事も出来ない様子で、ブリーダーの姿を見ても哀れさを誘うほどの小さな声で訴える事しかしない。
 だが、ブリーダーはその様子を見ても眉一つ動かさない。
 本当に餓死直前のゆっくりは、言葉を発する事も出来ないし、やせ細るどころかアンコが透き通って真っ黒に見えるほど皮が薄くなるからだ。

 ちなみに、この状態のゆっくりに僅かでも食事を与えてしまえば、もう絶対に言う事を聞かない。
 例え瀕死になっても、哀れに振舞えば助けてくれる。それを知ってしまえば、ブリーダーの言う事など聞く必要を感じないからだ。
 ブリーダーが部屋を出て行こうとすると、ゆっくりは凄まじい勢いで飛び掛ってきた。
「ま”っでえ”え”え”え”え”ぇぇぇぇぇ! ぼん”どに”お”な”がずい”だの”お”お”お”ぉぉぉ!!!」
 顔をぐしゃぐしゃにして、みっともなく訴えかけるゆっくりを叩き落し、ブリーダーは部屋を後にした。


「そろそろかな……」
 更に数日後。
 全身が真っ黒になり、何かを要求するどころか、眼球すらまともに動かないゆっくりれいむを前に、ブリーダーは呟いた。
「これが食事だ。これまで散々自分だけでゆっくりした分を差し引いてる。食べられるだけありがたく思うんだぞ」
 こんこんと諭してから、一口分のスープをゆっくりれいむの口元に持って行く。
「おいしい……ゆっくりできるよ……!」
 一口でも、僅かに回復したらしい。しみじみと、スープを惜しむ様に味わい続けている。
「これからも、自分だけでゆっくりするとこうなる。わかったら、もう二度と自分だけでゆっくりするなよ」
「わかりました……だから、もっとちょうだい……」
 あえぐ様に訴えるゆっくり。だが、ブリーダーはそのまま部屋を出ようとした。
「ま”っでよ”お”お”お”ぉぉぉ! も”っどぢょう”だい”い”い”い”ぃぃぃ! ゆ”っぐり”でぎな”い”ぃぃぃぃぃ!!!」
 ドアを閉めた直後、泣き叫ぶゆっくり。どうやら、このゆっくりはまだまだ元気だったらしい。
 ブリーダーはため息を一つこぼし、限界を見極める腹を固めた。


「今度はどうかな……」
 数週間後、全身が真っ黒になり、もはや生死すら分からないゆっくりの前で、ブリーダーが呟く。
「ご飯をあげる前に、一つだけ言っておく。今回が最後のチャンスだ。これでダメなら、加工所送りにする」
 数週間前と同じ様に、だが厳しい顔つきで宣言するブリーダー。
 そのままゆっくりにスープを与えると、僅かずつ飲み込んでいく。
「ゆ……ゆ……」
 僅かに眼球が動く。哀れがましいその動きを見て、ブリーダーはため息をついた。
「残念だが、君は加工所送りだ。恨むなら恨んでも良いけど、自分が何をしたかゆっくり考えてみるんだな」
 そのままゆっくりれいむを抱えて、部屋を後にするブリーダー。
 ゆっくりれいむは、なぜかと訴える様な眼差しでブリーダーを眺めていた。


――ゆっくりの訓練方法、その一。
――特に野生のゆっくりは、哀れがましい動きをして、何とか同情を誘おうとする。
――そのため、まずは餓死直前まで追い込む事で自分の立場を理解させ、それでもダメならば加工所へ送る。





 ゆっくりブリーダーの話が出てきてあまりにも嬉しかったので、書いてみました。
 この後もいくつかありますが、イジメ系ではないので削除させていただきました、ご了承下さい。
 下記は、訓練方法そのニ~五です、ゆっくりに本気で訓練施すとなると、多分こんな感じになるのではないかなぁと思います。

――ゆっくりの訓練方法、そのニ。
――他の者の苦しみを無視する、自分だけ食事を摂ろうとするなど、自分勝手な行動に出たゆっくりは叱る。
――どれだけ優秀でも、自分勝手な行動だけは決して許されない事を頭に叩き込む。

――ゆっくりの訓練方法、その三。
――ゆっくりを叱る時は、他のゆっくりから見えない影で、諭す様に叱る。
――ゆっくりにもプライドは存在する。それを崩さない事を念頭に置く。

――ゆっくりの訓練方法、その四。
――一度でも人間やその係累に危害を与えたものは、加工所送り。
――周囲のゆっくりに聞こえる様に加工所送りを宣言する事で、絶対にやってはいけない事を頭に叩き込む。

――ゆっくりの訓練方法、その五。
――ゆっくりを褒める時は、他のゆっくりが見える様な状況で、可能な限り褒める。
――ただし、褒めすぎて調子に乗らない様注意する事を念頭に置く。

 by319

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最終更新:2022年04月17日 00:16