「......」

あの謎の男に呼び出され、気が付けばこのような場所に捨て置かれていた。
始めは我ら甲賀卍谷衆と伊賀鍔隠れ衆の面々のみを集めたのかと思った。
だが、それにしてはチト妙であった。
お上の気が変わり互いの10人を取りやめ、どちらかの谷が全滅するまで戦わせるつもりであれば、納得はできずともまだ理解はできる。
だが、あの場にいた者の中には、忍とは到底思えない者が大勢いた上に、赤い首輪を斃せばこの殺し合いから抜け出すことが出来るという。
この時点で矛盾だらけだ。

加えてこの名簿。
伊賀も甲賀も知る名はほとんどなく、ましてや互いに選ばれていた10人の名もほとんどない。
わしの知る名は陽炎と朧殿に薬師寺天膳。そしてこのわし、甲賀弦之介だけだ。

(よもや、わしら四人は徳川の者ではない何者かに囚われこの殺し合いを強制させられているのだろうか)

なぜこの四人に絞ったのかはわからないが、これならばしっくりくる。

「ふむ...」

なぜこんな真似をしたのか、あの殺し合いを催した男に問いただすのは当然としても、そこに如何に辿りつくかが問題だ。
あの男は言っていた。
『赤い首輪は脱出の鍵であり手強いヤツだ。他の参加者と協力し打ち倒すのを勧める』と。

だが、それは状況によっては更なる争いを誘発する。見事赤首輪を打ち倒したところで、脱出できるのは一人のみ。
結局、その権利を奪い合い真の殺し合いへと昇華してしまうだろう。
故にわしはなるべく赤首輪の参加者を狙うのは避けようと思う。

(ここに刑部がおれば、なにを甘いことをとでも叱られたかもしれぬがな)

そんな脳内によぎるいつもの光景を思い浮かべ、つい苦笑してしまう。
だが、やはりわしは無闇に戦いとうはないのだ。
わしが尽力し犠牲者が減るのならば、それが一番ではないか。


(当面は陽炎との合流を目指すとしよう)

陽炎は基本的には無力な女だ。
人を殺せはするが、それはあくまでも一般の村人でもできる範囲。武器が無ければ無力も同然。
あやつの忍法はその性質上、女を殺すことはできんし状況がかなり限られる。
その使える状況も、まあ、こんな限られた空間での殺し合いの最中に女を抱こうなどと考える輩もそうはいまいて。

(陽炎もそのことはわかっているはず。無闇に殺しまわり味方を減らすような真似はしまい)

いまは、彼女がただの村人を装い親切な者に保護されていることを願おう。
危機が迫る前に合流を果たし守ってやらねばな。

それと、薬師寺天膳。
彼奴についてはあまり知らぬゆえ断定はできぬが、伊賀のまとめ役の風格を感じる男だ。
数では互角のこの機にわしと朧を殺ろうと考えるやもしれぬ。
強く警戒しておいて損はない。

そして。

(...朧どの)

朧。わしと恋仲にあった、伊賀鍔隠れ衆の少女。
共に交わした言葉も、笑顔も、約束も。
彼女との一時、一片たりとも忘れてはおらん。

(だが...)

彼女は、不戦の約定が解かれた途端に、わしの甲賀卍谷衆の仲間を五人葬った。
いや、彼女が直接手を下したわけではない。
しかし、彼女がわしと仗助を伊賀の屋敷へと招き入れ、わしらを気にかけ探しにきたお胡夷、そして仗助が殺されたのは事実。
死んだ五人の首を並べ、ほくそ笑む朧どのの顔が浮かび上がる。
これが彼女の真意だったのか。それとも、そんなことはつゆ知らず、伊賀の者たちの独断でやったことだったのか。
わしとの逢瀬が嘘か真か。
知りたい。知らなければならない。
甲賀卍谷衆の頭領としてではなく、甲賀弦之介という一人の男として。


だが、知ったところでどうなるのか。
甲賀卍谷も伊賀鍔隠れも、互いに心より相手方の里を憎んでいる者は数多い。
朧どの一人の真意がわかったところで、もう死者が出ている以上、おいそれと止まることはできぬだろう。
朧どのの真意が争いに非ずとも、もはや戦いは止められない。
わしら四人が無事に生還できたとしても、その果てに待つのは互いの命を削り合う闘争の場。つまりは元通り殺し合うだけだ。

(...それでも)

それでもわしは、せめてこの一時だけでも甘い夢に溺れていたい。
朧どのと憎み殺し合うのではなく、ただ二人の男女として手を携えたい。

...嗚呼。未だにこれほど未練があるわしは愚か者なのだろう。

しかし、どうしてもその淡い願いを捨てることはできずにいた。



【Gー5/1日目/深夜】

【甲賀弦之介@バジリスク】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品1~2
[思考・行動]
基本方針: ゲームから脱出する(ただし赤首輪の殺害を除く)。
0:陽炎と合流する。朧を保護し彼女の真意を確かめる。
1:薬師寺天膳には要警戒。
2:極力、犠牲者は出したくない。
3:脱出の協力者を探す。

※参戦時期は不戦の約定が解かれたのを知った直後
※瞳術には制限がかかっています。以下が制限です。
  • 通常よりも疲労が溜まりやすくなる。
  • 相手の力量により効果が薄れる。一般人相手ならば自滅を強いることができるが、それなりに経験を踏んだ者ならば抵抗することも可能。
また、赤首輪の参加者に対しては動きを止める・怯えさせるのが精いっぱいである。


※左衛門は書き手枠のため名簿には記載されていません。そのため、弦之介は左衛門の存在を知りません。



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最終更新:2017年08月07日 00:13