「随分とクレイジーなパーティーだこと」
呆れたようにそう呟いたのは、黒いスーツに軍用コートを羽織った女だ。
均整の取れたスタイルと美しいブロンドヘアを、顔の右半分、目の上から頬の下にかけて残る火傷の痕が打ち消してしまっている。
女の名はバラライカ。犯罪都市ロアナプラにおける一大勢力である、ロシアンマフィア『ホテル・モスクワ』の大幹部であり、元軍人の戦争マニアだ。
どこかの少佐のように高らかな宣言こそしないが、ひとたび戦争となれば嗜虐的な笑みを浮かべ、残酷な仕打ちも厭わない。
ロアナプラでも屈指の“おっかない女”である。
「味方は現状ゼロ、武器はトカレフだけ、そして首には爆弾か」
首輪をなぞるバラライカ。
表面上は冷静だが、内心では導火線に火が着いている。
血の滾る戦争を、命を懸けた闘争を、心が自然の内に望んでいるのだ。
とはいえ、戦意だけに支配されているわけでもない。
バラライカにはマフィアの幹部としての立場がある。軍人時代からの部下を統率する者として、このような遊戯にかまけて命を落とすのは本意ではない。
「まあいいわ。手っ取り早く『赤い首輪』を殺せばいいのよね」
この島にはラグーン商会のレヴィやロックもいる。
障害となるなら殺害も辞さないが、そうでなければ協力も見込める相手だ。
『赤い首輪』の参加者は銃弾が効かないという。にわかには信じがたいが、そうした敵も考えると徒党を組むことも必要ではないか。
あるいは威力の高い武器を集めることも必要か。
――と。
そこまで考えて、バラライカは眉をひそめた。
繋がれた犬。自分を含めた殺し合いをしている参加者は全員がそうだ。
殺し合いに乗るか否か。
『赤い首輪』の参加者を殺すか否か。
邪魔をする他者を排除するか否か。
別の強力な武器を探すか否か。
そうした選択の全てが、殺し合いを開いた男に操作されているようで、気に食わない。
「そうね。生き残って、この島から出た暁には――」
しかし、バラライカは笑う。
笑顔が牙を見せる行為の名残だと述べたのは誰であったか。
獰猛な笑みを浮かべている“おっかない女”の胸中を全て知ることができるのは、本人だけだ。
「――こんな茶番(パーティー)を開いた主催者に、銃弾を以て感謝しないとね」
バラライカの後ろには死体が転がっている。
不用意に襲撃し、心臓を何発もの銃弾で貫かれた、哀れなNPCの吸血鬼。
それに一瞥をくれることもなく、バラライカは野獣の眼光で前を見据えた。
【I-2/一日目/深夜】
【バラライカ@ブラックラグーン】
[状態]:健康
[装備]:トカレフ@現実
[道具]:トカレフの弾薬、不明支給品0~1
[思考・行動]
基本方針:『赤い首輪』の参加者を殺して脱出する。その過程での障害は排除する。
1:『赤い首輪』を殺す準備を整える。
2:ラグーン商会の二人には会ってから考える
最終更新:2017年11月06日 23:24