これからどうするべきか。
至る所で肉欲が蠢く地獄絵図の中、暁美ほむらはこれからの方針について考えていた。


「クサッ(小声)お兄さんのおTNTNオトナおTNTNですね」

視界の端では、ひでが数人の男に囲まれて性をぶつけ合っていたが、奴に関しては放置しておくことにした。
危険人物ではあるが、下手に刺激すれば遭遇時の交戦の二の舞だ。
そして不本意ながらもこの数時間を共に行動してわかったことだが、ひでは自分から殴りにかかることはない。
誰かに肉体的危害を加えられた時だけ反撃に移ってくるのだ。
気味悪がれど、まどかがひでを攻撃するとは思えないため、比較的安全であると判断をくだした。
あれを性的対象にするとは物好きもいたものだと思いつつ、ほむらはひでを視界から外した。

「シャブリ・タイナラー」
(問題は...やはりあいつ)

視線の先には白髪の吸血鬼、雅。この地獄絵図を作り出した張本人でありながら、いまはベンチに腰掛けのんびりと光景を眺めている。

雅が作りだしたこの地獄絵図。ほむら自身、何度か吸血鬼化した女性に「あなたは同じ匂いがする」だの「本当は興味深々なんでしょ」だのと妙な言いがかりをつけられ身ぐるみを剥がされそうになった。
敵意はなかったため振り払うことは容易かったが、いつなんどきこの吸血鬼化した住民たちが本気で襲ってくるかわかったものではない。
当然、早く離れたいと思うのだが、ほむらが下北沢を抜け出す決心に至れないのもこの男が原因だ。
雅は人間に対して明確な敵意と悪意を持っている。
もしもこの男がまどかと遭遇すれば、なにをしでかすか想像に難くない。殺されるのは勿論、身体の隅々まで蹂躙されてしまうことだろう。
そんなことはあってはならない。その前に、この男を処分しなければならない。
だが、残る弾数は限られており、彼の不死性を凌駕する火力を有する武器も無い。
結局、いまはこの男を見張ることしかできないのだ。



「ふわぁ」

そんなほむらの思惑を知ってか知らずか、雅は暢気に欠伸を漏らしていた。
岡を攻撃した時は女ならば犯して食おうと言っていたが、ホモ・レズセックスに混じるつもりはないらしく、最初は引き気味ながらも嗤いながら眺めていたのだが、少し時間が経過すればこの様だ。
自分が発端となったというのに、この男には責任感というものがないのだろうか。

「いけないおTNTNなのら、ペンペン(棒読み)」

「つまらん。やめろやめろ。何をやってもつまらん」

雅は頬杖を突きながら吸血鬼たちの行為を静止させる。ひでと周囲の男たちは構わず行為に及んでいる。

「お前達。馬鹿の一つ覚えのように遊んでないで、さっさと他の参加者でも連れてきたらどうだ」
「オウコラァ!誰に口聞いてんだ、気持ち悪ィ髪しやがって田舎モンが!」
「......」

どこからか届いた罵倒に、雅は少し不機嫌気味な表情になり、スッと立ち上がり罵倒した893風味の男―――TNOKのもとへと歩み寄る。

「お兄さんのTNTNが、僕のお尻の中で暴れていらっしゃる(解説)」

「んだよその態度ォ。謝りに来たのか?ならまずはヨツンヴァインになれよ。あくしろよ」
「誰にものを申している」

パ ァ ン

ブーメランによる一閃。
吸血鬼と化したTNOKの頭部が胴体と泣き別れる。数メートルほど飛んだ頭部が地に落ちるのと同時、血を噴水のように巻き上げながらTNOKの身体が倒れる。


「私に舐めた口を聞いた以上、こんなものを避けられない者に私の配下たる資格はない」
「ヒイイイィィィィ!!」

男女問わずのハッテン場と化していた下北沢に恐怖と絶望の悲鳴が蔓延する。
眼前で起きた殺人に、先程まで交わっていた者が一様に混乱に陥り我先にと逃げ出した。

「ハッ。まるで蜘蛛の子のようじゃないか」

先程までの退屈を体現していたかのような態度が嘘のように、雅は逃げ惑う住民たちを愉快気に嘲笑う。
やはり、いつ見てもゴミ共の絶望の顔はたまらない。

「どれ。たまにはこういった狩りも悪くは無い」

そのまま、決して急ぐことなくゆっくりと歩き住民たちを追い始める雅。

「......!」

その雅の姿を、恐怖と嫌悪の入り混じった目で追うほむら。
やはり、あの男は始末しなければならない。それも可能な限り早急に、確実にだ。
決意を新たに、ほむらは雅の後を追う。

「これが...ご褒美なのぉ?なんだか犯されてるよぉっ!」

そんな二人の背中にひでの嬌声がかけられるが、彼らの反応は無かった。





とあるラブホテルの一室。
このさほど広くはない部屋で、岡、ロック、ガッツ、祥子、雫、奈々の6人は、岡に頼まれたロックを中心として情報交換の場を設けていた。

「殺し合い...だって?」

雫は思わずそう零す。
下北沢に連れてこられたのも、先程までは、なにかのサプライズ程度にしか考えていなかったのだから驚くのも当然である。

「信じたくない気持ちはわかるが、最初のセレモニーであの男が言ってただろう」
「セレモニー?あの男?なんの話だ」

雫は年上であるロックに対し、敬語も忘れズイと詰め寄る。
ボーイッシュながらも確かな美貌を有する彼女の顔が近づけば、普段ならば緊張してしまうものだが、彼女の戸惑いと怒りの表情を見せつけられてはそんな余裕はない。
とにかく彼女を説得しなければとロックは言葉を模索する。

「いいかい、落ち着いて聞いてくれ。きみも見たあれは夢じゃない。だから、こうして面識もない俺たちが首輪を嵌められて使うつもりのない部屋を借りてるんだ」
「だから、それがわからないと言っている。私たちはそんなものを見ていないし、それをハイソウデスカと信じられるわけがないだろう!」

駄目だ。彼女は現実を見れていない。
聞く耳をもたないというのはこういうことを言うのだろう。
尚も熱く詰め寄ってくる雫に、ロックは諦めと呆れの目を向けていた。

「いい加減にしてくれ。そうやって現実から目を背けてなにかが解決するのか。そうやって空想に甘えて逃げてどうにかなると本気で思ってるのか」
「いい加減にしてほしいのはこっちだ。そもそも、そこの厳つい人ならともかくどうして私たちが殺し合いになんて巻き込まれる謂れがあるんだ!」
「雫っ!!」

思わず感情的に叫び、奈々に手を引かれることでハッと我に返る。
いま自分はなんと言った。
殺し合いに巻き込まれるならガッツ達のような者だと、言い換えれば彼らなら巻き込まれても仕方ないという趣旨のことを言ってしまったのではないか?
空気が今まで以上に重くなり、奈々の叱咤と恐怖の入り混じる視線が刺さる。
違う。そういうつもりで言ったんじゃ...



「あ、あの」

おずおずと祥子が言葉を発する。
彼女が手にしているのは参加者共通の支給品である名簿。
一同から注目の視線を浴びる緊張感に、名簿を握る手に力が籠るのを確かめながら、祥子は口を開いた。

「たぶん、お姉さんたちの名前載ってないよ」
「え?」

ロックは祥子から名簿を受けとり目を通す。

「本当だ...名前が載っていない」

改めて隅から隅まで確認すれば、確かに『羽二重奈々』と『亜柊雫』の名前は記載されていない。
主催側のミスか?いや、彼女たちがセレモニーの記憶がないという言動と合わせると、彼女達はあの場にいなかった、つまり参加者ではないと考えた方が自然である。
これは自分の失態だ。彼女達には謝らなければならない。

「すまない。俺の早とちりで厳しい言葉を投げてしまった」
「こ、こちらこそすみません。つい感情的になってしまって、生意気なことばかり...それに、あなたにも妙なことを言ってしまって...」

雫は先程とはうって変わり、ロックに、そしてガッツに向けて頭をさげる。

「気にしてねえさ。お前の言う通り、俺みたいなのは殺し合いにおあつらえ向きだ」

自嘲や嫌味ではなく、淡々と事実を述べるガッツに、雫はそれ以上の追求はしなかった。
なにか事情があるのだろうが、それに同情するのは彼への侮辱。そう思わせる雰囲気が漂っていた。



「じゃあ、なんで君たちはここに?」
「私たちは...」

雫は語る。
目を覚ましたらここに連れてこられていたこと。ロックたちと違い殺し合いの胸を伝えられた訳ではなければ見せしめを兼ねたセレモニーを見せられたわけでもないこと。
それから数日間は下北沢で平和に暮らしていたこと。

その話を聞いたロックの眉間に皺が寄る。

(妙だな...彼女達が参加者でないなら、何故ここに連れてきた?)

現状、彼女たちの存在による殺し合いにおけるメリットは見受けられない。
むしろ参加者間の潰し合いを誘発するには邪魔な要素の方が多い。

なにか彼女達を連れてきた意味があるというのか。

「ひとつ、聞かせてもらってええか」

岡が挙手と共にズイと進み出る。

「お前ら二人...いや、こん中でここに連れてこられる前に自分が死んだ若しくは死にかけたって奴はおるか」

その問いに雫と奈々は顔を見合わせ、ふるふると首をふり返答する。

「そんな覚えはないが...どういうことだ?」
「個人的なことや。お前らはどうや」

岡が視線を向けるのはガッツと祥子。
特に反応を示さないガッツとは対照的に、祥子は顔を青くして震え出す。

「死にかけるなんざいつものことだ」
「そうか」



一通り聞き終えた岡は、顎に手をやり考える。
どうやらこの殺し合いは、完全にガンツの範疇を越えているらしい。
この中で瀕死の体験をしたのは、自分と祥子、ガッツの三人。
残る三人、特にロックはガンツにチームの一員として呼ばれる資格を持っていないため、この場にいるのは有り得ない。
やはり状況はかなりのイレギュラーである。
ここでは欲を出さずに、赤首輪の参加者を数人狩る程度に抑えて早期に脱出しておいた方が賢明かもしれない。
そのためには、やはり戦力となる者が必要だ。
戦場慣れし、ただの獣ではない協力者が。

「なあ、ガッツ。俺と組まんか」

岡が、その条件を満たしているガッツに目を付けたのは必然だったのかもしれない。

「化け物にも物怖じしない胆力、まともにやり合える実力。戦力にはうってつけや。俺たちなら、どうにかことをうまく進められるかもしれん」

勿論、たった二人で全てうまくいくとは微塵も思ってはいない。
だが、ドノバンとの戦いを見た限り、この男はやはり優良な素材であることは確かだ。
そのために慣れない勧誘を試みる岡だが...

「悪ィな。ツルんで戦うのは性に合わねえ。誰かの隣で戦うのも、護るのも、俺には縁のないことだ」

ガッツはそれを一蹴し、情報交換はここまでだと丸太を引きずり切り上げようとする。
聞きたいことは聞けた。ならばもう用はないと言外に告げていた。

その後を慌てて追おうとする祥子に、ガッツはジロリと睨むように目を向ける。



「邪魔だ。お前はそっちの奴らと行け」
「でも」
「改めて言っておくぜ。俺はお前みたいに弱っちいのが嫌いなんだよ。足手まといの癖にすぐに人様の領分に首を突っ込みやがる」

指を突き付け、意地悪く笑みを浮かべるガッツ。
その様を見ていた雫と奈々は、非情というよりは大人げない男だと思った。

「そっちの女たちは悪い奴じゃねえんだろ。なら、お前の大好きなお姉ちゃん探しはそいつらに頼むんだな」

言いたいことだけ言い切ると、それきり背を向け部屋を後にしてしまう。
祥子は寂しげに俯いたきり、顔を上げることはしなかった。

「...よかったのか、岡」
「しゃーないわ。あそこまで拒否るなら引き留めるのも無駄な労力や」

見過ごすのは惜しい人材だが、固執し衝突などでもすれば元も子もない。
岡は合理的に考え、ガッツを見逃さざるを得なかった。

「また外を見張っとれ。俺はもう少しスーツを調整する」

岡に頼まれた通り、ロックは再び窓際から外の様子を伺うことにした。


「...どうする、奈々」
「うーん...なんにせよこんな小さな子を放っておく訳にはいかないわ」

祥子を半ば強制的に託されてしまった二人だが、無害な幼子を見捨てて置けるほど薄情ではないつもりだ。
幾分か相談し合い、雫が祥子へと目を向ける。―――が。

「?」

祥子の姿が無い。
四人が各々の相談に入った隙を突き、彼女は姿を消していた。




誰かに雇われることはいくらでもあった。
長居することはなく、そのほとんどがその日限りの短いものだった。
岡が手を差し伸べたのは、そういう類のものであり、グリフィスのように本気で欲した訳ではなかったのはわかっている。
だが、彼はにべもなく断った。

いつからだろうか。
金欲しさにも戦場欲しさにも、誰にも雇われようと思わなくなったのは。

それほどまでに、彼の中のかつての仲間は、『鷹の団』という存在は大きかった。

だからこそ、それを切り捨てたグリフィスが、貪り蹂躙した使徒が、自身の身を蝕むほどに憎悪を膨らませる。
奴らをこの手で殺す。それだけが自分の生きる意味だ。
この道に他者が関与するのは、少しの繋がりでも残したくはない。
それが、岡の協力を拒んだ理由だ。

『ガッツ』
「...くだらねえ」

別れ際に彼女に厳しい言葉を投げかけたのは何故だ。
煩わしかったのか。苛立っていたのか。
おそらくどちらもあるのだろう。

だが、その対象は本当に彼女のような無力な者なのか。それとも...

「...キャス」

脳裏を過るその名前をポツリと口ずさむ。
煩わしいのは、苛立っているのは、本当は護ることから目を背けている...

「......!」

嗅ぎなれた臭いがガッツの鼻をつく。それもひとつや二つではない。
角を曲がれば、そこにはかつて人間だったもの達の欠片が散らばり街を悪趣味な芸術に仕立て上げていた。
仏はいずれもなにか強大な力で無理矢理引き裂かれたかのように傷跡を遺していた。

使徒か―――いや、違う。烙印に反応は無い。

下手人が何者かは分からない。
わかることはひとつ。

なにか、この街に使徒に匹敵し得る強力な力を持つ者がいることだけだ。

648: 戦線は下北沢にあり ◆ZbV3TMNKJw :2017/08/19(土) 01:31:18 ID:vo/IExBs0


「はぁっ、はぁっ...」

息を切らしつつ、祥子はガッツの後を追う。
彼女が奈々たちよりもガッツを選んだのは、なにも奈々たちが信用できない訳ではなかった。

ガッツは自分から独りになりたがっている。手を伸ばせなかった春花とは違い、自らの意思で拒んだ上でだ。
本当なら、そこに横やりを入れてはいけないのかもしれない。
けれど、だからといってそのまま放っておけば、彼も春花と同じように誰からも知られぬ場所でいなくなってしまう。
本当の孤独になってしまう。

祥子はそれが嫌だった。
もう、春花のような人を見殺しにしたくない。彼女のように孤独にしたくない。
祥子はそんなひとつきりの想いでいっぱいだった。

そんな折に。

「見ろよアレ」
「おいやっちまおうぜ!」
「やっちゃいますか!?」
「やっちゃいましょうよ!」

祥子の耳に届く三人の男の声。
人見知りな祥子は、そのやけにチャラついた声音に警戒心を抱き、とっさに街角に隠れひっそりと様子を伺う。
そこには、それぞれ赤色のジャンパーとサングラス、青色のトレーナー、金髪のサングラスと色とりどりの三人組が祥子に背を向け佇んでいた。

「そのための...右手?」
「スカウトォ...」
「あとそのための拳?」
「拳?自分のためにやるでしょー」
「金!暴力!SEX!!!」
「金、暴力、SEX!!って感じで...」


なにやらワイワイとはしゃぎながら、まるで何かを取り囲むように円を作る男たち。
すると、三人は徐にズボンに手をかけ下ろしたではないか。


「!?」

初めて見せつけられる他人の男の臀部と見え隠れする陰茎に、祥子は思わず凝視してしまう。
彼らはあんなところでナニをしているというのだろうか。

「なんぞこれ」

再び祥子の耳に届く声。
今度は三人とは違う、老人のような声だ。あの三人に取り囲まれているのだろうか。

「なんぞこっ」

グモッ、という音と共に、老人の声は止み、男の内の一人が腰を振りはじめる。

「あぁ~、中々いいじゃ~ん」
「オレにもヤらせてくれよぉ~」

男たちの輪は縮んでいき、やがて三人とも喘ぎを交えつつ腰を振り始める。
そこでナニが行われているのか―――まだ幼い祥子にはわからなかった。
彼女の脳裏に蘇るのは、あの火事での記憶。
歪んだ形相で、自分達に灯油をかけたあの忌まわしき少年少女たち。

「あ...あ...」

あの時の恐怖が身体を支配し、祥子は叫ぶこともままらなずペタリと尻もちをついてしまう。

「―――ウッ」

男たちが一様に背筋を伸ばし直立する。
やがて、ぽたりぽたりと液体が地面に滴れば、次いでドサリと小柄ななにかが地に落ちる。
老人だ。後頭部が異様に発達し、白い粘液に塗れた小柄な老人が地面に落ちたのだ。

「ウッ...げええ」

老人は唾を吐き捨て咳き込み、粘液を吐き捨てる。
男たちは、まだ満足できないとでも言わんばかりに老人の頭を掴み上げる。

650: 戦線は下北沢にあり ◆ZbV3TMNKJw :2017/08/19(土) 01:32:00 ID:vo/IExBs0

瞬間。

「お前達は、もういい」

突如老人が肥大化し、全裸の女性の身体が大量に生え始める。
女の身体は呆気にとられる男たちを包み込み、持ち上げ、纏わりつく。
その様を、祥子は腰が砕けたまま見ていることしかできない。
男たちが悲鳴と共に頭から爪先まで包み込まれ、三十秒ほどだろうか。
数秒の静寂の後、三つの球状のものが地に落ちる。
頭部だ。KBSトリオの苦痛に歪んだ顔が、地面に落ちたのだ。

大量の女体は収縮し、再び小柄な老人の姿へと戻る。

「んん?」

老人は、怯えた目で見つめる祥子へ振り返る。
彼女の姿を認識すると、腕を組み両袖に手を通しながら、彼女のもとへと歩み寄る。

「首輪...ふむ。実に興味深い」

老人は己で完結させるがごとく、ひとりごち、顎に手をやり頷く。
祥子は、未だに腰を抜かしたまま動けない。
先程の焼かれる前の幻影とは違う。
老人から醸し出される、得体のしれない強力な圧迫感に、ただ恐怖を抱いていた。

振り上げた老人の腕が巨大な魚のヒレのような形に変貌する。
その質、大きさ共に、祥子へと振り下ろされれば、為すすべなく彼女は潰されたカエルのようになるだろう。
老人は躊躇うことなく、ヒレを振り下ろす。



同時に。

上空より落下する人間サイズの丸太が、グシャリ、と老人を叩き潰した。

黒衣がはためき、血に濡れた丸太を肩に担ぎ上げる。

丸太を振り下ろした下手人の姿を認めた時、祥子の顔はパァッと明るくなった。

「ガッツ!」

仔犬のように顔を綻ばせる祥子に、ガッツは小さな舌打ちで返した。

「なんでこんなところにいやがる。あの女たちはどうした」
「うぅ...」
「...チッ」

祥子の態度でなんとなく察する。
おそらく彼女は間もなくして追いかけてきたのだろう。
それも、他の四人には内緒でだ。

より安全な場所はあったというのに、なぜこいつは未だに追ってくるのか。ガッツにはわからない。

「ふむ。なるほどな」

その答えを探る暇もない。





消えた祥子を追いかけ、ロック、雫、奈々の三人は街を駆けていた。
岡はやはりというべきか彼らと同行はしなかった。今回はスーツのメンテナンスがもうすぐ終わりそうという尤もらしい理由はあるが、本心は子供に構う気はないといったところだろう。

雫と奈々の二人は、注意を逸らした己の迂闊さに申し訳なさげに何度も謝り、ロックはその度に彼女たちを宥めていた。
実際、彼女たちを責める気にはなれず、むしろまだ社会人でもない彼女たちに祥子の一切を任せようというのも無理な話であるのは己が反省すべき点だろう。

(大丈夫かな、あの白髪の奴みたいなのに襲われてなきゃいいけど)

そんな打算の無い純粋な心配が過り、まだ自分にもちゃんとした良心があることを実感する。
自分は確かに無法者の町、ロアナプラに染まりつつある悪党かもしれないが、まだ腐りきっては無い。そうであると信じたい。

やがて、三人の耳に届く戦闘音。

音の出所はそう遠くは無い。
三人は自然と緊張と警戒心で気配を殺した歩き方になる。

ちょうど出所の曲がり角に差し掛かった時だ。
三人の鼻孔を、鉄臭い匂いがくすぐる。
ロックはその慣れ親しんだ匂いにいち早く反応し、右手で後ろの二人を制する。

(この先には、絶対にアレがある)

女二人に先んじて物陰から様子を伺うロックを出迎えたのは、苦悶の表情に歪むKBSトリオの頭部。
ロックが静止をかける前に覗いてしまった雫は思わず口元を抑え、続いた奈々は思わず手で顔を覆い悲鳴をあげかける。



「きみは見ては駄目だ。...見ないでくれ」

蒼白な顔でそう語る雫に気圧され、奈々は思わずコクコクと頷き目を伏せる。
先程までは生きていたKBSトリオの惨状を見て、これは殺し合いなのだと改めて認識する。

姿を隠しつつ、戦闘音の正体を確認するロック。

そこで行われていたのは、丸太を縦横無尽に振るうガッツ、それを軽やかな動きで交わし続ける頭部が発達した『妖怪ぬらりひょん』のような小柄な老人というなんとも珍妙な光景だった。

「あれが、殺し合いにおける賞金首、ですか?」

老人の首輪が赤であることを認識した雫は思わずロックにそう尋ねてしまう。
あのひ弱な見た目からは信じられぬのも無理はない。

「...俺も、あいつがそこまで強くは見えない。けど...」

いくらガッツの攻撃を躱し続けているとはいえ、その敵意を向けられておらず格闘技の経験もないロックには、老人の戦闘力は測れない。
しかし、KBSトリオの惨状を見れば、あの老人が自分の計り知れない力を秘めていることを嫌でも思い知らされる。

(ガッツが殺したとは思えないし、なにより丸太で首を切断できるとは思えない。やっぱり、あのぬらりひょんが...)

ガッツの丸太がぬらりひょんを捉えようとしたまさにその瞬間、ぬらりひょんの姿は再び大量の女体に変貌しガッツへと襲い掛かる。

「チッ」

丸太を一閃し、巨腕を模る女体を薙ぎ払うが、しかしすぐに生えそろい元の形へ修復してしまう。
見た目以上に速いソレをしゃがみ、丸太で叩き、どうにか猛攻を凌ぎ勝機を伺う。
常に全力で動くガッツと比較的余裕を持ち攻撃するぬらりひょん。
スタミナでは後者が断然有利である。
故に、均衡が破れるのは一瞬。
繰り広げられる攻防に耐えかねたガッツの反応は遅れ、振るわれる張り手を咄嗟に盾にした丸太で防ぐものの、その威力を殺しきれず、ガッツの身体は宙に浮く。
突き出されるままにガッツは壁に叩き付けられ、鮮血を撒き散らし、壁が崩れると共に視界を覆えるほどの砂埃が舞い上がる。



「ふむ。なるほどな」

ぬらりひょんは、今度は頭部は元の形のままに、大柄で逞しい男の身体へと変貌する。
次々と変貌していくその姿に、見ている方が気がおかしくなりそうだ。

(いや、それよりもガッツは無事なのか!?)

慌てて吹きとばされた方角を見やれば、ガッツは項垂れたままピクリとも動かず、祥子は必死に彼の名を呼び続けている。
彼の安否は気にかかるが、彼の救助をしている余裕はない。いまは、どうにかしてこの老人の魔の手から逃れねばならない。

「雫っ!」
「ああ!」

奈々が取り出した端末を握り、身体が光を帯びると同時、雫は奈々とロック、二人を担ぎ上げぬらりひょんの頭上を跳躍。
突き出される巨腕の障壁として、雫の端末により壁を錬成し攻撃を防ぐ。
だが、限界である三枚の壁を通じで尚止まらず、肩の奈々を護るために無防備となった肋骨に拳が突き刺さる。

「カッ」

雫は跳躍した勢いと殴られた衝撃により激しく地面をバウンドし、地面を吐血で赤く染める。
地面に投げ出されながらも、すぐに体勢を立て直して駆け寄る奈々に、大丈夫、と微笑みかける。
が、内心では余裕ぶることはできない。

(壁で勢いを殺していなければ確実に死んでいた...私たちは、こんな奴から本当に逃げられるのか?)

圧倒的な実力差に、三人の顔に絶望の影が色濃く表れる。
この怪物の前では、自分達がどんな小細工を仕掛けようと無力。
下手な抵抗は、悪戯に寿命をすり減らすだけなのかもしれない。

「これはこれは、奇妙なものを見つけた」

だが、彼らの抵抗は決して無駄ではなかった。

「ただの負け犬にしては、面白そうな者たちを見つけてきたじゃないか」

彼らの無駄にも思える抵抗は、戦況を更に混沌(カオス)と化した。





「ううううぅぅ」

どこから取り出したのか、純白の布団にくるまり震えるひで。その様はまるで餃子である。
その周囲には、原型を留めていない肉塊が散らばっていた。
事の発端は、ひでを犯していた男が、突如として暴力を振るったことである。
少しハードなSMプレイをするつもりだったのだろう。だが、ひではそれを虐待だと感じ取ったのか。
悪魔化して殺害し、この惨状と相成ったのだ。

そんなひでの一部始終を、スーツの調整を終えた岡は見ていた。

(なんや街が騒がしいと思ったらコイツか。なら、あの白髪たちもどこかにおるはずや)

周囲を見回すが、雅とほむらの姿がない。どうやら別行動しているようだと判断。
岡はひでについて考える。

果たしていまこの場でひでと戦うべきなのだろうか。

岡は、先の戦闘でひでのしぶとさを思い知らされている。
不意打ちも効かないとなれば、嫌でも長期戦に持ち込まざるを得ない。
そうなれば、万全ではない自分の方が不利であり、雅たちが戻ってこれば尚更勝機は薄くなる。

(なら、コイツを利用することはできへんか?)

もしも、雅たちが単に一時的な別行動をとっているのではなく、制御しきれずここに放逐したのなら。
ひでをうまく利用すれば赤首輪の狩りも効率的に進めることが出来るかもしれない。

(こいつにガッツのような戦力を期待することはできんかもしれんが...さて、どうするか)






吸血鬼と化した住民たちを狩って遊んでいた雅は、戦闘音を聞きつけ足を運んだ。
五階建てのビルの屋上から見下ろした先には、老人と対峙する女が二人と男が一人。
男の方は見覚えがある。あのスーツを着た男が連れ去った者だ。
戦いすらできない負け犬に興味はなく、傍らに立つ二人も同類だと思っていた。
だが、彼女達はなにやら奇妙な機器を取り出したかと思えば、人間を越えた身体能力を披露し壁を作り出すという魔法染みた業さえやってみせた。
面白い。彼女たちは人間のようだが、なにか特殊な力があるのか、それとも支給品によるものなのか。
あの老人といい彼女たちといい、中々に興味深い状況だ。

雅は己の好奇心を満たすため、戦況へと足を踏み入れる。
トンッ、と躊躇いなくビルから跳び下り、着地の衝撃を殺すことなく着地した。

「む?」

ぬらりひょんの意識がロック達から外れ、突如現れた雅に向けられる。

「ほぉ、お前も赤い首輪...つまり人外か。全く、このゲームは興味を惹くものが多くて飽きん」

余裕綽々にゆったりと歩み寄ってくる雅の放つ威圧感に、雫と奈々はぬらりひょんとは違う種類の恐怖を覚える。
ぬらりひょんが怪物だとすれば、この男は残虐な王とでもいうべきだろうか。

「気を付けてくれ二人共。こいつが、俺と岡が出会った男だ」

ロックの小声での注意喚起に、雫が小さくうなずく。

「そこのお前達、さきほど見せた力はなんだ?」
「え、えっと...」

思わず答えかける奈々の口を雫が慌てて塞ぐ。
いまこの男は自分達の力に興味を持っている。もしもそれが支給品によって与えられたものだとすれば、奪いにくることは想像に難くない。
そうなれば、自分達などもはや無力な女二人だ。ここが殺し合いである以上、死を免れることはできないだろう。

「ハッ、語らずともその態度を見ればわかる。そこまで慌てて隠すとは、あの力は支給品によるものらしいな」

勘付かれた。二人の背中に冷や汗が伝う。まるで蛇に睨まれた蛙のように、緊張と恐怖で震えが止まらない。



「どれ。まずはその力を頂くとしよう」

雅はブーメランを振り上げ、斬りつけようとする。
雫が壁を作り、奈々がその隙に雫を強化、雫にロックと奈々を抱え雅から距離をとらせる。

「ハッ、逃がすとでも―――」

ピクリ、と雅の眉が微かに釣りあがる。直後、三人に覆いかぶさる巨大な影。
ぬらりひょんが跳躍し、両手を組みハンマーの如く構えていた。
まるで、これは自分の獲物だ、貴様には渡さないと云わんばかりの襲撃である。

雫は残る二枚の壁をすぐに錬成し、奈々とロックが巻き添えを食わないように放り投げる。
振り下ろされる拳は、立ち塞がる壁を経て尚威力を殺し切れない。

ぬらりひょんの拳を受けた雫の右腕は地面に叩き付けられ、激痛と共に骨が粉砕される。
奈々の魔法の効果も手伝い、千切れることはなかったものの、あまりの衝撃に雫は一瞬にしてその意識を失った。

「雫...しずくっ!」

奈々が涙目になりながら駆け寄り呼びかけるも雫の反応は無い。
そんな彼女へも拳を振り下ろそうとするぬらりひょんだが、首筋に宛がわれたブーメランに止められる。

「待て。こいつらは私の獲物だ。今は手を引いてもらおうか」

雅は人間は嫌いだが、女好きの一面もある。
いい女は血を吸いたくなるし犯すのも好きだ。
自分が吸血鬼にした一団にも女はいたし、暁美ほむらという少女もいるにはいるが、彼女たちにはそそられない。
あの一団にいた「一万円くれたらしゃぶってあげるよ」とのたまっていた女がまり子以上にアレだったせいで萎えてしまい、暁美ほむらに至っては論外だ。
顔立ちは中々ではあるものの、まだ子供な上に血色が悪く身体も貧相であるため、雅の好みの範疇からは大きく外れてしまう。
要は色気がないということだ。

そんなお預け状態からの奈々と雫という悪くない女との出逢いだ。
奈々は少々ふとましくはあるけれど、決して不細工ではなく血色もいい。雫はスレンダーながらも貧相ではなく確かな美貌も持ち合わせている。
両者とも、見ただけで血の美味い女であることが窺い知れるし犯して食らうにはもってこいの女たちだ。
それを横取りしようというのだから、雅が敵意を抱くのも無理はない話だ。

それはぬらりひょんも同じ。
例え同じ赤首輪であろうとも、皆殺しにすると決めた以上、この男も敵である。



パキャッ

高速で振るわれた拳が雅の顎を打ち砕く。
下あごが骨ごと千切れだらりとだらしなく垂れ下がり、血が地面を濡らす。

「ハッ」

だが、雅は嗤う。常人ならば死なずとも激痛に声を発することもできないであろう傷を負いながらも尚、嘲り笑う。

ザンッ

雅のブーメランがぬらりひょんの右腕を斬りおとした。
ぬらりひょんは地に落ちた己の腕と残された切断面を見比べて、ホゥと感嘆の声を漏らす。

雅の顎の皮膚が蠢き接着されていく。
ぬらりひょんの右腕が新たに生え変わる。

「なるほど。お前も再生能力を持っているのか」
「んん...実に興味深い」

雅とぬらりひょんは互いに邪悪な笑みを交わし合う。
もはや、いまとなっては人間の餌への興味は薄れている。

「どれ。私の能力と貴様の能力、どちらが優れているか試させてもらおうじゃないか」

のぞむところだと云わんばかりにぬらりひょんはウム、ウム、と小さく漏らす。
彼らは共に集団を率いる長であり好戦的な性格だった。
そんな彼らが出逢えば、戦闘が生じるのは必然だったのかもしれない。





(マズイぞ...)

気絶した雫にすり寄り泣きじゃくる奈々を傍目に、ロックは現状を努めて冷静に分析する。
岡は未だに姿を現さず、雫とガッツはダウン。奈々は見ての通り冷静な判断をくだせなくなっている。
現状、まともに動けるのは自分と祥子だけだ。
だが、身体能力は一介のサラリーマンと変わらない自分と幼女になにが出来るというのか。
眼前の化け物たちの戦いが終わり、殺害対象がこちらに向けばその時点で終わりだ。

できれば今すぐにでも離れたいが、彼らに背を向けての逃走はリスクが高すぎる。
もしも無闇に逃げ出せば、容赦なくその背中を撃たれることだろう。
なにより、雫をあの状態から下手に動かすのは危険だ。
せめて担架でもあれば別だが、生憎とそんなものはない。

(どうする。どうすればいい)

「ガッツ!」

ロックの苦悩を打ち砕くかのように、祥子の歓喜に満ちた声が耳に届く。
見れば、頭部から多少の出血はあれど、まるで効いていないと云わんばかりに首をコキコキと鳴らしている。
今まで動きが無かったのは、恐らく気絶していたのではなく雅達の様子を窺っていたのだろう。

ガッツは喜ぶ祥子に取りあわず、丸太を担ぎ雅達のもとへと歩みを進める。

「無茶だ。あんな中に飛びこめば死ぬだけだ」

ロックは己の見解をそのまま述べてガッツを引き留める。
奴らは今までロアナプラで見てきたどんな人間よりもイカれている。
レヴィやロベルタのような超人然とした連中でも馬鹿正直に割って入るのは無理だ。

「だったら、おめおめと尻尾を巻いて逃げるか?それでも奴らは追ってくるだろうよ」
「そうかもしれないが...せめて、岡が来るまで待った方が」
「そうやって当てもない助けに縋って、どうにかなる奴らかよ」



増援が来るまで粘る、若しくは待機している場所まで逃げて誘い込むといった戦法は決して間違っていない。
ガッツ自身もそういった戦の経験はある。
だが、それは増援側との確かな作戦や信頼があってこそだ。
ガッツにしてみれば、岡とは一言二言言葉を交わした程度、ロック達にしても数時間程度の付き合い、云わば赤の他人だ。
そんな彼に勝手な助けを期待し命を張らせるのはお門違いだ。
仮にロック達を見捨てたところで責めることはできやしない。

「勝手に期待して誰かの所為にするくらいなら、俺は自分で道を切り開く。テメェらはテメェらで好きにしな」

化け物を殺す。
ただ苛立ちに任せて武器を振るうのではない。
ここで敵を殺すことこそが、道を切り開く最善の手段だと知っているからこそ、彼はその足を進める。
その殺意を糧に進める足を止める言葉をロックは知らない。

そんな彼のマントを掴み引き留める祥子。
その目は、今にも泣き出しそうに潤んでいた。
そんな彼女をガッツは、今までのように挑発染みた言動で突き放すのではなく、摘み上げ、ポイとロックへと投げ渡した。

「...無理だよ。彼は、誰にも止められない」

腕の中の祥子を宥めるようにロックは呟く。
彼を止められないのは祥子の所為ではない、彼はどうあっても止まるつもりはないのだと。

それでも祥子はガッツを止めたかった。

例え止めるのが無理でも、独りで全てを背負おうとして壊れていく人をもう見たくはなかったから。





ぬらりひょんの耳が切り裂かれる。

「ハハハハハハ!!」

雅の笑い声が木霊する。
その刹那に雅の頬に拳が叩き込まれ砕け散る。

「ガハハハハ!!」

ぬらりひょんも笑っていた。
戦いの愉悦に、己の拳で敵を粉砕する感触に浸っていた。

「楽しいぞ、ここまで私と対等に戦えるとは!」
「んん、実に興味深いぞ」

互いに、肉が飛び散り、骨が突出し、内臓が毀れ落ちてもその度に再生し嗤いながらの殴り合いに興じる二人。
一度目を離せばすぐに元に戻り、永遠に決着が着かないのではとすら思わせる。

「ふんっ!」

雅が投擲したブーメランがぬらりひょんの頬を肉を裂き彼方へと消える。
目測を見誤ったか。
ぬらりひょんの拳が雅の腹部を突き破りそのまま持ち上げる。
雅はその腕を掴み笑みを深める。

ザンッ。

ぬらりひょんの右足が切り裂かれ、ガクリと膝を着いてしまう。

「知らなかったのか?ブーメランは軌道を変えて戻ってくることを」

力が抜けたその隙をつき、雅は突き刺さった拳を引き抜きぬらりひょんの顎を蹴りあげる。
両者互いに重傷。しかしこれもまたたちまちに回復してしまう。



この瞬間。
そう。再生のために両者が無防備になる瞬間を彼らは見逃さなかった。

一足飛びで距離を詰め、丸太を居合のように構えるガッツ。

それとほぼ同時に。

「やだ、やだ、やぁだ!!」

突如、ひでがぬらりひょんの背後へ落下した。
あまりの唐突さに一同は彼に反応する間もなく事態は動く。

雅とぬらりひょん、両者を仕留めんと振るわれた丸太は、雅の頬を強打し、ぬらりひょんの身体を裂きひでもまた殴り飛ばされる。

「ッダァイ!!」
「......?」

突如降って来た妙ちくりんな男の存在には疑問を抱いたが、ガッツは気を取り直して丸太を再び振るう。
狙うは距離の近い雅だ。



ガンッ。

雅の頭部に丸太が振り下ろされ、鮮血が舞う。

「ぐがっ」

痛みに動きが止まる雅だが、ガッツはお構いなしに丸太を振るい続ける。
何度も、何度も、何度も。

ガシリ、と雅の掌が丸太を掴む。

「なんだ貴様。何者だ」

ハーハーと息を切らしつつ、雅はガッツを睨みつけ凄んで見せる。
ガッツは即座に丸太を回転させ、雅の手を無理やり引きはがす。

「シィッ!」

そこから放たれるのは、丸太による突き。
防御すらせずそれを腹部で受け止めた雅の身体が宙へと浮き、数メートルほどの距離を後退させる。

「中々やるではないか、人間。だがそんなものでは私は倒せんよ」
「チッ」

あれほどめった打ちにしたというのに、雅には疲労すら窺えない。
出血箇所も、程なくして全て塞がってしまう。

面倒な敵だ。ガッツはそう思わざるを得なかった。


664: 戦線は下北沢にあり ◆ZbV3TMNKJw :2017/08/19(土) 01:38:29 ID:vo/IExBs0

一方、身体を裂かれたぬらりひょんもまた、右足を除いてすべて完治しており、ひでを見下ろし立ち尽くしていた。

「ううううぅぅぅ」

うずくまり、殴られた頬を抑えつつ身体を震わせるひで。
ぬらりひょんがそんな彼へと拳を振り下ろすのにさほど時間はかからなかった。

ひでの背中に拳が減り込む。
しかし、人体なら軽く貫通する筈のソレは、ひでの背中に痣を作るに留まった。

「痛ッ!痛いんだよもう!!」

ぬらりひょんは無視して次なる拳を振り下ろした。
その顔には先程までの笑みなどない。


さて。唐突だが、このひでという偶像について隠された特性を述べさせていただく。
彼には挑発とでも称していいような、天然的に他者をイラつかせる特性を有している。
それは原点のひとつである『悶絶少年』における虐待おじさんこと葛城蓮さんの演技かガチか分からないほどの迫真のキレ方を見れば一目瞭然だろう。
このロワにおいても、暁美ほむらは遭遇時に見ただけでショットガンを乱射していた。
そしてそれは言葉を交わす事に勢いを増した。彼女も内心ではイラついていたことだろう。
これらから、ひでには人の苛立ちを誘発する特性があることがわかる(適当)。
そしてそれは人外であるぬらりひょんとて例外ではない。
彼もまた、苛立ちにより先に拳を振り下ろしてしまったのだ。

なんども拳が振り下ろされるが、やはり痣を作るのが限界だ。

「痛いんだよおおおおおおおお!!(マジ切れ)」

拳の痕が10を超えた辺りでひでは絶叫。
なんとぬらりひょんの拳を掴んだではないか。
それだけではない。
先程までのにやけ顔が嘘のように、目を見開き額に青筋が浮かぶほどの怒りの形相と化したひで。
あまりの変貌ぶりに、流石のぬらりひょんも驚愕する。

「絶対に許さないにょ!!」



そんなひでとぬらりひょんの戦況を遠巻きに見据えるのは、岡八郎。
彼は、ひでを殺すのではなく、極力手傷を負わせないように拉致し、雅達の戦いに放り込むことで三つ巴の戦況を作りだそうとした。
だが、偶然にも全く同じタイミングでガッツが乱入したこともあり、結果的にガッツと雅、ぬらりひょんとひでという戦況に移行した。

(やっぱりお前は使える男やったな、ガッツ)

もしもこれが打ちたてた作戦通りなら最高の結果であり、また打ち合わせなしに自分と同じタイミングで狩りに向かったことも評価できるだろう。
だが、如何せん状況が悪かった。
打ち合わせも無しに岡と同じタイミングで狩りに行ってしまったがために、一対一の構図になってしまい、岡の目論みから外れた戦況と相なってしまった。
いや、そう決めつけるのは早計かもしれない。

(あの爺、なんで右足を治さんのや?)

雅相手にはさっさと治して、ひで相手では治さない理由はないだろうに。
ひょっとして、あれが弱点だとでもいうのか?
いまはわからない。だが、もしそうだとしたら分析する必要がある。
岡は気配を殺しつつ、ひでとぬらりひょんの戦いの成り行きを観察することにした。




物陰に潜みつつ、ほむらは一連の戦闘を傍観していた。
雅とぬらりひょんは、互いに、肉が飛び散り、骨が突出し、内臓が毀れ落ちてもその度に再生し嗤いながらの殴り合いに興じていた。
次元が違う。
パワーにしてもそうだが、回復魔法に優れた美樹さやかですらああはいかない程の再生能力。
彼らは明らかに自分たち魔法少女とは違う次元の生物だ。

(奴らを放っておくわけにはいかない。まどかに害を為す者は必ず排除する)

いまここで確実に仕留めなければ、必ずまどかに辿りついてしまう。
狙うべきはぬらりひょんか、それとも雅からか。
その判断を誤れば、彼女の道はそこで打ち止めと為り得るだろう。




ホモガキに親しまれ、ホモの聖地と名高い下北沢。

今日、この街は戦火に包まれる―――!!





【TNOK@真夏の夜の淫夢 死亡】
【KBSトリオ@真夏の夜の淫夢 死亡】


【F-6/下北沢~下北沢近辺/早朝/一日目】


【ひで@真夏の夜の淫夢派生シリーズ】
[状態]:健康、イカ臭い。
[装備]:?
[道具]:三叉槍
[思考・行動]
基本方針:虐待してくる相手は殺す



【ぬらりひょん@GANTZ】
[状態]:身体の至る箇所の欠損(再生中)、右足欠損(微回復中)、KBSトリオの液
[装備]:
[道具]:不明支給品1~2
[思考・行動]
基本方針:『神』の意思に従いこの殺し合いで勝ち抜く。
0:皆殺し
1:戦いを愉しむ。
2:他の参加者、特に雅に興味。

※参戦時期は岡八郎との戦いの後です。
※現在の形態は岡と殴り合っている時のものです。
※モズグスの首輪が赤い首輪であるのに気が付きませんでした。


【岡八郎@GANTZ】
[状態]:健康
[装備]:ハードスーツ@GANTZ(フェイスマスク損失、レーザー用エネルギーほぼ空、煙幕残り70%、全体的に30%ダメージ蓄積)
[道具]:?
[思考・行動]
基本方針:ミッションのターゲット(赤い首輪もち)を狙う
0:ひでをうまく扱い赤首輪の狩りに役立てたい
1:赤首輪に対抗するためにチームを作る。
2:できれば無理はしたくない。...が、ぬらりひょんはもしかしてチャンスなのか?




【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:疲労(中)、右頬に痣
[装備]:ソウルジェム、ひでのディバック
[道具]:サブマシンガン
[思考・行動]
基本方針:まどかを生還させる。その為なら殺人も厭わない
0:雅とぬらりひょん、どちらから先に葬るべきか...




【雅@彼岸島】
[状態]:身体の至る箇所の欠損(再生中)
[装備]:鉄製ブーメラン
[道具]:不明支給品0~1
[思考・行動]
基本方針:この状況を愉しむ。
0:眼前の人間と愉しむ。
1:主催者に興味はあるが、いずれにせよ殺す。
2:明が自分の目の前に現れるまでは脱出(他の赤首輪の参加者の殺害も含む)しない
3:他の赤首輪の参加者に興味。だが、自分が一番上であることは証明しておきたい。
4:あのMURとかいう男はよくわからん。


※参戦時期は日本本土出発前です。
※宮本明・空条承太郎の情報を共有しました。
※魔法少女・キュゥべえの情報を共有しました



【ガッツ@ベルセルク】
[状態]:疲労(中) 、出血(小)
[装備]:ゴドーの甲冑@ベルセルク、青山龍之介の丸太@彼岸島
[道具]:基本支給品
[思考・行動]
基本方針:使徒共を殺し脱出する。
1:雅を殺す。
2:ドラゴン殺しが欲しい
3:己の邪魔をする者には容赦しない。



※参戦時期はロスト・チルドレン終了後です。
※トロールをいつもの悪霊の類だと思っています。



【野崎祥子@ミスミソウ】
[状態]:擦り傷
[装備]:
[道具]:不明支給品1~2
[思考・行動]
基本方針:今度こそお姉ちゃん(春花)を独りぼっちにしない。
0:お姉ちゃんと合流する。
1:ガッツは春花に似てるので放っておけない。


※参戦時期は18話以降です。


【岡島緑郎(ロック)@ブラックラグーン】
[状態]:健康、不安(小)
[装備]:
[道具]:不明支給品1~2
[思考・行動]
基本方針: ゲームから脱出する。
0:どうにかこの場を切り抜けたい。が、雫のことがあるので逃げられない...どうすればいいんだ。
1:レヴィとバラライカと合流できればしたいが...暴れてないといいけど



※参戦時期は原作九巻以降です。


【羽二重奈々@魔法少女育成計画】
[状態]:疲労(大)、不安(大)
[装備]:魔法の端末(シスターナナ)@魔法少女育成計画
[思考・行動]
基本方針:雫と共に生き残る。




【亜柊雫@魔法少女育成計画】
[状態]:疲労(大)、右腕粉砕骨折、気絶
[装備]:魔法の端末(ヴェス・ウィンタープリズン)
[思考・行動]
基本方針:奈々と共に生き残る





ホモコースト勃発!
ほむら
ひで
神よお導きを ぬらりひょん
夢や愛なんて都合のいい幻想 ガッツ
野崎祥子
岡八郎
岡島緑郎
最終更新:2018年01月25日 23:05