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見えない敵と戦う漫画家

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見えない敵と戦う漫画家  ◆i7XcZU0oTM





(何でこんなことになってんだよ……)

 頭を抱え、震える。
 …………本当、何でこんな事に。
 こんな事になるなら、あんな事しなけりゃ良かった。
 今更言っても、後の祭りだけどさ……。
 ――――あれは、かなり前の事。












「……広いな。食堂か何かだったのか」

 辺りを見回し呟く。……古びてはいるが高級そうな机が並んでいる。
 その上にはズラリとこれまた高級そうな机がさかさまに置かれている。
 ……もしかして、結構良いホテルだったのか?
 だとしたら、俺なんかには一生縁が無さそうだな。

「広ーい!」
「おい、あまり動き回るなよ! 誰かいるかもしれねえんだぞ」

 とは言っても、正直誰かいるようには見えない。
 さっきの八頭身だって、もうどっかに行ってるだろうし。
 まあ、少しくらいなら大丈夫だろ。

「ったく……」

 と言っても、ここにはさして何もなさそうだな。
 ……ゆっくり達を呼び寄せ、次に向かう。

(次は何処にするか…………あの扉は何だ?)

 ふと目に付いた、観音開きの扉。少々錆びついてはいるが、普通に開く。
 扉を開き、中へ入ると……厨房らしき場所に出た。

「……ここも埃だらけか」

 埃を被ってはいるが、やはりそれなりの高級感は感じる。
 偶然近くにあったフライパンらしき物を持ち上げてみるが……やっぱ錆びてる。
 ずいぶんと長い間放置されてたようだな。
 ……何か急に心細くなってきた。まあ、一人じゃないだけマシ、か。
 頼りになるかはともかく、今の所はゆっくり達がいるからな。
 そんな事を考えながら歩いていたからか……何かに躓き、盛大に転んでしまった。
 一体何に躓いたのか、と思い床を見てみると、めくれた床の一部が、突き出ていた。
 何だよ、全く。

「大丈夫?」
「あ、ああ……あー、埃だらけだよ……」

 上着についた埃を手で払う。
 ……だが、時間と共に積み重ねられてきた埃は、かなり厚かった。
 払っても払っても、取れやしない。むしろ、俺の手が余計に汚れる始末だ。
 服は、今の所どうしようもない。だが、手くらいは洗いたい。

「クソッ……水は……」

 近場にあった蛇口を捻るが、動かない。
 錆びついて固まってるのかと思って見てみたが……思わず苦笑いが浮かぶ。
 ――――既に、目一杯捻られていた。
 それで出ないんだから、そもそも水がここまで来てない、ってことだ。
 ……じゃあ駄目じゃないか。

「何だよ……」

 荷物に入ってる水を使おうか。
 いや、こんな事に使うのは勿体無い気もする……。
 ……ああもう、ここはいいや。次に行こう。

「ねー、ここは?」
「ん、何だ?」

 ゆっくり達が呼んでいる。
 何か見つけたのか?と思い、呼んでる所まで向かってみる。
 ……厨房の端っこ。そこにあった物は……。

「階段? どれどれ……」

 誘われるがまま、階段を降りる。すると、地下室らしき場所が。
 近くに、色褪せた紙切れが落ちている。多分、手書きのメモを貼ってたのだろう。
 拾い上げてみると……少々読み取りづらかったが、"ワインセラー"と書かれていた。
 ……となると、この中にはワインがあるのか。
 酒なんて飲めないし飲まないが、少しは興味がある。
 ……少し、覗いて見るのもいいかもな。

「行ってみるか……」

 恐る恐る、近づいて見ると同時に…………ムワッ、となんとも言えない臭いが。
 何と言うか、ブドウ臭いと言うか。とにかく、そんな感じの臭いが流れ出て来た。
 これには流石のゆっくりも気になるらしく、顔をしかめている。
 ……だが、今更引き返すのも面倒だ。

「入るぞ、ついてこいよ」
「う、うん」

 一歩、足を踏み入れる。やっぱり、真っ暗だ。何か、灯りはないのか。
 そう言えば、扉の横にスイッチがあったな。
 手だけ出して、スイッチを押す。
 ……まあ、当然のことだが点かないよな。

「……仕方ねーな……」

 流石に、PDAの明かりじゃ無理がある。
 仕方無く、ランタンを取り出して、辺りを照らす。
 ……その途端、ズラッと並んだ棚が目に映る。
 色々なワインが並んでいるが……どれも美味そうには見えない。
 埃まみれだったり、割れていたり……飲む気にもなれん。

「埃だらけだよ……こんな所じゃ、ゆっくりできないね!」
「そりゃそうだ……」

 しっかし、ここも埃だらけだ。
 試しに、近くの棚に息を吹きかけてみたら、ブワッと埃が舞った。
 ……あんまり、長居したくはない。

「……ん?」

 ――――何か、今視界の端に何かが。慌ててそっちにランタンを向ける。
 ……誰か、いるのか?





 ワイン棚の影。
 誰かが、いる。
 間違い無い。





(おいおい、嘘だろ……!?)

 まさか、ここに人がいたなんて。何でこんな所に。
 いや、そんな事言ってる場合じゃねえ。
 俺が気付けたってことは、間違い無くあっちも俺に気付いている。
 ……一応。一応、ゆっくり達を俺の後ろに。

「…………誰かいるのか?」

 ……反応はない。
 近づいて見るか、それとも関わらないようにするか。
 どっちにしろ、面倒な事になったのは間違い無い。

「ゆっ! ゆっ!」
「分かってるって! ……おい」
「くっ……それ以上、こっちに近づくなッ!」
「ッ!?」

 今まで沈黙を保っていた誰かが、急に声を荒げる。
 ……本当に面倒な事になったぞ。
 変に刺激するとヤバそうだ。

「近づいたら……殺すぞ……!」
「いっ……!? お、落ち付けよ! そんな、殺すだなんて物騒な……」

 ――――明らかにマズい。
 人の事を言えた義理じゃないが、こんな時に錯乱しても良い事なんかない。
 これは、関わらない方がよさそうだ……!

「俺達はあんたに何かする気なんて……」
「そんなこと、信用できるか!! ……第一、何もする気が無いのなら、何で銃なんか持ってるんだ!?」

 ――――俺は、ようやく自分の犯したミスに気がついた。
 そりゃ、銃片手に「何もしない」なんて言ったら、疑われても仕方無いよな。
 だが……だからと言って、そう決め付けるのもどうかと思うんだが。
 とにかく、今は相手を刺激しない方がいい。

「分かった……これは仕舞う、だから落ち着けよ……」
「……フン、そんなこと言って、また別の物を出すつもりだろ!?」
「そんな訳あるか!! あんた、少し落ち着けよ!!」
「黙れ! ――――そっちがその気なら……こっちから殺ってやる!!」




 その怒声と共に。
 ヒュン、と風を切る音と同時に、近くにあった棚が……砕けた。





「え……ええぇぇぇぇっ!?」
「うわああああああああ!」

 何だよ今のは!?
 まさか、あいつの攻撃か!?
 ゆっくり達も、まるで別人かのような表情で驚いている。

「……に、逃げるぞ!!」
「ゆっ!!」

 もう駄目だ。こんな奴、相手にしてられない。
 逃げなきゃ。間違い無く、殺される。

「……逃がすかぁぁぁぁッ!!」

 とにかく、逃げる。
 階段をかけ登り、厨房を飛び出し、食堂を飛び出し……。
 もう、ホテルの中にはいられない。
 あんな奴がいる以上、あそこは危険だ。畜生、何なんだよ!
 そして、こうやって逃げている途中にも、あいつは俺達に襲って来ている。
 とっとと、ここから逃げなければ……!

「どこだ!! どこに行った!! そっちがその気なら、こっちだってやってやる!!」

 有難い事に、あいつはまだここまで来ていない。
 この隙に、逃げなければ!
 そう思って、全速力で入り口付近まで来た時。

「何だよ、自動ドア壊れてるじゃねえか……!!」

 少し隙間が開いているが、これじゃ俺は通れてもゆっくり達が……!!
 ……ふと、俺の頭に邪な考えが。






 ――――ここでゆっくり達を置いて行けば、囮にもなるし厄介払いにもなる。
 ――――なら、こいつらをここで見捨てて、俺だけ逃げればどうだろう?






 ちょっぴり考えて、すぐに否定した。幾ら何でも、俺はそこまで酷い人間じゃない。
 そこから先は、もう駆け足だった。
 壊れた自動ドアをこじ開けて、3人で外に飛び出す。
 それと同時に、砕け散るガラス。
 ……月の光が乱反射し、ちょっと綺麗と思ったのは内緒だ。

「逃げるぞ、ゆっくり!!」
「ゆっくり逃げていってね!!」












「……畜生……うえぇっ……」

 蚊の鳴くような声で呟く。くそ、吐き気まで催してきやがった。
 ……ゆっくり達が、俺の顔を心配そうに覗き込んで来ている。
 こいつら、結構体力あるんだな。
 それとも、俺の体力がガタ落ちしてるだけか?

(こんな事なら、何か運動でもしてりゃ良かった……)

 結局、あの後とにかく逃げて逃げて逃げまくった。
 それでも、あいつは追いかけて来た……マジでどうにかしちまったのか?
 だが、俺も完全に運に見放された訳じゃなかった。
 入り組んだ道を我武者羅に走り抜け、近くの民家の庭に飛び込む。
 …………あいつの足音が聞こえる。

(頼む……どっか行ってくれ……! 俺も、死にたくねえんだよ……!)

 もうどうすればいいんだ。
 今度こっちに来たら、銃で威嚇してやろうか。
 いくら錯乱してるとは言え、銃を向けられればビビるはずだ。
 ……いや、余計に混乱させちまうのが落ちか?
 とにかく、こっちに来さえしなけりゃいいんだ。
 諦めて、どっかに行ってさえくれれば……。
 流石のゆっくり達も、この非常事態の中では一言も発しない。

「うおおぉ――――ッ!」

 ガラガラと、ブロック塀の崩れる音が。
 バキバキと、家屋の壊れる音が、響いてくる。
 あの妙な物で暴れ回ってるのか。
 このままじゃ、見つかるのも時間の問題か……!?




「……ハァ、ハァ……」




 だが、俺の予想は外れた。
 荒い息遣いと共に、離れて行く足音。
 そして……静寂。

「た……助かっ、た……」
「……やっと、ゆっくりできるね!!!」

 まさにその通りだった。
 ……とにかく、今は少し休みたい。

(丁度いい……この民家、使わせて貰うか……)

 狭い庭を歩き、裏口の扉を開く。どっか、休める場所はないのか。
 おぼつかない足取りで、リビングへと向かう。

「ああ、丁度いい所にソファーがあるじゃねえか……」

 この際何だっていい。
 倒れこむようにソファーに寝転がる。

「……本当、何なんだよ……」

 疲れからか、急に睡魔が……。もういいや、この際だから少し眠ろう。
 ……民家は沢山あるんだ、俺なんか見つかりっこない。

「悪いが……俺は少し寝るぞ」
「ゆっくり寝ていって……」
「……お前らも寝るのかよ」

 流石にずっと寝てる訳にはいかねえ……。今は何時なんだ?
 壁掛け時計を見ると……五時になる前か。
 定時更新とやらがある六時には起きないとマズいな……。

(まあ、大丈夫、だろ……)

 心地良い眠気に抗うこともなく、俺は……。




【A-5・民家/1日目・早朝】
【タケシ@ニュー速VIP】
[状態]:健康、不安、疲労(中)、睡眠中、埃まみれ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=00】)、麦茶(残り3/4)@ニュー速VIP、イングラムM10(32/32)@現実
[思考・状況]
基本:殺し合う気は無い。死にたくもない
1:今はとにかく休む……
2:死にたくはないが、どうすりゃいいんだろうな……
3:カーチャン……べ、別に心配なんか……
※2chに関する記憶があるようですが、あまりはっきりしていないようです


【ゆっくりしていってね!!@AA】
[状態]:健康、ゆっくり、疲労(中)、睡眠中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=00】)、不明支給品×0~2
[思考・状況]
共通:ゆっくりしていってね!!!
1:ゆっくり休むよ……
2:内心、虐待画像を目の当たりにして気分が落ち込んでいる
※ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙、2体で1人扱いのようです
※片方が死亡したらどうなるかは、後続の書き手さんにお任せします







「ハァ……ハァ……」

 タケシ以外にも、フラフラとおぼつかない足取りで街中を歩く男がいた。その名はキユ。

「…………」

 ついさっきまで、恐怖と怒りから我を忘れて、3人を追いかけていたが……。
 疲労と夜風の冷たさが、彼に多少の正気を取り戻させた。
 だが、それでも彼の人間不信は治らない。

 全てに対して抱く不信感。
 自身の振り返りたくない過去を掘り返された怒り。
 死にたくないと言う恐怖。
 それらを糧として、キユの心に棲む、疑心暗鬼と言う名の鬼は、どんどん肥大化して行く。
 しかし、それにキユ自身が気付く事はないだろう。
 人を拒み、心を閉ざしている間は、絶対に……。

「……」

 ……あの時、少しは落ち着いて考える事ができたならば。
 ――――相手が銃を持っているからと言って、必ず自身に危害を加える訳ではない。
 この状況ならあり得なくも無いが、そんな相手ではなかった。
 だが、過剰な程に警戒し、人を信じなかったキユには、その考えに辿り着く余裕がなかった。
 だからこそ、自身の思い込みでタケシ達に襲い掛かり、追いかけた。

「……死んでたまるか……絶対に……」

 ――――彼が、自身の心に潜む"見えない敵"に勝つのは、いつになるのか。
 それは、誰にも分からない。



【A-5/1日目・早朝】
【キユ@週刊少年漫画】
[状態]:健康、人間不信、疲労(中)、精神疲労(中)
[装備]:ガーレ@エルシャダイ
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=00】)、靴墨@現実
[思考・状況]
基本:殺し合いに乗る気……?誰も信じられない、信じない
1:近づく奴には全力で抵抗する
※A-5のどこかの民家一帯がボロボロになっています


No.61:最高に『廃!』ってヤツだ! 時系列順 No.63:良識を持って行動してきた結果www
No.61:最高に『廃!』ってヤツだ! 投下順 No.63:良識を持って行動してきた結果www
No.37:僕らはいずれ誰かを疑っちまうから タケシ No.93:マザー・オブ・ラブでつきぬけろ!
No.37:僕らはいずれ誰かを疑っちまうから ゆっくりしていってね!! No.93:マザー・オブ・ラブでつきぬけろ!
No.37:僕らはいずれ誰かを疑っちまうから キユ No.91:ハルトシュラーのパーフェクト説得教室

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