季節は秋も終わりかけ、稲穂も実る豊穣の季節
そんな最中、季節外れの芽が一つ
少女は恋をした
そんな最中、季節外れの芽が一つ
少女は恋をした
自分にはそんな感情は無いのかと思っていたが、その時は来たのだ
こないだまで暑いと思っていたら、急激に寒くなり始めていたというのに
立ち尽くす扉の前で、彼女の心は再びポカポカに逆戻り。むしろ汗ばむくらい
こないだまで暑いと思っていたら、急激に寒くなり始めていたというのに
立ち尽くす扉の前で、彼女の心は再びポカポカに逆戻り。むしろ汗ばむくらい
少女「…すぅぅぅ~~~……。はァァァ~~~……」
一目惚れ
思い立ったら走り出してしまう性格
彼女は勢いよく引き戸を開けると、ズンズンと部屋の奥へと入り、相手の眼前へ
思い立ったら走り出してしまう性格
彼女は勢いよく引き戸を開けると、ズンズンと部屋の奥へと入り、相手の眼前へ
そして多くが見守る中
少女「好きです! 私と付き合ってください!」
思いの丈をぶつけていた
中澤「…はい~~?」
深々と頭を下げるその少女に、呆気にとられる【中澤先生】
少女は目をランランとさせて返事を待っていた
教頭「あ~、中澤さん、ちょっとお話聞かせてもらえますかな?」
と、中澤は肩を叩かれた
ここは職員室
まぁ当然と言えば当然である
というか、肩に置かれた手は、尋常じゃない力の入れ方だ
痛く、心にまで響く
ここは職員室
まぁ当然と言えば当然である
というか、肩に置かれた手は、尋常じゃない力の入れ方だ
痛く、心にまで響く
中澤「えっっと、いや~~。僕この子知らないんですけ……ど…?」
教頭「いいですから! 濱崎さん!! 貴方も後で」
少女「あぁ~~はい」
ようやく少女は自分がやらかした事に気が付き
教頭に引っ張られる中澤を見送った
教頭に引っ張られる中澤を見送った
―――――
その日の放課後
少女「はぁ~~先生どうなったかなぁ~~」
自宅に帰った少女。【濱崎彩音】は、海岸線に沈む夕陽を家のベランダから見ながらため息をついた
彩音「どうしよ~~~!?
先生、牢屋に入れられちゃうのかなァ!? 私まだ結婚出来ないから保証人にもなれないよ~~!!?」
先生、牢屋に入れられちゃうのかなァ!? 私まだ結婚出来ないから保証人にもなれないよ~~!!?」
じたばたと、ベランダからリビングを行ったり来たり
ピロン♪
すると、テーブルの上の携帯が鳴る
母からのメールだった
母からのメールだった
『今日、ちょっと会社の方を夕飯に招待したんだけど大丈夫?』
珍しい、と彩音は少し考えた
父が亡くなって10年、母もようやく再婚を考えたのだろうか。と
父が亡くなって10年、母もようやく再婚を考えたのだろうか。と
『いいよ、連れて来たら♪』
返事を返すと
彩音「さて、ちょっと作っておきますか」
と、先程までうろたえはどこへやら
エプロンを着けるとキッチンへ向かった
お酒とかって必要だろうか
といっても、まだ自分では買ってこれないが
エプロンを着けるとキッチンへ向かった
お酒とかって必要だろうか
といっても、まだ自分では買ってこれないが
夕刻
母「ただいま~~さぁどうぞ、大きいだけの家でなにも無いですが」
??「ああっ。さおりさん、いえすいませんお邪魔します」
その声を聞いて
彩音(おっ来た来た…父親候補♪ でもどっかで聞いた声…?)
玄関に迎えに出るとそこには
彩音「先生!!」
自分の想い人がいた
牢屋で冷や飯を食べているはずの…!!
牢屋で冷や飯を食べているはずの…!!
中澤「いっ!? ウッソ…ォ?」
さおり「あら? お知り合いだったの?
あ、そういえば、研修で講義してたんでしたわね。ウチのコの高校だったなんて♪」
あ、そういえば、研修で講義してたんでしたわね。ウチのコの高校だったなんて♪」
驚く余韻も冷めやらぬままに、食卓に着くと料理が次々と出てきた
彩音「いや~~自分の初恋相手がお母さんの再婚相手とは
さっすがお母さんだね!」
さっすがお母さんだね!」
中澤「はぁ? どゆことよソレ」
さおり「そんなんじゃないわよ、まったくこのコったら
最近お母さんの仕事先で大変な事があってね?
それで少し元気が無かったからちょっとでもと思ってね。そこの責任者さんでもあるのよ
お母さんの上司なんだから。臨時だけど」
最近お母さんの仕事先で大変な事があってね?
それで少し元気が無かったからちょっとでもと思ってね。そこの責任者さんでもあるのよ
お母さんの上司なんだから。臨時だけど」
彩音「ぇ~~…。でもさっき名前で」
中澤「ここらの人、ほとんど濱崎さんなんだからしょうがないじゃない
只でさえ皆さん屋号で呼び会うから……」
只でさえ皆さん屋号で呼び会うから……」
彩音「あぁ~~そっかぁ」
それを聞いて、ポンッと彩音は手を叩いた
さおり「それより初恋相手がってどういう事ですか?」
自分の娘と上司を交互に見つめ、そして軽く睨まれる中澤
中澤「あっいや…。話すと深~い訳があるような。一言でも済むような……」
彩音「ああ。それはまだ私の片想い」
さおり「それで最近学校に楽しそうに行ってたのね
化粧まで聞いて来たの初めてだったから、何事かと思ったわよ」
化粧まで聞いて来たの初めてだったから、何事かと思ったわよ」
中澤「いや、まったくどこでそうなったんだか……」
さおり「あんた、ひょっとしてこんな感じが好みなの?」
そう言って、上から下までマルっと見定められる
背は、結構高いはず。歳ほど腹も……出てないはず
顔は…EXMでやらかしたから、ハンサムでは無くとも、シブい魅力は出て来たのではないか?
中澤はふと、鼻で笑う元上司の顔が目に浮かんだ…
背は、結構高いはず。歳ほど腹も……出てないはず
顔は…EXMでやらかしたから、ハンサムでは無くとも、シブい魅力は出て来たのではないか?
中澤はふと、鼻で笑う元上司の顔が目に浮かんだ…
中澤「こんなって……」
彩音「お母さん、見た目じゃないよ。なんか惹かれたの
授業を聞いて、この人の事好きだ~…って」
授業を聞いて、この人の事好きだ~…って」
中澤「………」
中澤は少し照れながら箸を進めた
さおり「へぇ~~。でも、せめて高校くらいは出て貰わないとねぇ」
彩音「そう言うお母さんこそ! いつまでも独りでいないで、仕事先で誰かいないの!?
先生の同僚さんとか」
先生の同僚さんとか」
さおり「あ、思い出したわ」
彩音「え!? ほんとに居るの!?」
少女が目を輝かせて、母からの返事を待っていると
さおり「ねぇ、彩
明日施設に来てみない?
同じくらいの子達がいるのよ
もしかしたら、あの子達が元気になる切っ掛けになるかも」
明日施設に来てみない?
同じくらいの子達がいるのよ
もしかしたら、あの子達が元気になる切っ掛けになるかも」
彩音「はぇ…?」
予想だにしない答えが返ってきた
さおりは、長年戦地から帰った兵隊のマインドケアや、寝たきりのおじいさんおばあさんのディサービスをしている
今回も、急だがお給金がいい施設が急に出来たと赴いたのだ
大変な仕事とは、彩音もなんとなく理解しているつもりだが…
さおりは、長年戦地から帰った兵隊のマインドケアや、寝たきりのおじいさんおばあさんのディサービスをしている
今回も、急だがお給金がいい施設が急に出来たと赴いたのだ
大変な仕事とは、彩音もなんとなく理解しているつもりだが…
中澤「でも、さおりさん。うちは……」
さおり「いいんです、何もなく幸せに暮らしてる裏に何があるのか……
1つの社会勉強ですよ。中澤さん、このコのためと思って…」
1つの社会勉強ですよ。中澤さん、このコのためと思って…」
さおりはすっと微笑んだ
中澤はふぅと息を吐くと、ゆっくり立ち上がり
中澤「ごちそう様でした。じゃあ僕はそろそろお暇するよ」
彩音「あっ。はい…」
中澤「彩音さん」
彩音「あっ。は、はいっ!?」
中澤「良かったらだけど待ってるよ」
彩音「………、はい!!」
その笑顔が咲いたような気がして、中澤は濱崎家を後にした
――――
夜も耽った河川敷。海岸線から町の方にさかのぼっていると、どこかから声が聞こえた
『発声練習! 箱はここと違って、響くんだから。何もないここで互いが声を響かせるんだ!!』
可愛らしい合唱が、河川敷からここまで聞こえてくる
見ると、コーチが三人の少女についてレッスンをしているようだった
見ると、コーチが三人の少女についてレッスンをしているようだった
『あ! プロデューサー!! あの人!!』
すると、その少女の内一人が、中澤に気付く
すると、コーチとおぼしき人物が、全速力でこっちに向かってくるではないか!
呆気にとられる間も無く、男は中澤の前に立った
すると、コーチとおぼしき人物が、全速力でこっちに向かってくるではないか!
呆気にとられる間も無く、男は中澤の前に立った
コーチっぽい人「失礼します! 中澤ヒデヒサ…さんで、合ってますかね!?
申し遅れました。私はこういう者です」
申し遅れました。私はこういう者です」
中澤「そ、そうだけ…ど?」
急に丁寧に会釈をしたその人物の名刺を見ると
【芸能プロデューサー(見習い) 真中次郎】
と、書いてあった
中澤「は、はあ。そのプロデューサーが……?」
見ると、その手に握った名刺に、少しだけはみ出た別の紙が見えた
中澤は、同じく両手で名刺を受け取ると、どちらもさっと上着のポケットへ突っ込んだ
中澤は、同じく両手で名刺を受け取ると、どちらもさっと上着のポケットへ突っ込んだ
真中「実は、今度彼女達は芸能界へユニットデビューが決まっておりまして、ここで、そのための合宿を開いていたのですよ」
中澤「へぇ。なるほどねぇ」
『『『よろしくお願いします!!!』』』
すると、先程の三人も、近くでお辞儀をしていた
……施設のコにも、彼女らに近い者はたくさん居る
その生気抜けた顔に比べ、彼女達は中澤の眼に、ひどく眩しく映った
……施設のコにも、彼女らに近い者はたくさん居る
その生気抜けた顔に比べ、彼女達は中澤の眼に、ひどく眩しく映った
真中「実は、私は用事で少し本社に戻らねばならなくて…。宿泊先は確保出来ているのですが
自主練させるにも、なかなか土地勘が無くてですね。ははは!」
自主練させるにも、なかなか土地勘が無くてですね。ははは!」
中澤「あ~。だったら、ウチで歌っていって下さいよ
ちょうど、観客いっぱい居るし」
ちょうど、観客いっぱい居るし」
真中「本当ですか!?
やったぞみんな! デビュー前の初舞台だ!!
ありがとうございます…! 中澤さん!!」
やったぞみんな! デビュー前の初舞台だ!!
ありがとうございます…! 中澤さん!!」
『やった~♪ じゃあ、ファン一号ですね! あ、デビュー前だし、0号とか?』
『なんか、ちょっとカッコいいじゃん。ソレ』
『よかったら、サイン貰って下さい! 絶対に貴重になるようにしますんで!!』
『なんか、ちょっとカッコいいじゃん。ソレ』
『よかったら、サイン貰って下さい! 絶対に貴重になるようにしますんで!!』
そう言って、少女たちは色紙にサインを書き、中澤は押し付けられるように渡された
代わりに、施設の住所と連絡先とを手渡すと、いつまでも手を振る彼女らに見送られ、帰路に着いた
代わりに、施設の住所と連絡先とを手渡すと、いつまでも手を振る彼女らに見送られ、帰路に着いた
――――
収容施設。中澤の仮私室
収容施設。中澤の仮私室
中澤「まったく。こっち名乗って無いのに名前呼ぶし、たぶん…」
メモには、ここの海岸のような略地図に、明らかに海の所に星マーク
…あのコ達はここに匿われているのか
渡された色紙の裏に、【逢坂准将】から渡された特別製の薬品を、水で薄めてかけてみる
すると、ジワリと文字が浮かび上がってきた
…あのコ達はここに匿われているのか
渡された色紙の裏に、【逢坂准将】から渡された特別製の薬品を、水で薄めてかけてみる
すると、ジワリと文字が浮かび上がってきた
『拝啓
中澤殿。慣れぬ職場でご健勝でしょうか
自分は現在、先程会ったであろう【真中次郎】氏と共に、とある人物を追っています
施設の風俗斡旋に噛んでいたそうで、彼の内部告発のお陰でようやく尻尾が掴めました
国内外から挟み撃ちにするため、現在自分はその国に居りません
【闇影卿】も力添えをくれていますが、この【常務】という人物。裏に相当なバックが付いていると目されます
おそらく【攪拌、捕捉、利権受領団体】と言えば、お判りでしょうか
また、【彼女たち】の匿い場所は確保できても、EXMが投入出来ておりません
我らも、そちらの応援に向かいたいですが、もう少しお時間を頂けたらと存じます
くれぐれもご注意下さい
敬具』
中澤殿。慣れぬ職場でご健勝でしょうか
自分は現在、先程会ったであろう【真中次郎】氏と共に、とある人物を追っています
施設の風俗斡旋に噛んでいたそうで、彼の内部告発のお陰でようやく尻尾が掴めました
国内外から挟み撃ちにするため、現在自分はその国に居りません
【闇影卿】も力添えをくれていますが、この【常務】という人物。裏に相当なバックが付いていると目されます
おそらく【攪拌、捕捉、利権受領団体】と言えば、お判りでしょうか
また、【彼女たち】の匿い場所は確保できても、EXMが投入出来ておりません
我らも、そちらの応援に向かいたいですが、もう少しお時間を頂けたらと存じます
くれぐれもご注意下さい
敬具』
中澤「…忍者ってスゴイねぇ……」
【攪拌、捕捉、利権受領団体】とは、中澤も小川から聞いた覚えがあった
確か【MSC】。和平派だけどめんどくさい団体と聞いた。敵にしても味方にしても厄介という、あまり触らない方がいい組織らしい。これがまた厄介な事に、国のインフラの一部を握って管理もしているのだからまためんどくさい
だが、ここも絡んでいるのであれば、状況は確実に動いている…
が、まだこちらは孤立無援に近い
それにこうしてわざわざ便りを寄越して来た以上、相手にも何か動きがあったのは確かか…
確か【MSC】。和平派だけどめんどくさい団体と聞いた。敵にしても味方にしても厄介という、あまり触らない方がいい組織らしい。これがまた厄介な事に、国のインフラの一部を握って管理もしているのだからまためんどくさい
だが、ここも絡んでいるのであれば、状況は確実に動いている…
が、まだこちらは孤立無援に近い
それにこうしてわざわざ便りを寄越して来た以上、相手にも何か動きがあったのは確かか…
中澤「まったく。勘弁してよ」
ヒデヒサは、ココからも見える、赴任した高校の校舎を眺めた
まだこの時代でも残る自然と、それに寄りそうような住宅街は、戦火の爪痕を修復しようと、夜中も工事車両が行き来している
だが、真新しい現代的建物と同じ視界に、焼けた柱だけを残すかつての邸宅が共に映る姿は、まだ格差ある戦時中という事を、嫌でも思い出させてくれた
まだこの時代でも残る自然と、それに寄りそうような住宅街は、戦火の爪痕を修復しようと、夜中も工事車両が行き来している
だが、真新しい現代的建物と同じ視界に、焼けた柱だけを残すかつての邸宅が共に映る姿は、まだ格差ある戦時中という事を、嫌でも思い出させてくれた
中澤「今さら悔やむ事でもないけど……ねぇ」
少し前
N海の沿岸から近付いたバイロンの潜水艦隊と、SN海の各民間海運会社の修理ドックに、修理と偽装したバイロン輸送船が、同時にEXMを出撃させ、そのまま連合の駐屯部隊と戦闘が始まった
連合の上層部は、辺境の島国の本土を戦場と早々に定め、その通りに動いてしまったものだから、途中の島々どころか、この辺りまで戦火は一瞬で広がった
ここも、バイロンの攻撃で焼けたのか、連合の迎撃の巻き添えを喰らったのか
もうわかりゃあしない
N海の沿岸から近付いたバイロンの潜水艦隊と、SN海の各民間海運会社の修理ドックに、修理と偽装したバイロン輸送船が、同時にEXMを出撃させ、そのまま連合の駐屯部隊と戦闘が始まった
連合の上層部は、辺境の島国の本土を戦場と早々に定め、その通りに動いてしまったものだから、途中の島々どころか、この辺りまで戦火は一瞬で広がった
ここも、バイロンの攻撃で焼けたのか、連合の迎撃の巻き添えを喰らったのか
もうわかりゃあしない
中澤「色紙。もう汚しちゃったじゃないの」
明かりを消すと、中澤は床についた
せめてここが、戦場にならなければいいのだが
せめてここが、戦場にならなければいいのだが
――――
次の日、彩音はさっそく施設へと赴いていた
住宅地より少し離れた少し小高い場所、元小学校だった施設を少し改装した簡易的収容所
そこには、何人いるのかわからないくらい、多くの少女達がいた
実はここに赴任する際、新しい研究施設が、S県O島に作られる事が決定したらしい
なので、建築期間の間。施設に囚われていたコ達を、仮に収容する場所が必要だったのだ
カモフラージュのために、他にもいくつかあるのだが
ここは、その移転先にもほど近く、すでに結構な人数が連れて来られていた
なので、建築期間の間。施設に囚われていたコ達を、仮に収容する場所が必要だったのだ
カモフラージュのために、他にもいくつかあるのだが
ここは、その移転先にもほど近く、すでに結構な人数が連れて来られていた
さおり「彩~、こっちこっち」
さおりに呼ばれ部屋に入るとベッドに座る少女と中澤がいた
中澤「やぁ、彩音さん。昨日はどうも」
彼女の顔を見ると、中澤は軽く会釈をした
彩音はこの異質な施設の中、二人を見つけて安堵する
さおり「この子ね、ちょっとあって今塞ぎがちなの
彩が嫌じゃなかったら話し相手になってあげて」
彩が嫌じゃなかったら話し相手になってあげて」
中澤「さおりさん、やっぱり……」
さおり「いいえ、こういうのはやっぱり人と人の関わりかと思うんです
何度も経験しましたから」
何度も経験しましたから」
中澤「わかりました、彩音さんこちら117。よろしくしてあげてね」
彩音「117…? えっ、ひょっとして名前?」
中澤「そうなんだよ。ここの子達には名前も何も無いんだ、そういった子達だけど、大丈夫かい?」
彩音「そうか、それは困ったわね…。だったら、117だからイーナちゃんね」
キョトンとする中澤
イーナと勝手に名付けられた少女からの反応は無かった
彩音「これはこれは
でも、任せといてよ、ここの子達みんな元気にしてあげるわ」
でも、任せといてよ、ここの子達みんな元気にしてあげるわ」
――――
それからしばらく彩音が施設へと顔を出すようになった
学校の友達まで連れてくる勢いだ
学校の友達まで連れてくる勢いだ
『すみませ~ん! ここって聞いて来たんですけど~』
彩音「は~い! みんな~、お歌のお友達が来てくれたよ~♪」
次第に施設の中は明るくなっていった
『みんな~! 聞いてくれてありがと~~!』
「………ッ!」
彩音「……」
――――
彩音「ほら、一緒にご挨拶しよう?」
「…たまになら……聞いたげる…から」
『うん! 今度は一緒に歌おうね♪』
「……///////」
彩音「…よしッ♪」
新たな夢も、抱ける程に…
彩音「…どうして……どう、して……ぇッ…」
中澤「………」
だが、そうした裏でも、いまだその先を絶つコがいた。以前より格段に減ったとはいえ
その度々に、彩音は涙し、また中澤が落ち込んでいるのに彩音は気付いていた
その度々に、彩音は涙し、また中澤が落ち込んでいるのに彩音は気付いていた
――そんな、ある日の事――
彩音「中澤さん、ちょっといいかな?」
中澤「えっ?」
地元の漁師さんにお願いして彩音は中澤を海岸沿いに来ていた
そこに、大きな洞窟がある。そう言って
そこに、大きな洞窟がある。そう言って
彩音「ここは潜戸と言ってね?
神様が日の光を私達にくれたって言い伝えのあるところなの」
神様が日の光を私達にくれたって言い伝えのあるところなの」
ようやく彼女と並ぶと、そこには
海に向かう岸にも関わらず、見上げるほどの大きな空洞が広がっていた
海に向かう岸にも関わらず、見上げるほどの大きな空洞が広がっていた
中澤「なんで、こんなところに?」
彩音「こっちこっち」
と、慣れた足つきで先に行く少女に、男はなんとか置いて行かれまいと足を上げる
少しだけ整備された通路を歩いていくと広い空間に出た
そこは波に削られて出来た、大きな大きな洞窟
まるで、神話の世界にでも迷い込んだかのような、どこまでも続くかのような光景
少しだけ整備された通路を歩いていくと広い空間に出た
そこは波に削られて出来た、大きな大きな洞窟
まるで、神話の世界にでも迷い込んだかのような、どこまでも続くかのような光景
そこには小さなお墓と小石を詰んだモノがいくつも立っていた
中澤「ここは……」
彩音「三途の川原なんて呼ばれてるけど、昔から子供はここにってところなんだって
あの施設の子達、帰るところがないならここでねって思ったの
ちゃんと、ここにあるよって……」
あの施設の子達、帰るところがないならここでねって思ったの
ちゃんと、ここにあるよって……」
与えた名前。好きだった色。それぞれに、ちゃんと施してあった事に
中澤は、ここまでの思い出がよみがえってくるようだった
中澤は、ここまでの思い出がよみがえってくるようだった
彩音「そしたら少しは中澤さんも楽にならないかなって
ごめんなさい、お節介でしたか?」
ごめんなさい、お節介でしたか?」
開いた洞穴の入り口から差す光に、ほんのりと照らされ、首を傾げる彼女の仕草に、少し鼓動が跳ねた気がした…
中澤「いや、ありがとう
僕もまだまだだな。君にまで心配かけるなんて
ほんと、まだまだ……」
僕もまだまだだな。君にまで心配かけるなんて
ほんと、まだまだ……」
彩音「それは、生きてる限りずっと、ですから…
ほら、ちゃんと顔を見せてあげてください……」
ほら、ちゃんと顔を見せてあげてください……」
中澤は、傍目には誰とも知れぬ、だが、きっと自分とこの少女にはわかる
そんなお墓に手を合わせ、二輪の花は、あの子達の事を共に想った……
そんなお墓に手を合わせ、二輪の花は、あの子達の事を共に想った……
地球連合軍N国。県境駐屯基地内
石田「準備は出来ているか、α!」
α「はい、いつでも」
αと呼ばれたのはあの少年
石田「偽造はいくらでもやってやる
どうせ軍の汚点、どうなろうと上は無かった事にしてくれるさ」
どうせ軍の汚点、どうなろうと上は無かった事にしてくれるさ」
不敵な笑いを漏らす石田をよそに
α「そんなことはいいよ、僕は117さえ戻って来てくれれば」
少年は、手にした写真をじっと見つめる
報告書のモノをコピーしただけの、薄っぺらい紙
何度見返したのか、くしゃくしゃになり、ところどころ汚れがこびり付いていた…
報告書のモノをコピーしただけの、薄っぺらい紙
何度見返したのか、くしゃくしゃになり、ところどころ汚れがこびり付いていた…
α「ようやく…、会えるよ……僕の…117……」
石田はその様子を気味悪そうに目を背ける
石田「どっちにしろ、それが無ければおまえはただの兵士と変わらん、好きにしろ」
α「ありがとう中佐……。中佐も、欲しかったコが…」
石田「は? あんなの後腐れ無くしたに決まってるだろう。さっさと行け。終わる頃に追いつく」
αはその言葉を聞くと、静かに部屋を出ていった
石田「中澤ァ……! これでうるさい蝿ともサヨナラだ」
デスクスタンドの光だけの暗い部屋で
誰も聞いてないだろう作戦が始まろうとしていた…
誰も聞いてないだろう作戦が始まろうとしていた…
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