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第41話~第50話 - (2009/08/02 (日) 00:50:19) のソース

514 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/07/11(土) 23:57:27.02 O
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第41回 

先輩の腕は思ったより細くて、それでいてがっしりとしていた。 
私よりも15cmくらい背が高くて、すごく見上げちゃう。 
長い睫毛がきれいで真っ直ぐな目がかっこいい。 
こんなに近くで見ていられるなんて、幸せ・・・。 

「ん?どうかした?」 
「い、いえ・・・な、なんでも・・・」 

じっと見つめていたようで先輩は心配そうな顔で私を見ていた。 
私はなんだか恥ずかしくなって下を向いてしまう。 

下足室につくと嫌でも手を離さなきゃいけなくて、名残惜しかったけど 
靴を履き替えるために靴ロッカーへと向かった。 
革靴に履き替えて、玄関の外へ出る。 
先輩も後から出てきて、二人で歩き出した。 

でも先輩がさっきみたいに手を差し出してくれなかったから、 
腕を組んで歩きたかったけど自分からは恥ずかしくて出来なかった。 

特に会話もなく、先輩の家まで歩いた。一度行ったから場所は知ってる。 
そういえばももの家ってどのへんなんだろうなぁ・・・? 
ふとキョロキョロ見回して「嗣永」っていう表札を見つけようとしたけど 
当然、見つからなかった。 

しばらく歩くとあのでーんとでっかい門が目に入ってきて 
先輩は小走りにインターホンに向かい、前回のように車を呼んだ。 
そしてまたすぐにリムジンがやってきて、私たちはそれに乗り込んだ。 

どんどん緊張してきて、いろんなことが頭の中を巡って私はずっと無口だった。 



515 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/07/12(日) 00:14:48.62 O
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第42回 

車を降りて豪勢なお家の中へと案内される。 
今日も玄関のところには執事さんっぽい人がいて挨拶をしてくれた。 
そして、前回、私は上りきらなかった階段の下までやってきて先輩が言った。 

「なんか・・・ごめん」 
「え?」 
「いや・・・ずっと黙ってるから」 
「え、えっと!き、緊張してるだけで・・・・だからその・・・」 
「そう、ならよかった・・・」 
先輩はニッコリ微笑んでくれた。 

「今日は帰っちゃダメだよ?・・・っていうか帰してあげない」 
「え、あ、あっ・・・」 
先輩は階段の下で私の手を取った。しっかりと握られている。やっぱり大きな手だ。 
そのまま先輩は階段を上り始めた。 
少々強引だけどそれがなんだかうれしくて私は引っ張られるままに階段を上った。 
階段を上りきって、少し歩くと先輩の部屋についた。 

「ここだよ、うちの部屋」 
「あ・・・はい」 
「どうぞ、入って」 
先輩は部屋のドアを開けてどうぞ、と手を差し出した。 
私は恐る恐る、一歩ずつゆっくりと部屋の中へと入っていた。 

「あれ・・・?」 

その部屋の中は、私の部屋よりは随分大きいけど、この家全体を考えると 
こじんまりしているというかさっぱりしているというか・・・ 
無駄な装飾は一切なくて、色で例えるなら白い感じ・・・そんな部屋だった。 


519 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/07/12(日) 00:33:14.24 O
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第43回 

「座ってよ、こっち」 
先輩は部屋に入ってベッドと机の間に置かれた2~3人掛けくらいのソファをぽんぽん叩いた。 
ソファの前は小さな暖炉があって、その手前にはテーブルが置かれている。 
どの家具も非常にさっぱりした感じで、先輩っぽいなぁ・・・なんて思った。 
招かれるままにソファに腰を下ろすとその柔らかな感触に思わず「おぉ」と声が漏れた。 

「あの、奥のドアはなんですか?」 
「あぁ、あれはシャワーとトイレ。ももちはたまにお風呂に入りに来るんだw」 
「ももが?へぇ・・・すごいですねぇ」 
「・・・引いた?」 
「い、いえそんな!」 
「うちってあるのが当たり前だと思っちゃってるんだよね。 
これってよくないとは思うんだけど・・・どうしようもないっていうかさ。」 
先輩はちょっと寂しそうにそう言った。 

シャワーか・・・シャワーと聞いて以前書いた同人誌の内容が頭にぽっと浮かんでくる。 
シャワーで飽きるまで情事を繰り返すお話・・・ってあぁもう! 
なんてこと考えてるんだろう・・・みやのばか!そんなことありえないの! 

しばらくすると美味しそうな生クリームが乗ったケーキと紅茶が運ばれてきた。 
運んできてくれたのは、先輩のお母さんだった。綺麗な人で、先輩によく似ている。 
先輩に紹介してもらって挨拶をして、少し世間話をすると先輩のお母さんは出て行った。 
先輩の話ではケーキ作りが趣味でしょっちゅう作ってるうちに、すごく上手くなったとか。 
でも、その他の料理は一切ダメなんだよね・・・あの人。先輩は諦めたような声でそう言った。 

「食べよう、美味しいよ」 
「はい!」 
先輩に言われてフォークを突き刺した。美味しいそうなケーキを前にして、余計な妄想は頭から、消えていた。多分。 


537 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/07/12(日) 17:13:42.91 O
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第44回 

「美味しい!」 
「でしょ?ママのケーキはそこらのお店より美味しいんだ」 

先輩は嬉しそうにそう言ってニコニコと笑顔を見せてくれた。 
紅茶もいい香りで、すごく美味しくてバッチリな組み合わせって感じ! 
私も自然と笑顔になって他愛もない話を続けた。 

ケーキも残り少なくなった頃、ふと思った。 
これを食べ終えたらどうなるんだろう?先輩は返事をしてくれるのかな? 
・・・こんなことしてる場合じゃない。もう一度、ちゃんと伝えよう。 
後悔しないように。ふられても、心残りのないように。 

「・・・あの、先輩?」 
「ん?どしたの?」 
「・・・話、聞いてもらってもいいですか?」 
「わかった。聞く」 

先輩の目を見て聞いた。先輩もしっかり目を見つめてくれて、答えてくれる。 
大きな瞳にドキドキしていて、緊張がどんどん高まっていくのがわかった。 
私はゆっくりと、自分の気持ちを素直に話し始めた。 

「高校に入って、先輩のことはじめて見たのは、入学式の日です」 
「そうなの?あれ、うち出席してないような・・・」 
「帰り際・・・廊下ですれ違ったんです。今でもすごく覚えてて・・・・ 
先輩すごく背が高くて美人だしとっても目立ってたんです」 
「あぁ、そうか。そういえばなんか雑用で呼ばれてたんだ。思い出した、うん。 
あ、美人じゃないよ、ただでかいから目立っただけで・・・」 
「ち、ちがいます!先輩・・・綺麗だったから・・・それで・・・ 
同級生も先輩に憧れてる子いっぱいいるんですよ?気付いてますか?」 


538 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/07/12(日) 17:15:41.51 O
&color(blue){>>537 }
第45回 

先輩はすごく人気がある。通学路でも先輩の待ち伏せしてる人が何人もいる。 
先輩の写真はこっそりと売られているし、幼馴染のももはファンからはちょっと嫌われてる。 

「そう・・・なの?あんまり考えたことないけど・・・」 
やっぱりそうだと思った。人気ある人って自分がそうだっていう自覚とか・・・ないんだよねぇ。 
みやもそう。みやって結構人気あるみたいなのに、全然無関心だから。 
ってそうじゃなくて・・・・ 

「私、先輩の外見・・・っていうかその、美人で綺麗で背が高くてモデルみたいで・・・ 
そういうのに憧れてたんです。自分もそうなりたい、かっこいいなぁって・・・ 
他にも、頭がよくて2年生なのに生徒会副会長でお金持ちで・・・ 
私って表面的なことしか見てなかったんです・・・。」 
「・・・しょうがないよ。だって話したこともなかったんだから、そういうものでしょ?」 

先輩はスカートの上にある私の手を上からそっと握ってくれた。 
暖かくて、頑張って、そう言われているみたいだった。 

「でも・・・私最低なんです・・・先輩と話せるようになって・・・・ 
先輩は私に弱いところまで・・・泣いてるところまで見せてくれたのに・・・・ 
せっかく家まで誘ってくれたのに・・・勝手にふさわしくないんだとか、 
ここにいちゃいけないんだとか考えて・・・逃げ出して・・・・」 
「・・・・・・・」 
「なのに、グスっ・・・先輩、謝ってくれて・・・自分のせいだって謝ってくれて・・・ 
やさしくて・・・やさし・・・すぎで・・・私自分が情けないなって・・・・グス・・・ 
先輩の外見しか見えてなかったことを反省して後悔して・・・・ 
・・・そしたら、先輩のこと、憧れなんかじゃなくて・・・好きだって、これは恋だって・・・ 
そういう気持ちがわーってあふれ出して来て・・・・・それで突然告白しちゃいました・・・ズズッ 

・・・・・先輩、好きです。大好きです!」 


539 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/07/12(日) 17:17:00.18 O
&color(blue){>>538 }
第46回 

一方的に、一気に、・・・ 
目を真っ赤にして、かっこ悪くも泣きながら、私は2回目の告白をした。 
思っていたことは全部伝えられた。だから、「ごめんなさい」って言われても 
後悔しない。・・・・多分、しない。 

「・・・・泣かないで、愛理ちゃん。」 

先輩は私の手を引っ張って、バランスを崩した私を自分の胸の中に引き入れた。 
そして、やさしく、長い腕で私を抱きしめてくれた。 
・・・やっぱり大きいなぁ。・・・暖かい。その圧倒的な包容力に私は何も言えなくなった。 
その代わりに、先輩の白いブラウスを濡らしていく。 
首からぶら下がるネクタイのチェック柄がやけに目に付いていた。 

「・・・ほんとはね、ちゃんと目を見て言おうって決めてたんだ。 
でも・・・やっぱりちょっと恥ずかしいからこのまま聞いてね。」 
「あ・・・はい」 

先輩は私を抱きしめたまま、言った。 
そう言われたからには上げかけていた顔は下ろすしかない。 
今一度、先輩の胸の中に顔を落とした。目の前にはやっぱりネクタイ。 

返事だ。これは、告白の・・・返事だ。 
やばい。どうしよう。心臓が口から飛び出そう、なんてよく言うけど 
まさにそんな感じの気分。 

みや、私頑張ってるよ。みやのおかげかな。・・・ありがとね。 
部室を訪ねてくれたみやに感謝しつつ、先輩の返事を待った。 


551 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/07/13(月) 00:20:39.13 O
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第47回 

「うち、愛理ちゃんの笑顔が好き。癒されるんだ。それに一緒にいて楽しい。 
・・・・まだ出会って何日かの付き合いだけど、愛理ちゃんのこと全然知らないけど・・・ 
うちも、愛理ちゃんが好きです・・・。愛理ちゃんのこともっと知りたい。」 

少しずつ抱きしめる力が強くなっていく。最後にはもうぎゅうってくらい抱きしめられていた。 
どうしよう・・・これって・・・OKってことだよね?信じられないよ、どうしよう。 
頭の中がパニックを起こしたように混乱していた。動揺しすぎて言うべき言葉も見つけられない。 

「あ、え、あっと・・・・・・」 
「顔上げて?・・・・いっぱい教えてね。」 
「・・・・・はい。先輩も教えてください、いろんなこと。」 
「もちろん。あー・・・・緊張したぁ」 

先輩の腕の中、ゆっくりと顔を上げる。 
私の顔は真っ赤だろう。でも、先輩も真っ赤だった。 
カッコイイ先輩じゃなくて、可愛い先輩がいた。 
女の子っぽい、可愛らしい顔で先輩は微笑んだ。 
茶目っ気のある顔もステキで言葉通り、いろんな先輩を知りたくなった。 

「・・・びっくりした?」 
「はい・・・すっごく」 
「正直、自分でもビックリしてるんだ。」 
「どうして・・・ですか?」 
「人を好きになるのってもっと時間のかかる手間の多いものだって思ってた。 
でも、・・・そんなことなかったんだ。あっさりと愛理ちゃんを好きになったんだ」 

先輩は恥ずかしそうに頬を掻きながら、笑ってまたぎゅうっと抱きしめてくれた。 
先輩の胸に耳を当てるとドキドキしているのがわかって、嬉しかった。 
緊張してたのは私だけじゃなかったんだ、って。 



552 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/07/13(月) 00:27:16.89 O
&color(blue){>>551 }
第48回 

少し顔を上げて先輩と見つめあう。 
鼻先がくっつきそうな距離。いつ唇がくっついてもおかしくない距離。 
端正な先輩の顔が赤くなってて、可愛くて、綺麗で。匂いもなんだかいい匂いがする。 
先輩を独り占めしている気分で、嬉しかった。 

ふと、みやの言葉蘇る。 

『まーキスはされちゃうね、愛理。覚悟は?勇気いるよw』 

覚悟・・・まだできてない。そんな勇気もまだない。 
でも、確実にその距離は縮まっていく。 
私の、ファーストキス・・・。あぁ、キス、しちゃうんだ・・・・。 

ほとんど唇が触れ合いそうな距離まで近づいて、先輩は私に聞いた。 

「・・・いい?」 
先輩の甘い、とろけそうな声が耳から入って頭の中で響く。 
痺れてしまいそうな甘い声。私はコクリと頷いた。 
ゆっくりと目を閉じる。 

いやらしいこといっぱい妄想していやらしい同人誌作ってたのに。 
キスなんて序の口すぎるってみやに文句言って書き直させたこともあったのに。 
キスなんて恋人なら誰でもするものだって勝手にそう思ってたのに。 

唇にあるこの柔らかい、言葉では表現できないような感触。 
甘美な感触。 
身体中、全部溶けてなくなってしまいそうな感覚。 
&color(red){私は、ちょっぴり大人になった。} 


611 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/07/15(水) 16:54:45.18 0
&color(blue){>>552 }
第49回 

くまいちょーと別れて、みやを探した。 
教室へ寄ったらまだカバンがあったから帰ってはいないんだと思う。 
みやって強がりだから、かっこ悪いところは絶対人には見せない。 
でも、究極の寂しがり屋。矛盾してるよねぇ、ほんと。 
きっとどこかでももを、待っているはず。そう決め付けて、探していた。 

「あそこかなぁ・・・・」 

とりあえずいくつか探して見当たらなかったから、みやの好きな屋上へ向かった。 
いてくれると助かるんだけど・・・・。 
階段を駆け上がって、屋上への扉を開く。 
バンっ!と大きな音がしてちょっとびっくりした。 
屋上に出て、あたりを探してみると・・・柱の影で小さくなってるみやがいた。 
体育座りをしてこじんまりとした感じになっちゃってる。 
ももは隣に座って声をかけた。 

「この意地っ張り」 
「・・・うるさい」 
「目、真っ赤じゃん。どんだけ泣いてんの」 
「・・・もも、うるさい」 
「はいはい。」 
「・・・愛理は?」 
「くまいちょーと行った。」 
「・・・そっか。愛理、大丈夫かな・・・」 
「くまいちょーはいいやつだから大丈夫だよ。・・・もう、帰ろう?」 
「うん・・・・」 

手を差し出すとみやはその手を握ってくれる。 
随分素直で少しビックリしたけど、その手を握り返して引っ張った。 



612 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/07/15(水) 16:55:27.12 0
&color(blue){>>611 }
第50回 

「・・・もも、ももはうちに幸せになってほしい・・・とか言った?」 
「なんで?」 
「なんでじゃなくて・・・言った?」 
「さぁ、覚えてない」 
「・・・・なら、いい。」 

何でごまかすんだろう。いや、なんでうちは知ってて聞いたんだろう。 
ももは確かに言った。「みやにも幸せになってほしい」そう言ってた。 
・・・うちは愛理が好きで、でも叶わないから幸せになってほしくて・・・じゃあ、ももは・・・ 

なんて・・・ありえないよね。 
高校へ入ってももとはずっと一緒にいるような気がする。 
親友であり、先輩であるもも。 
そんなの・・・きっと、ありえない。 

一瞬浮かんだことを必死で打ち消してカバンに教科書を詰め込んだ。 
ももは、教室の入り口でうちを待っている。 
髪をいじりながら、暇そうな顔をして待っている。 
それでも嫌な顔一つです、待ってくれている。 
うちはももに噛み付いたのに。心配してくれてたのに、噛み付いた。 
なのに、迎えに来てくれて優しくしてくれる。 
・・・・ももにとって、うちってなんなの?教えてくれなきゃ、わかんないぞ。 

カバンをもって教室を出る。 
「ごめん、待った?」 
「ううん、へーき」 

ももは優しく笑ってくれる。すごく、救われた気持ちになる。 
愛理のことで辛いのに、それを忘れられるような・・・そんな気持ち。 
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