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「第311話~第320話」(2010/01/22 (金) 13:35:56) の最新版変更点
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892 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/12/20(日) 22:47:22.99 0
&color(blue){>>853}
第311回
「せ、先輩!・・あ、えっと、その」
「愛理ちゃん?」
私が先輩を見て固まっていると、前を向いていた村上さんも振り返った。
その瞬間、友理奈先輩が固まるのがわかった。
顔は・・・・ものすごく、怒っている。ように、見えた。
「・・・愛理、なんで?」
「えっと、えっと、あの」
上手く答えられなくて、しどろもどろになってしまう。
どうしよう、怒られる。また、怒られる。また、泣かせてしまう。
「何してんだよ!言ったじゃん、こいつには近づくなって!」
私が答えるより前に、先輩の怒声が響いた。
ビクっとして、また固まって、私はその場から動けなくなった。
村上さんは、私の隣でじっと先輩を見つめていた。
「あたしが一緒に帰ろうって強引に誘ったんだよ。ね、愛理ちゃん」
「え、・・・」
「ほら、愛理ちゃん可愛いからなんていうか・・・つい、ってやつでw」
村上さんは軽薄そうな笑みを浮かべてそう言った。
…明らかに、自分のイメージを悪くするような・・・そういう感じで。
だからやっぱり先輩は眉間に寄せていたしわを何倍にも増やした。
893 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/12/20(日) 22:48:42.43 0
&color(blue){ >>892}
第312回
私をかばってくれた。私が責められないように、私を守ってくれた。
…自分自身を貶してまでして、私を守って・・・・。
やっぱり悪い人なんかじゃない。優しい人だ。・・・先輩は誤解を・・・。
私が先輩にそう言おうとしたら、少し離れた場所にいた先輩が目の前にいた。
いや、私じゃなくて村上先輩の目の前。
「・・・愛理に近づかないで。」
「はいはい」
低い声で、目を見て、見下ろして、先輩はそう言った。
村上さんは、わかったわかった、とでも言いたそうにあしらうようにそう言った。・・・違う、そうじゃなくて・・・。
「行くよ」
「せ、先輩!む、村上さん・・・えっとごめんなさい!」
「気にしないでーバイバーイ!」
私は先輩に腕を引かれて、村上さんと別れた。
なんだかすっごく悪いことをしたような気がする。・・・私、最低かもしれない。
でも村上さんはやっぱり優しい人で、満面の笑みで手を振ってくれた。
…・先輩に手を引かれながら、私は村上さんのことばかり考えていた。
だから、駅ではなく、先輩の家に私は連れて来られていたことに気がついていなかった。
「送るから、車呼ぶからちょっと待っててよ」
「え、でも、平気ですよ?電車で・・・」
「私が平気じゃない・・・冷静でいられない・・・心配なんだよ、愛理」
「で、でも」
「愛理と村上を見て気がどうにかなりそうだった・・・ちゃんと約束は守ってよ、愛理」
「・・・・・はい」
必死にそう訴えかけてくる先輩を見ていたら
「誤解です、村上さんは悪い人じゃない」とはとてもじゃないけど言えそうにはなかった。
63 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/12/27(日) 21:40:32.87 0
前スレ&color(blue){>>893 }
第313回
朝、家を出ると見覚えのある大きなリムジンが止まっていた。
…まさか。
「おはよ、愛理」
「先輩・・・どうして?」
「どうしてって、迎えにきた。どうせ、あいつみやと一緒でしょ?
愛理は毎日みやと一緒に登校してくるだろうし・・・心配で」
「でも、・・・悪いです」
「いいの。気にしないで。」
先輩は私の腕を引っ張って、車に押し込んだ。
程よく冷えてて快適な車内・・・・じゃなくて、ここまでするなんて。
そりゃ心配してくれるのは嬉しいけど・・・でも。
「あ!りーちゃん、あと舞美ちゃんも!あの、一緒にいつも行っているんで・・・
あの・・・・・降ります、車、あの」
「いいじゃん、先に行くってメールすればいいし」
「でも・・・」
「・・・・・」
「はい・・・そうします」
先輩は優しくて綺麗で頭もいい。そして、お金持ちだからパーフェクト。
でも、たまにこう・・・迫力があって目が一瞬怖くなるような・・・・。
私は逆らえない。・・・いい風に思えば私を好きでいてくれて
心配してくれているって言うことなんだと思う。
でも、そんなとき私はそういうことじゃなくて、萎縮しちゃう。
本当の気持ちが話せなくなる。それは、・・・・対等な関係じゃ、ないよね?
64 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/12/27(日) 21:42:22.70 0
&color(blue){>>63 }
第314回
「愛理、昨日ね」
先輩は私にいろんな話をしてくれる。いつもは電車だから割と早く着くけど
でも車はそうはいかないようで。その間、リムジンで隣に座った先輩は
延々ととくにオチのない話を繰り返している。
学校の近くに住んでいる先輩。私の家に来るなんて二度手間なのに。
…なのに心配してきてくれるなんて。嬉しくないなんてうそ。
でも、素直に喜べない気持ちもうそじゃない。だから、ちょっと苦しい。
私は、この、車の中の空間が・・・・ちょっぴり窮屈で辛かった。
◆
お昼休み、みやに呼ばれた。話があるから一緒にご飯食べようってそういう話で。
みやがいる屋上へ向かうと、みやとももと村上さんがいた。
一瞬、やばいって思って帰ろうと思ったけど、でも・・・みやとももがいるしいいか。
とあっさり先輩との約束を破った。・・・軽率かもしれないけど、でも、昨日の事を謝りたい。
って話って言うからみやだけなんだと思ってた。
「なにその、なんでいるのっていう目は」
「だって、みやが呼び出すから・・・」と、ももが口を尖らせるから私も口を尖らせてみやを見た。
「い、いや別に言いそびれてただけで・・・」
と慌てたので、その様子が可愛いからとりあえず許してあげた。
村上さんは2人から少し離れたフェンスのそばで下に広がっているグラウンドを見ていた。
私に気付くと、「よっ」って右手をすこし上げてそう言った。
「こんにちは・・・あの、昨日はスイマセン」
「いいよ、気にしてない」
みんなのいる場所へやってくる村上さんに昨日の事を謝った。
でも、あっけらかんというか忘れてたみたいだった。
65 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/12/27(日) 21:43:03.13 0
&color(blue){>>64 }
第315回
「あのさ、愛理、熊井ちゃんってぶっけちゃけめぐのこと嫌ってるよね?」
「え?・・・あぁ、うん」
みやがあまりにもストレートに言うから一瞬わからなくて、そのあと頷いた。
やっぱりそうだよなぁ・・・とみやは腕を組んだ。
どうやら、村上さんを文芸部に引き入れたいらしい。
時間もないし、結構焦ってるんだ。今日を入れて、4日しかないから。
他の子も勧誘に奔走してくれているし、私たちだって頑張っているけど、でも、
後二人がどうしても集まらなくて。・・・だからってことらしい。
だけど・・・それは現実的じゃないような・・・・。
「みやが勝手に言ってるだけだよ、あたしは興味ない」
「めぐ、そう言わずにさぁ」
「やだよ、嫌われてまで入りたくない」
村上さんはお弁当の卵焼きを頬張りながら冷たい声で言った。
みやは困ったような顔をして、ももを見るけどももはお弁当に夢中で聞いていないみたい。
みやは、次は、ため息をついて「・・・もう」と小さくこぼした。
「どうしよっかぁ・・・」
みやにため息だけが屋上に響く。
その時、ガチャリと屋上の扉が開く音がして4人で一斉に振り返った。
…そこには、唖然とした顔の友理奈先輩がいて、マズイ、ヤバイ、と思った。
だから固まってしまって、私は動けなくなった。
「・・・・愛理、なにしてんの。」
先輩の、冷たくて突き刺さるような声が、私に降り注いだ。
410 名前:&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2010/01/16(土) 01:50:22.72 0
第316回
「あ・・・・えっと」
一番最初に声を出したのはみやだった。
みんな固まっちゃっててちょっとおかしい。
ただ笑ってしまうと鬼の形相の熊井さんに本気で殺されるかもしれないから
神妙な振りして誤魔化した。
なんでまぁ、こうタイミングが悪い人なんだか。
愛理ちゃん泣きそうな顔してんじゃん、可哀相に。
…・ってあたしのせいか。ごめん。
「愛理、なにしてんの?」
「・・・っと、ご飯、食べてて・・・」
「見ればわかるよ、そうじゃなくて」
おっとりしたしゃべり方する子だと思ってたんだけど。
どうやら怒っているときは、例外らしい。
冷たい声で、あたしもさすがにちょっとビクっとしちゃった。
だいたい背が高すぎだからめっちゃ見下ろされてて怖い。
…あたしたち地べたに座ってるし、余計にね?
「く、熊井ちゃん、あ、う、うちが無理やり連れて来たの!
愛理は嫌がってたんだけど、その、・・・・」
「なんで?なんのためにそんなことしたの?」
「・・・あぁ、えっと・・・」
「なに?理由ないの?」
熊井さんの目がまた一層厳しくなっていく。
みやまで泣きそうだ。
…あたし嫌われてるなぁ・・・とまたまた再確認です。
411 名前:&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2010/01/16(土) 01:51:04.58 0
&color(blue){>>410}
第317回
で、ももちゃんはと言うと・・・めんどくさそうな顔してちょっとむくれてる。
相変わらず顔に感情が出すぎだよももちゃん。
あぁ、確か熊井さんと幼馴染なんだっけ。
みやが答えに窮している間、
ももちゃんを見ていたら心底めんどくさそうな顔をしてから口を開いた。
「くまいちょー、あのさ、みんな仲良くお昼ご飯食べてるだけじゃん?なに怒ってんの」
「ももちは関係ないじゃん」
「関係なくないもん。くまいちょーはめぐちゃんが気に入らないだけでしょ?」
「・・・そうだよ、だから一緒なんて」
「それを愛理に押し付けてるの?可哀相だよ、愛理が。そんなことでいちいち怒られるなんて」
「なっ!・・・べ、別に押し付けてない!それに愛理も納得してくれたはずなのに、
なのに一緒だから怒ってるの!ももち黙っててよ!」
ももちゃんの口撃に熊井さんの冷たい顔はなくなり、ちょっと焦ってる。
あたしはよくわかんないけど、ももちゃんなりの操縦方法でもあるのかな。
毒が一気に抜けたみたい。
…ぶっちゃけ、全部あたしのせいだけどこの2人の口げんかおもしろい・・・。
412 名前:&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2010/01/16(土) 01:52:49.56 0
&color(blue){>>411}
第318回
「黙んないよ!あのさ、だいたいめぐちゃんは」
「もも、もういい。」
ももちゃんが黙んないって大きな声で言った後、愛理ちゃんの小さな声が響いた。
その声に、熊井さんもももちゃんも黙ってしまって。
「・・・・先輩、ごめんなさい。約束破って、ごめんなさい」
「う、うん・・・・」
「でも、・・・・私、やっぱりこの約束守れそうに・・・ないです」
「え・・・・・・・???」
「私は、村上さんと話したいし、仲良くなりたいんです・・・・ごめんなさい」
愛理ちゃんが謝ったから、よしよし収まった・・・と思ったら、
愛理ちゃんはそんなことを言って下を向いた。
唖然とした顔で、今度は熊井さんが固まってしまった。
愛理ちゃんは可愛いしいい子だし、ももちゃんもみやもお気に入りみたいで。
出来ればもっと仲良くなりたいところだけど、まぁ、しょうがないよねぇ・・・
なんて思っていて、なんていうか、他人事みたいに思ってた。あたしが原因なのにね。
だから、愛理ちゃんの発言はびっくりしたけど、でもちょっとだけ嬉しかった。
892 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/12/20(日) 22:47:22.99 0
&color(blue){>>853}
第311回
「せ、先輩!・・あ、えっと、その」
「愛理ちゃん?」
私が先輩を見て固まっていると、前を向いていた村上さんも振り返った。
その瞬間、友理奈先輩が固まるのがわかった。
顔は・・・・ものすごく、怒っている。ように、見えた。
「・・・愛理、なんで?」
「えっと、えっと、あの」
上手く答えられなくて、しどろもどろになってしまう。
どうしよう、怒られる。また、怒られる。また、泣かせてしまう。
「何してんだよ!言ったじゃん、こいつには近づくなって!」
私が答えるより前に、先輩の怒声が響いた。
ビクっとして、また固まって、私はその場から動けなくなった。
村上さんは、私の隣でじっと先輩を見つめていた。
「あたしが一緒に帰ろうって強引に誘ったんだよ。ね、愛理ちゃん」
「え、・・・」
「ほら、愛理ちゃん可愛いからなんていうか・・・つい、ってやつでw」
村上さんは軽薄そうな笑みを浮かべてそう言った。
…明らかに、自分のイメージを悪くするような・・・そういう感じで。
だからやっぱり先輩は眉間に寄せていたしわを何倍にも増やした。
893 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/12/20(日) 22:48:42.43 0
&color(blue){ >>892}
第312回
私をかばってくれた。私が責められないように、私を守ってくれた。
…自分自身を貶してまでして、私を守って・・・・。
やっぱり悪い人なんかじゃない。優しい人だ。・・・先輩は誤解を・・・。
私が先輩にそう言おうとしたら、少し離れた場所にいた先輩が目の前にいた。
いや、私じゃなくて村上先輩の目の前。
「・・・愛理に近づかないで。」
「はいはい」
低い声で、目を見て、見下ろして、先輩はそう言った。
村上さんは、わかったわかった、とでも言いたそうにあしらうようにそう言った。・・・違う、そうじゃなくて・・・。
「行くよ」
「せ、先輩!む、村上さん・・・えっとごめんなさい!」
「気にしないでーバイバーイ!」
私は先輩に腕を引かれて、村上さんと別れた。
なんだかすっごく悪いことをしたような気がする。・・・私、最低かもしれない。
でも村上さんはやっぱり優しい人で、満面の笑みで手を振ってくれた。
…・先輩に手を引かれながら、私は村上さんのことばかり考えていた。
だから、駅ではなく、先輩の家に私は連れて来られていたことに気がついていなかった。
「送るから、車呼ぶからちょっと待っててよ」
「え、でも、平気ですよ?電車で・・・」
「私が平気じゃない・・・冷静でいられない・・・心配なんだよ、愛理」
「で、でも」
「愛理と村上を見て気がどうにかなりそうだった・・・ちゃんと約束は守ってよ、愛理」
「・・・・・はい」
必死にそう訴えかけてくる先輩を見ていたら
「誤解です、村上さんは悪い人じゃない」とはとてもじゃないけど言えそうにはなかった。
63 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/12/27(日) 21:40:32.87 0
前スレ&color(blue){>>893 }
第313回
朝、家を出ると見覚えのある大きなリムジンが止まっていた。
…まさか。
「おはよ、愛理」
「先輩・・・どうして?」
「どうしてって、迎えにきた。どうせ、あいつみやと一緒でしょ?
愛理は毎日みやと一緒に登校してくるだろうし・・・心配で」
「でも、・・・悪いです」
「いいの。気にしないで。」
先輩は私の腕を引っ張って、車に押し込んだ。
程よく冷えてて快適な車内・・・・じゃなくて、ここまでするなんて。
そりゃ心配してくれるのは嬉しいけど・・・でも。
「あ!りーちゃん、あと舞美ちゃんも!あの、一緒にいつも行っているんで・・・
あの・・・・・降ります、車、あの」
「いいじゃん、先に行くってメールすればいいし」
「でも・・・」
「・・・・・」
「はい・・・そうします」
先輩は優しくて綺麗で頭もいい。そして、お金持ちだからパーフェクト。
でも、たまにこう・・・迫力があって目が一瞬怖くなるような・・・・。
私は逆らえない。・・・いい風に思えば私を好きでいてくれて
心配してくれているって言うことなんだと思う。
でも、そんなとき私はそういうことじゃなくて、萎縮しちゃう。
本当の気持ちが話せなくなる。それは、・・・・対等な関係じゃ、ないよね?
64 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/12/27(日) 21:42:22.70 0
&color(blue){>>63 }
第314回
「愛理、昨日ね」
先輩は私にいろんな話をしてくれる。いつもは電車だから割と早く着くけど
でも車はそうはいかないようで。その間、リムジンで隣に座った先輩は
延々ととくにオチのない話を繰り返している。
学校の近くに住んでいる先輩。私の家に来るなんて二度手間なのに。
…なのに心配してきてくれるなんて。嬉しくないなんてうそ。
でも、素直に喜べない気持ちもうそじゃない。だから、ちょっと苦しい。
私は、この、車の中の空間が・・・・ちょっぴり窮屈で辛かった。
◆
お昼休み、みやに呼ばれた。話があるから一緒にご飯食べようってそういう話で。
みやがいる屋上へ向かうと、みやとももと村上さんがいた。
一瞬、やばいって思って帰ろうと思ったけど、でも・・・みやとももがいるしいいか。
とあっさり先輩との約束を破った。・・・軽率かもしれないけど、でも、昨日の事を謝りたい。
って話って言うからみやだけなんだと思ってた。
「なにその、なんでいるのっていう目は」
「だって、みやが呼び出すから・・・」と、ももが口を尖らせるから私も口を尖らせてみやを見た。
「い、いや別に言いそびれてただけで・・・」
と慌てたので、その様子が可愛いからとりあえず許してあげた。
村上さんは2人から少し離れたフェンスのそばで下に広がっているグラウンドを見ていた。
私に気付くと、「よっ」って右手をすこし上げてそう言った。
「こんにちは・・・あの、昨日はスイマセン」
「いいよ、気にしてない」
みんなのいる場所へやってくる村上さんに昨日の事を謝った。
でも、あっけらかんというか忘れてたみたいだった。
65 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2009/12/27(日) 21:43:03.13 0
&color(blue){>>64 }
第315回
「あのさ、愛理、熊井ちゃんってぶっけちゃけめぐのこと嫌ってるよね?」
「え?・・・あぁ、うん」
みやがあまりにもストレートに言うから一瞬わからなくて、そのあと頷いた。
やっぱりそうだよなぁ・・・とみやは腕を組んだ。
どうやら、村上さんを文芸部に引き入れたいらしい。
時間もないし、結構焦ってるんだ。今日を入れて、4日しかないから。
他の子も勧誘に奔走してくれているし、私たちだって頑張っているけど、でも、
後二人がどうしても集まらなくて。・・・だからってことらしい。
だけど・・・それは現実的じゃないような・・・・。
「みやが勝手に言ってるだけだよ、あたしは興味ない」
「めぐ、そう言わずにさぁ」
「やだよ、嫌われてまで入りたくない」
村上さんはお弁当の卵焼きを頬張りながら冷たい声で言った。
みやは困ったような顔をして、ももを見るけどももはお弁当に夢中で聞いていないみたい。
みやは、次は、ため息をついて「・・・もう」と小さくこぼした。
「どうしよっかぁ・・・」
みやにため息だけが屋上に響く。
その時、ガチャリと屋上の扉が開く音がして4人で一斉に振り返った。
…そこには、唖然とした顔の友理奈先輩がいて、マズイ、ヤバイ、と思った。
だから固まってしまって、私は動けなくなった。
「・・・・愛理、なにしてんの。」
先輩の、冷たくて突き刺さるような声が、私に降り注いだ。
410 名前:&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2010/01/16(土) 01:50:22.72 0
第316回
「あ・・・・えっと」
一番最初に声を出したのはみやだった。
みんな固まっちゃっててちょっとおかしい。
ただ笑ってしまうと鬼の形相の熊井さんに本気で殺されるかもしれないから
神妙な振りして誤魔化した。
なんでまぁ、こうタイミングが悪い人なんだか。
愛理ちゃん泣きそうな顔してんじゃん、可哀相に。
…・ってあたしのせいか。ごめん。
「愛理、なにしてんの?」
「・・・っと、ご飯、食べてて・・・」
「見ればわかるよ、そうじゃなくて」
おっとりしたしゃべり方する子だと思ってたんだけど。
どうやら怒っているときは、例外らしい。
冷たい声で、あたしもさすがにちょっとビクっとしちゃった。
だいたい背が高すぎだからめっちゃ見下ろされてて怖い。
…あたしたち地べたに座ってるし、余計にね?
「く、熊井ちゃん、あ、う、うちが無理やり連れて来たの!
愛理は嫌がってたんだけど、その、・・・・」
「なんで?なんのためにそんなことしたの?」
「・・・あぁ、えっと・・・」
「なに?理由ないの?」
熊井さんの目がまた一層厳しくなっていく。
みやまで泣きそうだ。
…あたし嫌われてるなぁ・・・とまたまた再確認です。
411 名前:&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2010/01/16(土) 01:51:04.58 0
&color(blue){>>410}
第317回
で、ももちゃんはと言うと・・・めんどくさそうな顔してちょっとむくれてる。
相変わらず顔に感情が出すぎだよももちゃん。
あぁ、確か熊井さんと幼馴染なんだっけ。
みやが答えに窮している間、
ももちゃんを見ていたら心底めんどくさそうな顔をしてから口を開いた。
「くまいちょー、あのさ、みんな仲良くお昼ご飯食べてるだけじゃん?なに怒ってんの」
「ももちは関係ないじゃん」
「関係なくないもん。くまいちょーはめぐちゃんが気に入らないだけでしょ?」
「・・・そうだよ、だから一緒なんて」
「それを愛理に押し付けてるの?可哀相だよ、愛理が。そんなことでいちいち怒られるなんて」
「なっ!・・・べ、別に押し付けてない!それに愛理も納得してくれたはずなのに、
なのに一緒だから怒ってるの!ももち黙っててよ!」
ももちゃんの口撃に熊井さんの冷たい顔はなくなり、ちょっと焦ってる。
あたしはよくわかんないけど、ももちゃんなりの操縦方法でもあるのかな。
毒が一気に抜けたみたい。
…ぶっちゃけ、全部あたしのせいだけどこの2人の口げんかおもしろい・・・。
412 名前:&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2010/01/16(土) 01:52:49.56 0
&color(blue){>>411}
第318回
「黙んないよ!あのさ、だいたいめぐちゃんは」
「もも、もういい。」
ももちゃんが黙んないって大きな声で言った後、愛理ちゃんの小さな声が響いた。
その声に、熊井さんもももちゃんも黙ってしまって。
「・・・・先輩、ごめんなさい。約束破って、ごめんなさい」
「う、うん・・・・」
「でも、・・・・私、やっぱりこの約束守れそうに・・・ないです」
「え・・・・・・・???」
「私は、村上さんと話したいし、仲良くなりたいんです・・・・ごめんなさい」
愛理ちゃんが謝ったから、よしよし収まった・・・と思ったら、
愛理ちゃんはそんなことを言って下を向いた。
唖然とした顔で、今度は熊井さんが固まってしまった。
愛理ちゃんは可愛いしいい子だし、ももちゃんもみやもお気に入りみたいで。
出来ればもっと仲良くなりたいところだけど、まぁ、しょうがないよねぇ・・・
なんて思っていて、なんていうか、他人事みたいに思ってた。あたしが原因なのにね。
だから、愛理ちゃんの発言はびっくりしたけど、でもちょっとだけ嬉しかった。
429 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2010/01/16(土) 23:29:23.18 0
&color(blue){>>412 }
第319回
一瞬、愛理の言った意味がわからなかった。ももだって首を傾げてた。
でも、すぐに愛理は「村上さんと仲良くなりたい」と言って、その意味がようやく理解できた。
熊井ちゃんは言われた意味が良く分からないのか固まってしまってて。
めぐは関係なさそうな顔して頬杖をついている。ったくもう・・・。
「あ、愛理?それって?」
ももがたまらずそう問いかけた。
「・・・そのままの意味だよ?先輩は私に、村上さんに近づくなって言ったけど
でも私はその約束を守れない。だって先輩は誤解してる・・・」
「誤解?どうして?村上愛はあんなことしたやつなんだよ?愛理には話したでしょ!?」
誤解、の言葉にハっとした熊井ちゃんは愛理にそう言い返す。
…うち、こういうの苦手・・・。ちらっとももを見るとちょっと楽しそうで・・・もう、不謹慎なやつ。
「だけど、村上さんそんな人に見えないし優しいし話だって楽しいし・・・!!」
「なに、愛理はうちよりこいつのこと信用すんの!?」
「そんなこと言ってません!ただ・・・私は、先輩は村上さんのこと全然知らないから、だから」
「じゃあ愛理はうちよりも村上のこと信用するって事!?ケンカして何ヶ月も停学だったやつなのに!」
「そ、そんなの・・・関係ないです!先輩にはわかんないんです!」
めーったに怒らない愛理が怒り出した。温厚で優しい愛理が。
めぐのことで怒るとは思わなかった・・・。熊井ちゃんが一方的な思い込みをしてるからかな。
でも、まぁ・・・めぐが自分の口から真実を語らない限りはあのウワサが真実になってるわけで・・・
熊井ちゃんが怒るというか愛理にそう言い聞かせるのもわからないではないんだけど。
めぐの何が愛理をこんな風にさせているんだろう?愛理はめぐの何を知ったんだろう?
全然想像がつかないなぁ・・・・。
430 :&color(green){&bold(){名無し募集中。。。}}:2010/01/16(土) 23:30:09.15 0
&color(blue){>>429 }
第320回
「わかってるよ!」
「わかってないです!」
「・・・あぁそう、もういい」
「・・・・・・・・・・・」
「じゃあ勝手に仲良くしてればいいじゃん、もういいよ」
「・・・・・・・」
愛理は唇をかんで何かをぐっと堪えている。
うちも何か言いたいんだけど、言葉が見つからないから黙ったまんま。
「まぁまぁ、そうカッカしちゃだめだよくまいちょー」
「・・・・してない」
「してるじゃん、もう。ちょっと頭冷やそう、ね?ほら、行こ」
ももが立ち上がって、熊井ちゃんの手を取った。
熊井ちゃんはぎゅっと拳を握り締めたまま、もも引っ張られて屋上を出て行った。
愛理は熊井ちゃんを見なかったし、熊井ちゃんも愛理を見なかった。
空は真っ青なのに、ここはどしゃぶりの雨みたいな空気。
…なんでこんなことに。
「・・・グスッ」
「愛理?」
「グスッ・・・ごめん、みや。ごめんなさい、村上さん」
泣き出した愛理はうちらにそう言ったあと、膝を抱えた。
何も言えない・・・そんな自分がもどかしい。
でも、めぐはそうじゃないみたいで。
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