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診断

日本神経学会のALS治療ガイドライン2002では次のようになっている。
 厚生省神経変性疾患調査研究班診断基準
 El Escorial 改訂Airlie House 診断基準


厚生省神経変性疾患調査研究班診断基準

1992年厚生省特定疾患神経変性疾患調査研究班(萬年徹代表)は診断基準を作成した。そして神経変性疾患に関する研究班(田代邦雄代表,疾病対策研究会)は最近それを改変し,以下の新しい筋萎縮性側索硬化症の診断基準を作成した。この診断基準を満たすならば,ほぼ確定診断と見なされる。日常診療に利用されるべき診断基準である。

 1.神経所見
1)球麻痺所見:舌の麻痺,萎縮,線維束性収縮,構音障害,嚥下障害
2)上位ニューロン徴候(錐体路徴候):痙縮,腱反射亢進,病的反射
3)下位ニューロン徴候(前角細胞徴候):筋萎縮,筋力低下,線維束性収縮

 2.臨床検査所見
1)針筋電図にて(1)高振幅電位,(2)多相性電位
2)神経伝導検査にて(1)運動・感覚神経伝導速度は原則正常,(2)複合筋活動電位の低下

 3.鑑別診断
1)下位運動ニューロン障害のみを示す変性疾患:脊髄性進行性筋萎縮症
2)上位運動ニューロン障害のみを示す変性疾患:原発性側索硬化症
3)脳幹病変によるもの:腫瘍多発性硬化症など
4)脊髄病変によるもの:頸椎症、後縦靱帯骨化症、椎間板ヘルニア、腫瘍、脊髄空洞症、脊髄炎など
5)末梢神経病変によるもの:多巣性運動ニューロパチー、Lewis-Sumner 症候群、ポリニューロパチー(遺伝性,非遺伝性)
6)筋病変によるもの:筋ジストロフィー,多発筋炎など
7)偽性球麻痺

 [診断の判定] 
次の1─5 のすべてを満たすものを,筋萎縮性側索硬化症と診断する.
1)成人発症である
2)経過は進行性である
3)神経所見で,上記1)─3) のいずれか2 つ以上がみられる.
4)筋電図で上記の所見がみられる.
5)鑑別診断で,上記のいずれでもない.


El Escorial 改訂Airlie House 診断基準


厚生省の診断基準では診断基準を満たすものを確実例と考えている。しかし,早期に本症を診断し,治療的研究をおこなうためには,病像が十分に完成しない段階,あるいは運動ニューロン系が荒廃しない早期に診断できることが望まれる。そのため,診断確実性にグレードをつける試みが世界的に工夫されてきた。
1990年スペインALS協会(ADELA)では以下のような臨床所見に加え,筋電図,神経伝導速度と画像所見からの情報を加えて,臨床的診断確実性を四段階に区分した.これはさらに1994 年改定され,世界神経学会(WFN)のEL Escorialの診断基準として広くみとめられてきたものである。その後,1998 年世界神経学会運動ニューロン疾患研究委員会はEl Escorial の診断感度を上げる必要があるとして,Airlie House 会議(米国)においてBR Brooks のもとに意見を集約し,以下の基準を提唱するにいたった。

1.上位運動ニューロン障害の所見があること
2.下位運動ニューロン障害の所見があること
3.発症から少なくとも6~12 ヵ月を越えて悪化していること
以下のような所見があるとき,そしてこれらがALS 以外の疾患,高齢などによって説明できないばあいは,筋萎縮性側索硬化症の診断とは相容れない。
1.感覚障害
2.括約筋障害
3.自律神経障害
4.前方視路異常
5.パーキンソン病にみられる運動障害
6.アルツハイマー病にみられる認知障害

ALS 診断基準に先立ち,まず以下のA が存在する。
A : 1 下位運動ニューロン変性の証拠が臨床的,電気生理学的,または神経病理学的検査によって明らかである.
A : 2 臨床的所見から上位運動ニューロン変性が明らかである.そして,
A : 3 障害身体部位内(たとえば右上肢)で,あるいは他の部位への症状や症候の進行性拡大を病歴あるいは神経検査によってみとめる.

それと共に以下のB が欠如することが必要である。
B : 1 上位あるいは下位運動ニューロン変性の所見が他の疾患や病態によるという電気生理学的,病理学的証拠がある。
B : 2 観察された臨床・電気生理学的所見が,神経画像検査によって他の病態によるという証拠が示される。

診断基準
1.臨床的に確実な筋萎縮性側索硬化症(clinically definite ALS)
身体3部位において上位運動ニューロンと下位運動ニューロン障害の臨床所見があると。

2.臨床的に可能性大な筋萎縮性側索硬化症(clinically probable ALS)
少なくとも身体2部位において上位・下位運動ニューロン障害所見があり,さらにここの下位運動ニューロン障害のレベルよりも頭側において上位運動ニューロン障害所見があること。

3.臨床的に可能性大であり検査所見で裏づけられる筋萎縮性側索硬化症(clinically probable-laboratory-supported ALS)
臨床的に上位・下位運動ニューロン障害所見が身体1部位にのみみとめるか,身体1 部位に上位運動ニューロン障害所見があるばあいで,かつ2肢で,少なくとも神経根あるいは神経支配が異る2筋以上において,針筋電図で急性脱神経所見をみとめ,神経画像検査やその他の検査によって他疾患を除外できるもの。

4.臨床的に筋萎縮性側索硬化症の可能性あり(clinically possible ALS)
身体1部位のみに下位と上位運動ニューロン障害所見をみとめるか,もしくは下位運動ニューロン障害のみを身体2部位以上にみとめるものである。または上位運動ニューロン障害よりも頭側で下位運動ニューロン障害所見があるものの,第3の臨床的に可能性大であり検査所見で裏づけられる筋萎縮性側索硬化症(clinically probable-laboratory-supported ALS )がここでは満たされないものであるが,他疾患は除外できているものと規定する。

5.臨床的に筋萎縮性側索硬化症疑い(clinically suspected ALS)
純粋な下位運動ニューロン障害を呈するものであり,筋萎縮性側索硬化症の臨床研究を目的とするグループとして適さない。よって世界神経学会EL Escorial 改訂ALS 診断基準からは除外する。


最終更新:2009年12月11日 01:06