011
炎の魔術師の不幸 ◆BEQBTq4Ltk
☆
広川の宣言により始まってしまったバトルロワイアル。
気づけば会場に飛ばされていたアヴドゥルは最初に名簿を確認していた。
名簿を最初に手に取ったのは偶然であり近くに落ちていたバッグの中身を確認する。
「承太郎……
DIO、この名簿にはDIOの名前が記されているッ!」
彼らの旅の目的であり終着点である存在DIO。
アブドゥル達は襲い掛かってくるスタンド使いの刺客と戦いながら遂にDIOの館にまで来ていた。
それが彼の最後の記憶である。
「これから館と言ったところだったがこれは……。
広川と名乗った男は私のスタンドまで封じていた、何せ『魔術師の赤』も出すことは出来なかった。
名簿にDIO達の名前も記載されている、つまり広川とDIO達は敵同士……なら、この状況は全員にとってイレギュラー」
自分達を殺すために散々刺客を放ってきたDIO。
今回の件が彼の仕業ならばわざわざ己の名前を記すことはないだろう。
メリットが存在しないのだ。悪の親玉は最後にしか現れない、相場は決っている。
つまり、だ。
DIOの名前が名簿に在るということは彼もまた一人の参加者であること。
対等な立場であり彼も同じくバトルロワイアルに強制参加させられていると推測出来る。
あくまで推測の話しである。
「広川からは特に何も感じなかったがあーゆー奴が実はやばい、別に不思議じゃあないことだ」
スタンドを封じれる力は凶悪の一言に尽きる。
魔術師の赤もスタープラチナもDIOのスタンド(不明)も封じれるだろう。
幻想殺しと呼ばれていたスタンドも封じられていたためにあの少年は死んだのだろう。
嵌められている首輪から察するに参加者の生命は広川に握られているのだろう。
「だろうだろうだろう……推測しか出来ん。広川についての情報が一切ない」
どれだけ頭が切れようが零から百に到達するのは厳しい。
「まずはジョースターさん達との合流を目指す。
そして襲い掛かってくる敵に対処する、理想的な流れ……誰か来るッ」
今後の方針を一つ決めたところで誰かが近づいて来る。
足音は大きくなりやがて影は形を帯びてきた。
蒼い髪、漂う色気、抜群のプロポーションを持った女。
「何もそんなに身構えることはないだろう。私は
エスデス。
お前は広川と名乗った男を知っているかどうか教えてくれないか?」
モハメド・アヴドゥルが彼女に抱いた第一印象は氷のように美しい女。
☆
エスデスと名乗った女は広川の情報を求めていた。
初対面の人間に対する発言としては少々上から目線なのが引っかかる。
しかし名乗った相手に答えないのは礼儀として失礼に値する。
「私はモハメド・アヴドゥル。残念ながら質問にはノーで返させてもらう」
「そうか……では殺された上条当麻という人間を知っているか?」
「……その質問にもノー、期待外れかもしれないが私も情報が不足しているんだ」
瞳を伏せ首を振りながら答えるアブドゥル。
エスデスはそうか、小さく呟くと会話を再開した。
「この会場に来てから出会った人間は?」
「エスデス、貴方が初めてだ。私はまだ誰にも会ってはいない」
「私の知り合いに会っているか聞きたかったが……。
ちなみにだが私もお前が初めてだぞアブドゥル」
遭遇した参加者はいない。
互いの知り合いに遭遇していれば有意義な情報交換となっただろう。
しかしそう上手くは行かず知り合いの情報は手に入れることが出来なかった。
二人は落胆することはないが進歩がない現実には変わりない。
結局のところ謎は解決せず自己紹介をしただけになる。
「なら覚えておいてくれ。
ウェイブ、
クロメ、セリュー……私の大切な部下だ」
互いに探している人物を教え合う。
何処かで出逢えば健在であるのことの証明が出来る。
探している事実が分かれば探されている方も安堵するだろう。
「逆に
アカメと名乗る女には気を付けた方がいい。
その腕は私が保証しよう……強い暗殺者の名前だ」
(私が保証する? そいつは一体何を保証しているんだ……?
たしかにエスデスからは只ならぬ何かを感じるが……まぁいい)
「アカメ。その名前確かに聞かせてもらった。
私が言うヤバイ奴……DIOだ。DIOと名乗る男は邪悪の根源だ。
もし出会ったら馬鹿な真似はせずに逃げ出して欲しい、いいかエスデス?」
頼れる仲間がいれば倒すべき悪も存在する。
エスデスが挙げた名前はアカメ。
殺し屋集団であるナイトレイドに所属する暗殺者の少女だ。
その腕は文句なし。数々の強者が彼女の刀に斬り殺されている。
アヴドゥルが挙げた名前はDIO。
世界の支配者を目指す倒すべき悪、その名はDIO。
スタンド能力は不明だがその力は刺客よりも強いだろう。
「ふふ……そうか、そうか……ふふ。
面白いぞアヴドゥル、私に向かって気を付けろ……。
いいだろう、DIOという男だな。分かった、気を付けておこうではないか」
特段面白いことは言われていないが笑うエスデス。
まるで自分はDIOに殺されない、そう言った自信が感じ取れる。
対するアヴドゥルは楽観的……とまではいかないが状況を甘く見ているエスデスに疑問を覚える。
その自信は何処から湧いてくるのか、まさか彼女もスタンド使いなのではないだろうか。
以前ジョセフと共に苦しめられたグンバツな女。
美しい女性が強い力を持っていても何も可怪しくはないが。
「笑い事ではないぞ、エスデス。DIOは――」
「アブドゥル、今から六時間後に戦力を集めてコンサートホールに集まろうじゃないか。
お前が言ったDIOという男、興味が湧いてきたぞ。私一人でも構わないが一緒に館へ攻めこむとしよう」
「話を勝手に――分かったエスデス。
君はそういう女性なのだろう、仕方が無い。ここは大人しく引き受けようじゃないか」
何を言っても駄目だ。
流石に初対面の女性に実力行使で事を解決するほどアブドゥルは喧嘩っ早くない。
出来るだけに紳士に、大人に対処するべきと判断した。
結局エスデスの存在は今一つ理解出来ないが強さに自信があるのだろう。
信じてはいないが口だけは無いことを祈っている。
「私は東に向かう。エスデスは西を頼む。では六時間後に――」
「まぁ、待てアヴドゥル」
協力者を集めるために動こうとしたアブドゥルを止めるエスデス。
提案は彼女がしたのが止めるとは一体何事か。
「私はまだお前の強さを確かめていないぞ。
この私に忠告したんだ、口だけでは無いところを見せてみろ」
「――は?」
思考が停止する。
この女は今なんと言った。もしかしてこの女はヤバイ奴じゃあないだろうか。
「将軍である私に忠告したんだ――その力、見せてみろアブドゥルッ!!」
「く、コイツはヤバイ奴じゃあない! 相当ヤバイ奴だッ――『魔術師の赤』ッ!!」
多くを語らず興味心だけでエスデスは氷を弾丸のようにアヴドゥルへ飛ばした。
無から生まれる氷。
この力はエスデスの帝具であるデモンズエキスが生んだ氷。
水分が存在しない状態でも氷を精製し自由自在に操る力だ。
エスデス本人の強さも重なり彼女は元の世界で最強の称号を手にしていると言っても過言ではない。
(やはりスタンド使いか!? いきなり攻めるとはやってくれるじゃあないかッ)
黙ってやられる道理もなくアヴドゥルは魔術師の赤を発動し氷へ対処する。
マジシャンズレッド――頭部が鳥となっている人型のスタンド、それがアブドゥルの魔術師の赤。
氷に対抗するならば此方は反対の力で立ち向かおう。
見ろ、これが炎だ、力だ、魔術師の赤の、モハメド・アヴドゥルの力だ。
「クロスファイアー・ハリケーンッ!!」
具現化された十字架の炎は氷と衝突し互いに消滅した。
アブドゥルはエスデスを睨み可笑しな行動を起こさないか観察し始めた。
見る度に思うが美しい女だ、妖気も色気も知性も兼ね備えている。
だがしかし。突然攻撃し始めるヒステリックな女は対象外だ。
睨むアブドゥルとは対照にエスデスはまたも笑っている。
それは笑顔、美しい笑顔だ。
だがしかし。悪魔のように黒さを感じ取れる満面の笑みだ。
「お前は本当に面白い奴だなアブドゥル!
三割程度の力とはいえ私の氷を溶かすとは……本当に面白い。
DIOとやらと広川を殺した後、私の元へ来ないか? お前の力ならば帝都でも充分通用するぞ?」
「スカウトされるのは悪くないが喜んで辞退させてもらおう」
(こんな危険な女の仲間になれ? 生命が幾つあっても身が保たん)
戦闘狂の存在は理解し難いモノがある。
殺し合いにおいて彼女らのような存在は大変危険であり排除される対象に入るだろう。
エスデスは帝都の将軍らしいがとても一つの国家に所属する軍人には思えない。
帝都と呼ばれる国は彼女のような危険な人物が蔓延っているのだろうか。残念ながら正解である。
そしてアブドゥルは一つ考える。
エスデスの口振りから彼女はスタンドが見えていた。
つまり彼女はスタンド使い。デモンズエキスなる能力が彼女のスタンドなのだろう。
説明が本当であれば攻撃してきた氷は本気の三割らしい。
アブドゥルが感じ取った殺気は本物であり仮に三割が本当ならばこの女、相当にヤバイ。
危険な人物であるが仲間を集める提案。
DIOに対抗する意思と広川を殺す宣言から考えると殺し回るつもりはないらしいく、それが唯一の救いとなっている。
(この女……危険な相手には一切容赦しないタイプと見た。
一番危険なのは自分自身だ、しかもそれを分かっているデキた人間だろう……質が悪い)
「突然攻撃したことは謝罪しよう。すまなかったなアブドゥル。
だがこれでお前の力を少しは知れたんだ、気を悪くしないでくれ。
ではお前の提案どおり私は西を回る。六時間後にコンサートホールで落ち合おう」
分かった。
一言だけ呟いたのを確認するとエスデスは背を向け歩き始めた。
アブドゥルは彼女に背を見せたくなかったため有難い行動である。
この女に背中を見せたら最後、背後から殺されても不思議でも何でもない。
コンサートホールで落ち合おう。
エスデスが残した言葉。協力者を集めDIOの館へ行きDIOを倒す。
悪くはない提案だ。殺し合いの会場に置いて仲間の確保と悪の打倒は生還に近づく一歩となるだろう。
問題が在るといえば一点。
「出来れば私はお前と二度と会いたくないが……どうも最近はツイてない」
あの氷のように冷たい女と六時間後に出会う、考えると少し鬱になりそうだ。
【C-2/1日目/深夜】
【エスデス@アカメが斬る!】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:デイパック、基本支給品、不明支給品1~3
[思考]
基本:殺し合いを愉しんだ後に広川を殺す。
1:協力者を集め六時間後にコンサートホールへ向かう。
2:その後DIOの館へ攻め込む。
3:殺し合いを愉しむために積極的に交戦を行う。殺してしまったら仕方無い。
4:
タツミに逢いたい。
[備考]
※参戦時期はセリュー死亡以前のどこかから。
※奥の手『摩訶鉢特摩』は本人曰く「一日に一度が限界」です。
※アブドゥルの知り合い(ジョースター一行)の名前を把握しました。
※DIOに興味を抱いています。
【モハメド・アヴドゥル@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
[状態]:冷や汗
[装備]:
[道具]:デイパック、基本支給品、不明支給品1~3
[思考]
基本:殺し合いを止めDIOを倒し広川を倒し帰還する。
1:協力者を集め六時間後にコンサートホールへ向かう。
2:エスデスは相当ヤバイ奴
3:ジョースターさん達との合流。
4:DIOを倒す。
[備考]
※参戦時期はDIOの館突入前からです。
※イェーガーズのメンバーの名前を把握しました。
※アカメを危険人物として認識しました。
※エスデスを危険人物として認識しており、『デモンズエキスのスタンド使い』と思い込んでいます。
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最終更新:2015年05月20日 18:23