034

怒れる魔術師 ◆dKv6nbYMB.



ここはバトルロワイアルという、死が付きまとう殺し合いの場。
気を抜いた瞬間に不意打ちで首と胴を泣き別れにされてもおかしくない。
しかし、人間とは24時間常に集中できるわけではなく、誰もいないときなど余計に色んな考え事をしてしまう。
それはこの男、モハメド・アヴドゥルにも当てはまることだった。



危険な美女・エスデスと別れ、彼女は西に、私は東へ向かうこととなった。
早速行動しようとしたが、まだ名簿と地図にしか目を通していないことを思い出した私は、先に荷物を整理していた。
荷物の整理をしていて気が付いたことがある。


(しかしなんだ...思い返してみれば、このデイパックに地図に名簿、全く持って奇妙だな)


そう、なにからなににおいてまで奇妙なのだ。

まずはデイパックだ。
一見、ただのなんともない鞄だが、実に奇妙なのだ。
こうやって、ひっくり返してみると、中に入っているものが落ちてくる。
ここまでは普通の鞄だ。しかし、奇妙なのはここからだ。
明らかに質量を越えた量の物体がごろごろ出てくるのだ。
特に目をひいたのは、鞄の中から出てきた袋に無造作に詰められたこの大量の魚介類。ほとんど新鮮同然にこのデイパックに入れられていたのだ。
ちなみに、どの道具にも説明書がついており、魚介類の説明書にはこう記されていた。

『毒は入ってません。デイパックの中に入れておけば半日は傷みません』

なんと、氷も無しにそこそこ保存が効くらしい。科学的法則を越えたこの収納力。まるで、某猫狸のポケットのようだ。
いったいどんな技術があればこんな鞄を開発できるのか...全くもってわからない。
なにはともあれ、この魚を保存する術を忘れなかったのは評価してやろう。
魚は傷みやすいからな。これは本当にありがたい。
私が寿司好きだと知ってこの支給品を渡したのなら、あの広川という男、中々気が利くやつじゃあないか。
もっとも、やつを倒すことには変わりはないがね。

次に地図だ。正確には地形だが。
第一に、ここは私がいたカイロではない。だというのにここにはDIOの屋敷がある。
なぜだ?ここにDIO本人を連れてきたから屋敷のことは知っているだろう。だからといって、一から作り直したのか?まさかとは思うが、屋敷を丸ごと持って来たというのか?
そして、島々の間にある謎の空間...これはいったいなんなのだろうか。
ここは島の先端であるため、身を乗り出せば空間を覗くことができた。
空間の正体は、まったく底が見えない、奈落とでもいうべきドス黒い空間。
近くの石ころを拾い、マジシャンズレッドで火を点けて落としてみるが、やはり底は見えない。
この島々は浮遊島らしいが、この空間に落とされた時、いったいどうなるのかは想像もしたくない。
(いや待て。そもそも浮遊島とはなんなのだ?)
冷静に考えてみれば、海も何もないところに『島が浮いている』なんてことはありえない。
一本の支柱に支えられているならまだわかるが...万が一本当に浮いているとしたら、おそらくこの島はスタンド能力だろう。
以前、船自体がスタンドそのものの、オランウータンのスタンド使い『力(ストレングス)』と遭遇したが、それに近いものであれば、島が浮遊しているという事実もうなずける。
そして、この奈落もスタンドによる幻覚だとすれば...もう答えは出ている。
(スタンドは一人につき一能力...おそらく、広川には複数のスタンド使いが協力しているに違いない)
最初に私たちを縛り付け、スタンドを封印した能力。
島を造っているスタンド能力。
奈落を作り上げているスタンド能力...
最低でも3人はいるだろう。だとするなら...


(案外、この辺り一帯を焼き尽くせば解決するのではないか?)
そう思い、マジシャンズレッドの像を出すが
(...いや、やめておこう。あくまでもまだ仮説だ。慎重にいかなければ)
私の仮説が当たっていたとして、それが破られそうになるのを指を咥えてまっているほど甘い連中ではないだろう。
この島が本物でなくとも、この首輪の爆薬だけは本物に違いない。情報が不足しているいま、首輪が本物かどうか確認するのもリスクが高すぎる。
それに、私の仮説が間違っていた場合、下手に火を放てばいらぬ誤解を招くことになりかねない。それは避けねば。

最後に名簿。
エスデスから聞いた名を整理しようとして気が付いたのだが、名簿としては順番がメチャクチャなのである。
私の名前が書いてあるのは、上から三番目。50音順で並べるのなら、もっと下にくるはずだ。
50音順でなければ国籍か?ならば、こうも都合よく私の知り合いが名簿に固まることなどあり得ない。
エスデスの方はどうだろうか。
アカメ、タツミ、ウェイブ、クロメ、セリュー・ユビキタス、エスデス...タツミという名前だけは知らないが、やはりほとんど集まっている。
これは本当に偶然なのか?
(...私の知る名前が5つ。エスデスの知る名前は4つ。これを纏めると)


アカメ/ウェイブ/クロメ/セリュー・ユビキタス/エスデス

...もしかするとこれは、ある特定の人物に関連した人物が纏められているんじゃないか?
私とエスデスだけでなく、ある特定の人物を決め、そこから関連した者を連れてきた...ということではないだろうか。
その特定の人物とは、私のところでいえば承太郎。エスデスの関係者だと思われるところには...アカメの前に高坂穂乃果を筆頭とする日本人性が連なっている。
となると、アカメが特定の人物になりそうだ。タツミはアカメに関係する人物と考えれば問題ない。
このことから、全体的に多い日本人姓と、そうでない者中心で分けてみると...


空条承太郎/ジョセフ・ジョースター/モハメド・アヴドゥル/花京院典明/イギー/DIO

ペットショップ/アンジュ/サリア/ヒルダ/モモカ・荻野目/タスク/エンブリヲ

高坂穂乃果/園田海未/南ことり/西木野真姫/星空凛/小泉花陽

アカメ/タツミ/ウェイブ/クロメ/セリュー・ユビキタス/エスデス


エドワード・エルリック/ロイ・マスタング/キング・ブラッドレイ/セリム・ブラッドレイ/エンヴィー/ゾルフ・J・キンブリー


クマ






キリト/ヒースクリフ


...うむ。人数比にバラつきが出てしまったがこんなところだろう。
本名かどうか怪しいのも幾つかあったが、この先頭に来た人物が『特定の人物』だろう。
そして、おそらく主催とは
空条承太郎、ペットショップ、高坂穂乃果、アカメ、エドワード・エルリック、鳴上悠、クマ、足立、プロデューサー、泉新一、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、狡噛慎也、キリト
この13人に恨みを持った者たち...その代表が広川といったところか。
だが、この主催陣...複数行動のためか、どうにも行動がおざなりらしい。
私たちの仲間で一人だけ連れてこられていない男がいる。そう、ポルナレフだ。
ちと不安だが、おそらくポルナレフはスピードワゴン財団に連絡を入れてくれているはずだ。
そして、ポルナレフを忘れてくるくらいだから、他の関係者にも取りこぼしがあるに違いない。
こんな穴だらけの連中なんだ。思ったよりこのゲームの破壊は簡単...
(待て。さっき私はなんと思った?)


"私たちの仲間で一人だけ連れてこられていない男がいる。そう、ポルナレフだ。"



「なぜ...ポルナレフだけが呼ばれていない?」


そう...ポルナレフ"だけ"が呼ばれないことは『有り得ない』のだ。
我々は、全員揃ってDIOの館に辿りついた。故に、誰か一人を攫い忘れることは有り得ない。
それでも、もし呼ばれない可能性があるとしたら、それは花京院とイギーだ。
花京院は、我々と合流するまで目の治療していた。
だから、リタイア扱いされていたため、彼を攫う準備が出来ていなかった。わかる。
イギーは、ほとんど戦闘らしい戦闘を行っていない。
せいぜいあいつの方足を斬った敵くらいだ。
DIOたちですら、私たちの仲間と認識しているか怪しいため、主催陣も関係者扱いしなかった。わかる。
だが、ポルナレフはどうだ?
あいつは、仲間になってからジョースターさんたちと共に行動し続けた。
私や花京院のように一時離脱したことはないし、イギーほど好き勝手に行動しているわけではない。
むしろ、一人になったポルナレフを狙ってDIOの刺客が現れることも珍しくない。
つまり、それほどまでに承太郎たちの仲間だと認識されている男なのだ。
加えて、彼のスタンド『シルバーチャリオッツ』は剣で攻撃するスタンド。殺し合いにおいて、その能力を存分に発揮できる。
そんな彼を、承太郎に関係する人物としてみなさず、この殺し合いに呼び忘れるなんてことは有り得るのか?
否、断じて否だ。
そうなると、呼び出された私たちより、ポルナレフが心配だ。
おそらく、本来ならばあいつも一緒に連れてこられるはずだった。
だが、ポルナレフが予想外の抵抗をしたため、ポルナレフは...



(いや...仲間を信じられないでどうするモハメド・アヴドゥル!ポルナレフは強い男だ、そう易々とやられはしない!)


ポルナレフのことは信じている。
だが、自分を含め、DIOまでも連れてくる手際に、そしてポルナレフ"だけ"がいないという現実が私に事実を突き付けてくる。
そんなはずはない。きっとうまく逃げている。そんな否定の言葉が次々に浮かんでは消え、可能性を奪っていく。
結果、私の予想がどこへ行きついたかは言うまでもない。


―――ポルナレフは、既に広川たちに殺されている


「う...おおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」


気が付けば、私は空へ向かって、雄叫びをあげていた。

拳を地面に叩き付ける。
(...こんなの、あんまりじゃないか)
我々の旅はいつだって命がけだった。幾度となく、生命を脅かされてきた。
DIOの館を見つけたときは、今生の別れになるかもしれないとさえ腹を括っていた。
だが、結果はどうだ。
敵の館を目前にして、全く関係のない奴らに横やりを入れられていつの間にか殺された。
ふざけるな。ふざけるなよ!
「それがどれほど誇りを踏みにじる行為か...貴様にわかるか、広川ァ!」
近くの木に、マジシャンズレッドの拳を叩きつける。
八つ当たりだとはわかっているが、どうしてもその衝動を抑えることができなかった。
木は、その身を燃やされ、火への糧と成り果てる。
メラメラと燃える木を背景に、荒れた呼吸を整え、どうにか頭を冷やす。

「広川...貴様はどんな願いでも叶えると言ったな。私の願いは決まったぞ」

パチン、と指を鳴らすとともに、木を燃やしていた火が一瞬で消える。

「だが、貴様らには頼らん!私の願いは私の力で叶えさせて貰おう!」

だが、炎は消えども燃えたぎる怒りはそのままに。

「私の願い。それは、我が友...J・P・ポルナレフの魂を、誇りを踏みにじった貴様らに後悔の叫びをあげさせることだ!」

私は私らしく、正々堂々と宣誓しよう。

「地獄を!貴様らに!HELL 2 U!」



こうして、決意を新たに魔術師は歩き出す。
しかし、魔術師は知らなかった。
この場にはスタンド使い以外にも様々な異能や技術が関わっている。
つまり、この空間がスタンドによるものとは限らないのだ。
更にいえば、彼の知り合いがみな彼と同じ時代から来たわけではない。
そのため、主催がポルナレフを殺したかどうかなど、断言しようがないのだ。
彼の無知が不幸を招くのか、それとも彼の怒りが道を切り開くのか。
それは、アヴドゥル本人にもわからない。




【C-2/1日目/深夜】

【モハメド・アヴドゥル@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
[状態]:健康 激しい怒りと悲しみ
[装備]:
[道具]:デイパック、基本支給品、ウェイブのお土産の海産品@アカメが斬る! 不明支給品0~2
[思考]
基本:殺し合いを止めDIOを倒し広川ら主催陣を倒し帰還する。
1:仇は必ずとるぞ、ポルナレフ
2:協力者を集め六時間後にコンサートホールへ向かう。エスデスは西、私は東へ探索だ。
3:エスデスは相当ヤバイ奴
4:ジョースターさん達との合流。
5:DIOを倒す。
6:もしこの会場がスタンド使いによるものなら、案外簡単に殺し合いを止めれるんじゃないか?


※参戦時期はDIOの館突入前からです。
※イェーガーズのメンバーの名前を把握しました。
※アカメを危険人物として認識しました。タツミもまた、危険人物ではないかと疑っています。
※エスデスを危険人物として認識しており、『デモンズエキスのスタンド使い』と思い込んでいます。
※ポルナレフが殺されたと思い込んでいます。
※この会場の島と奈落はスタンド使いによる能力・幻覚によるものではないかと疑っています。
※C-2の木が一本燃えました。これによる被害はありませんが、放火場面を誰かに見られた可能性もあります。
※アヴドゥルの宣誓が周囲に響き渡りました。
※ウェイブのお土産の量、生きているかどうかは後の書き手さんに任せます。

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011:炎の魔術師の不幸 モハメド・アヴドゥル 067:三人寄れば
最終更新:2015年06月11日 17:46