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新たな力を求めて ◆dKv6nbYMB.
広川の放送を聞き終え、後藤はそれを脳内で反芻する。
光子とクロエとは、戦ってほとんど時間が経過していない。
だと言うのにあの二人を殺すことが出来る者がまだいたというのか。
だとしたら、どうやって。
(まあいい。奴らを殺した者に会ってから判断すれば問題ない)
後藤は獲物への執着を残さない。
例え、いくら強力な力を持っていようとも。
例え、それが自分への脅威であったものだとしても。
生物は死ねばそれだけのものだ。
そこになんら灌漑を憶えることはない。
再戦を望んだ獲物が殺されれば、殺した者を殺せば済む話だ。
そして、広川の提示した首輪交換制度。
後藤はこれに大した魅力を感じなかった。
後藤の知りたい情報は参加者、特に吸収対象である
泉新一と田村怜子、そして幾度となく自分を退けてきた黒(ヘイ)、
DIOくらいのものである。
しかし、参加者の場所は首輪探知機を見ればわかることであり、それが目的の人間でなくとも避ける道理は見当たらない。
かといって首輪を入れて下手な武器と交換されても困る。生半可な武器を扱うくらいならこれまでのように己の身体だけで戦った方がいい。
(尤も、いまの俺では"今まで通り"は不可能だがな)
後藤はいままで、躱せない/躱す必要のない攻撃は強固なプロテクターで防いできた。
しかし、それは寄生生物が五体分、それも両手足と頭部全ての寄生生物を統一できることが前提の戦法だ。
いまの後藤の身体には四体、しかもそのうち二体は破壊された心臓の修復にあて、身体に散らばった状態になってしまった。
現在統治できているパラサイトは頭部の『後藤』と左腕の一体だけ。
代償として素晴らしい身体能力を手に入れたが、今まで通用しなかった攻撃も命取りになるだろう。
例えば、此処に連れてこられる前に戦った自衛隊によるショットガンのような銃撃。
例えば、承太郎の操る人形による強烈な打撃。
例えば、黒や槍を操る女のような刃物による斬撃。
例えば、ペットショップやノーベンバー11のような物理的な能力に近い異能。
例えば、調律者と名乗る男のような瞬間移動。
例えば、DIOのような認識外からの攻撃を加えることができる異能。
盾を使って受け流す、プロテクターで身体を守る。それができたからこそ、後藤は相手の動きを観察し見切る余裕があった。
だが、今までさして脅威でなかった力も、文字通り必死になって避けなければならないというわけだ。
黒やライフルの少女のように、先を読んで敵の攻撃に当たらないように避ける。
後藤も異能に対しては練習してきたが、やはりそれでも幾度かは受けてしまった。
これが銃火器のような物理的な力に対しても意識が広がれば、あっけなく攻撃を受けてしまうだろう。
(今の俺に足りないものは―――やはり経験だ)
実践に勝る経験はない。
後藤にとって、このような身体で戦うのは初めての経験である。
一通り身体を動かして力を試してみたが、それはあくまでも身体の調子を確認しただけ。
敵を仮想し脳内シュミレーションするのは大切なことではあるが、それは自分がどの程度の相手にどの程度戦えるのかを把握してこそ意味がある。
(こんな有り様で奴と戦えばあっけなく殺されるだろう)
後藤の指す"奴"。黒(ヘイ)。
おそらく付近のエリアにいるのは間違いなく、首輪探知機を使えば再び会いまみえることはできるはずだ。
しかし、未だに己の力を把握できていない現状で黒と戦えば、今度こそあの電流を死ぬまで流されるだろう。
勿体ない気もするが、いまは黒との戦いはお預けだ。奴との戦いはこの身体に慣れてからだ。
(勿体ない...?俺はなにを言っている)
ふと、自分の中に渦巻くものに違和感を覚える。
後藤にとって闘争は本能である。
より強い敵を求め、より工夫された技を己の身に刻み込む。
そうしていくことによって、己を『最強』へと成長させ、己に害なす者を排除していく。
後藤の敵はその糧であり、未練も執着も持ち合わせていない。
そのため、再戦したいと思っていた者が殺されてもそいつを殺した者を殺せばそれでいい。
その筈なのに、黒との戦いを逃してしまうことを惜しく思ってしまう。
(...どうやら、俺はあの男を大きくし過ぎてしまっているらしい)
黒とはもう三回も戦っている。
黒は確かに強者だが、どの戦闘でも黒一人なら確実に殺せていた。
実際、黒の異能は殺傷能力こそ高いものの、DIOのように感知不可能なものではなく、身体能力も後藤の方が上回っていた。
殺せなかったのは彼の周りにいる者たちの力があってこそだ。
しかし、現実に彼は未だに生きている。
そして、このままでは黒を殺せないというイメージを後藤に焼き付けている。
黒の存在はいま、後藤にとっての壁となっていた。
(当面の目標は...奴だな)
後藤は走り始める。
向かう先は西。
田村怜子は後回しにする。
欠けた寄生生物の補充も大切だが、それ以上に、尤もいまの自分に近い存在と戦い身体を慣らしておきたい。
奴の戦い方を学ぶことも重要だろう。
高い身体能力を持ち、片腕に寄生生物を宿した獲物。
それでいて、数多くの寄生生物と戦い生き延びてきた獲物。
即ち―――泉新一。
【F-6/1日目/日中】
【後藤@寄生獣 セイの格率】
[状態]:寄生生物一体分を欠損、寄生生物二体が全身に散らばって融合
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、首輪探知機、拡声器、スピーカー
[思考]
基本:優勝する。
0:西に向かいひとまず泉新一と戦い奴の戦闘を学ぶ。黒との戦いは後回しにする。
1:泉新一、
田村玲子に勝利し体の一部として取り込む。
2:異能者に対して強い関心と警戒(特に毒や炎、電撃)。
3:セリムを警戒しておく。
4:余裕があれば脱出の手掛かりを集める。首輪も回収する。
5:田村怜子・泉新一を探し取り込んだ後DIOを殺す
6:黒、黒子とはこの身体に慣れてからもう一度戦いたい。
[備考]
※広川死亡以降からの参戦です。
※異能の能力差に対して興味を持っています。
※会場が浮かんでいることを知りました。
※探知機の範囲は狭いため同エリア内でも位置関係によっては捕捉できない場合があります。
※デバイスをレーダー状態にしておくとバッテリーを消費するので常時使用はできません。
※敵の意識に対応する異能対策を習得しました。
※首輪を硬質化のプロテクターで覆い、その上にダミーを作りました。
※首輪の内側と接触している部分は硬質化して変形しません。
※黒い銃(ドミネーター)を警戒しています。
※百獣王化ライオネル@アカメが斬る! は破壊されました。
※寄生生物二体が全身に散らばって融合した結果、生身の運動能力が著しく向上しました。
※寄生生物が一体になった影響で刃は左腕から一つしか出せなくなりました。全身を包むプロテクターも使用できなくなりました。
※ミギーのように一日数時間休眠するかどうかは不明です。
最終更新:2015年12月09日 02:53