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『男らしく』でいこう ◆uuM9Au7XcM
ヒルダの姿に化けた
エンヴィーが去った後も、
タツミはそのエリアに留まっていた。
悠と銀が気絶している現状、タツミ自身の疲労を無視し、無理を押して行動すれば危険だと判断したからである。
だが、それ以上にタツミが自責の念にかられ、自分の志を見失い『動けずにいた』と言った方が正しいのだろう。
『ごきげんよう。最早お馴染みとなっているかもしれないが、放送の時間だ』
とりあえず休むにはどこかに身を隠さねばと、近くの教会に入り半ば事務的に身体を休めていたところに放送が響き渡る。
タツミは閉じていた目を、はっとしたように開け耳を傾けた。
何やら首輪交換機に不具合が生じたようだが、もとより積極的に利用するつもりはなく、そんなことはどうでもよかった。
そして禁止エリアの方もさして影響はないようだ。
(……ここからだ)
続いて死者の発表へと移ると、タツミは緊張で身体を強張らせた。
呼ばれた名は――――
『
里中千枝』
タツミのせいで死んでしまった悠の仲間
最後に呼ばれたのは、ゲームが始まってすぐに出会い、合流を約束していた老人。
年齢を感じさせない力強さと豊富な経験からくる思慮深さも感じられ、自然と頼もしいと思わせる人物だった。
ジョセフが死んだということは、一緒にいた初春はどうなったのだろうか?
自分が別行動を提案したせいで死んでしまったのではないか?
放送での死者発表をきっかけに、どうにか抑え込んでいた焦りや不安が噴き出し、頭の中で暴れまわる。
「…ちくしょう。俺、どうしちゃったんだよ」
帝都に来てすぐ幼馴染たちの死に立ち合い、その仇を斬ったことで初めて人殺しを経験した。
それから殺し屋集団「ナイトレイド」の一員となり、何度も仕事をこなしてきた。
だが、ここまで混乱することはなかった。
今までと何が違うのか?それは自分でも気付いている。
「さやかは悪人なんかじゃなかった……たとえ悪に染まりそうだとしても、俺次第で救うことができてたんだ。
せっかく兄貴が俺を信じてインクルシオを託してくれたのに、また殴られるようなことやっちまった」
今まではさやかに対する不信感から、タツミはさやかを信用しないように接してきた。
だが悠やヒルダに言われた言葉をきっかけに思いかえしてみると、まるで違う印象になってくる。
ナイトレイドでは、事前にしっかりと調査したうえで標的を決めていた。
だからこそ、民のため、虐げられている弱者のためにと、迷わずに実行することができていたのだ。
しかし……
『手に入れた力を振りかざして、理由も聞かずにテメエ勝手な善悪で判断し、ただ理不尽にそれを行使して正義を振りかざす。
あたしからしてみりゃな、真正面から問答無用で殺しにかかってくるっていうエルフ耳以上にてめえは悪党なんだよ』
ヒルダの言う事はもっともだ。
力を持つものが自分の主観のみで善悪を判断し、断罪を行えば―――
それは大臣や
エスデスのやっていることと同じだ。
アカメや
クロメのように、やむ終えず裏の世界に入り、手を汚さなけれればならないこともあると知っていたはず。
もし、さやかが望まぬ形で力を持たされていたとしたなら、自分はなんて冷たく残忍な態度をとっていたことか。
心が見た目通りの普通の少女だったら、きっと不安で仕方なかっただろう。
「うわああああああああああああああああ!!」
「あぐっ…!」
タツミは頭の中のモヤモヤを振り払うかのように叫ぶと、続けざまに拳で自らの右頬を思い切り殴り飛ばす。
ヒルダから受けたそれ以上に強烈な痛みが頬に伝わる。
ここに来てからすべての行動が幾人もの人の死の要因となってしまった。
そう考えてしまい、こうして無理やりにでも気持ちを切り替えないと、二度と浮き上がれない暗い海の底へ沈んでしまいそうな気がしたからだ。
「落ち着くんだ。昔、姐さんに言われただろ。
いじけて暗くなってたって過ちは取り返せないし、死んだ人間が戻ってくることはない」
それはまだナイトレイドに入って間もない頃、落ち込んでいた時に贈られた助言。
「こんな時だからこそ、男らしく前を向かないと、マインやラバに呆れられちまう」
ここにはいないナイトレイドの仲間たちの言葉や顔を思い出す。
必死に自分へ言い聞かせ、わずかながら落ち着きを取り戻すと、タツミは状況の整理を始めた。
まず不幸中の幸いに、アカメは放送で呼ばれていない。
これは喜ぶべきことだ。
アカメならば、自分のような失敗はせずに上手くやっていることだろう。
そして、ジョセフと一緒にいた初春も状況は分からないが死んではいない。
放送からの情報で前向きに捉えられる事柄を挙げていく。
次に考えるのはこれから自分はどうするか。
少し休んだことで、それなりに闘えるくらいに体力は回復した。
問題は自分が何をしなければならないのか。そして、できるかだ。
普通に考えれば、悠や銀と一緒に行動して情報や協力者を探すべきなんだろう。
だが、タツミはそれを選択することができない。
(それじゃあ駄目なんだ……)
もちろん、悠がさやかを助けるつもりなのはわかっているし、タツミも協力したい。
しかしタツミのせいでこのような事態に陥り、悠の仲間である千枝は死んだ。
正直なところ、また誰かと行動したらトラブルを招き、結果として救うべき人を傷つけないという自信がないのである。
「これ以上二人に迷惑をかけるわけにはいかない。
なら、こうするしかないよな」
タツミは決めた。
二人を安全な場所へ連れていくことを最優先に、信頼できる人物と出会えればその人に託すことも考慮にいれる。
その後、自分は別行動をとり、さやかを元に戻すため魔法少女の情報を集める。
方針が決まれば善は急げだ。生き残っている魔法少女も、さやかを除けば
佐倉杏子一人だけ。
死んでしまいかねない状況に陥っていてもおかしくない。
それにさやかを封じている氷がどれだけもつのかという問題もある。
さやかが解き放たれ人を殺してしまう前に―――
意図せず罪を犯しこれ以上苦しみを抱えてしまう前に、なんとかしなくては。
最初に向かうのは音ノ木坂学院。
そこには過ちを気付かせてくれたヒルダがいるはずだ。
合流を約束していた初春もいるかもしれない。
自分は信用されなくても、きっと事情を話せば悠と銀を受け入れてくれるだろう。
うまくいけば、学院で魔法少女の情報を得る可能性だってある。
「ごめんな、アカメ。
俺はやらなくちゃいけないことができたから、ちょっと遅れる」
禁止エリアを書き込んだ地図をデイパックにしまうと、未だ再会できずにいるナイトレイドの仲間へ謝罪の言葉を呟き、立ち上がった。
彼の進む道に待っているのは希望か。
それとも、殺し屋として生きてきたことへの報いか。
どちらにせよ、もう立ち止まっている時間はない。
【F-6/一日目/夜】
【タツミ@アカメが斬る!】
[状態]:疲労(中)、右太腿に刺傷、右肩負傷、右頬に腫れ、さやかに対する強い後悔
[装備]:バゼットの手袋@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:基本支給品一式、テニスラケット×2、グリーフシード×1、ほぼ濁りかけのグリーフシード×2、ライフル@現実(武器庫の武器)、ライフルの予備弾×6(武器庫の武器)、
美樹さやかの肉体。
[思考・行動]
基本:アカメと共に帰還する。
0:二人を安全な場所へ連れていくか、信頼できる人へ託す。
1:ヒルダを追って、音ノ木坂学院へ向かう。
2:さやかを元に戻す方法を探す。
3:佐倉杏子を探す。
4:アカメと合流。
5:もしも
DIOに遭遇しても無闇に戦いを仕掛けない。
6:エルフ耳と
エンブリヲを警戒。
7:
足立透は怪しいかもしれない。
[備考]
※参戦時期は少なくともイェーガーズの面々と顔を合わせたあと。
※ジョセフと初春とさやかの知り合いを認識しました。
※魔法少女について大まかなことは知りました。
※DIOは危険人物だと認識しました。
※首輪を解除できる人間を探しています。
※魔法@魔法少女まどか☆マギカでは首輪を外せないと知りました。
※ヒルダ(エンヴィー)には情報を与えましたが、ヒルダ(エンヴィー)からは情報を得ていません。
※さやかとのことで他者を攻撃すること・傷つけることに恐怖感を覚えています。
【鳴上悠@PERSONA4 the Animation】
[状態]:疲労(極大)、気絶 デイパックの中
[装備]:なし
[道具]:千枝の首輪
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを止める。
0:……。
1:さやかを元に戻す。その為に佐倉杏子を探す。
2:未央に
渋谷凛のことを伝える。エンブリヲが殺した訳じゃない……?
3:足立さんが真犯人なのか……?
4:エンブリヲを止める。
5:マスタングを見つけ出し、ぶっ飛ばす。
6:里中……。
[備考]
※登場時期は17話後。
※ペルソナの統合を中断したことで、17話までに登場したペルソナが再度使用可能になりました。ただしベルゼブブは一度の使用後6時間使用不可。
回復系、即死系攻撃や攻撃規模の大きいものは制限されています。
※ペルソナチェンジにも多少の消耗があります。
※イザナギに異変が起きています。
【銀@DARKER THAN BLACK 黒の契約者】
[状態]:疲労(大) キンブリーに若干の疑い、観測霊の異変?に対する恐怖、気絶 デイパックの中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品1~2 、カマクラ@やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。
[思考]
基本:…………。
1:黒を探す。
2:千枝……。
3:怖い。
[備考]
※千枝、雪子、モモカと情報を交換しました。
※制限により、観測霊を飛ばせるのは最大1エリア程です。
最終更新:2016年04月09日 23:20