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『嫉妬』 ◆dKv6nbYMB. ◆dKv6nbYMB.




『その質問にはお答えできません』
「だーかーらーさぁ。首輪を入れたのはこのエンヴィーじゃないんだって」

ガリガリと頭を掻きながら、エンヴィーは首輪交換機との問答を交わしている。

事の顛末はこうだ。

始めは、キンブリーに復讐するため線路の修復を待とうとしたエンヴィー。
しかし、いまのキンブリーには流星の欠片という賢者の石にも似た能力増幅装置があり、クロメイギーといった屍人形がある。
エンヴィーの得意とする戦いはあくまでも攪乱であり、直接的な戦いではない。このまま向かったところで勝ち目は薄いだろう。
そのため、まずは首輪交換制度を試すために闘技場へ向かった。

やがて辿りついた彼は、首輪交換ボックスを発見。
中に入り調べてみると、都合よく何者かが首輪を入れたまま立ち去っていたようだった。
おそらく、首輪と情報の価値が釣りあわなかったのだろう。
これ幸いとボタンを押して、特別欲しい情報もないため武器を得ようとしたのだが...

『あなたの質問と首輪の価値が釣りあっていないためお答えできません』
「あー...その首輪入れたのはこのエンヴィーじゃないんだけど」
『このシステムは稼働してまもないため、現在は一度発言された質問の訂正ができません。改良されれば後に可能となるかもしれません。ですが、現状では貴方の質問にお答えできません』
「いや、欲しいのは情報じゃなくて武器なんだけど」
『この質問を終えるかしばらく時間が経過するまで質問を変更することはできません。質問に当価値の首輪をご投入ください』
「...ナメてんだろ、お前」

エンヴィーは怒りに任せて首輪交換機を殴りつける。
が、しかし、全くの無傷。いくら殴ろうが蹴ろうが一切壊れる気配を見せない。
壊すのが不可能だと悟ったエンヴィーは溜め息をつき、どうにか主導権を握ろうと質問の網目を潜ろうとしたが、結果は無駄。
結局、冒頭のような会話を繰り返しただけだった。


『新しい情報が知りたければ首輪の提供が必要となります。なお、先の首輪と同価値の首輪の場合、お答え可能な範囲は対象が滞在している方角のみとなります』
「はぁ...わかったよ。もういいや」

首輪交換機に見切りをつけ、エンヴィーはBOXを後にする。

(こんな適当なモン置いて、広川はなにがしたいんだろうねぇ)

情報や武器と同価値の首輪がなんなのか示さない。
一度した質問を変えることはできない。
回答者の変更も時間がかかる。
ハッキリ言ってこれはポンコツだ。一方的に首輪を回収するだけの不良品だ。
後から改良されるらしいが、こんな有り様を見せつけられてこんなモノを使おうと誰が思えるだろうか。

「こんな未完成品を置くくらい切羽詰まってんの?それとも28人死んでてもまだ物足りないのかな?欲張りだねェ」

口にそう出しつつも、その線は薄いだろうと考える。
仮に言葉通り、殺し合いが順調に進んでいないのだとしてもだ。
こんなモノを置けば、自らそれを認めているようなもの。むしろ主催への信頼が薄まれば、如何なる願いも叶えるという広川の言葉にも疑問が生じ、殺し合いはそのぶんだけ停滞しやすくなる。
ならば、そのリスクを冒してでも対処しなければならない問題が起きた―――そう考えるのが妥当だろう。

(尤も、このエンヴィーならそうやって希望を持たせたうえで嘲笑ってやるけどね。お前らのしたことは全部無駄だったんだよってさ)

もしもエンヴィーが主催の立場であればそういう遊びを入れたかもしれない。
しかし、見たところあの広川は自分とは逆の人間。
そういった遊びを入れず、目的のために最善を尽くすタイプだ。
そうなると、やはりなにか問題が起きたと考える方がしっくりとくる。
もしかすると、殺し合いに破綻をきたすほどのものかもしれない。

(まあ、ぶっちゃけ殺し合いがどうなろうが、どうでもいいけどね)

エンヴィーとしては、殺し合いが成功しようが失敗に終わろうがどうでもいい。
ただ、なぜ死んだはずの自分が生きてこの地に呼ばれたか―――それさえ知れればあとはどうでもいい。
ゲームに乗ったのは、エドやマスタングがゲームを破壊する側に回り、そんな彼らとぶつかる方が楽しいからだ。

「そうだ。新しい首輪を手に入れたらもう一回だけ試してやろうかな。なんでこのエンヴィーを蘇らせてまで連れてきたのか、ってね」

とはいえ、それを優先するつもりはない。
それを知るために長くこのバトルロワイアルの乗った方が楽しいと判断すれば、そちらを優先するし、あまりにも早く目的を達成してしまうとそれはそれでつまらない。

とにかく、いまは闘技場に用はない。
手始めに何処へ向かおうか考えていた時だ。


突如、轟音が響き渡る。
何事かと目を向ければ、遠目に土煙のようなものが舞い上がっていた。

「やってるやってる。...あれは大佐かな?いや、ちょっと違う気もする...まあ誰でもいいけどさ」

地図を確認し、場所の推測をする。

(あの辺りだとジュネス...いや、もう一つ北のF-6かな)

おそらくいまから向かっても戦闘は終わっているだろうが、しかし勝利した何者かに出会えるかもしれない。
エンヴィーは馬に変身。すぐに轟音のもとへと向かうことにした。

それからほどなくして。

再び鳴り響く轟音。今度は、建物が崩れるような音だ。

(かーっ、派手だねぇ。こんどはジュネスの方かな)

ジュネス。F-7に建っており、ちょうど目的地のF-6の通り道だ。

(ちょうどいいや。どんな奴が暴れてんのかな―――っと)

そのまま乱入しようとも思ったが、マスタングに殺されかけたこともある。
状況を確認してから、その都度に効果的な姿を借りた方が愉しめるだろう。
連なる建物のうち一つに入り、屋上から双眼鏡でジュネスの様子を観察する。

ジュネスは崩壊し、姿を現したのは巨大な異形。
魚の下半身に鎧に包まれた上半身は、人魚の騎士とでもいうべきだろうか。
やがて、瓦礫を押しのけて出てきたのは、尖った耳の男。
彼は、人魚を一瞥すると即座に離れ、物陰に身を潜めた。

次いで現れるのは、これまた異形の人形―――あの犬が使っていたものに酷似した―――に守られた少年少女たち。
その中には、里中千枝や銀といったキンブリーと接触した者たちの姿も見える。

「あいつらここにいたんだ...ちぇっ、あの様子だとやっぱり大佐への扇動は失敗したみたいだね」

だからこのエンヴィーに任せておけばよかったんだとぼやくのと同時。

『彼女』の演奏会が幕をあげる。


奏でられる音楽。
車輪や剣で吹き飛ばされ傷ついていく少年少女たち。

「あっはっはっ、いいねぇ。中々いい催しだよこれ」

奏でられる絶望の演奏に、エンヴィーはキンブリーや首輪交換機への怒りも引くほどに機嫌を取り戻した。
何事か言い争い足を引っ張り合う不様な姿。
傷つき浮かべる苦悶の表情。
人間たちの晒す醜態とはなんと心地が良いものか。

(それに...この音楽。なんでだろうね。嫌いじゃない―――どころか、もっと聞いていたい)

エンヴィー自身は、芸術などに興味があるわけではない。
しかし、『彼女』の奏でる音楽は、自分の好みに近い...というよりは、妙に親近感が沸いてしまう。
この気持ちはなんなのだろうか。


「おっ」

やがて、戦況は大きく崩れ出す。

一人前線で戦っていた里中千枝が刺された。
銀髪の少年―――鳴上悠は、悲しみや怒り、様々な感情の入り混じった顔を浮かべ、彼を取り巻く環境の全てが変化する。

その負の感情は、双眼鏡越しでも伝わるほどに凄まじいものだ。

「そうだ。出しちまえ」

彼がなにをしようとしているのかはわからない。
しかし、エンヴィーは確信していた。
彼のやろうとしていることは、間違いなくこの殺し合いをさらに混乱に陥らせ、このエンヴィーを楽しませてくれると。

「さあ、やれ。やっちまえ!」

彼の掌がタロットカードを握りつぶそうとしたその時。


「あぁ?」

瀕死の里中が鳴上を蹴り飛ばし、倒れそうになる彼女を銀が支え、なにやら鳴上と言い争っている。
いくらか問答を交わすと、やがて鳴上は立ち上がり、『彼女』へと向き合った。
その顔には、一点の曇りもない。

「...なんだよ、それ」

鳴上は、次々に人形を入れ替え、『彼女』を追い詰めていく。
―――まるで、これが俺たちの紡いできた『絆』だと言わんばかりに。
ただ前を向いて戦っている。

「...つまんない」

彼だけじゃない。死にそうな千枝も、人形を変化―――いや、進化させ、『彼女』を氷に包んでいく。

「つまんないなあ」

そして、千枝の命が潰えたその時。最後まで。
彼らの顔には確かに悲しみはあったけれど、それでも微笑みを浮かべていた。
そこには、『絆』を信じることへの迷いなんて一切なかった。



「ほんっとにツマンナイことしてくれたよ、おまえたち」

(こんな場所でも馴れ合いを見せつけられるの?ほんと勘弁してほしいよ)

ハァ、と溜め息をついて双眼鏡から一旦視線を外す。

友情。努力。勝利。絆。
ホムンクルスのエンヴィーよりも弱い癖して、綺麗事を掲げて立ち上がる。
そんなものは大嫌いだ。

彼らの見せつけてくれた綺麗ごとを滅茶苦茶にしてやりたい、そんなことをぼんやりと思い、再び視線を双眼鏡へと戻す。
その先にある光景を見て。

「...へぇ。見逃さないでよかったよ」

彼は邪悪な笑みを浮かべた。


鳴上の仲間であろう少年―――タツミが、鳴上の背後をとっている。
あれだけの綺麗事を見せつけられても尚、彼は鳴上を信用しきれていないらしい。

最高だ。傑作だ。いいじゃないか。もっとやれ。

その後、タツミはエルフ耳の男と戦い、なにを思ったか優勢だったエルフ耳の男は立ち去ったが、そんなことはどうでもいい。

(あいつは面白そうだ。よし、決めた)

次の玩具はあいつだ。
見るからに彼は不安定であり、悩みも抱えている。
だったら、殺すよりも生かして混乱を楽しんだ方がいいに決まってる。
ああ、楽しみだ。愉しみだ。

「お前らの薄っぺらい絆なんて、このエンヴィーがめちゃくちゃにしてやる」

これから自分が起こすことを想像して。
これから彼らが味わう絶望を予感して。
『嫉妬』の顔は、醜く歪んだ。






「......」

気絶した鳴上と銀の入ったデイパックを背負い、タツミは一人街を歩く。


『い、ぁぁぁぁあああああアアアアアアアアアア!!』

左腕を失ったさやかの悲鳴が、頭の中を打ち鳴らす。

『……まるで契約者ですね』

敵にすら向けられる懐疑の視線に、足取りが重くなる。

『何でだ。何で、お前はそんなことが言えるんだ!』

鳴上の怒りが胸に突き刺さる。

(鳴上はさやかを見ていないからそう言える...違う)

『ちゃんと見ていないのは……お前の方だろ! 本当にさやかは殺し合いに乗っていたのか?さやかは乗ろうとしたんじゃなく。本当は誰かに助けを求めてたんじゃないのか!』

(さやかは、誰かに助けてほしかった...?)



もしも。もしも、彼女と出会ったあの時。
彼女を葬るのではなく、手を差し伸べていたら。
もしも、ジョセフや初春と別れず四人で行動し続ければ。
もしも、巴マミ鹿目まどかが死んだ時、慰めの声の一つでもかけていれば。

...こんなことにはならなかったかもしれない。


思い浮かぶのは後悔ばかり。
頭の中では様々な『IF』が浮かんでは消え浮かんでは消え、タツミは自身を責めたてていく。




「止まりな、ガキ」

後方―――ジュネスの方角よりかけられた声に足を止める。


「ふたつばかし聞きたいことがある」



赤髪の女は拳銃を構えていた。
敵意はある。いや、敵意というよりはむしろタツミに対する警戒心だ。



「ひとつ。向こうで氷漬けのバケモンがいたんだが...あんたは知ってるか?」


女の問いに、タツミは思わず目を逸らしてしまう。
当然知っている。『魔法少女』を『魔女』にしてしまったのは他ならぬ自分だから。
逸らした目線を再び女に合わせると、彼女は短く舌打ちをし、タツミを見る視線が鋭くなった。


「ふたつめ。そこの近くであたしのツレが殺されてたんだが...殺ったのはてめえか」

聞かれたくなかったその言葉。
尋ね人は、殺された少女の知り合い。
そんな彼女にタツミは―――




「―――ッざけんじゃねえええええぇぇぇ!」


女―――『ヒルダ』が怒声と共に拳を振るう。

タツミは嘘をつけなかった。
鳴上は、まださやかを助けようとしている。
その希望を断ち切るのは早計だ。
いまは少しでも魔法少女についての情報が欲しい。
そう判断したため、タツミは『ヒルダ』に語ってしまった。
魔法少女のこと、さやかのこと、そしてジュネスで起きたこと。
その結果が、『ヒルダ』による鉄拳制裁。
頬にそれを受けたたタツミの身体は、想像以上の拳の重さに後方へと吹き飛ばされた。



「そのさやかって奴を追い詰めた結果がアレだぁ?なに考えてんだてめぇは!」
「ちが...俺は...!」
「てめえが、てめえが千枝を殺したんだ...!」

『ヒルダ』の言葉に、タツミは息を詰まらせる。

(悠の仲間を殺したのは...俺...)

千枝を刺したのは、紛れも無くさやかだ。
だが、そうまでさやかを追い詰めてしまったのは誰か。
他でもない、タツミだ。


『ヒルダ』はタツミの胸倉を掴み持ち上げる。

「いきなりこんな殺し合いに放り込まれて戸惑っているだけの奴でも、自分の価値観で悪だと判断した奴はそうやって殺していくんだな、てめぇはよ」
「......」
「だとしたらあたしも危ねえなぁ。こうやってこいつに手をあげてたらさやかみてえに殺されちまう。そんな奴とは一瞬たりとも一緒にいたくないね」

『ヒルダ』は、タツミを放り捨て背を向ける。
これ以上お前と一緒にいられるか。
言葉通りの意思表示だ。


だが、タツミとしてはそうはいかない。
『ヒルダ』は千枝や銀の仲間であり、守らなければならない存在だ。
例え、彼女から嫌われようが敵意を持たれようが、みすみす単独行動をさせて見殺しにするわけにはいかない。
そのため、どうにか止めようと声をかけるが

「何度も言わせんなボケ。あたしは、死ぬ以上にてめえみてえな悪党と一緒にいるのが嫌なんだ」

"悪"。その言葉に、タツミは足を縫い付けられるような感覚を覚える。

「手に入れた力を振りかざして、理由も聞かずにテメエ勝手な善悪で判断し、ただ理不尽にそれを行使して正義を振りかざす。
あたしからしてみりゃな、真正面から問答無用で殺しにかかってくるっていうエルフ耳以上にてめえは悪党なんだよ」

―――手に入れた権力を振りかざして、ただ理不尽に行使する。
かつて、帝都警備隊のオーガに抱いた感情を思い出す。
彼は、己の欲のままに無罪の者を犯罪者とでっちあげ、その手にかけてきた。
なら、自分がさやかにしたことはどうだ。
少々会話しただけで、言葉の端々を捉えてさやかを悪だと断定し、即座に殺すつもりで斬りかかった。


(俺は...オーガと同じ...?)

『本当にさやかは殺し合いに乗っていたのか?さやかは乗ろうとしたんじゃなく。本当は誰かに助けを求めてたんじゃないのか!』

(でも、あいつは放っておいたら人を殺して―――)

「こんな状況で全員が全員不安にならないはずがねえだろ」

タツミの心境を読み取ったようなその言葉に、タツミは息をのむ。

なんで気が付かなかった。
もしも、最初に出会ったのがさやかではなく、突如連れてこられたこの殺し合いに混乱する一般人だったら。
ロクに戦場を知らない、今まで平和に暮らしていた民だったら。
それでも、タツミは即座に悪と判断し、斬ってしまっていたかもしれない。
自分のように平常心を保てなかった者を、"悪"とみなしてしまったかもしれない。
例え、さやかが本当に乗るつもりだったとしても。
彼女が困惑しているだけなのかどうかの確認をすべきだったのだ。

「俺は...間違ったんだな...」

ポツリと呟かれた言葉を聞き遂げると、『ヒルダ』は再び歩みを進める。

「...あたしは、音ノ木坂学院を拠点にしようと思ってる。あんたがこれからどうするかまではとやかく言わねえが、いまはついてくんな」

言い残し、去っていく背中に、タツミは声をかけることすらできず。
『ヒルダ』は、タツミのもとから去っていった。

「......」


残されたタツミは、後悔と共に一人思い悩む。

そもそもだ。
さやかを監視しようとしたのは何故だ。
さやかに殺人をさせないためだ。
ならその後は?
殺し合いが無事に破壊され、自由の身になった時は、自分はさやかをどうするつもりだった?
危険人物だから、戦力としても必要ないからもう用済みだと斬り捨てたのか?
『ヒルダ』の言ったような、悪党紛いのことをするつもりだったのか?


『迷うな。トドメは迅速に刺すことだ』

敵の理由を聞けば、そこから迷いが生じ、こちらの命取りとなる。
だから、悪と認識した者に同情することもなく、ただ斬り殺してきた。
だが、それはあくまでも殺し屋、戦士の世界の話。
危険な匂いがするからといって、それを自分の世界に当てはめてしまったこと自体が間違いだったのだ。

『助けられる人を助けたいと思うのは当然じゃないですか』

タツミが剣を振るうのはなんのためだ。敵を斬るのはなんのためだ。
自分達に都合の良い人間だけを守るためか。
そこから外れそうな人間には手を差し伸べなくてもいいのか。

初春やジョセフはさやかを『救おう』としていた。
しかし、自分は違う。さやかを『救おう』などとはちっとも考えていなかった。
ひとつの戦力として、斬り捨てるのにも都合の良い部分だけしかみていなかった。

(アカメなら...こうはならなかったのかな...)

わからない。
殺し屋としてのイロハを教えてくれたのは、確かにアカメだ。
もしさやかと出会ったのがアカメであれば、彼女はどうしただろうか。
...いや、そんなことを考える必要は無い。
失敗したのは自分。さやかを魔女にし、千枝を殺させたのは他ならぬタツミなのだから。


重い足取りのまま、彼は再び安息の地を求めて進む。
『ヒルダ』を追うか、このまま北上するか、それともここで二人が目を覚ますのを待つか...


タツミの不運は二つ。

一つは、タツミの精神が不安定な状態で『ヒルダ』が接触してきたこと。
いまのタツミの精神は乱れに乱れていた。当初の警戒心の高さは身を潜め、全ての元凶になってしまったのかという自責の念に駆られていた。
そのため、『ヒルダ』の言葉を鵜呑みにし、一方的な情報搾取でさえ疑問を持つことができなかった。

もう一つは、ヒルダをよく知る銀が目を覚ましていなかったこと。
彼女が目を覚ましていれば、いましがたタツミと会話していた『ヒルダ』に違和感を持つことができたはずだ。


だが、現実は彼に都合の悪いように流れてしまった。


彼は気づかない。
『嫉妬』の毒は、既に仕込まれていることに。

【F-6/一日目/夕方】



【タツミ@アカメが斬る!】
[状態]:疲労(大)、右太腿に刺傷、右肩負傷、さやかに対する強い後悔 精神不安定
[装備]:バゼットの手袋@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:基本支給品一式、テニスラケット×2、グリーフシード×1、ほぼ濁りかけのグリーフシード×2、ライフル@現実(武器庫の武器)、ライフルの予備弾×6(武器庫の武器)、美樹さやかの肉体。
[思考・行動]
基本:悪を殺して帰還する。
0:二人を連れ、安全な場所まで移動する。
1:ヒルダを追うか、北上するか、この付近で身を隠すか...
2:魔女化したさやかについては一先ず保留。可能なら殺害したいが、元に戻る方法があるのなら……
3:アカメと合流。
4:もしもDIOに遭遇しても無闇に戦いを仕掛けない。
5:エルフ耳とエンブリヲは殺す。
6:足立透は怪しいかもしれない。
7:俺は、間違えたのか……。
[備考]
※参戦時期は少なくともイェーガーズの面々と顔を合わせたあと。
※ジョセフと初春とさやかの知り合いを認識しました。
※魔法少女について大まかなことは知りました。
※DIOは危険人物だと認識しました。
※首輪を解除できる人間を探しています。
※魔法@魔法少女まどか☆マギカでは首輪を外せないと知りました。
※さやかに対する不信感。
※ヒルダ(エンヴィー)には情報を与えましたが、ヒルダ(エンヴィー)からは情報を得ていません。



【鳴上悠@PERSONA4 the Animation】
[状態]:疲労(極大)、気絶  デイパックの中
[装備]:なし
[道具]:千枝の首輪
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを止める。
0:……。
1:さやかを元に戻す。その為に佐倉杏子を探す。
2:未央に渋谷凛のことを伝える。エンブリヲが殺した訳じゃない……?
3:足立さんが真犯人なのか……?
4:エンブリヲを止める。
5:マスタングを見つけ出し、ぶっ飛ばす。
6:里中……。
[備考]
※登場時期は17話後。
※ペルソナの統合を中断したことで、17話までに登場したペルソナが再度使用可能になりました。ただしベルゼブブは一度の使用後6時間使用不可。
回復系、即死系攻撃や攻撃規模の大きいものは制限されています。
※ペルソナチェンジにも多少の消耗があります。
※イザナギに異変が起きています。



【銀@DARKER THAN BLACK 黒の契約者】
[状態]:疲労(大)  キンブリーに若干の疑い、観測霊の異変?に対する恐怖、気絶 デイパックの中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品1~2 、カマクラ@やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。
[思考]
基本:…………。
1:黒を探す。
2:千枝……。
3:怖い。
[備考]
※千枝、雪子、モモカと情報を交換しました。
※制限により、観測霊を飛ばせるのは最大1エリア程です。




「くっくっくっ...あははははは!!」

『ヒルダ』―――エンヴィーは嗤う。
これでもかというくらい愉快気に、満足げに。

「なぁ、鳴上ィ。大勢の人間に囲まれたタツミを見たらさぁ、お前はどうする?あいつを見捨てるか?それとも俺たちを信じて下さぁいって、一緒に頼み込んでみるか?」

これよりエンヴィーは、ヒルダやウェイブの姿を借り、音ノ木坂学院でタツミの悪評をばら撒くつもりでいる。なんならタツミ自身に化けて一暴れしても構わない。
詳細名簿には、エンヴィーも一度は出会った高坂穂乃花と小泉花陽らμ’sの面々がこの学院の生徒だと記されていた。
おそらく、彼女たちはわかりやすい目印としてここを拠点にするはずだ。
やがてやってきたタツミは追い詰められることになるだろう。
その時、なにも知らずにそんな事態に直面した鳴上はどう思うのだろう。

「見捨てるならいいよ。自分の保身を第一に考える。それが人間って奴さ。でも、俺たちを信じてくれっていうのは難しいんじゃないかなぁ。
だってそうでしょ?タツミは美樹さやかを追い詰めて、里中千枝を殺させた張本人。それは紛れもない事実さ」

そう、それは間違いなく否定できない事実。
タツミは、不用意に魔法少女を追い詰め、鳴上の仲間を殺させた。
そのことだけは、このエンヴィーに関わった奴らに徹底的に吹き込ませてもらう。

「なんだったら、真実を変えてみる?タツミはさやかを救うために最善を尽くした、でも助けられなかった。だからタツミは悪くないってさ」

タツミと一番関わりがあり、千枝の仲間にあたる鳴上がタツミを許す。
成る程、確かにそれが一番被害の少なくなる方法かもしれない。

「けど、そいつは美樹さやかに対する裏切りだよ。結局、あいつをそれだけ軽んじてるって証拠さ。お前のいう絆が本物なら、そんなことできないよねぇ」

もし鳴上がそれを行使すれば。それは美樹さやかの心や気持ちを無視し、彼女にタツミを許せと押し付けるようなものだ。
もしさやかが魔女から戻った時、どんな表情を浮かべるか―――想像に難くない。

「まあ、そもそもあいつが本当に戻るかどうかって話なんだけどね。それはそれで、鳴上の絶望した顔が見れるからいいけどさ」

そして、エンヴィーは音ノ木坂学院への足を進め―――ピタリと止まり、振り返る。
その視線の方角は、未だに凍りついているであろう『彼女』のいるジュネス跡。

「お前の演奏、嫌いじゃなかったよ。また会えたら、もう一度聞かせてもらおうかな」

届くはずもない言葉。
らしくないな、と思いつつエンヴィーは再び音ノ木坂学院への道を進む。


―――Oktavia von Seckendorff(オクタヴィア・フォン・ゼッケンドルフ)

その性質は恋慕。彼女が奏でるのは叶わなかった想い人への羨望。
彼女の絶望の裏には、様々な『嫉妬』が溢れている。

自分に気付いてくれない想い人。
想い人と寄り添った友人。
親友に秘められた才能。
先輩や他の魔法少女への憧憬。
かつて人間だったころの回顧。


そして、この地で見せつけられた―――自分には巡ってこなかった『絆』。


『人造人間(ホムンクルス)よりもずっと弱い存在の筈なのに。叩かれても、へこたれても、道を外れても、倒れそうになっても、綺麗事だとわかってても。何度でも立ち向かう。周りが立ち上がらせてくれる。
そんな人間が、お前は羨ましいんだ』

エンヴィーは気づかない。
自らが惹かれたのは、自分と同種の『嫉妬』であることに。

その正体を、かつてエドワード・エルリックに理解されたそれを認めた時―――彼の苛立ちは頂点に達するだろう。




【F-6/一日目/夕方】

【エンヴィー@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST】
[状態]:疲労(中)、賢者の石消費(マスタングとの戦闘で焼かれた分も含めて残り40%)、鳴上の『絆』に対する嫉妬心、オクタヴィアの演奏に対する共感
[装備]:ニューナンブ@PERSONA4 the Animation、ダークリパルサー@ソードアート・オンライン
[道具]:ディパック、基本支給品×2、詳細名簿、天城雪子の首輪 双眼鏡(エンヴィーの支給品)、里中千枝の死体
[思考]
基本:好き勝手に楽しむ。
0:音ノ木坂学院でタツミの悪評をばら撒く。タツミの姿で暴れるのもいいかも。
1:放送後にもう一度首輪交換機を訪れてみようかな。
2:色々な参加者の姿になって攪乱する。
3:エドワードには……?
4:ラース、プライドと戦うつもりはない、ラースに会ったらダークリパルサーを渡してやってもいい。
5:キンブリーぶっ殺す。
[備考]
※参戦時期は死亡後。
※ヒルダの姿でタツミからジュネス近辺、さやかについてのことを聞きだしました。




159:It's lost something important again タツミ 172:『男らしく』でいこう
鳴上悠
144:見えない悪意 エンヴィー 173:電子の海
最終更新:2016年03月15日 01:21