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三人寄れば ◆w9XRhrM3HU


「ヒースクリフ……日本人にしては、随分変わった名前だな」
「名簿には、そのようにあるので。勿論本名は別にあります」

今から数分前、コンサートホールへやってきたアヴドゥルは足立とヒースクリフの二人と合流した。
三人とも、殺し合いに乗る意思はない―――少なくとも今は―――ことを確認し彼らは名乗りあう。

「いやあ、良かった。今のところ殺し合いに乗っている人と、誰とも出会わなくて」
「すまない足立。殺し合いに乗っている訳ではないが、少しヤバい女がこの場に来る」

足立の安堵に満ちた顔が即座に曇り、アヴドゥルはエスデスについて話し始めた。
危険思考の女だが結果としては、広川の敵対者として協力できるかもしれないこと。
その手始めとして、エスデスはアヴドゥルが告げた危険人物、DIOの打倒を目論んでおり、仲間を集めコンサートホールに集合する約束をしたこと。
そして、仲間と共にDIOの館への突入を考えていること。
全てを話し終え、ヒースクリフは疑問を投げかけてきた。

「そのDIOという男が、果たしてその館に来るものでしょうか?
 聞いた限りでは、貴方を始めとした数人に警戒されているのだから、自分の名の付いた施設にはそう近寄らないと思いますが」

ヒースクリフの指摘通り、DIOも馬鹿正直に館に向かうとは考えづらい。
近くに飛ばされ興味本位で入るか、夜明けまでに太陽を凌ぐ為にやむを得ず入るか。どちらかだろう。
最も警戒深いと同時にプライドの高い男でもある。もしかすれば、自分が倒されるはずがないと考え、敢えて館の向かう可能性もあるが。

「君の言う通りだが、エスデスは聞き入れんだろうな」

DIOの打倒は名目だけだ。あの女は闘争を戦場を望んでいる。
DIOが居れば儲けもの。居なくても、それに代わる戦場さえあればいい。

「あの女は本当に危ないんだ。出来れば君たちは、ここからすぐに離れて隠れていた方が良い」
「で、でもアヴドゥルさんは、そんな危ない女と関わってて大丈夫なんですか!?」
「出来ればすぐに縁を切りたいが、あの女とは一応約束もしてしまったし、……万が一の時は私には“こいつ”がある」

アヴドゥルが両腕で魔術的なポーズを決めた瞬間、彼の背後から炎の魔人が現れた。
魔人は纏っていた炎で、コンサートホールの座席の一つを燃やし尽くし、一瞬で黒の炭へと変えた。

「君達には見えないかもしれないが、これはスタンドという超能力で私は自在に炎を」
「見えない? どういうことでしょう?」

アヴドゥルのスタンド『魔術師の赤』の後を追うようにヒースクリフと足立の視線が泳ぐ。
流石のアヴドゥルもこの異変に気付き、首を傾げた。

「まさか、見えている? 君達もスタンド使いなのか?」
「いや、まっさかぁ。僕はスプーンすら曲げられませんよぉ」
「私も心当たりはありませんね」

足立は一瞬、スタンドをペルソナと呼んでしまい掛けたのを必死で抑えた。
今は無害な一般人を装ってる以上、この手の事柄には無関係でいた方が都合が良い。
自分がペルソナに関係するとバレて、色々問いただされるのは避けておきたい。


(スタンドか……ペルソナより使いやすいじゃないか)

あのペルソナに似た異形はスタンドと呼ぶらしい。
アヴドゥルの話を聞く限り、何処でも自在に出せ、同じスタンド使い以外は視認不可。ここでは何故か見えるらしいが。
テレビの中でしか使えず、この場でも呼び出せないペルソナに比べると非常に使い勝手も良く、強力な力だ。
足立はあまりの不平等さに、やはり世の中糞だと叫びたくなった。

「……話を戻そう。私はエスデスと、再度合流するつもりだが君たちは?」
「私もそのエスデスという女性に会ってみようと思います」
「本気か? ヒースクリフ!?」
「えぇ!? 逃げましょうよぉ。そんな危ない奴、触らぬ神に祟りなしって言いますよ?」
「確かに危険な女性のようですが、逆を言えばそれだけの実力者ということ。
 殺し合いの打破には必要な人材でしょう。会う理由こそあれど、避ける理由はない」
「嘘でしょ!?」

足立の目論見ではヒースクリフを連れ、とっととここから出る事を望んでいた。
エスデス等という戦闘狂染みた女と関わっては命が幾つあっても足りない。
ペルソナが使えれば、あるいはそんな女を屈服させるのも一興かとも思えたのだが、今は保身に徹するべきだ。
ヒースクリフも賛同してくれると思ったのだが、思いのほか行動的だったのは意外だった。

(不味いぞ。流石に一人で行動するのだけは避けないと)

武器もない、ペルソナもないで一人での単独行動は自殺行為だ。

「わ、分かりましたよ……俺もここに残ります。一応、刑事だし」
「足立、あまり無理をして残らなくても……」
「でも、い、いざって時はお願いしますね、アヴドゥルさん?」
「う、うむ」

不幸中の幸いだったのは強力なスタンドを持ち、善人の側であるアヴドゥルが居ることだ。
万が一の時は進んで前線に立って守ってくれるだろう。
不平等な能力の差に腹が立つが、ここは抑えてアヴドゥルに頼るしかない。

(運が良いのか悪いのか、何にせよ思わぬ形で協力者が出来たか)

エスデスとの約束では協力者を連れ、コンサートホールに集合とあった。
だが、アヴドゥルは運悪く参加者には出会えなかった。
あのエスデスの事だ。約束が果たせないとなれば、何をしでかすかわからない。
いっそ、すっぽかして逃げようとも考えていたが、その必要もなくなりそうだ。

「それにしてもヒースクリフ。その鎧や盾は随分良くできているな? 
 日本のコスプレ文化という奴かな?」

日本にはコスプレイヤーという人種がおり、アニメのコスプレを好むいうのをアヴドゥルは知っていた。
この手の人種は本名ではなく、変わったニックネームを使い活動している。
ヒースクリフも名前からして、そのコスプレイヤーなのだろうと推測し、アヴドゥルは身に着けたコスプレを褒めたつもりだった。
しかしヒースクリフは眉間に皴を寄せ、怪訝そうな顔でアヴドゥルを睨む。

(まさか、こいつは……地雷を踏んだのか?)

アヴドゥルはしまったと思う。
こういう人種はオタクという変わった考えの持ち主であり、変な一言で怒るものだ。
知らぬ内に逆鱗に触れたのだろう。弁解しなくてはとアヴドゥルに焦りが募った。


「いや、決して馬鹿にした訳ではない。ただ、良く出来ているから感心して……。
 格好の話をすれば、私だって決して日本では普通じゃあない」
「……本当にコスプレに見えたんですか?」
「あ、ああ……」

派手な鎧に派手な盾はまるでアニメやゲームに出てきそうだ。
だからこそアヴドゥルはコスプレなのだと思ったが、よくよく近くで見るとこれは本物だった。
仮にコスプレだったとしても、あまりにもクオリティが高い。十分武器として使えるレベルだ。
「すまない」と謝罪し、アヴドゥルは申し訳なさそうに口を閉じた。

(……どうやら、ここはゲームの中ではないらしい)

違和感はあった。この世界はゲームにして出来すぎている。
質感も視界も全て、現実としか思えない。天才的ゲームデザイナーたる茅場晶彦を以てして、このゲームは非常に高い技術により作られていた。
と、思っていた。
だが種を明かせば簡単な話だ。ここはゲームでなく現実である。比喩でなく、これは間違いはない。
仮にゲームであるなら、アヴドゥルがコスプレだのと言い出す訳がない。
世の中に自身がプレイ中のゲームのアバターの格好を指さして、コスプレという者などそうは居ないものだ。
考え辛いが、ヒースクリフというアバターが現実に再現されているほうが辻褄が合う。

(電脳化を果たした私を現実に再現したのか、その前の肉体をこの場に連れてきたのか、それは分からないが……。
 今、ヒースクリフという存在はこうして実在する。電脳ではなく現実に)

茅場晶彦の肉体をヒースクリフの姿に似せ整形したか、あるいは肉体を管理されたままこのアバターを操作しているのか。
あるいは電脳化した意識を、現実に再現させたアバターに入れたのか。
いずれのどれかは分からない。だが、ますます主催への興味は湧くばかりだ。
いや主催だけではない。参加者の持つ異能にも興味がある。
アヴドゥルの持つスタンド『魔術師の赤』。エスデス持つスタンド(仮)『デモンズエキス』。
足立も惚けてはいるが、スタンドを見た時の見せた表情は既知感に溢れているように見えた。
それに近い何かの異能を持ち得ているのかもしれない。

(見てみたいな。この場にある全ての異能を)

科学者としての好奇心とゲームデザイナーとしての創作意欲が増していくの分かる。
そう、いい歳をしながらはしゃいでいるのだ。
子供の時、以来かもしれない。ここまで純粋に心躍るのは。
そうだ。あの頃から夢見た異世界が今この場には広がっている。それも現実で。
楽しみだった。これから見るであろう未知の存在との遭遇に。
現実に存在するとは到底思えない異能力の数々。それに茅場は心惹かれた。



「ともかく、もうすぐエスデスは来るだろう。それまで待とう」

三人は朝日の差し込むコンサートホールの中でエスデスの到着を待った。




【D-2/コンサートホール/一日目/早朝】

ヒースクリフ(茅場晶彦)@ソードアートオンライン】
[状態]:健康、異能に対する高揚感と興味
[装備]:神聖剣十字盾@ソードアートオンライン、ヒースクリフの鎧@ソードアートオンライン
[道具]:基本支給品一式、グリーフシード(有効期限あり)×6@魔法少女まどか☆マギカ、ランダム支給品(確認済み)(2)
[思考]
基本:主催への接触(優勝も視野に入れる)
0:一先ずエスデスを待ち接触してみる。
1:要所要所で拠点を入れ替えつつ、アインクラッドを目指す
2:外からの爆音(浪漫砲台パンプキンによる後藤への射撃音)に警戒しつつ、当面はコンサートホールで様子見を兼ねた籠城を行う
3:同行者を信用しきらず一定の注意を置き、ひとまず行動を共にする
4:キリト(桐ヶ谷和人)に会う
5:神聖剣の長剣の確保
6:異能に興味。他の異能も見てみたい。
[備考]
※参戦時期はTVアニメ1期におけるアインクラッド編終盤のキリトと相討った直後。
※ステータスは死亡直前の物が使用出来るが、不死スキルは失われている。
※キリト同様に生身の肉体は主催の管理下に置かれており、HPが0になると本体も死亡する。
※電脳化(自身の脳への高出力マイクロ波スキャニング)を行う以前に本体が確保されていた為、電脳化はしていない(茅場本人はこの事実に気付いていない)。
※ダメージの回復速度は回復アイテムを使用しない場合は実際の人間と大差変わりない。
※この世界を現実だと認識しました。

足立透@PERSONA4】
[状態]:健康、鳴上悠ら自称特別捜査隊への屈辱・殺意
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、水鉄砲@現実、鉄の棒@寄生獣、ビタミン剤or青酸カリのカプセル×8@現実
[思考]
基本:優勝する(自分の存在価値を認めない全人類をシャドウにする)
0:エスデスを警戒。会いたくない。
1:ゲームに参加している鳴上悠・里中千枝天城雪子・クマの殺害
2:自分に扱える武器をほぼ所持していない為、当面はヒースクリフと行動を共にする
3:隙あらば、同行者を殺害して所持品を奪う
4:いざという時はアヴドゥルに守ってもらう。
[備考]
※参戦時期はTVアニメ1期25話終盤の鳴上悠に敗れて拳銃自殺を図った直後
※ペルソナのマガツイザナギは自身が極限状態に追いやられる、もしくは激しい憎悪(鳴上らへの直接接触等)を抱かない限りは召喚できません
※支給品の鉄の棒は寄生獣23話で新一が後藤を刺した物です

モハメド・アヴドゥル@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
[状態]:健康 激しい怒りと悲しみ
[装備]:
[道具]:デイパック、基本支給品、ウェイブのお土産の海産品@アカメが斬る! 不明支給品0~2
[思考]
基本:殺し合いを止めDIOを倒し広川ら主催陣を倒し帰還する。
1:仇は必ずとるぞ、ポルナレフ
2:エスデスを待つ
3:エスデスは相当ヤバイ奴
4:ジョースターさん達との合流。
5:DIOを倒す。
6:もしこの会場がスタンド使いによるものなら、案外簡単に殺し合いを止めれるんじゃないか?
※参戦時期はDIOの館突入前からです。
※イェーガーズのメンバーの名前を把握しました。
アカメを危険人物として認識しました。タツミもまた、危険人物ではないかと疑っています。
※エスデスを危険人物として認識しており、『デモンズエキスのスタンド使い』と思い込んでいます。
※ポルナレフが殺されたと思い込んでいます。
※この会場の島と奈落はスタンド使いによる能力・幻覚によるものではないかと疑っています。
※C-2の木が一本燃えました。これによる被害はありませんが、放火場面を誰かに見られた可能性もあります。
※アヴドゥルの宣誓が周囲に響き渡りました。
※ウェイブのお土産の量、生きているかどうかは後の書き手さんに任せます。
※スタンドがスタンド使い以外にも見える事に気付きました。


時系列順に読む
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046:オフライン ヒースクリフ 081:曇天
足立透
034:怒れる魔術師 モハメド・アブドゥル
最終更新:2015年07月22日 02:51