043
わたしが、心を決める時 ◆5cyPCmuV8s
【承太郎1/2】
「その前に名乗らせて貰うぜ、俺の名は
空条承太郎」
「あ、はい。わたしは
鹿目まどか、……まどかと呼んでください」
名乗りを終えた長身の青年――空条承太郎は僅かに躊躇するも身をかがめた。
桃色の髪の少女――鹿目まどかは承太郎の左肩に両手をかざし僅かな光を当てた。
先程、まどかの頭部を修復したのと同じ光だ。
承太郎はまどかが自分に敵意がないのを改めて認識すると言った。
「あの槍使いの女……あいつは名乗りはしなかったぜ……」
「え……」
淡々とした、それでいて憤りが入り混じった承太郎の返答だった。
その語気の強さにまどかはしばし呆気に取られた。
だがその言葉に込められたもう一つの意味を察したのか、まどかの表情が僅かに曇る。
まどかは自らの服の胸元をぎゅっと掴んだ。
「……そうですか。何か……良くないことがあったんですね」
「ああ」
共闘し治癒までされていなければ、承太郎は単刀直入にきつくまどかを問いただしていただろう。
殺し合いに乗り、あまつさえ人間を餌の餌と見下した魔法少女との関係を。
だが僅かにやり取りした程度ではあるものの、承太郎はまどかの人柄をある程度評価していた。
なので荒っぽく説明を求めるまでもないと判断した
「あの……承太郎さん。その女の子の事詳しく教えてくれませんか」
意を決したまどかの問いに、承太郎はゲーム開始直後の出来事を話し始めた。
【まどか1/2】
「……」
予想出来ていなかった分、よりまどかのショックは大きかった
まどかは自分と同じ魔法少女が殺し合いに乗っている事を嘘だと否定したいができなかった。
承太郎がある程度まどかを信用してるように、まどかも承太郎を信用しているのもある。
異常な回復力を見せたまどかを気味悪がって立ち去るか、あるいは攻撃してきてもおかしくないのに
普通に接してくれたからだ。
そして何より、自身の魔力がだいぶ消耗しているのを意識した結果、
承太郎の言う、魔法少女にとって人間が餌の餌という意味にすぐに気づいてしまったからだ。
まどかたち魔法少女は生きてるだけで魔力を消費、魔法を使えばより多くの魔力を消費する。
彼女達の認識では魔力は自動回復させる事はできず、いずれ魔法が使えなくなる。
魔法少女の本体である契約の印である宝石 ソウルジェムに蓄積されてく穢れの為に。
その魔力を補充するには魔女もしくは、魔女が産み出す使い魔が魔女に変化したのを斃す時に
たまに落とすグリーフシードという卵のようなものが必要になる。
グリーフシードはその穢れを一定量移しかえ、ソウルジェムを浄化する事ができるのだ。
魔女は形の無い悪意として人知れず人間を殺し、力を蓄え増殖していく。
その所業と特徴はほぼ全ての魔法少女が知っている。
故に魔法少女はグリーフシードを得る為、自分達の居場所を守る為等の理由で
魔女と戦うのだ。
「もっとも他の似た奴かも知れねえけどな」
「……」
何気なしに言ったような承太郎の呟き。
それに対し、まどかは"いえ、杏子ちゃんで間違いないと思います"と、口を開こうとしたが止めた。
向こうがどう思ってるかは解らないが、まどかにしてみれば友達の一人だからだ。
自分ではっきりさせられるまでは口には出したくないとまどかは思った。
だが同時に冷めてこそいないが、冷静な分析がまどかの脳内で働いた。
意識して序列付けしている訳ではないが、
佐倉杏子はまどかにとって一番縁の薄い魔法少女である。
まどか達の願いを叶え、代償として魔法少女にした謎の生物キュゥべえの依頼で、
援軍の名目で派遣されてきた先輩の
巴マミの知己である別町に住む魔法少女。
素行、言動ともお世辞にも良くなく、まどかの親友である
美樹さやかが嫌っていた素性不明の少女。
まどか自身、最初はいい印象はなかったが、ある時ソウルジェムの秘密に気づいたのを切っ掛けに
徐々に親しくなってはいたが……。
「魔法少女は人間を餌の餌にする……できるというのは本当なんだな」
「はい」
承太郎の質問にまどかは少々顔を青ざめさせながらも強い眼差しで見つめ、答えた。
そしてグリーフシードの事を自分の知識と経験が及ぶ範囲で説明していく。
説明を聞き終えた承太郎は帽子の鍔を手にし溜息を付いて、だが強い意志を込めて呟いた。
「放っちゃ置けねえな」
「……」
敵意こそ和らいだが、強い非難の色が濃い承太郎の呟きに無言でまどかは頷いた。
まどかは
参加者名簿に記された自分を含む5人以外の魔法少女を知らない。
ゆえに自分の保身と欲望の為だけに魔法を行使する魔法少女がいるなんて予想すらしていなかった。
まどかと出会う前の杏子がどういう悪事を働いていたのかも想像すらしなかった。
まどか自身知る由もないが、利己的な魔法少女は実はそう珍しくはない。
魔法少女同士、グリーフシードを巡って殺し合いをする事もままあるくらいだ。
どちらかと言えば巴マミのような、グリーフシード獲得よりも人命救助を優先させる
ヒーロー然した魔法少女の方が珍しいのかも知れない。
だが、まどかは多少の違いはあれど巴マミに近い信条を持つ魔法少女だ。
承太郎が呟いた、"放っちゃ置けねえな"はまどかも同意する事でもあった。
そのまま見て見ぬふりをする訳には行かなかった。
「ところで参加者名簿に記載されているおめーの知り合いは全員魔法少女か?」
「はい。わたし鹿目まどか。美樹さやかちゃん、先輩の巴マミさん、
暁美ほむらちゃん、佐倉杏子ちゃんの
五人です。他にもいるかも知れないけれど。承太郎さんは?」
まどかは名簿の方を指さし答えた。
それに対し承太郎も返す。
基本的に魔女達の名称を魔法少女が知る事はない。強力な個体に通称が付く事はあるが。
だからこそのまどかの疑問であった。
「百年以上生きる吸血鬼で、俺達と敵対しているスタンド使いだ。
金髪の得体の知れない大男に会ったらとにかく警戒する事だな」
「うーん、地図にも載ってる名前ですよね。あの広川って人の知り合いですか」
ネームバリューがなかったらDIOの館ていう建造物があっても注目しないのにと、まどかは思った。
「奴の交友関係はよく分らねえ。奴の部下とは何度も争ったが奴自身とは直に会った事は無いからな」
「その中に魔女……らしき人はいましたか?」
「それらしき老婆はいたが、おめーの言う魔女はいなかったと思うぜ。そっちには吸血鬼やスタンド使いはいなさそうだな」
「わたしも、多分マミさんも会った事はないと思います」
まどかは名簿をしげしげと見ながらそう言った。
「続けていいか?」
「はい」
淀みなく会話するまどかにちょっと承太郎は意表を突かれたようだった。
気を取り直し、眉間にしわを寄せ承太郎は言った。
「おめーを襲ったのは誰だ?」
「……」
後藤との戦いの前に起こった暴虐。
常人……いや超人や動物でさえもやられれば即死と取られるような頭部破壊。
いくら魔法少女とはいえ、ソウルジェムの性質を知らなければ、
死んだと思い込み死に至るダメージを与えた男を身震いしながらもまどかは思い出そうとする。
「……名前は解りません。暗くて細かいところも解りませんでしたが……
確か承太郎さんと同じくらいの歳の男の人でした。
あの時、時計塔の近くで……」
魔法少女に変身していれば夜目が効いていたのにと思いつつ、得体の知れない悪寒を抱えながらも
まどかは名も知らぬあの時の男の、花京院典明の凶行を語り始めた。
【承太郎2/2】
まどかの身に起きた災難を聞き終えると、承太郎は帽子を深く被り憤りを抑えた。
「やれやれだぜ……」
まどかに対する憤りではない、花京院典明がここで凶行を働いているという現実に対してだ。
「知っている人なんですか?」
「……」
まどかが語る犯人の外見的特徴は勿論、行動と言動も承太郎が知る花京院の特徴と一致していた。
ただし肉の芽に支配されていた、承太郎が何で助けたのか解らないくらいの、
冷酷卑劣残虐なDIO狂信者だった時のと。
花京院は再びDIOの肉の芽に支配されたのかと承太郎はしばし考えたが、
DIOが近くにいればジョースター家特有の星の痣で位置がわかる筈だし、時間的にもあり得ない。
訳がわからない。
だが、これで承太郎の当面の方針は決まった。
「悪いな……そいつはおれの仲間の花京院のようだ」
「……!」
驚愕するまどかを他所に、承太郎は花京院を捜索せねばと思った。
時間は経っているが、これ以上花京院が悪事を重ねる前に何としても呪縛から解放せねばと思った
承太郎は北東を見た。
過去DIOの下僕としての花京院と交戦した場所は学校の保健室だった。
か弱い女医を操り人形兼人質として扱い、襲撃するという卑劣な方法で挑んできたのを思い出す。
今の時間帯だとゲーム開始から時間が経ってないことも有り病院の利用者は少ないだろう。
だが時間が経つに連れ、病院の設備に頼らざるをえない状況になる可能性は高い。
『あの時』の花京院なら負傷者を利用すべく病院を利用するのではと承太郎は考えた。
それに負傷させた赤い魔法少女が魔力とやらの節約のため利用する可能性も考えられる。
「承太郎さんどうしたんですか?」
「花京院か、あの赤い魔法少女がいそうな所に向かう」
「わたしも連れて行ってください」
ぐいっと学ランの裾を引っ張りながらまどかは懇願した。
それに対し承太郎はデイパックを開き、中から3個の球状の物体を取り出し――
もう一つの可能性に気づきつつもまどかに渡した。
「これは?」
「やるぜ。花京院が奪ったおめーの支給品は俺が取り返す。もしもの時はこれを使って逃げな」
承太郎の支給品の一部、3個の手榴弾だった。
何やら反論しようとするまどかに対し、承太郎は彼女の手を掴み自らのソウルジェムを見せつけた。
「もう碌に魔法が使えねえんだろ」
「……」
まどかは沈黙した。
承太郎の言う通り、まどかのソウルジェムは大分濁っていた。
身体の重要器官である頭脳の修復、そして承太郎に対して使った治癒魔法。
さやかと違って得意分野でないまどかの治癒魔法の代償は少なくなかったのだ。
承太郎はまどかの手を離し、今度は真南の方を見た。武器庫のある方角。
病院以外で花京院と例の魔法少女の目的地と見当を付けている場所。
支給品に恵まれなかった力のない参加者が真っ先に行きそうな施設。
武器を入手する直前を狙って襲撃をかける可能性も考えられる。
「……」
「?」
まどかが半泣き顔で、承太郎を見つめていた。
承太郎は溜息をつきながら、やや語気を和らげて言った。
「置いて行きやしねえよ。おめーには順を追ってまだ聞きたい事が沢山あるからな」
まどかの表情が明るく安堵したものに変わった。
「やれやれだ」と、承太郎は言った。
【まどか2/2】
承太郎の方針と花京院を主にしたスタンド使いの情報を聞いた後、まどかは他の魔法少女の事も話した。
「マズイな」
「……」
さやか、マミ、ほむらの魔法少女3人。
まどかがここに連れて来られる直前の彼女らは決して健全とはいえなかった。
さやかはほむらと杏子との関係が上手くいって無く、更にソウルジェムの性質を知った時から
情緒不安定になり、魔力も残りわずかであった。
ほむらは他の4人と比べ自前の攻撃手段に乏しく、足手まといにならないように自作の爆弾を作って
補っていたが、連携が上手くいかないこともあってさやかから特に嫌われていた。
キュゥべえに関して重要な秘密を知っているようだったが、認めるのが怖い類のものだったので
まどかを含め、誰も深く関わろうとせず実質孤立していた。
尚、ソウルジェムの本当の機能について知れたのは彼女のおかげであった。
マミは5人組の仲が上手く行ってないことに、ストレスを溜め込み悩んでいたようだった。
今置かれている状況だとわだかまりを捨てて一丸となれると、まどかは淡い望みを抱いていたのだが。
思えば甘すぎた。
まどかは魔法少女になった事で自信を付け、強気とも言える性格になったが、今の環境を変えたくないがために
本来ならできた筈の他者への配慮や現状把握を疎かにしてしまったのだと恥じた。
「花京院は俺一人に、赤い魔法少女の説得はおめーに任せるぜ、まどか」
「はい」
まどかは手榴弾の一つを承太郎に返しながら、ソウルジェムを見た。
半ば濁っているソウルジェムを見てまどかは暁美ほむらと花京院に襲撃された時の事を思い出していた。
もし、キュゥべえも教えてくれなかったソウルジェムの秘密を知らずにいたら、
まどかは間違いなくそのまま死んでいただろう。
「……」
仲間との関係を壊したくないいがため、真実を知りたくないがため、
蔑ろにしてしまったほむらに対してまどかは謝りたかった。
そして命がある事をほむらに感謝したかった。
気がつけば半ば崩壊した魔法少女たちとの関係を修復しみんなで生還したかった。
「病院か、武器庫どちらにする?」
承太郎はどちらでもいいのだろう。後はまどかの決断次第だ。
病院に行けば赤い魔法少女(杏子)に会え、花京院の恐怖から解放されるかもしれない。
武器庫に行けば、ほむらに会えるかもしれない。
同行者である承太郎の当面の行き先で、彼の仲間だけでなく、今の花京院も目指す可能性が
充分あるDIOの館からも近い。後藤と遭遇しやすくなるリスクもあるが。
どちらも早期に訪れば有用な物品を入手できる可能性が高いと思える施設だ。
まどかは希望の行き先を承太郎に言った。
【A-2/北/1日目/黎明】
【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
[状態]:疲労(中) 、精神的疲労(小)、
[装備]:なし
[道具]:デイパック、基本支給品、手榴弾×2
[思考・行動]
基本方針:主催者とDIOを倒す。
0:病院か武器庫を経由した後、DIOの館を目指す。後藤を警戒。
1:花京院を探し、洗脳されているようだったら救助する。
魔法少女達はギリギリまでまどかに任せる。
2:情報収集をする。
3:魔法少女やそれに近い存在を警戒。
【備考】
※参戦時期はDIOの館突入前。
※後藤を怪物だと認識しています。
※会場が浮かんでいることを知りました。
※魔法少女の魔女化以外の性質と、魔女について知りました。
※まどかの仲間である魔法少女4人の名前と特徴を把握しました。
※まどかを襲撃した花京院は対決前の『彼』だとほぼ確信しています。
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:ソウルジェム(穢れ:中~大) 、花京院に対する恐怖(小~中)
[装備]:見滝原中学の制服 中指に嵌められたソウルジェム(指輪形態)
[道具]:手榴弾×2
[思考・行動]
基本方針:ゲームに乗らない。みんなで脱出する。
0:病院か、武器庫どちらかに向かう。
1:魔法少女達に協力を求める。悪事を働いているなら説得するなどして止めさせる。
2:承太郎の方針に従う。
3:ほむらと会えたら色々と話を聞いてみたい。
4:状況が許すなら魔力を節約したい。グリーフシード入手は期待していない。
【備考】
※参戦時期は過去編における平行世界からです。3周目でさやかが魔女化する前。
※魔力の素質は因果により会場にいる魔法少女の中では一番です。素質が一番≠最強です。
※魔女化の危険は在りますが、適宜穢れを浄化すれば問題ありません。
※『このラクガキを見て うしろをふり向いた時 おまえは 死ぬ』と書かれたハンカチは何処かに落ちています。
※花京院の法王の緑の特徴を把握しました。スタンド能力の基本的な知識を取得しました。
※承太郎の仲間(ジョースター一行)とDIOの名前とおおまかな特徴を把握しました。
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最終更新:2015年06月02日 20:34